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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『王様のためのホログラム』 中年の危機を迎えた男が、新しい人生の行き先を見い出す

王様のためのホログラム
A Hologram for the King
2016年/アメリカ

監督:トム・ティクヴァ(『クラウド・アトラス』)
出演:トム・ハンクス(『ハドソン川の奇跡』)、アレクサンダー・ブラック、サリタ・チョウドリー(『カーマ・スートラ/愛の教科書』)、ベン・ウィショー(『007スペクター』)
配給:アンプラグド
公開:2月10日よりTOHOシネマズシャンテ、ほかにて
公式HP :hologram-movie.jp


トーキングヘッズがまた最近気になっている。
流行った1980年代は背伸びして聴いた音楽だが、
いま聴き直してみるとリズムの組み立て方が実にカッコよく、
ボーカルのデビッド・バーンの奇抜さに隠れて、
いままでそんなに気づいていなかったのかな。

なんでこんなことを書くかというと、
この『王様たちのホログラム』、いきなりその
トーキングヘッズの代表曲『ワンス・イン・ア・ライフタイム』
のPV風に始まるからだ。なので、
「もしあなたが、家や妻や財産をすべて失ったら?」という
歌詞をトム・ハンクス扮する主人公が歌う
冒頭のPV風画面で、いきなり掴まれた。
ハンクスが目をさますと、そこは飛行機の中。
彼の周囲は巡礼者たちの団体で、コーランを暗誦している。
ここはサウジアラビアに向かう飛行機の中だったのだ。

紆余曲折がありながらも、人生の中盤までは順調に行き、会社の重役にまでなった主人公アラン。
しかし中国の企業に技術提供をしたことで結局はマーケットを奪われ、家族も財産も失い、今は娘を大学に行かすために、雇われた会社の営業でサウジアラビアのジェッダに向かっている。
彼が売り込むのは、3Dホログラムのテレビ会議システムだ。
しかし砂漠の中の“新経済都市”はまだ建設中で、
与えられたオフィスもテント。
プレゼン相手の国王もいつやってくるのかわからない。
そんな中で四苦八苦するうちに、
アランは新しい目標を見つけていく。

見終わってみると、王様もホログラムも出てくるが、
仕事を成功させることがこの映画のテーマではないことに気づく。
人はいつだって迷うことがある
幸せというか平穏な時は、
これがずっとこのまま続いて終わるんだと漠然と思っている。
不満もあり退屈かもしれないが、
それを失うことなんか考えてない。
しかし、転機は自分の意思とは関係なく訪れる
主人公アランは自分の意思でサウジアラビアにきたわけではない。
しかし自分のことを、誰一人として知らないこの異国の地に来た時、おそらくいままで何十年も、周りに流されて生きてきた自分を振り返ってみたにちがいない。
いままで失敗だと思っていたことも、
次への成功のためのステップにすぎなかったことかもしれないし、
そもそも成功も失敗もそれほど大差ないのかと。

旅シネ的には、ふだん映画ではなかなか見ることができない、
サウジアラビアの風景が見られて興味深い。

いや、外国人スタッフはサウジロケができずに、
モロッコで撮影したようだが。途中で車が道を間違えて、
非ムスリム立ち入り禁止区域のメッカ市内に入ってしまう
ところでハラハラしてしまうのは、こちらが旅人だからか。

あと、トム・ハンクスの担当医となる女医に
『カーマ・スートラ/愛の教科書』のサリタ・チョウドリーが
扮しているのだが、久しぶりだなあ〜、おばさんになっちゃったなあと感慨深いものがあった。

名作というほどではないが、ところどころ自分にシンクロしたので、
何度か見たくなる作品かもしれない。
旅人としては、目が覚めて自分が今どこにいるんだっけ的な、
感じがリアル(笑)
★★★
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by mahaera | 2017-02-19 20:54 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』 アメリカの裏歴史を描いた歴史大作だが…

