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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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子供に教える世界史[古代編]エジプト新王国(前1400年ごろ〜前1200年ごろ)その2ハトシェプスト女王とトトメス3世の時代

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ハトシェプスト女王時代のエジプトは平和外交が主で、戦争も少なかった。
しかしその一方、先王であったトトメス1世が抑えたシリアでのミタンニ勢力が力を伸ばしていた。
あと記録では南方のソマリア付近にあったブント国との貿易が残っている。
ブントからは金や香料、象牙、奴隷、ヒヒなどが輸入された。

50歳でハトシェプストが亡くなり、トトメス3世(在前1490〜前1436年)の単独統治時代が来る。
彼はまず彼女の彫像や墓などを破壊し、記念建造物から名前が削り取られ、ハトシェプストの記録を抹消した
エジプトの王に女性がいた痕跡を消したかったか、単に彼女が嫌いだったか。
トトメス3世は単独統治に入ってすぐ、シリア遠征を行った。
これはミタンニ王国が、シリア北部のカデシュ王を盟主としてシリアの諸都市に「反エジプト同盟」を組ませて対抗したからだ。
トトメス3世はシリアの反エジプト同盟軍を撃破し、以降、監察官を置いて支配を固める。
しかしその後もシリアの反抗は続き、トトメス3世は都合17回のシリア遠征を行っている。
8度目にはアレッポ近郊でミタンニ軍と戦い、敗走するミタンニ軍を追いユーフラテス川にまで達した。
この勝利により、エジプトは国際的にもヒッタイトやカッシート、アッシリアといった国に、シリアでの主権がエジプトにあると認めさせた。
南では現在のスーダンにあったクシュ王国を屈服させた。
こうしてエジプト新王国の版図を過去最大にしたため、「エジプトのナポレオン」とのちに呼ばれるようになった。

国王と神官団
トトメス3世の死後も有能なアメンヘテプ2世、トトメス4世といった王が後を継ぎ、何度か起きたシリアの反乱を手早く鎮圧した。
しかし一方で、この時代にはテーベの神官たちが強力な力を持ち、王と緊張関係を持つようになって行った。
国家神であるアメン・ラーを祀るカルナック神殿には、エジプトが戦争で勝利するたびに膨大な戦利品が寄付され、経済的にも国家予算の半分を手にしていた。
記録によると、神殿領はエジプトの全耕地の1/3を所有し、その神殿領の全財産の3/4をテーベの神殿が保有していた。
そのため国王を誰にするかでも、神官たちの力が働いていた。
戦争に勝つたびに、神官たちの力は強くなっていったのだ。

トトメス4世はその力を削ごうと、他の神への寄進も行った。
次のアメンヘテプ3世(在位前1386年〜前1349年)は40年にわたる統治の間、アメン神官団をうまく抑え、多くの建造物が造られた。
今もルクソールに残る「メムノンの巨像」は、アメンヘテプ3世の座像で、彼の巨大な葬祭殿の一部だった。
ただし葬祭殿自体は現在ではほとんど残されていない。
また、ルクソール神殿もこの時代に建設された。(続く)
(写真)ルクソールにある「メムノンの巨像」は、アメンヘテプ3世葬祭殿の一部だった


# by mahaera | 2019-03-21 11:04 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

最新映画レビュー『シンプル・フェイバー』オシャレなサスペンス・コメディー。そこそこは面白いが。。


アナ・ケンドリック、ブレイク・ライブリー共演のサスペンス・コメディー
シングルマザーのステファニー(アナ・ケンドリック)は子どもの送り迎えで、息子の友達の母親エミリー(ブレイク・ライブリー)と知り合う。
育児と料理のブログが生きがいで、どちらかとえば鈍臭いステファニーに対し、ファッション業界で働くエミリーは見た目も生活も華やか。
ある日、ステファニーはエミリーから子どもを預かるが、エミリーはそのまま失踪してしまう。
やがて意外な事実が。。。

