ピナ・バウシュ 夢の教室
2010年/ドイツ
監督:アン・リンセル
出演:ピナ・バウシュ、ベネディクト・ビリエ、ジョセフィン=アン・エンディコット
配給:トランスフォーマー
公開:ユーロスペース、ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開中
日本ではヴィム・ヴェンダースの
『ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』と対になるような形で、
現在公開中の作品だ。
あちらがピナの死後に作られたのに比べ、
本作が作られたのはピナが亡くなる約1年前。
ピナ・バウシュのことは、先月もこのブログで書いたが、
世界的な舞踊家であった彼女の代表作
「コンタクトホーフ」
を踊るため、ダンス経験のない40人の十代の若者が集まる。
かつて老人たちばかりで再演したことがあるピナだが、
今回は逆に子供たちに演じさせるのだ。
十ヵ月後の本番に向けて稽古が始まった。
最初は人に触れることさえ慣れず、戸惑う少年少女たちだが、
やがて自分に自信を持つようになっていく。
演目はピナの作品だが、このドキュメンタリーの主役は、
レッスンに励む少年少女たちと2人の指導者ベネディクトとジョー(ジョセフィン)だ。
ピナはレッスンを時々観に来てチェックし、全体の方向性を決めていく。
見た目は大人びていても、インタビューでは不安や恐れ、
喜びをさらけ出していく若者たち。
実際、さまざまな感情を表現するピナの振り付けは難しいし、
マスターするのは至難の業だろう。
しかしその努力の過程を人々が感じ取ることができ、
そしてだからこそ感動するのだ。
前にロックの名曲を老人たちが歌う『ヤング@ハート』という
ドキュメンタリーがあった。優れた作品は、いろいろな表情を
持つことが出来る。このピナの作品も、プロのダンサーでもなく、
まだ恋の甘さも人生の苦さも知らない若者たちが踊ることにより、
新しい表情を見せていく。
そこに創り手の喜びを感じる。
(★★★☆)