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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』見てて辛いが力作ドキュメンタリー


かつて一世を風靡したといってもいい歌手、ホイットニー・ヒューストン。しかし多くの人にとっては、いつのまにか名前を聞かなくなり、そして亡くなっていたと、彼女の後半生についてはほとんど何も知らない。
このドキュメンタリーは、彼女の生涯を追うが、とくに印象に残ったのはピークから転げ落ちていく彼女の姿だ。
昨日紹介した『アリー/スター誕生』にも通じるが、
本作ではホイットニーがキャリアのピークを飾った1992年の映画『ボディガード』出演あたりを折り返し地点とし、
後半の転落人生を冷静に見つめている。

歌手である母シシー・ヒューストン
従姉妹であるディオンヌ・ワーウィック
名付け親はダーレン・ラヴというニュージャージーの音楽一家のもと、1963年に生まれたホイットニーは、幼い頃から夢は歌手になることだった。
モデルやバックコーラスを得て、
1983年にアリスタレコードの創業者クライブ・ディヴィスの目に止まり、1985年に満を持してデビュー。
シングルが7曲続けてチャート首位になり、ビートルズの6曲という記録を抜く。
日本でも洋楽アルバムチャート11週連続1位を記録
1991年のスーパーボウルでのアメリカ国家斉唱は、
未だ語り継がれるものになった。
1992年には主演映画『ボディガード』が公開され、
サントラ盤は世界で4200万枚を売り、
日本でも洋楽史上最高の280万枚が売れた。
そして主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は全米で14週連続1位という偉業を成し遂げた。
同年、歌手のボビー・ブラウンと結婚。
翌年、娘を出産する。ここが彼女の人生のピークだ。

もし恋愛映画なら、ふたりが出会い、結婚するまでを描くだろう。みんなが見たいのはそこまでだ。
しかし実際にはそのあとにはるかに長い山あり谷ありの人生が待っている。
ホイットニーが亡くなったは2012年。
ピークから20年も彼女の人生は続いていたが、たいていの人はデビューからピークまでの7年しか覚えていないだろう。

成功した彼女だが、その裏ではドラッグ依存が続いていた。
なぜ、彼女は自滅して行ったのか。
このドキュメンタリーでは、その姿を多くのインタビューやホームビデオを通じて描いていく。
彼女の転落人生は、前に見たエイミー・ワインハウスのドキュメンタリー『エイミー』とほとんど同じだ。
金と名声に群がる家族や友人たち。
身近なスタッフは、ホイットニーの家族である以外、
なんの能力もない人たち
だ。
兄や弟たちはそれを十分に生かし、
ホイットニーをドラッグ漬けにしていく。
そして母と離婚した父親が、ホイットニーの行動を管理していく。
幼い頃に母の浮気が原因で両親が離婚したホイットニーは、
父を愛していた。
しかし父親はホイットニーを利用し、多くの金を引き出すのが目的で、解雇されるとホイットニーを告訴している。

そして、妻の名声に嫉妬する夫
結婚当初はスーパースター同士の結婚だったが、
落ち目のボビーはDVも含め何かとホイットニーに辛く当たる。

かといってホイットニーも単なる可憐な女性ではない。
仕事がないときはカウチで寝たきりで、ほとんど育児放棄。
男関係、女関係もある。
かと思うとツアーやパーティーに小さな娘を連れ回し、
小学生ぐらいの年齢なのに娘はドラッグを覚え
高校生の時には自殺未遂をしてしまう。

もちろん彼女のためを思っているスタッフもいたが、
そんな人たちは物言える重要なポジションにはいない。
最終的に彼女の周りに残るのは、イエスマンか、
彼女の金が目当てのものばかり
だ。
最後に明かされる幼少期に受けた性的虐待も痛々しい。
そのせいで自分の性的な立ち位置を見失ったこともあるし、
ふつうの家族を知らずに育ったため、いい家庭を築けなかったのかもしれない。
本作はデビューからピークまではものすごくあっさりしており、ホイットニーの代表曲を聞きたいという人はアテが外れるだろう。
そして映画の約半分を占める、約20年のホイットニーの転落人生に疲れることだろう。

最後はほぼ一文無しになり、体型も崩れ、
声も出なくなり、ヤジが飛び交うステージをこなし、
ドラッグによる心臓発作で浴槽の中で溺死したホイットニー。
しかし、すばらしい時代もあっただけに、
成功とは、幸せとはなどと、いろいろ考えてしまう作品だ。

2012年、ホイットニーは48歳で亡くなる。
大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』との関連でいうと、ライブエイドのころはデビューアルバムが大ヒットし、
フレディが亡くなった翌年にキャリアのピークを迎えている。
ということで、『ボヘミアン・ラプソディ』のようなカタルシスを期待している方は、本作はやめといたほうがいい。『エイミー』が響いた方はOK。でも力作。

★★★☆


by mahaera | 2019-01-05 11:58 | 映画のはなし | Comments(0)
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