出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル
毎年、決まったように届けられるアレン映画。
基本はライトなコメディだが、彼の作品に通底するのは大人のビターな味わい。
映画を見ている間は笑っていられるが、余韻はほろ苦い。
本作の舞台は、1950年代のニューヨーク州コニーアイランド。
アレン映画にたびたび出てくる遊園地の中で、
ヒロインであるケイト・ウィンスレットは回転木馬の操縦係を
している夫のジム・ベルーシと住んでいる。二人とも再婚だ。
物語の語り手となるのは、ジャスティン・ティンバーレイク扮するビーチのライフガードの大学生だが、話はほぼウィンスレット中心に進む。
彼女はかつて女優を目指していたが、結婚。
しかし自分の浮気が原因で夫を死に
追いやってしまった過去がある。
今の夫は優しいが教養がなく、自分を理解してくれるのではないかと大学生のジャスティンに期待を寄せる。
大学生も年上で人妻だが、
美人のウィンスレットにのめり込んでいく。
そこに現夫のベルーシの前妻との間の娘が転がり込んできたことから、嫉妬の炎が燃え、やがて悲劇を呼んでいく。
最近では、同じビターな映画でも『ブルージャスミン』は、
ケイト・ブランシェット演じるジャスミンの愚かさを突き放して観れたせいか、コメディとして見られたが、
本作は軽いタッチながら悲劇色が強い。
「ここではないどこかへ」行くことが唯一の救いのウィンスレットの取り乱しようは、笑って見ていられるレベルではなく、正直、映画をかなり重くしている。
中年に差し掛かり、かつて夢見たことが成し遂げられず
人生がこのまま進んでいくことが辛い。
夫は自分を愛してはくれるが、理解はしておらず、
また時折見せるその弱さも憎い。
こんな女性(男性も)は、僕の周りにもいくらでもいる。
自力ではどうしようもないことは、世の中たくさんある。
そこを異性が救ってくれることもあるだろうが、
期待は裏切られることも少なくない。
たいていの夫婦は、どこかで折り合いをつけて生きている。
映画ではウィンスレットがティンバーレイクにのめり込んでいくが、やがてそれは嫉妬となり、悲劇を呼ぶ。
ウィンスレットの演技は、その行き場のない(やり直しが難しい)年齢の女性(40代)感がすごくよく出ていて、
「熱演」の一言に尽きる。
ただし、それが映画の重さになってしまっていて、
スピード感を殺していることも確か。
『ブルージャスミン』のような絶妙な
ブレンド具合にはなっていないのだ。
しかし、アレンの女性を客観的に見る目は、
冷静というかある意味冷酷だ。
女性の素晴らしさと愚かさを共存させているのだ。
ただし好みとしては最近の諸作の中では、いまひとつ。
重い。
映画は★★☆だが、ウィンスレットの熱演は
みるべき価値はあるので☆おまけして、★★★