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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『4月の涙』 20世紀初頭に起きたフィンランド内戦 その狭間で揺れる男女の姿を描く

4月の涙
KASKY

2009年/フィンランド、ドイツ、ギリシャ

監督:アク・ロウヒミエス
出演:サムリ・ヴァウラモ、ピヒラ・ビータラ、エーロ・アホ

配給:アルシネテラン
公開:シネマート新宿、銀座シネパトスほかにて公開中
上映時間:113分
公式HP:alcine-terran.com/namida
 


フィンランド、1918年4月。
内戦で敗走する赤軍の女性兵たちを白軍が追う。
捕えられた女兵士たちは皆レイプされた上に射殺されるが、
准士官のアーロはただひとり助かったミーナを
公正な裁判にかけようとする。しかし判事のもとへ行く途中、
アーロとミーナの2人が乗った船は孤島に漂着してしまう。
ミーナに愛を感じ始めるアーロ。しかしそれも束の間、
判事のもとに着いた2人は離れ離れに。
判事のエーミルは作家でありながら軍に入ったが、
知識階級出身が周りにいないことから、アーロに親近感を抱く。
アーロとミーナの運命は?
 
本作を観るまで、世界史好きの僕だが、
まったく「フィンランド内戦」について知らなかった。
第一次世界大戦、ロシア革命という大きな変化の中、
小国のできごとは注目を浴びない。
ロシアの隣国のフィンランドで起きた内戦で、赤軍を支えたのは
農民や労働者階級という。これが階級間の戦争であることも
フィンランドの人であればわかるのだろうが、
僕は映画を観ている間はわからなかった。
鑑賞後にネットなどで調べて理解したことを踏まえ
本作を振り返ると、准士官のアーロは教養もある中流階級出身、
女兵士のミーナは農民出身と、身分違いの関係であることがわかる。

この映画が風変わりなのは、この若い男女2人が
使命と恋愛の間で葛藤するというメインストーリーに、
中盤から判事のエーミルという中年男性が大きく関わること。
インテリ層出身の彼は処刑にサディスティックな喜びを感じる一方、
自分の仕事を卑しみ、妻がいながらもアーロに
同性愛的感情を抱くという複雑な人物。
アーロがミーナに恋心を抱いているのを知りつつ、
一方的にアーロを求める。
ストーリー的には、この人をここまで重要に描かなくてもいいと
思うのだが、この妙なバランスの悪さが、本作の魅力でもある。
(★★★)
 
※旅行人のWEB「旅シネ」に寄稿したものと同じものです。
http://www.ryokojin.co.jp/tabicine/index.html
by mahaera | 2011-05-17 10:52 | 映画のはなし | Comments(0)
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