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男
Free State of Jones
2016年/アメリカ

監督:ゲイリー・ロス
出演:マシュー・マコノヒー、ググ・ンバータ=ロー、マハーシャラ・アリ
配給:キノフィルムズ、木下グループ
公開:2017年2月4日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中


たぶん多くの人は、この映画がいま公開されているか
知らないのではないかと思う。
話題性のある映画ではないアメリカの歴史映画だし、
出来もまあまあで、批評家が積極的に取り上げるわけでもない。
また、主演が日本では一般的にはそれほど有名でない
マシュー・マコノヒーだ。
ただし映画としてはいまひとつだが、歴史好きの僕には
「ああ、こんな人もいたんだ」と勉強になった作品だ。

物語は南北戦争中の1862年に始まる。日本で言えば幕末。
南軍の衛生兵として働くニュートン・ナイトは、
若い甥が目の前で倒れるのを見て、戦争に嫌気がさし、軍を脱走。
故郷のジョーンズ郡に戻るが、
そこでは農民たちが南軍の強制徴収に苦しめられていた。
刃向かったニュートンは、スワンプの奥にある
逃亡奴隷たちの隠れ家へ避難。
やがてそこには脱走兵たちも集まりだした。
ニュートンらは彼らを集めて「自由反乱軍」を名乗り、
南軍と戦い始める。

南北戦争の中のある地方で起きた事件。
それは、アメリカの歴史の中でもローカルな
小さなできごとだったのだろう。
しかしそこにスポットを当てたこの作品は、
北軍側でも南軍側でもない別の視点から描いているのが新鮮だ。
南北戦争ではとくに南軍側が自分たちを美化する傾向にあるが、
それは『風と共に去りぬ』の影響が強いのかもしれない。

というのも「南軍の誇り」を描くと、
スポットがあたるのは農園主など金持ち階級ばかり。
この映画ではそれを主人公に「金持ちの戦争」と
バッサリ切り捨てさせる。
戦争で死ぬのは、奴隷も持てない貧しい白人の小作農たち。
金持ちの子弟は徴兵免除
があるが、貧乏人は徴兵され、
わずかな農作物も奪われる。
ニュートンは、そんな自分たちは金持ちが使う奴隷と同じだと訴え、白人と黒人奴隷の共闘を作って反乱を起こす。

今やアメリカを代表する演技派俳優に成長したマシュー・マコノヒー。その彼が出ずっぱりで熱演する歴史大作だ。
ただ、この作品の狙いは「そんな英雄的な人がいた」ということではなく、今も白人と黒人の分断は続き、それを解決しなければならないと思わせることだ。
というのも、きれいにまとめるなら南北戦争の終了と共に
映画は終わるべきだが、映画はその後、ニュートンの願いが
かなわず、南部では戦前の勢力が回復し、
KKKが台頭するまでを描いている。
また、ニュートンの物語と平行して、ニュートンの子孫が1/8黒人の血が混じっているということで白人としてみなされず、白人との結婚が禁じられるという100年後のミシシッピの姿も描かれる。
つまり、ニュートンが戦わねばならない相手や制度は、
その後もずっと存続していたのだ。

そうしたアメリカの“裏歴史”を描いた作品が本作なのだ。

ただ、映画として面白いかというとそれはまた別で、マコノヒーの熱演にもかかわらず、作品としは凡庸な出来になってしまった。
ちょっと美談としてまとめようとしすぎてしまったからか、
盛り込みすぎてポイントがよくわからなくなってしまったからか、
日本の大河ドラマのようにダラダラと長く続く感じ。
製作・監督・脚本をつとめるゲイリー・ロスは、『ビッグ』の脚本家として注目を浴び、『シー・ビスケット』などでは監督もしていて手堅いのだが、どうも演出はシャープさに欠ける。
映画というよりは、大作TVドラマに近い印象を受けてしまったのが、正直なところだ。
どこで話を集約して最高潮に持っていくかの計算ミスだろう。
★★
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by mahaera | 2017-02-12 13:26 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『スノーデン』 人々は安全のためなら、簡単に自由を投げ出す