コメディ系の主演で人気があるアナ・ケンドリック、美人系でスタイルも良く華やかさがあるブレイク・ライブリーという対照的な2人の旬の女優共演のサスペンスコメディ。
失踪したママ友を探すため、個人的に捜査を始めるステファニーだが、調べれば調べるほどエミリーの意外な過去が。
中盤までは文句なく楽しいが、しかしそこから失速していくのは、話が少しシリアスになり、気楽に映画を見ていたのが“殺人”という生々しい出来事が起きるからか。

それでも全体のトーンはコメディ。
なぜか全体に流れるレトロなフレンチポップス(フランスギャル)が、作り物感を出して映画を軽くするのに貢献。
エミリーのダメ夫に『クレイジー・リッチ』の金持ち息子ヘンリー・ゴールディング。
誠実そうだが、そうでもないという雰囲気にピッタリだ。
あとはストーリーに関係なく、スタイル抜群で毎回華やかな服に身を包んで登場するブレイク・ライブリーに、男女とも目が離せないだろう。

ということで、気楽に楽しめるサスペンス・コメディーなのだが、見終わった後、残るものが少ない。
こうした映画は主人公の魅力1つで変わるのだが、どうもアナ・ケンドリックのカマトト演技が鼻についてしまったからか。

残念。★★★


# by mahaera | 2019-03-20 10:35 | 映画のはなし | Comments(0)

2019年3月16日「ダン・ペン&スプーナー・オールダム」ライブ 六本木のビルボード東京

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3月16日の土曜日、友人に誘われて六本木のビルボードに、「ダン・ペン&スプーナー・オールダム」のライブを見に行く。
実は事前に1曲も知らなくて、前日にあわててYouTubeで何曲か聴いたぐらい。なので詳しくはみなさんググってください。
ライブはダン・ペンのアコースティックギターの弾き語りにスプーナー・オールダムのエレピの伴奏とコーラスのみ。


スプーナー・オールダムは僕にとっては、ボブ・ディランの1980年のゴスペルツアーのメンバーであり、アルバム「セイブド」の録音に参加したキーボーディスト。
詳しくは知らなかったが、数年前に公開された音楽ドキュメンタリー「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」にも出ていて、マッスル・ショールズのスタジオの重要な録音メンバーだったことを知る。


さてライブはほのぼのとした心温まるものだった。

何よりもダン・ペンの声がいい。
曲を知らなくとも、カントリーとソウルの間ぐらいの朗々とした歌声。
彼が作った曲の多くはアレサ・フランクリンなど黒人ソウルシンガーによって歌われ、よりソウル色が強まったが、ここでの弾き語りスタイルにはカントリーのルーツも感じさせるもの。

ともあれ60〜70年代の音楽のすばらしさを再認識した一夜だった。


# by mahaera | 2019-03-19 17:48 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

久しぶりに上野公園へ。東京都美術館、国際子ども図書館、黒田記念館

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先週、東京で打ち合わせがあり、早めに出て上野公園へ。
用事の前に知り合いの学生の作品が出品されている「ガラス教育機関合同作品展」を見に、東京都美術館へ。
特別展の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」展は混んでいたが、それ以外は無料で空いていた。

ガラス工芸はいくつかの大学や機関の生徒による作品を集めたもの。アマチュアなので出来はさまざま。

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プロと違うのは、“見せる”という見ている人の側にはまだ立っていないものが多いかなという印象。
作りたいものを作っている、あるいは出来てしまって、出来がいいものを展示しているという感じ。
作品を置く台の高さとか、光の当て方、説明ボードなどまで、あまり考えていない。
まあ、当たり前だが有料展はそのあたりはしっかりしているよね。

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そのあと、置いてあったチラシを見て、国立博物館の横にある国際こども図書館へ。
ここで無料公開している「詩と伝説の国―イランの子どもの本」展へ。
ここへは初めて行ったが、古い建物を古いものは残してきれいに改装し残しているので、いい感じ。
ガラガラなのはもったいないけど。
イランの絵本展では、世界史の教科書にも登場する「シャーナーメ」「ロスタムの物語」「ルーミー」「ルパイヤート」といった古典の題材のものもある。
イスラームがイランに入ってくる以前の伝承の断片がそこに見える。

