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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『バトル・オブ・セクシーズ』ウェルメイドで内容は深い


本作をスポーツ映画といっていいかどうかはわからないが、『アイ、トーニャ』と並ぶ、アメリカ70'sのスポーツ選手を題材とした映画の名作といっていいだろう。


ビリー・ジーン・キング夫人は、当時子供だった僕もうっすらと知っている、アメリカ女子テニス界で偉業を達成した女性だ。

本作は予告編から、すっかり性差別に対抗するために戦うウーマンリブを描いた作品と思っていたが、それはミスリード。

ありのままの自分を肯定することに、ためらいを持っている人々を優しい目線で取り上げた作品だった。


最初の方の美容院のシーンがすばらしい。

エマ・ストーン扮するキングが、美容師のマリリンと恋に落ちる夢うつつの雰囲気を鏡ごしに(ぼやけも入れながら)見せ、ここで引き込まれた(撮影監督は『ラ・ラ・ランド』の人)。
優しくて理解のある夫がいながら、女性に初めて恋をしてしまうキング。

このふたりが結ばれるまで(ディスコとモーテルの部屋)を、男女の恋愛でもここまでないというくらい、ドキドキと描いていく監督の手腕はさすがだ。


一方、彼女と対戦する55歳の男性テニスプレーヤーのボビー・リッグスだが、予想とは違い悪役ではない。
露悪的な言動やパフォーマンスは彼のキャラクターで、彼自身が本当に性差別的な思考があるわけではない(男尊女卑思考の悪役はビル・プルマン演じるジャック・クレーマーが引き受けている)。
リッグスの賭け事への依存症、裕福な妻(エリザベス・シュー)との関係、疎遠になっている息子との関係も丁寧に描かれており、スティーブ・カレルの名演もあって、人間くさく憎めないキャラなっている。
途中の妻とやり直しをしたいが拒否されるシーン、息子と別れるエスカレーターのシーンは胸を打ち、本筋のキングの話とは別に深い余韻を残した。


エマ・ストーンも過去作品の中でもベスト級の演技だが、彼女を取り巻く脇キャラもきちんと意味があり、生きている人間を感じさせる。夫役のオースティン・ストウェル(『セッション』の主人公の当て馬となるドラマー)のイケメンだけどちょっとバカっぽく、でも実は思慮深く相手のことを考えていたという、けっこう複雑なキャラもいい。

また、実際にゲイであることを表明しているアラン・カミング扮する服飾デザイナーも、少ないセリフに彼の人生も織り込んでいるようで、重みがある。

ラストは彼がいいシーンを作り出してくれた(まるで「カサブランカ」の警察署長だ)。


ということで、前知識あまりなく、ミスリードされて観たせいもあるけど、笑って泣いて、しかも「本来の自分に帰っていく」というテーマと人の優しさに泣いた。監督はやはり僕が大好きな映画『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトンとヴァレリー・ハリス夫妻
長編は3作目だが、その前にミュージックビデオはたくさんとっており、スマパンの「Tonight Tonight」、オアシスの「All Around the World」、レッチリの「By The Way」など、みなさん一度は見たことあるものば
★★★★

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by mahaera | 2018-08-03 10:38 | 映画のはなし | Comments(0)
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