スノーデン

2016年/アメリカ、ドイツ、フランス

監督:オリバー・ストーン
出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー
配給:ショウゲート
公開:2017年1月28日より全国で公開中


数日前、映画館のレイトショーで本作を見ていて、
現実の世界とのあまりのシンクロさに怖いものさえ感じた。
ニュースでは連日トランプが出した大統領令による、7か国の国籍を持っている人の入国拒否問題をとりあげていた。
そして劇場のスクリーンでは、
トランプが「スノーデンは死刑だ!」と叫んでいた。

オリバー・ストーンの映画というと色眼鏡で見ている人も多いが、
インタビューでの発言に比べると近年の彼の映画は、
それほど極端によっているわけではない。
政治思想を訴えるよりも、むしろ
「どうしようもない大きな力に翻弄されていく人間」
を描いている。
映画「スノーデン」は、
「国のために尽くして自分の存在意義を人に認めて欲しい」と至極まっとうなことを思っていた青年が、
国家のやり方に疑問を持ち、それを世間に公表する話だ。

「スノーデン事件」はご存知だと思うし、
前にもドキュメンタリーの「シチズンフォー スノーデンの真実」を紹介したことがあるので、
それを読んでいただいたことがあるかもしれない。
これは2013年6月にアメリカのNSA(国家安全情報局)の職員だったエドワード・スノーデンが、香港で複数のメディアに、アメリカが多くの個人情報の収集に関わっていることを告発した事件だ。

スノーデンの父は沿岸警備隊に勤めていた。
映画ではそうした環境から愛国心が強く、
9.11のテロに衝撃を受けて軍隊に志願したと描いている。
スノーデンはマッチョではなく、
むしろナード(オタク)だった。
高校は卒業せずに途中で退校し、
卒業資格を取って大学に入るがそれも卒業できなかった。
趣味はアニメやコンピューターゲームと日本語の学習。
しかしコンピュータには強く、部隊で両足骨折をして除隊すると、能力を買われてNSAにスカウトされる。
1年後、今度はCIAに採用されてコンピュータセキュリティの担当になる。
学歴はないスノーデンだったが、実力はあったのだろう。

映画では採用されたスノーデンが、
CIAの養成学校で次々と課題をクリアする様子を見せていく。
また、ネットで知りあった女性リンゼイとの交際が始まる。
バリバリのリベラルのリンゼイとは政治に関しては
正反対のスノーデンだが、ふたりはなぜか馬が合い、
付き合いだしていく。
CIAの仕事でジュネーブに転勤になったスノーデンは、
そこで初めて目的のためには一般人を利用するCIAのやり方に疑問を持ち、辞職。
しかしCIAと契約を結んでいたDELLから出向という形で、
横田基地のNSAの仕事に従事。
表向きは中国とのサイバー戦対策だが、
そのかたわら日本のエネルギー関連に
マルウェアを仕込んでいたと映画では明かされている。

驚いたのは、アメリカは同盟国である
日本を信頼していないということ。
アメリカは日本に一般人の個人情報の提供を依頼するが断られた。
そこで、もし日本が将来アメリカの同盟国を離れて、
敵国側に回った場合のことを考えて、
電気や通信などをすべてシャットダウンして、
日本を麻痺させることができるマルウェアを仕込んだとスノーデンは語っている。
これは人質と同じで、極端な話、日本がアメリカの言うことを聞かなかったら、外部操作で原発止めたり、
ネットを遮断したりできるということ。
そしてそれは日本だけではなく、
他の同盟国にも同じことをしているというのだ。
(映画では描写はないが、日本大使館の盗聴も行っていたことが後に発覚した)

