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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』代表作「快楽の園」の謎に迫るドキュメンタリー



12月16日より公開中『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』。
不思議な絵を描くボスは、昔から気になっていた。
小学生ぐらいの時からマグリットやダリが好きだった僕だが、
ボスのことを知ったのはもっと後。
海外に行くようになってからだと思う。
最初はシュールレアリズムの画家と思ったが、
時代はもっと古いルネサンス期で、生年、没年とも、
レオナルド・ダ・ビンチとほぼ同じくらい(1450頃-1516)。
その時代の中の誰とも違う個性を発揮していたことがわかる。

彼が描く絵は、日本の「百鬼夜行」のようだ。
空想上の生き物だけでなく、人と動物の合体、
生物と無生物の合体、巨大化した生き物が描きこまれて、
細部までじっくりと見たくなる。
本作は彼の代表作で、スペインのプラド美術館にある
「快楽の園」の謎に迫るドキュメンタリーだ。
ボスという人物を探る面もあるが、どちらかといえばこの絵画のテーマや、製作の過程の秘密や歴史を探る作品だ。

彼が生きた時代は、レコンキスタが終わり、
スペインが新大陸を発見。
ヨーロッパの覇者になった頃。
ボスが暮らしていたフランドル地方は商業が発展し、
裕福な商人や王侯貴族が生まれていた。
そんな中でボスは人気の画家で、
彼の作品を王侯が競ってコレクションしていたという。
中でもスペインのフェリペ2世は彼の作品を集めていたので(ボスの死後だが)、この「愉楽の園」がプラド美術館にある。

映画では、エックス線を使ったりして下絵を探ったり、
絵に描かれている楽譜を演奏したりする。
そして聖書の逸話と絵の関係性などが
様々なジャンルの人たちによって語られる。
それはそれで面白いが、それでも
なぜ彼はこんな絵を描いたかの動機や発想はわからない。
だから、魅力的なのだろう。
この「愉楽の園」をプラド美術館で見た
ダリやミロ(共にスペイン出身)に影響を及ぼしたと思うと、ボスはやはりシュールレアリズムの元祖かもしれない。
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# by mahaera | 2018-01-11 11:24 | 映画のはなし | Comments(1)

最新映画レビュー『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』物語を語る力を信じる。ハイクオリティのアニメ



公開中だが、そろそろ終わりそうなので
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を観に行く。
知っている人は知っていると言うタイプの、ストップモーションアニメ。
製作は『コララインと魔女のボタン』(これも必見!)
のスタジオライカ。
監督はそのCEOのトラヴィス・ナイト。

舞台は、封建時代の日本。
月の帝の娘と武将のハンゾーの間に生まれたクボだが、
追手に追われて母とひっそり洞窟で暮らしている。
成長したクボは、三味線の名手となり、
彼が物語を語ると折り紙が様々な形に変わり、
人々の心を惹きつけるようになった。
しかしクボの所在は月の帝に知られ、クボの母親は命を落とす。
月の帝に立ち向かうためには三種の武具が必要で、
クボは、途中で知り合ったサルとクワガタとともに
それを見つける旅に出る。

日本が舞台の物語だが、上映館が少ない。
クオリティはディズニーやピクサーに引けを取らないのに残念。
よく練られた脚本とキャラクター設定は、少し前に観た
『最後のジェダイ』のずさんさと対照的。
1日1分も撮影できないほど手間がかかるのだから、
「無駄なシーンは撮れない」という意気込みが伝わってくる。
かし、ストップモーションアニメのクオリティは
上がりすぎていて、動きが滑らか。
そのうち、CGアニメとの違いが
わからなくなってくるんだろうなあ。

母を失った主人公が、旅をして仲間(サルとクワガタ)ができ、
武器のアイテムを見つけて、敵を倒すという枠組みは、
世界中の神話にある古典的な話。
ストーリーを追うのは難しなく、子供が楽しめるように作っているが、大人にならないとわからない暗喩も含まれている。
僕は見終わった時に、『ライフ・オブ・パイ』を思い出した。

物語の最初の方に、墓参りのシーンが出てくる。
人が思い出す限りは、死者は生きている。
物語が語られている間は、物語は生きている。
というセリフがある。そして物語には、
必ず始めと終わりがある。
だから人の心に響くのだと。
クボは物語ることによって、月の帝と戦う。
月の帝は、永遠の命があるが、
それは終わりがないということで、冷たい存在だ。
人は命に限りがあるから、豊かな感情を持てるのだ
というメッセージになっている。
そして、自分の命が尽きても、自分を思い出してくれたり、
物語を語り続ける人がいる限りは、その存在は生き続ける。

