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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『消えた声が、その名を呼ぶ』 20世紀初頭のアルメニア人虐殺を背景に、男は旅を続ける

消えた声が、その名を呼ぶ
The Cut
2014年/ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、カナダ、ポーランド、トルコ

監督:ファティ・アキン
出演:タハール・ラヒム、セヴァン・ステファン
配給:ビターズ・エンド
上映時間:138分
公開:12月26日より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか
公式ページ:http://www.bitters.co.jp/kietakoe/

●ストーリー
1915年、オスマン帝国東南部にある町マルディン。アルメニア人鍛冶職人のナザレットは、ある日家族から引き離され、兵士たちに強制連行される。時は第一次世界大戦下。アルメニア人の独立を怖れた政府によって、国内に住むアルメニア人は虐殺されたり、強制収容所に入れられたりしていた。かろうじて助かったナザレットだが、喉の負傷により声を失う。戦争が終わり、娘たちが生きていることを知ったナザレットは再会を願い、キューバ、そしてアメリカへと旅を続ける。

●レヴュー
第二次世界大戦時のユダヤ人に対するジェノサイド(大量虐殺)については知る人も多いが(教科書にも載っている)、それに比べると日本ではあまり知られていないのが、第一次世界大戦時にトルコで起きたアルメニア人に対するジェノサイド(大量虐殺)だ。こちらは現在のトルコ政府は認めていなし、トルコと友好関係を大事にしたい日本政府も認めていないので、日本の世界史の教科書には掲載されることはない。また、この事件を扱った映画もほとんど作られることもなかったので、映画ファンも知ることがない。そんな意味で、ドイツに住むトルコ系移民二世である、ファティ・アキン監督がこの事件を取り上げたことは、トルコ国内でかなりの論議を呼んだことだろう。たとえて言うなら、アメリカに移住した日系二世が、南京大虐殺で生き残った中国人を主人公にした映画を撮るようなものだ。

映画では、「なぜアルメニア人への虐殺が行われたか」の原因については詳しくは触れない。政治的な問題は、いまだ解決していないからだ。ただ、第一次世界大戦時、トルコ国民として暮らしていたアルメニア人の一家が離散したという事実を描写して行く。現在のトルコ共和国は「多民族国家」を否定することからスタートしたが(国を作る時に「トルコ人」の定義を確立しなければならなかったほど)、当時のトルコはさまざまな宗教や民族が暮らす多民族国家だった。

映画は、現在のトルコ東南部の町、マルディンに住んでいたナザレットの目を通して、アルメニア人たちがどのような迫害を受け、そして世界に離散して行ったかが描かれる。映画がいいのは、いくら本で読んで知っていたことでも、当時の様子を再現した映像が見られるということ。“できごと”は本でわかっても、実際の土地の空気感は映像で見た方が感覚的にわかりやすい。画面からは、20年前に私がこのトルコ東南部やシリア北部を旅した時にも感じたものを感じた(今でも変わっていないのかもしれない)。強制労働に徴発されたアルメニア人たち、そして凄惨な虐殺、強制収容所で死んで行く人々…。家族を失い、声を失い、生きる目的を失った主人公が、アレッポの町で初めて見た映画、チャップリンの『キッド』(1921)を見たことから、偶然、娘たちが生きていることを知る。ここは「映画を通じて何かができるのではないか」という希望が込められている。また、映画は、「●●人だから悪い」という画一的な見方を避けている。主人公が助かったのも、たまたま処刑を命じられたトルコ人(クルド人)が人を殺すことに罪悪感を感じたからだし、彼がその後生きながらえたのも、親切なアラブ人がいたからだ。

娘を探して、レバノン、そしてキューバへ向かう主人公。住む場所を失ったアルメニア人が、当時、目指したのは陸路でも行ける革命後のソ連やアルメニア、そして移民を受け入れているアメリカだった。そのアメリカへはキューバを経由して行くことが多かったようだ(当時のキューバはアメリカの保護国のようなものだった)。物語の後半は、言葉もままならないアメリカでの旅。当時、アメリカにアルメニア人のコミュニティがあった事実も興味深い。10年ほど前にアルメニアの首都エレヴァンに行った事があるが、アメリカ(人)の援助で建てられた建物や作られた機関があり、その結びつきに驚いたが、アメリカに移民し、そしてアルメニア共和国の独立と共に戻ってきたアルメニア人がいることを知れば納得だ。現在も、アメリカには48万人のアルメニア人がいるという。

