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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ』 彼の失態がトランプ政権を誕生させた?

ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ
Weiner
2016年/アメリカ

監督:ジョシュ・クリーグマン、エリース・スタインバーグ
出演:アンソニー・ウィーナー、フーマ・アベディン
配給:トランスフォーマー
公開:2月18日よりシアター・イメージフォーラムにて公開中
公式ページ:www.transformer.co.jp/m/weiner/


ドキュメンタリーの面白さの一つに、
当初予定していなかった方に事態が進んでいくことがある。
劇映画なら軌道修正するが、ドキュメンタリーなら止めずに、
そのズレを取り続ける方が美味しい。
このドキュメンタリーはまさにそうした一本だ。

アンソニー・ウィーナーは、民主党の若手有望株の議員だった。
妻はヒラリー・クリントンのチームにも加わっているフーマで、
ヒラリーほか民主党の中枢部とのパイプも太い。
しかし複数の女性と性的なメッセージや画像を送り合っていたことが報道され、そのスキャンダルで議員を辞職することになる。
2年後、ウィーナーは「もう一度チャンスを!」と
ニューヨークの市長選に立候補する。
最初は冷ややかだったマスコミや人々だが、
ウィーナーの熱意は人々を動かし、支持率はトップに。
ドキュメンタリーは、そうした彼のカムバックに
密着したものになるはずだった。
ところが、この男は懲りていなかった。
議員を辞職して謹慎中に、やはり複数の女性と、
自分や相手のエロ画像をやりとりしていたことが発覚してしまう。。

性の好みは人それぞれだが、有名人の不倫や浮気を
世間が許さないのはアメリカも同じだ。
前回のスキャンダルのとき、妻のフーマが夫を支える姿に、
世間は彼女のために思って許してやろうという気になったようだが、二度目はさすがに「奥さん、あんなに苦しんでんのに、あいつはダメだ!」となる。
事件が発覚して、人気は急落。
そのとき、妻のフーマが記者会見に出る。
「それでも夫を支える」か「もう見限りました」か?
このあたりの奥さんの表情、
もう何の意志も読み取らせまいという顔になっている。
ハッキリ言って、コワイ。

また、よくぞここまで撮らせたな、というほど、
スキャンダルに対応するウィーナー、
奥さんとふたりでチョー気まずくなっているウィーナー、
選挙スタッフの白けた視線を浴びるウィーナー
などのさまざまなウィーナーの表情をカメラが捉えている
もう、狙おうと思っても、こんな瞬間は撮れないだろうなあ。

さて、昨年の大統領選挙戦のときの
ヒラリーの「私用メール問題」を覚えているだろうか。
結局、これがヒラリーの最大のウィークポイントになったわけだが、その原因を作ったのも実はウィーナーなのだ。
ウィーナーが起こしたこのエロ画像事件で、
FBIがウィーナーと妻フーマとの共有端末を押収。
調査している際、そこにヒラリーが送受信したメールを発見。
それがこの私用メール事件の発端になる。
フーマは古くからのヒラリーの側近だったので、
もしかしたら対立陣営にそこを狙われたのかもしれない。
そう考えると、この男のセックススキャンダルがなければ、
トランプは当選しなかったとも想像できる。

アメリカの選挙戦の内側を知るには興味深い作品だ。
まあ、それはともかく、このドキュメンタリーを見ていて、
人間、そう簡単には変われないとつくづく考えさせられた。
ウィーナーの顔が、まるで浦沢直樹の漫画に出てくる感じの小悪人顏なのだが、見ている間に彼に同情さえ覚えてくる。
いゃ、マスコミ、そこまで叩かなくてもとね。★★★
by mahaera | 2017-03-14 12:29 | 映画のはなし | Comments(0)
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