何かを作る人なら分かるだろう。物語や作品でもいい。
できあがった瞬間から、それは自分の手を離れ、
人の心の中でほんのちょびっとでも生き続ける。
100年前の映画、1000年前の小説もそうだ。
シャーリーズ・セロンら豪華吹き替えもいいし、
ラストの『ホワイル・マイ・ギター〜』が流れる瞬間は、

いい映画を見たと感じた。よくできた映画なんで、皆さんも是非。


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# by mahaera | 2017-12-26 12:55 | 映画のはなし | Comments(2)

映画レビュー 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 冬の田舎の港町が主人公の心象風景と重なる



マンチェスター・バイ・ザ・シー


年末ベストテン候補かもとレンタルで観る。
派手さはゼロだが、しみじみとした作品で、ズシンときた。
ケイシー・アフレックが本作でアカデミー主演男優賞、
監督と脚本のケネス・ロナーガンが
オリジナル脚本賞を受賞した人間ドラマだ。

ボストンで便利屋をしているリー。
人と交流をしようとせず、近寄ってくる人も冷たくあしらう。
そして、時折生じる暴力。魂の抜け殻のような男の元に、
故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに住む
兄が亡くなったとの知らせが来る。
帰郷したリーは兄の家へ。
そこにはかつて仲良くしていた兄の息子パトリックがいた。
葬儀などの手続きを進めていくリーは、
遺言によって家族がいないパトリックの後見人に
指名されていたが、彼には乗り越えられない過去があった。。

イギリスの大都市マンチェンスターは大違いの、
アメリカ北部にある寂しい小さな港町
マンチェスター・バイ・ザ・シー。
冬の寒々とした風景が、主人公の心象風景と重なる。
過去に取り返しのつかないことをしてしまった主人公。
映画の終盤ではなく、中盤でそれが明かされるが、
物語は傷が癒されるというハッピーな映画的な解決にはいかない。
故郷で暮らすのができないほど、彼の心の傷は大きい。
おそらく彼には死ぬまで、心の救いはないだろう。
それでも、ほんの、ほんのわずかだが温かみを感じさせる進展がないわけではない。
「空虚」という演技がうまいケイシー・アフレックが、
この役を演じたのはまさにピッタリ。
どんより曇った空の休日、
一人で落ち着いた日を過ごしたい時にオススメ。
こう言う映画が苦手な人もいると思うが、
こう言う人生を送っている人もいるのだ。
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# by mahaera | 2017-12-22 12:29 | 映画のはなし | Comments(2)

映画レビュー『ムーンライト』 今年のアカデミー作品賞受賞作品。エンタメではないが、見るべき



年末に向けて、今年のベストテンに入りそうで見逃した作品、レンタルで借りて見ている。

アカデミー作品賞を取った『ムーンライト』。
こう言う繊細な作品は、できたら劇場で見たかった。
3人の俳優が、主人公の幼年期、少年期、青年期を演じる、3つのパートからなる、繊細な作品。
黒人でゲイというマイノリティの作品というより、人から理解されないが為に、自分を偽って生きていくが、でもやはり孤独は嫌だという、誰もが共感できる心情を描いた作品だと思う。

マッチョな薬の売人という、黒人のロールモデルに自分を置くことによって、世間に溶け込む主人公だが、かつての知り合いの前では、少年時代のような表情を見せる。
まるで心象風景のような、カラーリングされた映像。
最初のパートに登場する、主人公を気にかける薬の売人のマハラーシャ・アリの演技が素晴らしいと思っていたら、アカデミー助演男優賞をこの作品で取っていたのね。
子供に非難される目をされて、がっくりくるところは(泣)。
人は社会の中で、多かれ少なかれ、ロールモデルを演じている。
そして本当の自分との落差が広がりすぎた時、問いかける。
自分は何者だと。
本当の自分を受け入れてくれる人は、
この世の中に果たしているのかと。
そんな絶望感が心にしみるが、救いも用意している。
★★★★
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# by mahaera | 2017-12-21 10:27 | 映画のはなし | Comments(1)

これから観る人多いと思うので、レビューじゃなくて感想。『最後のジェダイ』

これから観る人が多いと思うので、あまり詳しくは書けないが、
『最後のジェダイ』、久しぶりにガッカリしたスターウォーズに。

以下これから観る人は、読まない方がいいかも(ネタバレはしないけど)。

イオン海老名の7番スクリーン(日本最初の?THX劇場)に
行ったのだが、脚本が雑すぎる。
正直言って、伏線にも後にも繋がらない、いらないエピソードが多く、
もっと短くまとめられたはず。
もうこの辺りは、無駄な描写やセリフが一切ない『ドリーム』や
『ズートピア』の爪の垢でも煎じて飲んでくれい。ライアン・ジョンソン!

