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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『太陽の塔』 日本の経済発展を象徴する万博会場に現れた“異物”


2018年/日本
ドキュメンタリー

監督:関根光才
配給:パルコ
公開:9月29日より渋谷・シネクイント、新宿シネマカリテほか

エンタメ映画もいいが、たまにはこうした知的好奇心をくすぐるドキュメンタリーも観てみてはどうだろう。

現在、一般公開されている太陽の塔の内部だが、
この塔が建てられたのはほぼ半世紀前の1970年
日本中を熱気で包んだイベント「日本万国博覧会」の中心に
造られた祝祭空間「お祭り広場」の中心に、
この高さ70mの塔が建てられた。
広場の天井を突き破り、空に向かって両手を広げるこの塔は、
「進歩と調和」という陽性でポジティブな万博のテーマとは異質の、何か原初的なものも感じさせた。

本作は、その太陽の塔製作にまつわるエピソードから、
作者の岡本太郎という人物、
そして29人の識者たちへのインタビューなどを通して、
この塔が一体なんなのかを追うドキュメンタリーだ。
単なる「太陽の塔メイキング」ではなく、
この塔が何から影響を受け、何に影響を与えたのかという概念的なことにも踏み込んでいく。

ご存知かもしれないが、太陽の塔には、
過去、現在、未来という3つの顔があり、
内部には生物の進化の歴史を辿る「生命の木」がある。
“高度成長”で浮かれ騒ぐ日本で、
“発展”の陰でなかったことにされていく”過去”。
それに異を唱えるかのような、強烈な異物感がこの塔にはある。
それは、未来志向の万博に打ち込まれたくさびのようでもあり、またそれひとつが宇宙の如く存在している。

面白いのは、多様な専門家へのインタビューで、
みな「それぞれの太陽の塔」像を持っていることだろう。
単なる建築物ではなく、“象徴”ととらえているのだ。
それが、みなそれぞれがバラバラのイメージで、興味深い。
★★★
by mahaera | 2018-10-03 11:04 | 映画のはなし | Comments(0)
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