さて、いろいろあって、スノーデンは自分を取り立ててくれた
CIA上司に選択を迫られる。
会議室のテレビ会話画面に映る上司(リス・エヴァンス好演)が
大きすぎて「1984」の世界だ。
一般人の情報を自由にコントロールできる国家。
しかしそもそも、そこまでする必要があるのだろうかとスノーデンは上司に問う。
そこで上司は言う。
「人々は自由よりも安全を求めている。そして安全のためなら進んで自由を投げ出す」と。

実際、国家はすべての電話は盗聴できるし、
個人のパスワードなども知ることができる。
Facebookやグーグルの検索記録も。
マイクロソフトもYahooもスカイプも
全てNSAに協力している。
でも、私たちはこう思うだろう。
「国家が知りたいのは犯罪者の情報だから構わない。
安全のためだ。それに私は後ろめたいことも秘密もないし、第一に国家は私のことを知ろうとも思わないだろう」
と。
こうして私たちは簡単に自分の自由を手放す。
映画『キャプテン・アメリカ/ウインターソルジャー』のキャプテンなら、こう言うだろう。
「しかし国家に脅威を及ぼすもの。それは誰が決めるんだ」
現実に犯罪者の捜査のための盗聴はある。
しかしそれには裁判所の許可が必要だ。
それでよくはないか?
もし日本で、裁判所の許可なしに警察が勝手に盗聴やデータを盗むことができたら?
盗むことができるなら改ざんもできる。
日本人なら、冤罪が多発する日本の警察を
そこまで信用していないだろう。
つまり、アメリカでもいくらでも“国家の敵”を
作り上げることだってできる。

映画「スノーデン」では推測だが、
国家が膨大な数の“国家の敵”を作り上げるのは、
裏に軍需産業の影が見えるとしている。
敵がいれば、予算を投下しやすいのだ。
CIAで低予算でできる情報収集システムを提案した男が左遷され、
それと同じことができるが10倍の予算がかかる大企業のシステムが導入されるという話が映画で出てくる。
東京オリンピックの予算と同じだ。

映画そのものは、スノーデンの成長物語とも青春映画としても見られると思う。
というわけで、今だからこそ、見るべき映画だろう
反論もあるだろうけどね。それを含めて。
★★★☆
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by mahaera | 2017-02-09 19:24 | 映画のはなし | Comments(0)

2017年 2月6日 ジャーニー at 武道館 行ってきました! よかった!

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2月6日 ジャーニー at 武道館

スティーブ・ペリー在籍の全盛期、アルバムはかなり聴いたけれど、とうとう行かなかったジャーニー。
当時、曲は好きだったが、バンドとしてはそれほど思い入れはなかったのかもしれない。
ただ、アルバム「エスケイプ」は、同じ頃に流行っていた「TOTO IV」よりも、断然好きだった。
とくにA面の流れ。
「ドント・ストップ・ビリービン」は、当時も名曲だと思っていたが、
2000年代に入って、誰もが知る名曲になるとは思わなかった。
Gleeの影響は大だが、変すぎてもう一度見たいお笑いロックミュージカル「ロック・オブ・エイジス」ても、
この曲がキモだった。

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さて、そんなジャーニー。初めてのライブ。
席は1回席南東2列目と、立たないですむベストポジション(笑)
歳ですから。

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1曲目、「セパレイト・ウェイズ」でいきなり興奮マックス。
この曲、曲としてはダサいところギリギリなんだけれど、ライブだと絶対にアガる!