信じられるのは、そのときの状況によって変わる国ではなく、家族だけ。主人公、ナザレットにとって故郷はもはやトルコやアルメニアにあるのではなく、家族がいる場所なのだ。「帰巣本能」があるとすれば、生まれた所に戻るのではなく、アメリカの娘がいる場所に“戻らなくては”ならない。本作の時代背景は複雑だが、話の骨子としては非常にシンプルなものだ。なので、僕のような“歴史好き”はついつい背景の方に目がいってしまって、ストーリーに没頭できないが(笑)、難しい話ではないので、みなさんも知識を広げるきっかけとしてこの映画を見てみるといいかもしれない。(★★★☆)

●関連情報
・第71回ヴェネチア国際映画祭 ヤング審査員特別賞
・共同脚本のマルディク・マーティンは、アメリカに暮らすイラク生まれのアルメニア系移民。スコセッシ監督の『ミーン・ストリート』『レイジング・ブル』などの脚本家として知られている。
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by mahaera | 2015-12-24 01:42 | 映画のはなし | Comments(0)

『スターウォーズ フォースの覚醒』初日に観ました。

●12月18日
「フォースの覚醒」終了。ネタバレしません!

●12月19日
昨日、息子とスターウォーズを見に行っていたときに気づいたのだが、思えばスターウォーズ第一作目の1978年日本公開の年、僕はたぶんいまの息子と同じ高2で、しかも公開週の週末に父親と日劇に並んで見たのだった。すっかり忘れていたよ。なんだか、40年近くたって親子で同じことしているのは(笑)
 ということで、あさってからインドを前に絶賛仕事中だが、あと1時間したら抜け出して、レイトショーに行く。今度は3Dで。でインドから帰ってきたら4DXかIMAXで(笑) 昨日は、ストーリーを追うのがせいいっぱいだったので、今度は余裕を持ってみるぞ。

●12月20日
「フォースの覚醒」公開前に予習しよう! ということで書いた原稿だが、きっと大人の事情で、本日アップされた。公開されてから、「予想」を書いた原稿をアップされるなんてマヌケだなあ。とほほ。

記事はこちら
http://movie.bonobojapan.jp/story/55
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by mahaera | 2015-12-24 01:37 | 映画のはなし | Comments(0)

『スターウォーズ フォースの覚醒』初日に観ました。

●12月18日
「フォースの覚醒」終了。ネタバレしません!

●12月19日
昨日、息子とスターウォーズを見に行っていたときに気づいたのだが、思えばスターウォーズ第一作目の1978年日本公開の年、僕はたぶんいまの息子と同じ高2で、しかも公開週の週末に父親と日劇に並んで見たのだった。すっかり忘れていたよ。なんだか、40年近くたって親子で同じことしているのは(笑)
 ということで、あさってからインドを前に絶賛仕事中だが、あと1時間したら抜け出して、レイトショーに行く。今度は3Dで。でインドから帰ってきたら4DXかIMAXで(笑) 昨日は、ストーリーを追うのがせいいっぱいだったので、今度は余裕を持ってみるぞ。

●12月20日
「フォースの覚醒」公開前に予習しよう! ということで書いた原稿だが、きっと大人の事情で、本日アップされた。公開されてから、「予想」を書いた原稿をアップされるなんてマヌケだなあ。とほほ。

記事はこちら
http://movie.bonobojapan.jp/story/55
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by mahaera | 2015-12-24 01:37 | 映画のはなし | Comments(0)

『ミケランジェロの暗号』 システィナ礼拝堂の天井画に込められた、ユダヤの教義と反教会権力

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●12月16日
 
 先日、息子にミケランジェロの映画「華麗なる激情」を見せたことから、システィナ礼拝堂に興味を持ち、そこに秘められた意味があるというこの本を読む。まあ、秘密ってほどではないが、映画と違って、ミケランジェロはシスティナ礼拝堂を造らせたユリウス2世が最後まで嫌いだったらしい。なので、壁画のあちこちに、教皇や教会をバカにする“いたずら書き”を入れていた。あとは、新約聖書に登場する人物を入れず、ユダヤ的な旧約聖書の人物だけで天井画を描いた(のも当時は問題だった)。

