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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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子供に教える世界史[古代編]統一へ向かうオリエント(前2300〜前1600年)その3 ハンムラビ法典


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(写真)ハンムラビ法典の碑文。バビロンのマルドク神殿にあったものだが、前12世紀にエラム人に略奪されて、イランのスーサで発見された。ルーブル美術館の目玉のひとつ。浮き彫りの左側がハンムラビ王で、イスに座った神から法を授かっている。つまり法は神が決めたものという意味だ。


バビロン第一王朝とハンムラビ法典
さて強力だった古アッシリア王国のシャムシ・アダド1世
前1781年に死去すると、メソポタミアは戦国時代。
群雄割拠状態になっていく。
その中で頭角を現していくのが、
バビロン第一王朝の6代目の王ハンムラビだった。
ハンムラビはシャムシ・アダド1世が生きている間は
臣従していたが、その死後はアッシリアと協力して
前1764年にシュメール地方のラルサ王朝を征服。
その後アッシリアが没落していくと、これも征服した。
こうしてメソポタミアはアッカド王国以来、久々に再統一された。
ハンムラビ王は、運河や治水、灌漑など大規模な工事を行った。
当時、すでにシュメールの地は、
千年以上続いた灌漑による塩害に苦しめられていたからだ。
またハンムラビはシュメールの法に乗っとり、
「ハンムラビ法典」を編纂して、領内の多民族統治に務めた。

ハンムラビ法典は「目には目を、歯には歯を」の復讐法ばかり有名になってしまったが、これは残酷ではなく、「倍返し」などの際限ない復讐に歯止めをかけようとしたともいわれる。
本文は282条からなり、聖書にも引用されている
「目には目を」の文は、196と197条。
おそらく当時としてはかなり公平性を持った法律で、
女性の権利や奴隷の権利、犯罪被害者へ加害者による賠償
命じるなど、身分差別(3つの身分があった)はあるが人種や宗教の差別はなかったことが特徴だ。
ハンムラビ法典はもともとアッカド語で粘土板に書かれたが、のちに石柱に刻まれた。
楔形文字でハンムラビ法典が刻まれた有名な玄武岩の石棒は、イランのスーサで発見された。
これは紀元前12世紀にバビロンから奪われ、
スーサに運ばれたもの。現在はパリのルーブル美術館にある。
ハンムラビは前1750年ごろ死去する。バビロン第一王朝はその後、しばらく続くが、最終的には前1531年にヒッタイトによって滅ぼされた。
このころには、セム系の民族に変わり、インド=ヨーロッパ系の民族がメソポタミア地域に登場していたのだ。


[ハンムラビ法典]
ハンムラビ法典には、現代からすると意外なことが記されているが、私が注目したのはビールに関する記述。
シュメールやメソポタミアでは前3000年ぐらいから
ビールが飲まれていた。
今のビールと違い、パンを水につけて発酵させたようなもので、立派な食事の一部だった。
神殿に奉納するビールの量なども定められているが、
ハンムラビ法典では
108条「酒場の女が酒と麦(貨幣の代わり)の交換を拒んだり、値段をごまかしたりしたら、川に投げ込んで溺死させてもいい」というのがある。
まずは酒場があったこと、そこで働く女性がいたこと、値段のごまかしがあったことがここからわかる。

109条「もし酒場に謀議をしている犯罪人が集まっているのを知りながら、通報しなかったら、その酒場女は死刑」

14条では「幼児誘拐が死刑」となっているのは、奴隷に売り飛ばしたりすることがあったからだろうか。不動産や土地の売買、利息に関しての規定もある。

また、「妻が子を産ませるために女奴隷を夫にあてがったら、その女奴隷はもう売ることはできない」というのも面白い。

138条「もし男子を生まない理由で正妻と離婚するなら、彼女の持参金をすべて返し、銀500グラム相当の離婚金を払わねばならない」※当時の肉体労働者の日給は銀0.23グラム。だから結構大金。

24条「もし強盗が命を奪ったら、市と市長は遺族に銀500グラムを支払わねばならない」(強盗は死刑)

モラルも厳しい。近親相姦は死刑。
155条「息子の嫁とできたら水死」
156条「婚約中の息子の相手に手を出したなら、1マナの銀の罰金」
157条「母親と相姦した場合は、二人とも焼殺」
129条「妻が現行犯で不貞していた場合、男と一緒に水死させる。ただし亭主が助命すれば許される」
131条「妻が密通の嫌疑をかけられても、現行犯でないなら、神に宣誓して実家に帰れる」

あと、家畜を借りた場合はいくら払い、それに怪我をさせた場合や死なせた場合はいくら賠償、獣医が家畜を死なせた場合はなどと、具体的、かつそういう揉め事が多かったんだなあと、当時のメソポタミアの様子がよく分かる。



by mahaera | 2018-12-29 11:16 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)
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