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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『マダムのおかしな晩餐会』 コミカルで風刺の効いたアレン風味の大人の恋愛ドラマ


2016年/フランス
監督:アマンダ・ステール
出演:トニ・コレット、ハーヴェイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマ
配給:キノフィルムズ
公開:11月30日よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開中

お金を払って映画を見るとなると、
ディナーもデザートも同じ値段ならどっしりとしたディナーのほうがお得かなと、大作映画をつい選んでしまうことが多いだろう。
本作はそういった意味では、デザートや間食のミニサンドイッチみたいなものだが、それも映画。
洒落た会話や笑い、風刺、人生の皮肉を楽しむ作品だ。

物語の中心となるのはふたりの女性。
お金持ちの女主人とそのメイドだ。舞台はパリ。
アメリカからパリの屋敷に越してきた裕福な夫婦アンとボブ。
アンは友人たちを招いたディナーを計画するが、
ひょっこりやってきたボブと前妻の息子が出席することになり、
人数は縁起の悪い13人に。
そこでアンはスペイン人メイドのマリアを、
招待客に仕立て上げる。
ところが最初はおとなしくしていたマリアは酔いも入り、
下品なジョークを連発。
それが招待客の一人にウケてマリアに一目惚れしたことから、事態は思わぬ方向に転がっていく。

ウディ・アレンも取り上げそうな、裕福な階級でのパーティ。
アンは裕福な夫(実は資金繰りに困っている)と結婚しお金と地位も得たのに、心はどこか虚しい。
夫が自分を愛しているかわからず、常に不安に悩まされているのだ。
一方、夫に先立たれたマリアは、仕送りしているひとり娘を生き甲斐にし、人生をポジティブにとらえている。
この二人を対比しながら、成り行き上、マリアが身分を隠して招待客の一人と付き合いだすことから生まれるコメディ部分(正体を隠しているので)、そしてアンの中年の危機、舞台をパリにしたことで生まれるアメリカ、スペイン、フランス、イギリスなど各国の男女の恋愛観などが描かれていく。

夫婦なのに心が通い合わせない「愛のすれ違い」、
嘘をついているのに惹かれ合うふたりという2つのカップルが描かれるが、アレン作品ほど教訓じみていないのは、恋愛を悲観的にとらえるアレンと違い、こちらはフランスの女性監督が描いているからか。
アレンだと「こんなに愛しているのに、いつか愛は壊れる」だが、「先のことは考えず、いまを楽しみましょう」という感じだ。
マダムは『リトル・ミス・サンシャイン』などのトニ・コレット、メイドにはアルモドバル作品で知られるロッシ・デ・パルマ(日本人的感覚では美人かはかなり微妙なのだが顔にインパクトあり)、マダムの夫をハーヴェイ・カイテルが演じている。
★★★

by mahaera | 2018-12-10 12:40 | 映画のはなし | Comments(0)
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