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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『ペーパーバード 幸せは翼にのって』スペイン内戦を芸人の視点から描く

ペーパーバード 幸せは翼にのって
Pajaros de apel
2010年/スペイン

監督:エミリオ・アラゴン
出演:イマノル・アリアス、ルイス・オマール(『抱擁のかけら』『バッド・エデュケーション』)、ロジェール・プリンセプ(『永遠の子供たち』)、カルメン・マチ(『抱擁のかけら』)
配給:ロングライド
公開:8月13日より銀座テアトルシネマほかにて
上映時間:123分
公式HP:www.alcine-terran.com/papaerbird

スペイン内戦下のマドリード。
喜劇役者のホルヘは、空襲で愛する妻と息子を失ってしまう。
内戦終了から1年後、劇団へ戻ってきたホルヘは、
相方のエンリケと再会。
そして戦争で両親を失いエンリケに引き取られていた
ミゲルという少年と3人で暮らすことになる。
一方、反体制派に厳しい弾圧を行っている軍は、
劇団にもスパイを送り込む。巡業へと旅立つ劇団。
最初は亡くした息子の面影をミゲルに見て、
突き放してしまうホルヘだったが、
やがてミゲルに喜劇役者の才能を見出していく…。
それをやさしく見守るエンリケ。
しかし、反体制派のメンバーとして疑いをかけられている
ホルヘに危険が迫っていた。

1936~39年にかけてスペインで起きた内戦は、
第二次世界大戦の前哨戦といってもよく、
ソ連や国際義勇軍の援助を受けた左派は、
ドイツとイタリアのファシズム陣営から援助を受けた
フランコ将軍率いる右派に破れた。

この内戦とその後の独裁政治は、
スペイン国民に長い間重い影を落とした。
この時代を描いた映画や文学作品は多い。
義勇軍に参加した、ヘミングウェイは名作「誰が為に鐘は鳴る」を書いたし、
キャパを有名にした写真「崩れ落ちる兵士」
映画では最近では「パンズ・ラビリンス」をはじめ、
それこそ、スペイン映画のあちこちにその影が落ちている。

本作は“劇団の芸人たちから見た”という切り口で、
当時の様子を別な面から見せてくれる。
妻子を失い、心を閉ざした主人公は、
“反体制派”として監視されながらも劇団の運営に努力する。
この主人公を支える喜劇の相方のエンリケがゲイで
男ながら孤児のミゲルの母親的存在となり、
3人で疑似家族を形成する感じがいい
アルモドバル監督の『抱擁のかけら』に出演していた
ルイス・オマールとカルメン・マチが、
主人公と少年の脇を支える好演をしているのも見逃せない。

欲を言えば、うまくきれいにまとまりすぎていて、
テレビドラマのような感じがしてしまったことか。
(★★☆)
by mahaera | 2011-09-07 09:43 | 映画のはなし | Comments(0)
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