フランクリン・J・シャフナーという映画監督をご存知だろうか?
作品数もそれほど多くはなく、また80年代以降の晩年は作品に恵まれなかったので、全盛期は60年代末から70年代中期のわずか10年。
しかしその全盛期に70年代映画ファンに忘れがたい作品を残した。
何でわざわざ書くというと、先日たまたまTsutayaで借りた4本のうち、
『パピヨン』と『ブラジルから来た少年』が彼の作品だったからだ。で、改めて観て、その正統派の作風に感心した。
フランクリン・J・シャフナーは
1920年に東京で生まれる。
父親は宣教師だったが、彼が6歳の時に死去。
アメリカに戻ったのは16歳のときというから、
日米の緊張が高まる時期まで日本で暮らしていたのだろう。
帰国後は大学に行くが、戦争勃発と共に
OSS(CIAの前身)に
所属したようだから、日本語ができたのかもしれない。
しかし戦争が終わるとテレビ業界に入り、後に映画化されて有名になった
「十二人の怒れる男」(映画版は同じくテレビ出身のシドニー・ルメット)を手がけ、エミー賞を受賞。
1963年より映画監督に。
まあまあの作品を4本監督した後、
1968年に監督した
『猿の惑星』が大ヒットする。
ご承知のように原作は戦時中に日本軍の占領下に入り、
その体験を元に書いた「戦場にかける橋」が映画にもなったフランス人
ピエール・ブール。
この「猿の惑星」も白人がそれまで猿とみなしていた
アジア人と立場が逆転するという風刺小説だが、
映画版では黒人問題や
赤狩りのメタファーと
当時の現代的な問題を取り上げている(脚本の
ウィルソンは赤狩りの対象になったことがある)。
この映画については、一冊の本ができるくらいの話題があるが、
それは置いておいて、シャフナーは理不尽な権力や仕組みの中で翻弄される主人公(かつての支配階級)を描いた。
次作の1970年の
『パットン大戦車軍団』は、
アカ嫌いの超タカ派の軍人パットンの戦時中の功績を描いた戦争大作だが、もうニューシネマが始まっているのに時代遅れの戦意高揚映画のような作品(に一見見える)。
脚本は戦争経験がない反権力青年
フランシス・フォード・コッポラだし、主演はリベラルで有名な
ジョージ・C・スコットだ(スコットはアカデミー主演男優賞を受賞するけれども辞退)。
冷戦時代には、パットンのような男は、
すでに時代遅れと描く、骨太な演出だ。
次の「ニコライとアレクサンドラ」は未見だが、その次が1973年の
『パピヨン』になる。
つづく