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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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映画レビュー『スプリット』 そんな映画だったかのか!往年のシャマラン節が復調。



スプリット
Split

監督 M・ナイト・シャマラン
出演 ジェームズ・マカヴォイ

年末になるとTsutayaで、見落としていた映画の
落穂拾いというのは、毎年恒例。
今回はM・ナイト・シャマランの『スプリット』を観た。

女子高生3人が監禁される。
しかし誘拐した男の様子がおかしい。
ドアを開けて再び現れると、服装から口調までが別人のよう。
実は彼は23の人格を持つ多重人格者だった! 
そして24番目の人格“ビースト”が目覚めようとしていた。
少女たちは必死で脱出しようとするが。。。

『アフターアース』で、普通の大作映画には
向いていないことを見せたシャマラン監督だが、
こうした小規模なサスペンスホラーでは腕を見せる。
多重人格ものは、今では珍しくないジャンルだが、
たいてい最後に明かす。しかし本作ではそれは早々と明かし、
観客は主演のジェームズ・マカヴォイが、
「今はどの人格になっているのだろう」と
推測するのを楽しみにしている。
ある人格が他の人格を偽装することもあるから、なかなか難しい。

映画は脱出する少女たちのうちの一人、ケイシーを中心に進むパートと、誘拐犯であるデニスと別人格であるバリーのカウンセラーで主治医のフレッチャー医師を中心に進むパートに交互に分かれている。
どうやら“彼ら”は幼少に虐待を受けていたことが心の傷となり、
別人格を生み出したらしい。
また、さらわれている女子高生のケイシーも心の傷があり、
その回想シーンが随所に織り込まれる。

シャマラン映画の常として「どんでん返し」が期待されるが、
本作もあるといえばある。
ただ、それを匂わすのも、ある意味ネタバレになってしまうので、書くのは難しいのだが、「サスペンス映画だと思って見ていたら、実は〇〇映画でした」という終盤の流れに
ついていけない人はいるかも。
僕は結構「えー?あり?」と思いながら、楽しめたけど。
そのバカばかしいほどのケレン味が、
シャマランといえばシャマラン。
これは前情報でオチを知る前に見た方がいいな。
それもシャマランの戦略なんだが、
本人自らあちこちのインタビューでネタバレしているので、
それは読まない方がいい。


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by mahaera | 2017-12-14 11:26 | 映画のはなし | Comments(0)

映画レビュー『フェンス』 デンゼル・ワシントン監督・主演の未公開映画の秀作



フェンス
Fences

監督・主演 デンゼル・ワシントン


日本未公開になってしまったが、なかなかの秀作だった。
妻役のヴィオラ・ディヴィスは本作でアカデミー助演女優賞
獲得しているし、本作は作品賞を含む4部門にノミネートされており、一級品であることは予想してはいたが、日本では公開スルーされてしまったのは、惜しい。
機会があったら、DVDで借りてみてほしい。

時代は1957年のアメリカ。
清掃局でゴミ収集をするトロイ(デンゼル)は、
かつて黒人野球リーグで名を馳せた選手だったが、
人種の壁に阻まれてプロの夢は叶わなかった。
前妻の子ライオンズが訪ねてくるが、定職につかず
ミュージシャンを目指す彼に対して、トロイは冷たい。
妻のローズとの間の子コーリーは高校のフットボール選手で、
大学にスカウトされることを望んでいるが、
トロイは夢は捨てろと辛く当たる。
トロイは父親として息子に惨めな思いをさせたくない
という思いと、自分が果たせなかった夢を乗り越えようとする
息子に対しての嫉妬が入り混じり苦悩。
次第に家族関係はギクシャクしていく。

原作はブロードウェイで上演されて、高い評価を得た戯曲だ。
映画はその2010年版の主要キャストがほぼ全員出ており
デンゼルもその舞台で主役を務めていた。
舞台の設定をそのまま残しているので、
多くのシーンが展開するのは、ある家庭の裏庭と台所。
そこにいろんな人がれ変わり立ち代りやってきての
会話劇が中心だ。

時代はすでに公民権運動が盛りがり、黒人も声を上げているが、
主人公はそれに背を向け、
これからの世代である息子たちを否定する。
タイトルの「フェンス」は、劇中で裏庭に大工仕事で
親子で作ろうとする柵だが、それは心の壁である。
新しい考えや人の干渉から自分を守る柵であり、
妻からすれば夫を外(他の女)に生かさないための柵、
息子からすれば自分を支配するために父親が作る柵だ。
家族をフェンスで囲い、皆が出られないようにして、
自分だけが自由に出入りできる柵のようにも見える。

