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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

僕の映画2010ベストテン 第1位は「白いリボン」

旅行人のウェブの中の映画紹介欄「旅シネ」に
原稿を書いていますが、毎年各ライターでその年の
映画ベストテンを選出しています。

そこに今回書いた原稿ですが、
ここに転載します


1.白いリボン(ミヒャエル・ハネケ監督/ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア)
第一次世界大戦前夜にドイツの村で起きたできごと。
モノクロの画面からはクラシックの気品さえ漂う。
来るべきナチズムの予兆を、
子どもたちの不穏な行動で描いた作品。力作。

2.海の沈黙(ジャン=ピエール・メルヴィル監督/フランス)
1947年のジャン=ピエール・メルヴィル監督の処女作。
古い映画だが、日本初公開なのでここに入れた。
占領者のドイツ人に沈黙で対抗する老人が主人公。
そのドイツ人がいくら個人的にはいい人で親仏でも、
占領は占領という姿勢が厳しい。
ストイックな演出と印象的な撮影(名撮影監督アンリ・ドカ!)は芸術品のよう。

3.トイ・ストーリー3(リー・アンクリッチ監督/アメリカ)
昨年、もっとも“泣けた”映画かも(笑) 
とにかく一部の隙もなく、しかも嫌らしくなく感動させてくれる。
大人なら誰しも持っている子ども時代の決別の思い出を、
“おもちゃ”を通して語る。オールドファッションかもしれないが、
アメリカ映画の鑑のような作品。

4.抱擁のかけら(ペドロ・アルモドバル監督/スペイン)
その語り口に浸っているだけで幸せな濃厚な映画時間を過ごせた。
70年代の充実したヨーロッパ映画を、
現代のスピーディな語り口(編集)で見せてくれる。
「愛する者の死」についての映画。

5.シルビアのいる街(ホセ・ルイス・ゲリン監督/スペイン、フランス)
商業映画らしい演出とはかけ離れている、
いわば実験的な映画だが、それが鼻につかず、退屈もしない。
知的な興奮を与えてくれる。サウンドデザインもすばらしいが、
その効果は家のテレビでは半減しそう。

6.闇の列車、光の旅(キャリー・ジョージ・フクナガ監督/アメリカ、メキシコ)
アメリカを目指す移民の少女と
明日のないギャング団の青年の逃避行の物語だが、
前半の克明に描かれたギャング団の生活がリアル。
メキシコ版『シティ・オブ・ゴッド』とも。
社会派とロードムービーがマッチした秀作。

7.人生万歳(ウディ・アレン監督/アメリカ)
70年代半ばに書かれた脚本をもとに、
ウディ・アレンが古巣のニューヨークに戻って作り上げたコメディ。
『アニー・ホール』時代のアレンが好きな人なら絶対満足の
名人芸のような語り口。ありえない話かもしれないが、
「人生そんなもの」という目線が、大人のおとぎ話。

8.息もできない(ヤン・イクチョン監督/韓国)
暴力を振るうことでしか人とコミュニケーションがとれない男が
主人公。全編に「殴る」という行為が続くが、
そこにカタルシスはない。
キム・ギドク監督の『悪い男』を初めて見た時のような、
熱いパワーを感じる。

9.第9地区(ニール・ブロムカンプ監督/アメリカ、南アフリカ、ニュージーランド)
ときどき演出がつまづくこともあるし、
人種問題を置き換えたような演出もベタなところがあるが、
南アの都市上に浮かぶ大宇宙船や、
人間が宇宙人を保護するという発想とその映像化は新しい。
ラスト、宇宙船が動いていくところは、映画的興奮を堪能。

10.冬の小鳥(ウニー・ルコント監督/韓国、フランス)
児童養護施設で養子縁組を待つ少女が主人公の、
韓国系フランス人女流監督による自伝的作品。
家族に捨てられた少女が、
自分の力で生きていく決意を固めていく姿は心を打つ。

ベストテンにはもれたけど、良質と感じたり、
作り手の誠意を感じさせたり、あるいは映画時間を楽しめ、
おすすめできるのは、以下の作品。
みな小粒だけど。ベテランたちは、みないい仕事をしている。

『インビクタス・負けざる者たち』
『華麗なるアリバイ』
『ザ・ロード』
『エリックを探して』
『リッキー』
『マイレージ、マイライフ』
『かいじゅうたちのいるところ』
by mahaera | 2011-02-01 12:00 | 映画のはなし | Comments(0)
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