テンション上がるシーンも2か所あるが持続せず、それ以外は概ね低空飛行。
最後の盛り上がりで、前半の低空飛行を帳消しにした
『ローグワン』のようにはいかなかった。
話のミスリードの仕方も、そうじゃないだろって。
で、次が三部作最終編なのだから、どうなるの?と
期待させてつなげなくてはならないのだが、それがほぼないのもなあ。
いいシーンもあるんだけどね。
それをつなぐ途中の展開がまったりしていて、なかなか先に話が進まない。
例えば、フィンとローズがカジノ惑星に行くくだりは、
そっくりなくてもいい。あそこは「帝国の逆襲」で言えば、
ソロとレイアが小惑星に潜むシーンで、
全体の流れとしては停滞しているが、
二人の間が親密になっていくのに必要な場面。
そこがなければ、凍結されるソロとレイアのシーンが生きないのだが、
今回はそれもきちんと描いていなので、
塩原のところで〇〇にいきなりコクられても、
「ふーん」としか思わず。あと、DJの扱いにしても
「たまたまでした」で終わっちゃって釈然としない感が。

つまり各キャラの理解度というか掘り下げが足りないので、
その人が何を持って行動しているかが弱い。
レイとルークも、噛み合わない若者と老人の会話みたいで。
なんかキャラの行動の動機が薄くて。

いいシーンは、セーバーバトルとラストの〇〇です。

あと1回は劇場で観るかと思うが。
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# by mahaera | 2017-12-20 11:38 | 映画のはなし | Comments(5)

最新映画レビュー『否定と肯定』 ホロコーストはなかったか? 実話の裁判の映画化。



否定と肯定

監督 ミック・ジャクソン
出演 レイチェル・ワイズ、ティモシー・スポール、トム・ウィルキンソン

12/8から公開中

アメリカの歴史学者デボラ・E・リップシュタットの講演中、ホロコースト否定論者のデイヴィッド・アービングが現れ、「嘘を言っている」と絡んでくる。
リップシュタットがその著作物で、「ホロコーストはなかった」と主張するアービングを批判していたからだ。
相手にしないリップシュタットに対しアービングは、今度はイギリスで彼女と本の版元であるペンギンブックスを名誉毀損で訴える。
イギリスに渡り弁護士団と打ち合わせをするリップシュタットだが、名誉毀損に関しては、逆に訴えられた側が相手の間違いを証明しなければならないという、英米の裁判の違いに驚く。
そして世間が注目する裁判が始まった。。

これは1996年に実際に起きた「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」の訴訟と裁判の映画化だ。
興味ある人は、この事件はwikiにも載っているので、
読んでみるといい。
当時、こんな裁判があったか記憶にないが、
欧米では話題になったらしい。
何せ現代のイギリスの王立裁判所で、ホロコーストはあったかないかの証明をし、裁判で決着をつけるのだから。
まあ、「〜はなかった」という否定論者は、昔から世界中にいる。
これは、まだ歴史的な検証が済んでいないものは別として、
もう定説となっているものを、歴史資料から自分に
都合がいいところだけ抜粋して、
自分の主義主張に合わせているだけだ。

本作の主人公である歴史学者リップシュタットは、
そういう輩をそもそも“学者”として認めておらず、
アービングが仕掛けてくる“討論”にも乗らない。
アービングにすれば、結果ではなく、
きちんとした学者と討論できたことで、
すでに彼の“勝ち”になってしまうからだ。
裁判も勝ち負けより、世間に注目されれば
「もしかして彼の言うことは本当かも」という人が必ず出てくる。
今まで無名の「トンデモ学者」だったのが、
「テレビに出た有名人」になった時点で、
その試みは成功しているのだ。