とにかく、ヒット曲のオンパレード。
4曲目の「ストーン・イン・ラブ」に続いて、5曲目にはやくも「お気に召すまま」が!
この曲、大好きというか、これでジャーニーを知った。

盛り上がったところで、ここでやっとバラード
6曲目「ライツ」では、武道館がライトで埋め尽くされる。

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続いて7曲目「オープン・アームス」。すばらしい。

13曲目の「ドント・ストップ・ビリービン」まで、1時間半。
怒涛のように次から次へと、休む間もない演奏構成。

しかしアンコールはややクールダウン。
「La Raza del Sol」はシングルのB面だったらしく、アルバム未収録でほとんど誰も知らない。
そして後半は、サンタナで知られる「ジプシークイーン」のような、ワンコード一発のソロ回しが長く続き、
観客置いてけぼり。
スティーブ・スミスのドラムが、ジャズ出身らしい本領はこうしたジャムセッションで発揮していたが。

そして最後はゆったりとした「Lovin' Tochin' Squeezin'」
初期のヒット曲だが、これもあまり知らない人がいるのでは?

という感じで、大盛り上がりの本編。
ちょっと?なアンコールで終わったジャーニーだが、大満足。
数十年ぶりの同窓会に来たように、顔見知りの安心感だった。
これはこれで、失望しないというのもすごいんだけれどね。
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by mahaera | 2017-02-08 12:06 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

子供に教えている世界史・番外編  「三権分立の再学習」

ここ数日、トランプ政権が出した、特定の国の人間の
入国差し止めの大統領令に対し、連邦裁判所が違憲とした
判決がニュースになっているが、これは日本に住む私たちが
日ごろ気にしていない「三権分立」が果たされている
事例として、子供にはいい勉強になると思う。


「三権分立」は私たちが小学校高学年で習う、
社会の基本中の基本だが、大人でもあまり理解していない
人が多いことは、ヤフコメをみてもよくわかる。

「大統領令にさからうなんて三権分立ができていない」と書き込む人が少ないからだ。

そもそも人の歴史において「三権分立」を憲法に最初に
定めたのはアメリカ合衆国であり、紆余曲折があっても、
それは未だに守られている。
おさらいすると、三権とは、司法、行政、立法であり、
司法は裁判所、行政は内閣(アメリカではホワイトハウス)、
立法は議会だ。

アメリカは独立時、これらに別々の力を与えることで、
中央政府の力を弱くした。
つまり王や独裁者が出現する芽を積むためだ。

アメリカでトランプ政権が生まれたとき、閣僚の人事で
議員がいないことに疑問を持った人はいないだろうか。

アメリカはこの三権が本当に分立しているので、
閣僚には議員が入れない。
大統領も議員でないから、議会で投票できない。
ここが日本と異なるところで、日本の閣僚はほぼ議員だから、
内閣で決めた政策に投票もできる。

これは日本の議会政治がイギリスを模範としたためで、
イギリスは選挙で第1党となった党が内閣を作るという、
責任内閣制をとっている。
したがって大統領はおらずトップは首相で、
国民は首相を直接選ぶことはできない。
日本も同じだ。

アメリカはそうではないから、第1党ではない政党の
大統領が生まれることがある。
そうなると大統領が出した法令を、議会が承認しないことがある
古くは大統領のウィルソンが提唱した国際連盟に、
アメリカが加入しなかったのも議会で否決されたからだ。

次に、大統領が出した政令を、
裁判所が「違憲」とする場合がある

これも世界史では、大恐慌の際にローズベルトの出した法案を裁判所が違憲としたケースが出てくる。
たとえば「全国産業復興法」は、作り過ぎを正すため企業に生産調整を依頼したり、失業者が多いのでひとりあたりの労働時間を減らしてその分雇用を増やすなどの政策だった。
これは国民の多数が賛成したが、裁判所は違憲判決を出した。

このように、裁判所は単に時流に合わせて
憲法を拡大解釈はしない。
頭が堅いところはあるのだが、時流に合わせすぎて憲法をコロコロと拡大解釈するのも、政府のいいなりになってしまう。
実際、アメリカでは日本以上に裁判所の力が強い。
政府が裁判所に圧力をかけると、司法権の侵害として逆効果になることもあるのだ。
それはまた、三権分立がうまくなされているということだ。

