『ザ・ロード』 監督:ジョン・ヒルコート
出演:ヴィゴ・モーテンセン、シャーリーズ・セロン
6月26日よりTOHOシネマズシャンテほか
『すべての美しい馬』、『ノーカントリー』が映画化され、
アメリカでは高い評価を受けている
コーマック・マッカーシーのベストセラーの映画化。
どうして世界が崩壊したのか、誰もわからない。
とにかく文明が崩壊して10年あまりたった。
空を厚い雲が多い、寒冷化が進んだ世界には生物の姿はない。
食料はなく、生き残った人々のなかには、
人を狩って食らう集団もいた。
その大地を、
南を目指して歩く親子がいた。
険しい顔のヴィゴ・モーテンセンとその息子だ。
父親は息子に正しく生きることを教えるが、
行く手には危険が待ち受けていた。
本作では世界の崩壊の理由はまったく語られていない。
そのため本作はリアルな反面、寓話のような趣もある。
飢え、食料を手に入れることしか考えられなくなった人間は、
野生動物とそう変わらない。お互いの姿を見つけても、
殺されるのではないかと近づいていこうとしない。
自分の息子が
もし他の人間に捕えられたら、食われてしまうだろう。
父親が持っている銃には玉が二発。
それは最後に自殺するためのものとしてとってあった。
絶望的な状況の中、父親は妻シャーリーズ・セロンの夢を見る。
しかし、妻はそんな世界で生きることより、死を選んだ。
希望が一切ない、死しか待っていない世界。
自殺を選ぶものもいるし、他人を食ってまで生きようとする人もいる。
この少年と同じぐらいの息子を抱える僕としては、
その選択は他人事ではない。
途中で2人がある家の地下室に降りていく。
そこには「食料」として貯蔵された人々がいた。
しかし父親は彼らを助けることもできないし、
彼らを貯蔵している男たちと戦うこともできない。
ただ、ただ息子と必死で逃げるだけだ。
やがて、父親に死が訪れるときが来る。
そんな世界に、子供を残して行けるのだろうか?
重い、ひたすら重い。
よくはできていると思うが、ほっとするところがない。
『ザ・ミスト』を見たときも、どっと疲れて呆然としたが、
本作も怪物が出てこないというだけで状況は同じだった。。。
いまいる世界が、つくづく平和で、
何もないのが幸せと感じたい人におすすめ。
★★★