「ホロコーストはなかった」何て信じる人はいるのか?
と思うだろうが、いる。
ヒトラーをするネオナチだけでなく、
日本でも1995年に「マルコポーロ事件」があった
(「ガス室はなかった」とする記事を掲載し、廃刊に追い込まれた)。
問題は、トンデモ歴史論を展開する人たちが、
「表現の自由」を盾に使うことだ。
それを盾に取られてしまうと、識者たちの反論の筆が鈍くなることを知っているからだ。
映画を見ていて思うのは、「表現の自由」は大事だが、
それを野放しにすると、デマカセ情報や無責任の
中傷情報も広がり、鵜呑みにした人たちが
偏見や憎悪を持ってしまう危険性があるということ。
現に今のネット社会がそうだろう。

あとこの映画で勉強になったのは、英米の裁判のシステムの違い。
「法廷もの」は映画では一つのジャンルにもなっているが、今まで作られてきたのはアメリカ映画がほとんど。
本作では、アメリカ人がイギリスの法廷に出るということで、日本人にもわかりやすくイギリスの裁判のシステムを解説してくれる。
で、難しいのは、もしアービングが本当に「ホロコーストはなかった」と信じきっていた場合、彼は嘘をついていないので「中傷にはならない」のではないかという問題も出てくること。
なので、「知ってて、都合のいいところだけ抜き出した」と、
訴えられた側が証明しなきゃならないのだ。
うーん、面倒。

監督は懐かしや『ボディガード』のミック・ジャクソン。
最近見ないと思っていたら、テレビに戻り、
ドキュメンタリーの演出をしていたらしい。
なので法廷劇だが、きちんと最後はエンタメ映画としても
盛り上がれるような演出もされている。
★★★☆

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# by mahaera | 2017-12-17 15:00 | 映画のはなし | Comments(1)

映画レビュー『ヴィジット』 突っ込みどころはあるが、シャマラン節がたまらない



M・ナイト・シャマランの新作『スプリット』が面白かったので、前作『ヴィジット』を借りて観る。
90分台と短いのも潔くて良い。いつものように突っ込みどころも満載だが、観客のミスリードもうまい。
だけど理屈っぽい人とか、根が真面目な人は
シャマラン作品は楽しめないかも。

主人公は15歳の映画好きの姉と13歳のラップ好きの弟の姉弟。
数年前に父親は他の女と出て行き、今は母子家庭。
働きずくめの母親を楽させようと、子供達だけで音信不通だった
祖父母の家に一週間お泊りに行くことに。
母親は若い頃に交際を反対されて家出して以来、
祖父母とは縁が切れている。
姉は今回の旅の一部始終をカメラに収め、映画作りをすることに。
テーマは自分の家族だ。
田舎の一軒家に住む祖父母はやさしく子供達を迎え、
何の問題もなく一週間が過ぎるはずだった。
ところが、次第に祖父母の奇怪な行動が目立つようになってくる。

「ブレアウィッチプロジェクト」から始まった、
ホラー映画では常套手段とも言えるPOV(主観ショット)映画。
本作では姉と弟が映画を撮っているという体なので、
2ショットの切り返しがある。
ということは、“すでに編集された映像”ということで、
そこに抵抗がある人がいるかもしれない。
また、普通に怖いとこでは映画的な効果音もある。
しかし、きちんとエンディングもあることで、
これは姉が「家族の再生」というテーマを持って編集した“作品”なのだ。

毎夜、家を徘徊する祖母、時々言動がおかしい祖父。
でも「老人だから」多少、ボケたり、物忘れしたり、
言動がおかしくてもしょうがないということが、
主人公たちや観客をミスリードしていく。
期待される“どんでん返し”は、さほどでもないが、
全体に丁寧に作られているので、ダレることはない。
ホラー映画にありがちな「この状況でそれはしないだろう」的な
突っ込みどころもあり(ワザとだと思う)、盛り上がる。
で、最後まで見ると、怖いシーンだけでなく、
ちゃんと家族の愛情の話になっていることがわかるだろう。
愛してくれた父親に捨てられたことから自信がなくなり、
カメラを通した映像で心情を表現しようとする姉。
生意気で最初に好きになれないキャラの弟も、
自分の失敗で父親がいなくなったと思い込んでいる繊細な面がある。
母親も両親が自分を愛していないのではないかと悩んでいる。
それを克服したのが結末なのだ。
弟君のラップは、うまいのかヘタなのかはわからないが(笑)。
★☆

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# by mahaera | 2017-12-15 12:54 | 映画のはなし | Comments(1)