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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『われらが背きし者』、『フランコフォニア ルーヴルの記憶』

10月21日公開
『われらが背きし者』 スザンナ・ホワイト監督


ジョン・ル・カレ原作によるスパイ映画。
ル・カレ作品はよく映画化されているが、
最近の『裏切りのサーカス』や『ナイロビの蜂』は
非情な世界を英国俳優たちの抑えた演技で見せてくれ、
英国映画らしい、いい作品だった。
今回も派手な打ち合いはほとんど皆無の地味なスパイものだが、
なかなか見ごたえのある作品になっている。

映画は3人の男を軸に進む。
自分の浮気が原因で妻とはうまくいっていない大学教授(ユアン・マクレガー)が、関係を修復しようと妻とふたりでモロッコに旅行に行く。
そこで彼はロシアンマフィアのマネーロンダリング担当の男(ステラン・スカルスガルド)と出会い、彼に亡命の手助けを頼まれる。
まもなく用済みとなるマフィアは、
家族とともに組織に消される運命にあった。
教授から連絡を受けたイギリス情報部の担当者(ダミアン・ルイス)はマフィアを亡命させようとするが、
彼と個人的に対立する上層部に邪魔をされてできない。
そこで彼は情報部の上司に内緒で亡命工作を進めるが、、、。

主人公は暴力とは縁のない一般人。
その彼が危険な世界に巻き込まれていくうち、家族を救うために亡命しようとするマフィアと奇妙な友情で結ばれていく。
そして危険を乗り越えることで、
冷めていた夫婦の絆も取り戻していく。
主人公のユアン・マクレガーがイケメンすぎて、
いまひとつ大学教授に見えないのが残念。
しかしマフィア役のステラン・スカルスガルドは、
善悪両方の面を持つマフィアを深みのある演技で見せているし、
あまり知らない俳優のダミアン・ルイスも、
実際にイギリスにいそうな官僚タイプの情報部員の雰囲気をうまく出し、ともに好演。
キレはないかもしれないが、
こうした堅実に作られているB級映画は好きだ。
昔、名画座の2本立てで、お目当てじゃない1本で、
拾い物をした感じ。
(★★★)

10月29日公開
『フランコフォニア ルーヴルの記憶』 アレクサンドル・ソクーロフ監督


観念的な映画がダメなわけじゃないよ。
スカした映画が嫌いなわけじゃない。
ただ、この映画はアイデアが上滑りして、
それがこちらに伝わってこなかった。
ふつうの劇映画でもドキュメンタリーでもない本作は、
いくつかのイメージのつなぎ合わせだ。
冒頭、監督のもとに美術品を積んで荒波に揉まれている貨物船の船長から、ネットで連絡が入る。
再現ドラマでは、第二次世界大戦中に、ルーブルの館長とドイツ人将校が美術品を守ることで協力する話が演じられる。
それと夜のルーブルを徘徊するナポレオンと
フランス革命を象徴する女性が徘徊する。
大仰な音楽とかみ合わないテンポに、夢の世界に引き込まれた。(★)
by mahaera | 2016-11-04 10:19 | 映画のはなし | Comments(0)
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