正直、民主主義や議会制度は面倒臭いところがある
僕のFB友達でも日本のトランプ支持者たちもおり、
彼らはもっと世の中を単純にして、
一刀両断的な政治を求めている。
次から次へと大統領令を出して、政策を実行しようとする行動力を評価しているのだ。
しかし、民主主義や議会制度は面倒くさいからこそ、
国民の感情にすぐに振り回されないようになっている。
極端に走る前にブレーキがかかる。
これはこれで、ファシズムや専制政治を止められなかった先人の知恵が盛り込まれているのだ。

あとは映画のように、世の中にはわかりやすい悪などいない
アメリカ人の半分は誰が悪者かわかりやすくしてくれるために
トランプを選んだのだろうが、そんなに世の中は簡単じゃない
そして多数決は民主主義のキモではない
もう一度、三権分立を歴史から再学習しよう。
なんのために分立しているの?と。
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by mahaera | 2017-02-07 01:44 | 世界史 | Comments(0)

最新映画レビュー『破門 ふたりのヤクビョーガミ』 すごい作品じゃないが、気楽に見れるコメディ

破門 ふたりのヤクビョーガミ

2017年/日本

監督:小林聖太郎
出演:佐々木蔵之介、横山裕、橋爪功、國村隼、北川景子
配給:松竹
公開:2017年1月28日より全国で公開中


僕は解説を読むまで知らなかったが、
原作は大阪を舞台にした「大阪府警シリーズ」や「疫病神シリーズ」の
小説家・黒川博行の直木賞受賞作『破門』
調べてみると、小説の疫病神シリーズは
ヤクザの桑原と建設コンサルタント(実はヤクザとカタギの調整役)の二宮のコンビによるドタバタ劇で、1997年から始まり、この最新作の『破門』まで5作発表されている。
そして、さらに調べるとこの原作の『破門』は、
BSで北村一輝と濱田岳のコンビでドラマ化されているという。
僕の知らない世界が、そこにあった(笑) 
こんどそっちも見てみよう。

さてこの映画化だが、たぶん小説がそうなのだろうが、
ふたりのはみ出し者が全編関西弁で繰り広げる
ボケとツッコミが、最大の見せ場になっている。
ストーリーはそれを引き立たせるためにあり、
コメディなのであまりリアル志向にしてもしょうがない。
とりあえず事件があり、ふたりはそれに巻き込まれ、
そして解決するというバディムービーだ。
「表面では反発しあっていても、実は心の奥底ではお互いを認めて一目置いている」というやつですね。

“事件”は“経営コンサルタント”の二宮(横山裕)に、
映画製作の出資の話が舞い込むところから始まる。
そこに腐れ縁で、二蝶会のヤクザの桑原(佐々木蔵之介)が
絡んでくる。
ふたりは映画プロデューサーの小清水(橋爪功)のもとに行き、
桑原、そして二宮も恩がある若頭の嶋田(國村隼)も映画に出資。
しかし小清水は失踪し、二宮は桑原と消えた小清水の行方を探すことになる‥。

歌手としてのジャニーズ系はまったく興味がないが、
例外もあるが映画に出演するジャニーズ系の俳優は、
邦画独特のわざとらしい誇張しすぎの演技とは
ちょっと距離があって、自然に見れる人も多い。
この映画の主演のひとり、関ジャニ∞の横山裕も
本作で初めて知ったが(笑)、自然な“受け”の演技が、
他の俳優たちの“やり過ぎ”感をうまく中和していて、なかなかいい。
まあ、ひと騒動あって、落ち着く所に落ち着くというコメディで
特に深みはないが、ダメなところもとくにない。
昔はこんな日本映画たくさんあったなー、と感じた1本。
映画評になってないけれど、気楽に見れるほど面白くない映画もけっこうあるんだから(笑)。
★★★
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by mahaera | 2017-02-04 21:16 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ホームレス ニューヨークと寝た男』 明るいだけのドキュメンタリーではありません

