ケーブルテレビで日本映画『手紙』を観た。
少し前に話題になった作品で、新聞連載小説が原作。
殺人を犯して服役中の兄を持つ弟が主人公。
兄弟二人暮らしの兄が、弟を大学へ行かせるお金のために殺人を犯してしまう。
弟は大学を辞め、世間の冷たい目を避けながら仕事を転々として暮らしている。
殺人犯の弟とわかればアパートも借りられず、また会社もクビになるからだ。
ある地方の工場で働く彼を、食堂で働く沢尻エリカが好きになる。
しかし彼はその気持ちを受け取れない。
弟にはお笑いで成功したいという夢がある。
東京へ出た彼は、お笑いコンビで成功し始める。そして富豪の娘とも恋仲になるが、
有名になることはまた兄が服役していることが暴かれることでもあった。
お笑いをあきらめ、富豪の娘とも別れた彼を支えるのは、沢尻エリカだった。
兄を憎む弟は出紙を書くことを止めるが、兄からの手紙は続く。。。
ものすごいベタな映画だった。
映画というより、昼の帯ドラマのような感じ。
登場人物たちの次のセリフが予想通りだし、悲しければ泣く、辛ければ暴れて部屋のものを壊す、
陳腐としかいいようのない展開と表現で、泣けるどころか、途中から失笑という感じになってしまった。
ここまでやらないと、みんなストーリーとか、登場人物の心情がわからないのかなあ。
たぶん、、登場人物の心情は全部脚本にセリフかアクションで書かれているのだと思う。
でも映画でしょう。
画面の人物は笑っているんだけど、観客は「本当は心の中では辛いんだろう」と思って泣けるわけで、
先に号泣されちゃうとねえ。
犯罪者の家族が社会の冷たい視線を受けながら生きていくというのがテーマなのだろうが、
スターが沢尻エリカだけなせいか、彼女のアップやショットが多すぎで、画面が散漫。
脇役なのに出すぎなのだ。
主人公への偏見もベタで、「いまどきなあ」の感もある。
主人公と恋仲になるのが富豪の娘(大きなテーブルにワインを給仕する雇い人がいたりする描写には失笑)というのも。。。
案の定、彼女には婚約者がいて、その婚約者が幸せな2人の部屋に押しかけ、
「こいつの兄は犯罪者だ」「二度と彼女に近づかないでくれっ!」と叫ぶ。まるで韓国ドラマかっていう展開。
最後は主人公が兄の気持ちを思いやり、かつての相棒と再びコンビを組んで刑務所に慰問公演に。
兄の前で芸をする。弟の舞台に立つ姿を見て、手を合わせて号泣する兄。涙ぐむ弟。って違うだろ。
そこは兄は弟のお笑いに受けて笑っている顔をしているが、心で泣いていると想像させるとか、
弟だって泣きたい気持ちを隠しながら芸しているとか、そういうところが本来感動を呼ぶんじゃないかと。
ここ一年ぐらいに観た映画の中では『涙そうそう』『ラブソングができるまで』ぐらい酷かったが、
ネットで見ると、みんな感動して泣いているようだ。
ここまでわかりやすくしなけりゃわからないようなら、小津安二郎の『東京物語』みてもチンプンカンプンだろうねえ。
点数つけるなら、マイナス20点。