アカデミー賞を受賞したヴィオラ・ディヴィスの演技は、
当然とも言える素晴らしさ。
家族のために自分を犠牲にして尽くしてきた彼女が、
心情を吐露するシーンは、会社人間の夫たちみんなに聞かせてあげたい。
★☆

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by mahaera | 2017-12-13 10:57 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『パーティで女の子に話しかけるには』 70年代のあの頃の雰囲気を思い出す



パーティで女の子に話しかけるには
How to Talk to Girls at Parties


今の若い子たちにとって、1977年は僕が思っていた戦前の日本みたいなものなのだろう。
現在公開中のジョン・キャメロン・ミッチェル監督
(『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』)作
『パーティで女の子に話しかけるには』の舞台となる1977年は、
僕には懐かしいが、彼らにとっては
まだ生まれる以前の“歴史”なのだろうから。

舞台は、パンクミュージックシーンが若者たちの心をつかんだ1977年(クラッシュが「白い暴動」でデビューした年)のロンドン近郊。
主人公はパンク好きだが女子には奥手という高校生。
その彼が、偶然知り合った女の子は地球に観光に来ていた異星人。
星に帰るまでの48時間の猶予の間、二人は街に出て、恋に落ちる。

こうストーリーを書いていて、無茶苦茶な設定だと思うが、
実際そうで、リアリティは追求していない。
今でいう中二病の若者が考えた理想のストーリーは、
映画に乗れる人と乗れない人を選ぶと思う。
「ロッキーホラーショー」とか「ファントム・オブ・ザ・パラダイス」をこの頃名画座で追っかけた人なら、
この映画の雰囲気はよくわかるだろう。
バカバカしくて、切なくて、
孤独がなんだかを感じさせてくれる、あの雰囲気だ。
ダンスシーンのキッチュさや、安っぽいSF表現なんて、
「ロッキーホラーショー」そのもの。

エル・ファニング好きの僕は、ヒロインのザンに恋する主人公
(こんなイケメンじゃない方がリアリティがあると思うが)の
気持ちにうまく乗れたが(笑)、皆さんはどうかな。
チープなB級作品で名作や傑作じゃないけれど、
昔なら名画座で人気が出たかもしれないような作品だ。
★★★
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by mahaera | 2017-12-11 13:22 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『永遠のジャンゴ』戦時下の伝説のギタリストを描く

永遠のジャンゴ
2017年 フランス




11月25日から公開中

ジプシージャズ(マヌーシュジャズとも)の創始者と言われる、ジャンゴ・ラインハルトの第二次世界大戦中の1年ほどを、描いたもの。
ジャンゴは戦時下でも人気が高く、その人気をナチスに利用されそうになるが、彼は拒否してスイスへ逃れる。
ジャンゴは政治には無関心だったが、
そんな彼でもナチスのジプシー迫害をひしひしと感じるようになり、同胞の窮状を見て、手助けするといった内容の映画だ。
史実もあるが、わからない部分は映画的に
盛り上げるためにも、フィクションを盛り込んでいるようだ。
丁寧に作ってはいるようだが、ドラマチックな展開が弱く、
ジャンゴの心の葛藤も伝わってこない。
最後の脱出サスペンスも、サスペンスで盛り上げようありきで、
演出が見え見えで残念。
というわけで、映画的には残念ながら、
いまひとつの出来栄えになってしまった。

しかし音楽そのものはもちろんよく、
俳優もちゃんとジャンゴの三本指奏法をしている。
ジャンゴは火傷で、左手の薬指と小指がほぼ使えなくなった。
まあ、親指はフレットの裏側なので、実質二本指奏法だ。
その不自由さが、逆にあのようなスタイルの
ギターサウンドを生み出したのだろう。

僕がジャンゴ・ラインハルトを知ったのは中2か中3の時で、
甲斐バンドのヒット曲「かりそめのスイング」の元ネタが
ジャンゴの「マイナースイング」だったからか。
当時、映画館で見たルイ・マル監督の『ルシアンの青春』が、
全編ジャンゴの曲を使っていた。
フランス人にとっては、ジャンゴの演奏は
戦時中のイメージがあるのだろう。
★★
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by mahaera | 2017-12-08 11:34 | 映画のはなし | Comments(0)