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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『万引き家族』 社会の狭間で生きている“家族”を通し、家族とは何かを問いかける


パルムドール受賞後の試写に行ったら、1時間前でも満席で入場できず。翌週、また1時間前に出直してようやく見れた。
それほど、是方作品には期待が高いのだろう。
 
もう、前情報が散々入っているだろうし、見た方も多いのでストーリーは省くが、見もしないでというか、これまで是枝作品を1本も見ていない人たちが、
「万引きを増長させるようなタイトルだから」
「万引きに入られた人たちはどうでもいいんですか?」と書き込むのは、自分がバカだと言っているようなので、憐れ。
また、なぜすぐに「反日」に結びつけるのかの考えもサッパリわからず、とほほ。論点が違うのだが。

映画の主人公は昔から犯罪者や罪を犯すものが多かった。
あえて犯罪者を主人公にすることによって、そうでしか生きられなかった者に共感することで、いろいろな人間の人生を知る。
それができるのが、映画であり小説なのだが、誰でも発信できるネット社会は、不寛容な発言も拡大してしまった。
本作はそんな息苦しい現代から、落ちこぼれてしまった人たちを描いた物語だ。
なので、人に共感できない人たちは見てもなんとも思わないかもしれない。
 
「万引きするぐらい社会の底辺で暮らしているけれど、家族は幸せでした」という単純な話ではもちろんなく、吹き溜まりの埃のように、自然に集まって来てしまった彼らには、それぞれつらい過去があるばかりか、
一緒に暮らす目の前の人たちにもそれを隠している。
それがあるから、このひと時を大事にしているのかもしれない。

前半の明るいムードから、後半は一転して、
それぞれの想いが露わになってくるのだが、
もちろん是枝作品なので何が正しいか正しくないかは、
こちらの判断に委ねる。
そもそも、家族や人生に正解はない。
そして、家族でもさえ同じ状態は長くは続かない。
 
今見ると、一家にやってくる少女の姿は、偶然ながら先日虐待死した5歳の女児を連想してまう。
安藤サクラ「拾ったんです。捨てた人がいるんじゃないですか」のセリフは、たとえ形的には家族でも、心の中では捨ててしまった親とは対照的だ。
そしてその安藤サクラが、映画の中では最初は目立たなかったのが
後半グングン存在感を増し、最後には圧倒的な演技を見せる。
もちろんそれはそのシーンの脚本を渡さなかった(準備させない)是枝演出あってのものだが、それも含めても何かすごいシーンに立ち会っているような感覚を覚えた。
 
また、飄々としながら笑わせてくれる樹木希林が、今回もちょっとしたセリフや表情で、3秒だけどす黒い闇を見せてくれるのも凄みがある。
リリーフランキーは、善人と悪人、気の弱さ、後悔などをすべて併せ持っていて、ダメだけど憎めない。
音楽の細野晴臣、そして撮影の近藤龍人の仕事も素晴らしい。ということで、プロが作った素晴らしい作品。
あとはそれを受け止められるかは、本人の感受性次第だろう。
★★★★

by mahaera | 2018-06-11 17:06 | 映画のはなし | Comments(0)
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