 映画だと「お金がないので、弟子も雇えません!」と言っていたミケランジェロだが、彼の稼いだお金は、みな親族にたかられて無くなって行ったようだ。また、自分の墓についても「ラファエロはパンテオンに葬られているのに、こんなにローマに尽くした俺は…」なんてグチっていたとか。まあ、彼に仕事を依頼したどの教皇よりも、そして彼の後輩のラファエロよりも長生きし、88歳まで生きたから仕方がない。彼の死の頃は、ルネサンス終って宗教改革やエリザベス1世やフェリペ2世が活躍する時代。新大陸やインド洋貿易が大盛況で、地中海貿易で栄えたイタリアは没落していた。ちなみにミケランジェロは、あっちの人なので、子どもはいなかった。
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by mahaera | 2015-12-20 09:41 | 読書の部屋 | Comments(0)

最新映画レビュー『ひつじ村の兄弟』 アイスランドの大自然の中で、絆を取り戻して行く老兄弟

ひつじ村の兄弟
Rams
2014年

監督:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン、テオドル・ユーリウソン
配給:エスパース・サロウ
上映時間:93分
公開:12月19日より新宿武蔵野館ほか
公式ページ:http://ramram.espace-sarou.com


●ストーリー

アイスランドの辺境の村に住む老兄弟のグミーとキディーは、家も敷地も隣同士なのに、40年間、口もきかない絶縁状態だった。彼らの育てたヒツジは国内随一の優良種とされており、独身のふたりは生活のすべてをヒツジに賭けていた。その年、村のヒツジコンテストでは兄のキディーが1等、弟のグミーが2等だったが、グミーはキディーのヒツジに異変が起きていることに気づく。やがてそのヒツジは治る見込みのない伝染病に犯されていたことがわかり、その地域のヒツジすべてが殺処分されることになる。断絶していた兄弟が、ヒツジを救いたい一心で再び結びつく。

●レヴュー

すみません! かわいらしいタイトルやビジュアルから、モフモフしたヒツジとホッコリしたおじいさんたちの、のほほんとした話だと見くびってました。キャッチコピーの「まじめでおかしな大騒動」はまちがっていなけれど、そんなんじゃなくて、もうとても厳しい、そして苦しい話だった。

私たちはときどき、鳥インフルエンザや狂牛病などで多くの家畜が殺処分されるニュースを目にする。いずれ食べられる家畜だとしても、飼い主は手塩にかけて育てているはずだ。きっと心が引き裂かれるような気持ちだろう。そして、伝染病を防ぐため、疑わしきものはすべて殺すという、本当に人間勝手な仕打ち。もし伝染病にかかった人間が見つかって、その地域の人間が全部殺されたらと思うと、ゾッとする。できれば、隔離してもいいから、寿命までは生きさせてあげたいと思う。

本作の主人公となる老兄弟には、ほかには家族がいないのに、口もきかない険悪な仲だ。直接会話しないので、手紙をいちいち犬に運ばせる所がおかしいもっとも最後に口をきいたのは40年前で、本人たちも何が原因かうろ覚えのようだ。そんな孤独に生きているふたりにはヒツジがすべて。もちろん優良な種を代々育てているという自負もある。それが全頭処分だなんて納得できないだろう。そこで、ふたりが取った行動は異なるが、それぞれヒツジを守ろうとするものだった。たとえそれは犯罪でも。

動物好きには、このヒツジを処分しなければならないシーンですでに辛いだろう。そして苦しむ老人の姿も辛い。だから、彼らの取る行動がまちがっていて、悲劇を招くしかないとわかっていても、何とかこの老人たちに救いを与えて欲しくなるのだ。後はもう、画面を見ているうちにぼーっとして終ってしまった。まったく予期せぬ、終り方だった。どうなるんだ。
たぶん、この映画を観に来た人は、甘いデザートを食べに来たら、和風醤油味のせんべいを出されたように驚くだろう。現代の話だが、神話的な雰囲気さえ漂うエンディングだった。ということで、かわいらしい映画ではありません! ヒツジはかわいいけれど。
★★★☆

●関連情報

・第68回カンヌ国際映画祭 ある視点部門グランプリ
・日本ではR15指定公開だが、残酷なシーンやエロいシーンはない。ではどうして?というと、このおじいさんの全裸シーンがダメなようだ。お風呂入っていてあわてて出てきたりとか…。って誰が欲情するんだよっ!
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by mahaera | 2015-12-19 17:22 | 映画のはなし | Comments(0)

