ちいさな哲学者たち
Just a Beginning
2010年/フランス
監督:ジャン=ピエール・ポッツィ、ピエール・バルジエ
出演:ジャック・プレヴェール幼稚園の園児たち
配給:ファントム・フィルム
公開:7月9日より新宿武蔵野館にて
上映時間:97分
公式HP:www.tetsugaku-movie.com
パリ近郊の教育優先地区にあるジャック・プレヴェール幼稚園。
そこでは、3歳から5歳の子どもたちが哲学を学ぶという
取り組みが行われていた。子どもたちは月に数回、
様々なテーマについて考え、討論する。
「愛とは」「死ぬこととは」「自由とは」…。
そんな質問に自分なりの答えを見つけて話し合う子どもたち。
「哲学」の授業に学校で苦労した僕なので、
このドキュメンタリーを観る前は身構えてしまったが、
出てくる話題は難しいものではない。
教育テレビで放映されているサンデル博士(だっけ?)
の大学の講義のように、身近な題材を例にとれば、
それらは学問というより、
日々、私たちが向き合っている問題だということがわかる。
私たちは“哲学”というと、哲学者の教えを学ぶことを
想像してしまうが、フランスではその第一歩がまず
「言葉を使って意見を交わすこと」であるのに驚いた。
日本で美徳とされる「言わないでもわかっている」の真逆で、
これは
「様々な考えの人々が集まっている」というのが、
基本の社会だからだろう。
ここで子どもたちが討論するテーマは
シンプルだが普遍的なもの。
少し難しいかもしれないが、それでも子どもたちにイメージできるものだ。
5歳の子どもでも自分の考えを言葉にし、
さらに他人の意見に耳を貸すことを学習、論理的な思考を身につけていくのだ。
子どもたちはみんなが同じ考えではないことを知り、
相手を説得しようとさえする。
だからかもしれないが、この子どもたちは日本に比べてずっと大人っぽい。
思わず笑ってしまったのが、5歳児による大人顔負けの恋愛。
前の恋人がクラスにいて、「もう君とは別れた」なんて
5歳児が言うのだから、さすが恋愛の国、フランスだ。
(★★★)
旅行人のWEBサイト「旅シネ」に寄稿したものを転載しました。