ホームレス ニューヨークと寝た男
Homme Less
2014年/オーストリア、アメリカ

監督:トーマス・ヴィルテンゾーン
出演:マーク・レイ
配給:ミモザフィルムズ
公開:2017年1月28日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中


夢を追い続ける
ってどういうことだろう? 
子供のころに読んだ「アリとキリギリス」を思い出した。
子供のころは、「遊んでばかりいると惨めになるよ。
まじめに働けば幸せになるよ」
という話だと思っていた。
大人になってみれば、童話だけあっていろいろに解釈ができる。
芸術家のように自分の好きなことをしている人間は後で後悔する。
個をなくして社会の歯車になれば、幸せな老後が待っているという、全体主義のプロパガンダにも読める。
ナチスとかスターリンとか。

最初に予告編をみれば、このドキュメンタリーの
アウトラインはわかるだろう。
カメラが追うマークは、デザイナーズスーツを着こなす
ロマンスグレーのナイスミドル(53歳)。
元モデルだけあってカッコいい。
職業はフリーランスのファッション写真家。
街で見かけたモデルの写真を撮り、雑誌に売り込んでいる。
役者としても登録していて、たまに映画のチョイ役に出演。
しかし彼に家はない。
数年前からビルの屋上で、寝袋にくるまって生活しているのだ。
荷物はスポーツジムのロッカー4つ分。
ジムでシャワーを浴び、洗濯。
夜はカフェをハシゴし、パソコン仕事だ。

見た目はリッチそうで、人生の勝ち組にしか見えないマーク。
誰も彼がホームレスだとは思わないだろう。
私たちがイメージする“ホームレス”と違い、彼の1日は忙しい。
朝は公園のトイレで、パリッとスーツに着替えて身支度し、
街中やファッションショー、ビーチなどに撮影に行く。
夜は深夜まで、カフェで写真のチェックに余念がない。
ビルの屋上に戻って寝るのは、夜の2時だ。
その日課は忙しいフリーランサーと大して変わらない。
家がないことを除けば。

映画の前半は、そんな彼の日々をカメラが追う。
ちなみに監督・撮影はマークの過去のモデル友達だ。
予告編にあるように、忙しそうに行動しているマークを見て、
「これは“持たない”を選択した、ちょっとカッコイイ生き方?」
と納得しかけた頃に、マークの本音が出てくる。
彼だって、こんな生活がいいなんて思ってはいないのだ。
彼だって部屋があり、彼女がいる生活を望んでいる。
しかし、現在のファッションフォトグラファーだけでは、
とうていニューヨークのアパルトマンに部屋を借りるほど
の収入があるわけではない。
かといって、自分が親しんだファッション業界から
離れる決意もつかない。

僕は、これは
「ニューヨークという金のかかる美女に惚れてしまい、
その生活を続けるために無理している男」

の話のようにも見えてしまった。
少数の者にしか振り向いてくれない、高みにいる女。
それがニューヨークだ。
そして、先の「アリとキリギリス」の話も。
僕もマークとほぼ同じ歳だ。
だから人生も半分を過ぎると、果たせなかった“自分の夢”に対する折り合いをつけなくてはならないことはよくわかっている。
夏は終わり、秋もそろそろ終盤。
この先には人生の冬が待っている。
アリさんのように蓄えがあるわけではない。
キリギリスを選んだ人生を後悔してるわけではない。
もう一度人生があっても、アリではなくキリギリスを選ぶだろう
たぶんキリギリスとして生きている人は、みなそうじゃないか。
ただし、成功したキリギリスになれなかったことが残念だけで。

マークはまだ夢を追っている。
そして「どうしたらいい」という彼の迷いは、
キリギリスの道を選んだ人たちの悩みでもあるのだ。
だから、このドキュメンタリーを見ても、アリを選んだ人たちとキリギリスを選んだ人たちでは、感じ方は全く違うだろうな。
★★★☆