最近の映画鑑賞はこんな感じです。12月のFBから抜粋してみました

●12月11日

 今日は息子が試験最終日で学校が早く終るので、映画にということで、「007スペクター」に行く。僕は2回目だが、途中で眠くなった。やっぱり長過ぎて、間延びしている。今年のスパイものなら、『ミッションインポッシブル/ローグネイション』のほうが、断然良かったかもと思ってしまった。「ハリー・ポッターと秘密の部屋」が長く感じたことを思い出した。途中でもうどこに向かっているか、忘れるぐらいのテンポはよくない。とくにアクション映画なら。

 年末でアメリカの各映画賞がノミネート/発表になっているが、すべてに入っているのが『マッドマックス/怒りのデスロード』。これは当たり前でしょう。劇場で観ていない人は、人生の後悔ぐらいに思ってもいいかも(笑) 今週末からユナイテッドとしまえんで4DXリバイバルするので、ぜひ見に行きたい。何なら毎日見に行ってもいい。ただ、走るアクションだけの映画だが、それがいい。週末はもう売り切れそうだ。あと、どの映画賞でも外国語映画賞にノミネート/受賞されている「サウルの息子」。これは今年見た映画の中のベスト1級のすごい作品。もう一日中、頭から離れなかったし、今でも鮮明に思い出す。1月公開だが、もう二度と見たくないぐらい、辛い映画。

 家に見てない映画のDVDたくさんあるんだが、仕事で疲れている時、手に取ってしまうのはバカ映画。「15分だけ気分転換に」と思いつつ、気がつくと30分はたってしまう。昨日もそうやって、いったい何度目の「ズーランダー」を見てしまったことか。Mr.ダマーも復活したし、来年はとうとうズーランダーも復活する。って、誰も見てないか?


●12月15日

 先週から立て続けに試写へ。それでも来月公開のばかりで、せわしない。公開始ってからレビュー書いても、仕事にならないしね。昨日はジョニー・デップがハゲカツラを被って、冷酷なギャングのボスを演じる「ブラック・スキャンダル」、今日はギレルモ・デル・トロのゴシックホラー「クリムゾン・ピーク」、先週はロン・ハワード監督の「白鯨との闘い」、ロッキー新作「クリード」と、好きそうなものばかりだからいいんだけれど。


●12月16日

さて、旅行人のWEBで映画紹介しているが、今回は今週末公開だけどそこでは紹介していない映画を。監督のピーター・ボクダノヴィッチといえば『ペーパームーン』と言われるように、もう40年近く面白い映画を撮っていない。つまらなくはないが、そこそこの映画をポツポツと発表している印象だが、新作『マイ・ファニー・レディ』は楽しめた。ブロードウエイを舞台にしたコメディで、演出家、大物女優と新人女優、それを取り巻く人々が、巻き起こす恋愛騒動だ。ウディ・アレン好きな人にはまちがいなく、おすすめ。そんなに都合良くハチ合わせしないでしょ、といった突っ込みも、軽快なテンポでどんどん進むから、気にならない。

 同じ舞台ものでも、『バードマン』に比べると、いったいいつの時代かというほどノホホンとしているが、不快にならない映画も悪くない。コメディの世界では、基本的には悪人でさえも笑える存在なのだ。優柔不断で女好きの演出家にはオーウェン・ウィルソン。下ネタでも品を出し、主役をはれるのはいまはこの人しかいない。あとはごひいきのリス・エヴァンス(ノッティング・ヒルの裸男も老けたが)、気になる女優イモージェン・プーツ、キレ演技が定番になってきたジェニファー・アストンなど、役者たちのアンサンブルを見ているだけでも楽しい。まあ、ヒットはしないだろうが、こうした小品が公開されるだけでもうれしい。


●12月17日

人間どうせ死ぬなら、怒りのデスロードで散りたい。

 本日、TOHOシネマズ川崎で、これで3度目の「マッドマックス/怒りのデスロード」。それも4DXで。これで、この映画2D、3D、4DXで見たことになる。今日はウィズ学校が早く終った息子。イスはハッキリいって、よく揺れる。まあ、映画自体がライドムービーなので、よけいに遊園地のアトラクションのようだ。爆発するとライトがチカチカしたり、土煙があがるところでは前方から煙が出たり、美女が悪人にツバを吐きかけると、こっちの顔に水煙がかかったり(笑) 足元でも何やらゴニョゴニョ。昔、ディズニーランドで行った、体感型シアターを思い出した。今回はもうストーリーは暗記しているので、気楽にライドを楽しんだよ。まあ、この映画は誰もが言うけれど、主役はフュリオサ。トム・ハーディは3度目でも華がない。前半、それにマスク付けられているし。明日はいよいよ、「フォースの覚醒」だ(笑)
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by mahaera | 2015-12-18 10:23 | 映画のはなし | Comments(0)