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上野のどこかでご飯を食べようと思っていたが、公園内はけっこうオシャレな店で高い。
その点、ここにあるカフェは学食並みの値段(定食550円から)。久しぶりにカツカレーを食べて見る。

グルメにはダメだろうが、学食の味がしてそれそれで満足。
ここも平日昼は空いていていい。


隣にある黒田記念館も展示は無料
ここも古い建物で、中に入ってみる。
ちょうど配置換えなのか、有名な「湖畔」の展示は見られず。
2部屋ぐらいしか公開してなかったが、まあ無料なので文句は言えない。
併設の上島珈琲のテラスでは、外国人観光客たちが日に当たりながら休憩をしていた。
ストーブを焚いていたので、テラスでも寒くなさそう。

向かいは藝術大学。合格者の番号が貼り出されているのを見て、知り合いの娘さんが合格したことを思い出した。
どれかの番号が、その娘さんのものなのだろう。

久しぶりの上野、桜が咲く前の今頃が落ち着いていていいのかもしれない。


# by mahaera | 2019-03-18 11:07 | 日常のはなし | Comments(0)

子供に教える世界史[古代編]エジプト新王国(前1570〜前1200年)その1 エジプト新王国の誕生

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(写真)現在もハトシェプスト女王の葬祭殿は、ルクソールの人気観光地だ。

久しぶりに舞台はエジプトへ。
前2000年から前1500年にかけておきたインド=ヨーロッパ語族の民族移動は、馬と戦車という最新兵器と共にオリエント、イラン、インドに大きな変動をもたらした。
しかし当初はやられっぱなしだった国や地域の中には、その最新軍事技術を取り入れて再興した国がある。
それがエジプトだ。

インド=ヨーロッパ語族の移動に押し出されるように、「ヒクソス」と呼ばれるレバント(地中海東岸)地方のさまざまな民族の混成軍がエジプトを征服したが、彼らが軍事的に優位だったのは、その「馬と戦車による戦術」を取り入れていたからだった。
当時のエジプトはロバに戦車を引かせていたから機動力では太刀打ちできなかった。
しかし、そんなヒクソスの王による統治も100年も続けば、エジプト人も技術を学び馬と戦車を利用するようになる。
こうしてヒクソスを追い出してエジプト人による王国を再び興す。これが「新王国」時代だ。

新王国は古代エジプトの中でももっとも繁栄した時代で、傑出したファラオが次々に現れた。

教科書に名が載るだけでも、エジプト史上初の女性ファラオのハトシェプスト女王、遠征を繰り返し「エジプトのナポレオン」と呼ばれたトトメス3世、世界初の一神教を生んだアメンホテプ4世、黄金のマスクで知られるトゥトアンクアメン(ツタンカーメン)の4人がいる。
この時代、対外的にはシリアなどのレバント地方に進出し、またオリエントの国際政治に深く関わっていた。

ヒクソスの駆逐とエジプト再統一
ナイル下流域の下エジプトに都を置いたヒクソスの王朝に反旗を翻したのは、ナイル中流域のテーベ(現ルクソール)拠点としていた第17王朝だった。
3代の王による対ヒクソス戦争が行われ、前1570年ごろ下エジプトのヒクソス勢力をエジプトから駆逐。
イアフメス1世はさらにヒクソスの残存勢力をパレスチナに追い詰めて滅亡させる。
以降シリア南部にエジプトの統治が及ぶことになる。
また彼は南のヌビア(現スーダン)にも遠征し、それを支配下に置いた。実際はその前のヒクソスと並立していた17王朝と連続しているが、古代エジプトの歴史区分的には、この功績からイアフメス1世を第18王朝の創始者とし、「新王国時代」となっている。
続くアメンテヘプ1世は内政に力を、次のトトメス1世は外征に力を注ぎ、当時力延ばし始めていたミタンニ王国に圧力を加えた。
その後を継いだトトメス2世は病弱ということもあり、姉のハトシェプストと結婚して王位継承の正当性を強化。
側室との間の子トトメス3世を後継者に指名して死去する。
しかしトトメス3世はまだ幼かったので、ハトシェプストが共同統治者として摂政となり、エジプトでは女性として初めて女性が最高権力を持った(前1493年〜前1483年)。
ハトシェプストは公式な場では男装し、あごひげをつけていたという。