この記事は、旅行人のWEB「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました。
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by mahaera | 2017-02-02 11:26 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ドクター・ストレンジ』 安定したクオリティ。ただそれを保つのは裏で努力があるはず

ドクター・ストレンジ
Doctor Strange
2016年/アメリカ

監督:スコット・デリクソン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、レイチェル・マクアダムズ、マッツ・ミケルセン、ティルダ・スウィントン、キウェテル・イジョフォー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公開:2017年1月27日より全国で公開中


いつもながらマーベルのアメコミヒーローものはすごいと思う。
昨年公開されたDCコミックスのヒーローものが
ことごとく失敗しているのに対し、
マーベルは観客が何を求めているのかがしっかりわかっている。
そして監督がベテランだろうが、無名だろうが、
クオリティは常に一定。
これは、マーベル・シネマティック・ユニバース(マーベル製作の映画シリーズ)のプロデューサーであり、マーベル・スタジオの社長であるケヴィン・ファイギ(43歳)の力が大だ。
ファイギは、マーベルコミックの百科事典並の知識があるオタクであり、その能力を買われて大学時代にインターンとして
映画『Xメン』に参加。
さらにまたそこでの能力が買われて、マーベルコミックの映画化の製作に加わり、今では社長にまで就任したわけだ。
つまり映画を金儲けのビジネスとしてしか考えないプロデューサーではなく、生粋のファンだから、何本作ろうがマーベル映画の基本軸はブレないのだ。

さて、この『ドクター・ストレンジ』も、
マーベル映画の好調を反映した快作に仕上がっている。
監督のスコット・デリクソン(39歳)は、
過去に『地球が静止する日』なんてダメ映画も作っているが、
『エミリー・ローズ』とか『フッテージ』なんてスリラーも作る、
ジャンル映画が大好きな監督。
今回は自らファイギに、「自分を監督に!」と売り込んだという。
主演はベネディクト・カンバーバッチ。誰も文句ないでしょ。
悪役にブレイク中のマッツ・ミケルセン(デンマーク出身)、師のエンシェント・ワンにティルダ・スウィントンと、実力派俳優を揃えて、きちんと映画内リアリティを作って、手抜きがないのは毎度ながらさすが。

ストーリーは予告編を見れば大体わかる(笑)
上から目線の天才外科医ストレンジが
交通事故で両手の機能を失い、失意のどん底に。
ストレンジは藁をも掴む思いで、カトマンズにある施設
カマー・タージへ行き、エンシェント・ワンの教えを受け、
厳しい修行の末、魔術師となる。
しかし闇の魔術を使うカエシリウスが、
世界を手中に収めようとしていた。

ま、話は単純で、それほど大きなひねりもない。
が、だからと言ってつまらないわけではない。
マーベル映画の面白さはストーリーではなく、
キャラクターだからだ。
つまり、この映画を見て、みながドクター・ストレンジを
好きになれば、成功なのだ。
ただし物足りないのはマッツ・ミケルセン演じる悪役が、
あまり魅力的じゃなかったこと。

ビジュアル的には大きな見せ場が2つあり、
それぞれ工夫を凝らしている。
ひとつは予告編でもバンバン出ている、多次元世界での中の戦い。
ビルが折りたたまれたり、大地がひっくり返ったりする映像
これを最初にやったのは『インセプション』だが、
あの映像をもっと見ていたかった人は、大喜びなのでは。
あとは、ラストの逆行する時間の中での対決
ヒーローと悪者以外は、巻き戻し画面のように動いていく世界。
これもアイデアはあっても映像化するのはなかなか大変なはずで、いや、新鮮だった。

ということで、エンタメ映画としては満足。
それで十分でしょ。
★★★
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by mahaera | 2017-02-01 10:56 | 映画のはなし | Comments(0)