「ローマ人の物語XV ローマ世界の終焉」 ついに最終巻。ダメな人生の末路を見ているような国家の終焉

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●12月10日

ついにローマ帝国が滅亡した。

といっても読書の中だが、塩野七生の「ローマ人の物語」最終巻となる15巻「ローマ世界の終焉」を読了。この巻き375年のテオドシウス帝の死による東西ローマ2分割から始るが、もうローマ史ファンは読んでいて実に情けない気持ちになってくる。ダメな皇帝、ダメな国民、もう滅ぶべくして滅ぶしかない。落ち目のときは、どう手を尽くしてもダメなのかという気になってくる。この時代は世界史で習う「ゲルマン民族の大移動」期で、ゴート族をはじめとするゲルマン諸民族とアジア系フン族が次から次へと、略奪しに西ローマ帝国に侵入してくる。

支配して税を取る、という人たちでないので、とりあえず略奪だ。今でもそうだが、田畑は手入れしなければ数年でダメになる。この時代、インフラが破壊され、田畑が無人になれば、人口も支えられなくなるし、商業も成り立たなくなる。軍隊は、徴兵ではなく蛮族の傭兵が主なので、誰も国を守ろうとはしない。国土を敵味方の兵士たちが行ったり来たりするだけで、一般市民が数万人死ぬ。両方の兵士に略奪されるからだ。全盛期のローマなら、無能な皇帝はすぐに暗殺されたが、この時代はキリスト教時代なので、無能でも神様が決めた皇帝なので殺されない。ということで、この本を読む限りでは、ローマ人たちはなんら策を立てずに、滅亡していったことになる。

ちなみにローマ帝国の滅亡は、教科書的には467年に最後の西ローマ皇帝ロムルス・アウグストゥスが、配下のゲルマン人将軍オドアケルに退位させられたことをもって、となる。最後のローマ皇帝の名が、ローマの創立者ロムルスと、帝政ローマの創始者アウグストゥスの両方の名を持っているのは、たちの悪い冗談のようだ。もっとも塩野七生はこの年ではなく、元老院が廃止された546年としているので、この本はその後の565年の東ローマ皇帝ユスティニアヌスの死まで描いているが。最後の西ローマの宮廷はラヴェンナにあったため、ラヴェンナにはその時代の史跡が数多く残っている。もう一度行きたい所だ。
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by mahaera | 2015-12-17 07:34 | 読書の部屋 | Comments(0)

息子に世界史を教えていて思うこと 4 宗教改革

●12月6日

子どもに教える世界史。今日は「宗教改革」。

 こう聞くとすぐに「スペインの宗教裁判」を思い出す人はモンティ・パイソンファンだが、子どもはルターの主張はわかっても、カルヴァンの「予定説」は理解できない。「だっていくら努力しても決まっているなら、がんばらないじゃない」。まあ、ふつうそうだ。しかし当時のカルヴァンを受け入れた人たちはそうはとらず、「私がこれだけ勤勉に仕事をしているのは、私が選ばれた人間だからだ」と思ったようだ。しかしカソリックとか正教会は、この「予定説」は当然ながら受け入れていないのだけれど。試験的には、ルターよりもカルヴァンのほうが出る。あとは宗教改革で起きたいくつかの戦争や和議や公会議。
 教科書だと細切れだが、このころはルネサンスや大航海時代や、オスマン帝国の躍進やらが、平行して進んでいた。ローマ法王のユリウス2世がミケランジェロにシスティナ礼拝堂の天井画を描かせていたころ、東方ではオスマン帝国ではセリム1世が即位し、イランではサファビー朝が起こり、オスマン朝との戦いが迫っていた。インドのグジャラート王国のディウ沖海戦では、ポルトガルがマムルーク朝海軍を撃破。その2年後にはマラッカ王国も征服している。ヨーロッパではエラスムスが「愚神礼讃」を書き、あと5年でルターが「九十五か条の論題」を出して宗教改革が始る。ダ=ビンチはモナリザを描き、イギリスでは生涯に6度も結婚したヘンリ8世が即位。新大陸は18年前に発見されたばかりなのに、早くも西インド諸島にアフリカから黒人奴隷がスペインによって運ばれている。きっとそんな世情に疎かったミケランジェロは、せっせと天井画を描いていた4年間だった。ちなみにミケランジェロは88歳まで長生きし、後輩のラファエロが早く死んだのでその仕事(サン・ピエトロ聖堂の建築)まで引き継いだ。その間に30年続いたイタリア戦争が始まって終わっていた。
 写真は60歳の頃のミケランジェロさんです。
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by mahaera | 2015-12-16 08:56 | 日常のはなし | Comments(0)