# by mahaera | 2019-03-17 11:27 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

マエハラ的名画館『大統領の陰謀』午前十時の映画祭にて公開中

ウォーターゲート事件を追うワシントンポストの2人の記者の姿を描く。アカデミー賞4部門受賞。



1976年

アラン・J・パクラ監督

ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン、ジェイソン・ロバーツ


この映画を観るのはおそらく40年ぶり。
当時、映画少年だった高校生の僕は、なんだか勉強をしに行ったような気分で、面白くなかったことだけは覚えている。
前評判はよく、新聞記者が悪事を暴く、痛快なサスペンスを期待していったのだが、映画の大半は記者が電話をしているかインタビューをしているか、調べているだけ。
銃撃も爆発もなければ、サスペンスもなし。悪人も出ないし、何よりも悪者がやられるカタルシスがない。
これからってところで映画は終わってしまうのだ。


1972年、ワシントンDCのウォーターゲートビルにある民主党の本部で、5人の不法侵入者が逮捕される。
ワシントンポストの新米記者ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)は、逮捕されたばかりで電話もできないのに、容疑者たちに立派な弁護士がついていること、元CIAがいることに違和感を抱く。
また、多額の現金と盗聴器器を持っていたことから、単なる泥棒ではなく、誰かに雇われているらしい。
ウッドワードは、先輩記者のカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)とコンビを組んで調査に乗り出すが、糸口がつかめない。
内部情報提供者のディープ・スロートは、「金を追え」とだけしか言わない。
しかし、犯人への報酬が、ニクソン大統領の再選委員会から出ていたことをつかむ。


40年ぶりに見た本作は、こちらが大人になったせいか実に面白かった。
映画は2人の記者の視点から離れることはないので、事件に関わったおよそ20人近い人物名が飛び交い、その関係を頭で整理するだけでも精一杯。
しかし、これはそもそも事件の知識がなければ無理で、そのあたりの混乱も狙った脚本だ。
最初は事件の全容がつかめず、まるで霧の中を歩いているような気分だが、それは主人公たちと同じ気分にするため。
ようやく証言が取れたと思うと、オフレコの話ばかりで証拠にはならない。
怪しいだけでは記事にはできない。
編集主幹(ジェイソン・ロバーツ、本作でアカデミー助演男優賞受賞)から、「証拠を固めろ」とゲキが飛ぶ。

久しぶりに見てあらためて思ったのが、インターネットのない時代は大変だなあということ。
とにかく記者は電話をしまくり、相手の話を聞き出す。
そして資料を請求し、年間で名前を調べ、電話をしたり、相手の家に突撃取材をする。
二週間何の成果もなかったりと、とにかく見てて大変なのだ。

2時間を超える映画だが、描かれたのはウォーターゲート事件が起きてから最初の4か月。
映画は2人の取材がまだ成果を上げず、ニクソンが再選されたところで終わる。
「え?ここで終わり? 事件はどうなの」と当時の人も思ったと思う。
「ウォーターゲート事件」は、再選を目指すニクソン大統領が、ライバルの民主党本部に盗聴器を仕掛けた事件だが、当初、世間の関心は薄かった。
ニクソンは中国訪問やベトナムからの撤退と成果を上げており、国民の人気も高かった。
何もしないでも再選は確実だったのに、なぜそんなことをするか。
答えは「盗聴マニア」だったから。
この事件が裁判で解明されるしたがって、ニクソンの人気は落ち、任期途中で大統領を辞めた唯一のアメリカ大統領になった。
盗聴や謀議はそれまでもずっとしていたことがわかれば、一気に信用はなくなる。
ライバルの民主党がスキャンダルで自滅して行ったのも、実はニクソンが盗聴してマスコミにリークしたり、あるいはでっちあげで風評被害を作り上げていたのだ。
まあ、いまも与党がネットニュースのコメント欄でやらせを使って自分たちをヨイショしたり、他党を批判したりというのは、やってることだけど。


