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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『世界の涯ての鼓動』 ヴェンダースの最新作は、意外にエンタメ



なんだかんだと言って毎年のように作品が届けられ、今も精力的に活動しているヴィム・ヴェンダース監督。
「それ、誰?」という人は自分で調べてください(笑)。
渋い映画が最近は多いが、今回は久々に予算もかかったエンタメ作品なので、入門編にいいかも。


ノルマンディーの海辺のホテルで出会ったアリシア・ヴィキャンデル(『エクス・マキナ』)とジェームズ・マカヴォイ(『ミスター・ガラス』)は、5日間の間に激しい恋に落ちる。
再会を約束して別れた二人は、それぞれ仕事に戻っていく。
生物数学者のヴィキャンデルはグリーンランドの深海調査へ。
MI6の調査員のマカヴォイは、テロリストの組織を探るためソマリアへ。
しかしヴィキャンデルの乗った深海調査艇はトラブルに、マカヴォイはテロ組織に拘束されてしまう。


科学者とスパイの美男美女の男女が恋に落ち、身の危険にさられ、お互いを想う。
簡単に言えばそんなストーリーで完全にエンタメなのだが、そこはヴェンダース。
ふたりの心情をたっぷり、モノローグ的に描き出していく。
もちろんドラマとしては、極私的と言ってもいいスタイルの描き方(周囲からの俯瞰の視点はあえて取らない)なので、見ている私たちはストーリー展開というより、主人公たちに寄り添った心情を中心に見ることになる。

二人が一緒にいるのは前半のみ。
後半はグリーンランドの深海とソマリアの浜辺に分かれて話は展開する。
会いたくても会えない。死ぬかもしれないという二人をつなぐ、あるいは隔てているのは海だ。
極限状態に置かれた二人をドラマティックかつロマンティックに描いてるので、普通のデートムービーとしてもいいだろう。

ノルマンディーの第二次世界大戦の遺産ともいうべきコンクリートのブロック、ソマリアの海、北海の島々など、絶景を含むスケール感の大きな自然の美しさも見もの。
多分そのロケーションあって成立する物語だと思う。
見終わってしばらく経つが、印象に強く残っているのは風景のほうだもの。

★★★


by mahaera | 2019-08-11 08:36 | 映画のはなし | Comments(0)
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