2015年12月7日、来日したキングクリムゾンを見に行く

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12月7日

キング・クリムゾンを見にオーチャートホールへ。
実は70年代クリムゾン、数枚しか聴いたことがないクリムゾン・ビギナーの私。
まあ、「21世紀の」だけやってくれればうれしいなあと友人に誘われるままに行った。

ステージ2列、後ろの壇上に左からメル・コリンズ、トニー・レヴィン、
ギターと歌の人、フィリップ先生は着雪状態、前がドラム3人という、
ロックバンドでは観たことがない布陣。
ツインドラムは見たことあるけれど、トリプルドラムかよ!

曲は僕にとってはベストアルバムといっていい感じ。
何より、1枚目から「エピタフ」「クリムゾン・キングの宮殿」
「21世紀のスキツォイドマン」と長い曲3曲やってくれたのがうれしい。
あと、「太陽と戦慄part 1とpart2」に「イージーマネー」、
「トーキングドラム」など「太陽と戦慄」のアルバムからも多く、
こちらも知っていたしね。演奏はロックというより、
映画音楽のような感じで楽しめた。
いや、クリムゾン初体験でした。

2015.12.07 King Crimson@Bunkamuraオーチャードホール Setlist

01. Larks Tongues in Aspic part 1
02. Pictures of a City
03. Epitaph
04. Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind)
05. Meltdown
06. Level Five
07. Peace - An End
08. Hell Hounds of Krim
09. The ConstruKction of Light
10. The Letters
11. Banshee Legs Bell Hassle
12. Easy Money
13. The Talking Drum
14. Larks Tongues in Aspic part2
15. Starless
---encore---
16. Devil Dogs of Tessellation Row
17. The Court of the Crimson King
18. 21st Century Schizoid Man
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by mahaera | 2015-12-15 19:35 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

「ローマ人の物語IX キリストの勝利」古代史ファンにとっては、まさに“暗黒時代”のローマ

●11月29日 FBより転載

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「ローマ人の物語」もいよいよ終わりに近づいてきた。
 今回知ったのは、ローマ帝国をコンスタティノープルに遷都したコンスタンティヌスもその息子のコンスタンティウスも根っからのキリスト教徒ではなく、キリスト教を振興したものの教会の力が強くなることをおそれて、洗礼は死の直前だったこと。あとは、当時でも異端とされたアリウス派だったこと。コンスタンティヌス大帝は、公会議も開いて教義の統一もはかっているが、皇帝が異端なら、それもそんなに厳密にならない。その後を継いだ“背教者”ユリアヌス帝が、キリスト教会にストップをかけるが、彼は数年で戦死(もしくは謀殺)してしまう。この後、テオドシウス帝の時代になると、彼は皇帝になる前に洗礼を受けていたため、キリスト教を国教化する。
 これはISとは言わないが、キリスト教以外の宗教を禁じたお触れで、ローマ建国以来の神々もすべて廃棄。地中海世界で大量の神殿破壊が進む。もっとも彼が暴君というわけではなく、元老院や民衆の反対もなく、賛成を得たのだから、国民の支持を得た結果のようだ。また、それによりキリスト教以外の学問が実質上禁止になり、アレクサンドリアの図書館などの学問施設も閉鎖や破壊にあうようになる。この頃を描いた珍しい史劇「アレクサンドリア」では、図書館を破壊するキリスト教徒をまるでイスラム教原理主義者のように描いていた。他者を認めず、全体の一部になることは、人間としてとても気持ちいいのだろう。日本でも同調圧力を求めたり、自分が規則の代表者のようにふるまう人がいる。しかし「寛容さ」を捨てた時に、「豊かな文化」は滅ぶ。

もう一冊読み終わった「ティムール帝国」は、「子どもに教える世界史」の予習本。しかしかなり細かすぎて、難しかったゾ。
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by mahaera | 2015-12-12 22:47 | 読書の部屋 | Comments(0)