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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『シェイプ・オブ・ウォーター』 本年度、アカデミー作品賞受賞作




いうまでもなく、今年のアカデミー作品賞受賞作品
今まで、知る人ぞ知る、怪獣大好きデル・トロ監督が、
こうして評価されたことはうれしい。
97年の「ミミック」や2001年の「デビルズ・バックボーン」の頃は、ジャンル映画の監督で一生終わるのかなと思っていたが、
やはり作家性が花開いたのは2006年の「パンズ・ラビリンス」かな。
これが今の所の彼の最高傑作だ。

さて、公開からだいぶ経っているので、今更僕が書くことも少ないのだが、ちょっと映画のメインテーマからそれたところを。
主人公と対照的に描かれている、この映画の悪役、
マイケル・シャノン演じるストリックランドの描写が、
結構丹念に描かれていて、下手をすると主人公よりも感情移入しやすい。
単なる悪役ならば、冷酷な部分だけを描写すればいいが、
ストーリーには不要な彼の家庭も描かれている。
50年代の典型的な幸せなアメリカンの中流階級。
問題のない、明るい光が当たっている家庭で、
ストリックランドだけが異質だ。
彼は家庭では居場所がないように見える。
一方、研究所では、一見彼が支配者のようだ。
他のものを震え上がらせることができるが、
役職的にはそんなに上ではない。

ストリックランドが、新車を買いに行くシーンも印象的だ。
あのシーンがあるからこそ、彼の哀れな小物感がにじみ出る。
そして、上官である将軍に認められないことを訴える
「いつになったら、まとも(decent)な男として認めてくれるのか!」というセリフも、人間味が出ている。
相手を従えることでしか、関係が築けない、
マチズモに支配された哀れな男。
主人公と半魚人の愛の形と対照的だ。

そして、ラスト。ここで観客は、
物語の語り手が隣人のジャイルズであることに気づく
つまり映画は、全編を通して、これはジャイルズの語る話であることを、ここで再確認させらるのだ。
半魚人と結ばれるイライザの姿は、
ジャイルスが目撃したことではない。
つまりあれは想像とも取れる。
映画の手法で良くある「信じられない語り手」だ。
「パンズ・ラビリンス」はいい映画だが、
エンディングは悲しいもので、
観客に十分なカタルシスを与えることができなかった。
それを受けて、ハッピーな気持ちで劇場を出られるよう、
「語り手」にハッピーエンディングを語らせたと思うのは、うがった見方だろうか。


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by mahaera | 2018-03-31 12:45 | 映画のはなし | Comments(0)
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