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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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子供に教えている世界史・番外編 映画『カーツーム』  ゴードン将軍の戦死

子供に教えている世界史・番外編 映画『カーツーム』

 さて、休憩時間や食事時間を利用して、世界史に関係する映画を見ているシリーズ。今回は、チャールトン・ヘストン主演の1966年の『カーツーム』。
シネラマ大作として作られたのだが、出来は凡庸で映画史には残らない作品だ。
とは言え、真の映画ファンは名作・傑作だけを負わない。
凡作の中にも楽しみを見出すのが、映画好きなのだ。
さて、この映画の主人公はイギリスのゴードン将軍
太平天国の乱の際に、ゴードン率いる雇われ外人部隊が
戦果をあげ「常勝軍」と呼ばれた、というのは世界史の教科書にも出ている話。
これはイギリスの正規軍ではなく、イギリスが清に貸し出したので、正式には清の皇帝の指揮下にいた。
帰国したゴードンは、イギリスの民衆に英雄扱いされる。

 映画は、1881年にスーダンで起きたマフディーの乱から始まる。
「マフディー(救世主)」を名乗るムハンマド・アフマドのもと、
イスラーム原理主義を唱える人々が結集し、
スーダンに駐留するエジプト軍を襲ったのだ。
スーダンはオスマン朝から独立したエジプトに征服されたが、
エジプトもまたこの頃にはイギリスの保護国化が進んでいた。
ゴードンもハルツーム(カーツーム)に総督として赴任していたことがあり、その手腕を買われてイギリス政府からエジプト軍をハルツームから退却させるよう依頼を受ける。
戦闘が目的ではないから、彼には一兵の英国兵もつかない。
映画の中では、政治の駆け引きが丁寧に描かれる。
帝国主義政策を進めていたディズレーリを破って当選したグラッドストン首相は反帝国主義で、本気でマフディーと戦う気はなく、できればスーダンから手を引くつもりだった。
また、取り残された人たちを救う気もあまりない。
一応、ポーズでゴードンを出したけれど、ダメでしたということにしたいのだ。
しかし、現地に行ったゴードンは帰国命令に背いて、頑張ってしまう。

 マフディー役に、イギリス人のローレンス・オリビエが黒塗りで扮しているのが時代だが、意外にもマフディー軍を特に悪者としては描いていない。
彼らには彼らの立場があるとして、ヘストン扮するゴードンと割と対等に描いている。
ゴードン自体もヒーローとしてではなく、弱さや功名心もある男として描いている。
ただ演出力か演技力か、今ひとつ魅力を感じられないキャラになっているのが残念だ。

 息子が驚いたのは、戦闘シーンで遠くの方までいる人、人、人。
家のテレビで見るとアリの巣をつついたようにしか見えないが、
CGがない時代だから、たくさんのエキストラを動員したのだろう。
今じゃいくらでも画面に人は増やせるが、さすがに本物には迫力を感じたらしい。
最後にマフディー軍がハルツームに突入するところなんか、
人が過密すぎて『ワールド・ウォーZ』だよ。
囲まれているはずなのに、汽船でナイル河を行ったり来たりできるのも、こんな感じだったのかなあと、逆にリアル。

 のらりくらりしていた首相は世論の非難を受けて、
英軍を援軍として送るが、できたら無傷で戻したいから、
エジプトに着いてもなかなか助けに行かせない。
人気のあるゴードンだけ脱出すれば、国民には「やった」というポーズが取れる。
しかしゴードンはそのことを知っており、自分が脱出すれば援軍は来ず、町の人は虐殺されるとして、最後まで戦うことにする。
結局、英軍がハルツームに到着したのは、
虐殺が終わった2日後だった。
「ゴードンを見殺しにした」グラッドストンは、
国民に「ゴードン殺害犯」とあだ名され、ヴィクトリア女王にも叱責された。

 映画はゴードンの死で終わる。
世界史ではグラッドストンはマフディーの乱の鎮圧を諦め、
反乱は1998年まで続く。グラッドストンは帝国主義に反対だったが(植民地を広げない小英国主義)、それは理想でも時代には反していた。
イギリスがスーダンから手を引くと、その代わりにフランスやドイツのアフリカ進出を招き、アフリカはこの後、一気に分割されていくことになるのだ。
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by mahaera | 2016-07-06 12:33 | 世界史 | Comments(0)
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