さて、映画はこの事件をちっとも解明しない。
エンディングは唐突にやってくる。
まだ事件の入り口で、世間の関心も低く、ニクソンが゜再選される。
そのニュースがテレビから流れる脇で、2人の記者は黙々とタイプライターに向かっている。
そのあと、テロップで、その数年後の裁判で多くの関係者が逮捕され、ニクソンが辞任したことが、音楽もなく淡々とつづられる。
少年の頃は、このカタルシスのない終わり方に「とほほ」と思ったが、こちらも大人になり、見方は変わった。
この映画は、ウォーターゲート事件や大統領の陰謀の映画ではなく、ジャーナリズムの映画であると。
だから、この地味だが熱意がなければできない仕事を、こつこつ積み上げているところを描いて終わっているのだ。
結構この終わり方、今見ると静かだが、その後のことを知ると強いドラマを感じる。
何事も地道な積み重ねが大事。★★★★


# by mahaera | 2019-03-16 11:19 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『サッドヒルを掘り返せ』あの名作ウエスタンのロケ地を有志たちが復活!


セルジオ・レオーネ監督作品はすべて名作だが、なかでも世界中の人々に愛されているのが『続・夕陽のガンマン』だ。
南北戦争を背景に、3人の無法者が盗まれた金塊をめぐって出し抜こうとするマカロニ・ウエスタンで、小さな話がどんどん膨らみ、最後には一大叙事詩となる。
クリント・イーストウッド、イーライ・ウォーラック、リー・バン・クリーフの3人にとっても代表作となった。
そしてクライマックスに流れるモリコーネの超名曲「黄金のエクスタシー」は、メタリカのコンサートのオープニングで流れることでも知られている。
たぶん、最近の映画しか見たことがない人には、驚くばかりのクライマックスでは。
音楽に合わせて墓地を走り回るだけ、そして3すくみ状態の対決での顔のアップが延々続く。
かくいう僕も映画館で少なくとも5回、DVD購入して5回は見ている。

この映画のロケは、他のマカロニウエスタン同様、フランコ政権下のスペインで行われた。
有名なのは南スペインだが、この『続・夕陽のガンマン』のクライマックスとなるサッドヒルの円形墓地での対決シーンは、マドリード北方、ブルゴスの町の郊外にあるミランディージャ溪谷にスペイン軍を集めて造られた墓地で行われた。
撮影後は打ち捨てられ、土に埋もれて忘れられていった墓地だが、熱心なファンがそれを再発見。
やがて地元の有志たちを巻き込み、草の根運動で墓地を掘り返し始める。
やがてその動きは世界中のファンを動かし、50年の時を経てサッドヒルが蘇る。
本作はその過程を記録したドキュメンタリーだ。

本作には映画に関わった人々への貴重なインタビューも含まれている。何しろ50年前の映画で、生きている人は少ない。
映画を見ているときは「こんな墓地もあるんだ」と思っていたが、「円形墓地」というアイデアは創作で、古代ローマの円形劇場を模したというのは、さすがイタリア人の美術監督。
ドキュメンタリーのクライマックスは、50年を記念してサッドヒルで行われた『続・夕陽のガンマン』の記念上映。
そこでイーストウッドへのインタビュー映像が公開。
ファンたちによっては感無量だろう。

ということで、『続・夕陽のガンマン』ファンにはうれしいドキュメンタリーだが、逆にファンクラブの集まり以上に広がりがない出来でもある。
そこから広がって何かが見えてくる、というわけではない。
ないものねだりだろうが。★★☆


# by mahaera | 2019-03-12 09:41 | 映画のはなし | Comments(0)