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これは1986年11月5日から12月14日までオーストラリアで行われた「Tour de Force」の最終日のライブだ。
このツアーでは一ヶ月半で28回のコンサートが行われ、毎日31曲が演奏された。
その3週間前に終わった122回の『アイス・オン・ファイヤー』ツアーでエルトンの喉の調子は悪くなり、体力、精神共にドラッグとアルコール無しには続けられなかったようだ。
「Tour de Force」のライヴは一部と二部に分かれていて、一部がツアーバンド、二部がオーケストラとの共演になっていた。CDにもなった最終日のライヴは映像でも発売されおり、収録曲はこのCDと異なる。セールス的には全英43位、全米24位と前作『レザー・ジャケッツ』より健闘した。
プロデュースはガス・ダッジョン。
ツアーメンバーは、レギュラーのデイヴィー・ジョンストン(ギター)、チャーリー・モルガン(ドラム)、デヴィッド・ペイトン(ベース)、フレッド・マンデル(キーボード)に久しぶりのレイ・クーパー(パーカッション)やコーラス、ホーンズなどが加わった11人編成。
それに『青い肖像』などで参加していたジェームズ・ニュートン・ハワード(映画音楽作曲家として人気が出始めた頃)指揮によるメルボルン交響楽団が加わった。
当日のセットリストは、バンドとの演奏の第一部は代表曲と80年代の作品の11曲。
このアルバムに収められたのはオーケストラと共演の第二部で、すべて70年代の作品だ。特にポール・バックマスターがオーケストラ編曲に関わった時期の作品が中心になっている。
『僕の歌は君の歌』(1970)から6曲、『マッドマン』(1971)と『青い肖像』から2曲ずつ、『エルトン・ジョン3』(1970) 『ピアニストを撃つな』『グッバイ・イエロー・ブリックロード』『カリブ』から1曲ずつの選曲となっている。
映像を見ると、エルトンはモーツァルトのコスプレをしている(1984年の映画『アマデウス』の引用)。
このライブアルバムからは『風の中の火のように』が『キャンドル・イン・ザ・ウインド ’86』としてシングルカットされた(B面は『悲しみのバラード』の同ライブ)。
これがエルトンとしては2年ぶりのトップ10ヒットになり、全英5位、全米6位を記録。
1974年のオリジナルに続く2度目のシングルカットだ。
オーケストラと共演した曲ではなく、エルトンのピアノとそれをサポートするフレッド・マンデルのキーボードのみだが、これは喉の不調をものともしない名演で、この曲が選ばれたのも納得。この曲は1997年にダイアナ追悼で三たびシングルになる。
2番の頭で観客の歓声が聞こえるが、CDだとこれがなんでかわからない。映像を見ると「And it seems to me you lived your life Like a candle in the wind.」の歌詞のところで、エルトンの後ろ(のオーケストの人たち)が一斉に、キャンドルの灯を灯すという演出になっているのがわかる。
収録曲(アナログLPでは2枚組で4面に振り分けられた)
1.『60才のとき - Sixty Years On』
2.『君は護りの天使 - I Need You To Turn To』
3.『驚きのお話 - The Greatest Discovery』
4.『トゥナイト - Tonight』
5.『悲しみのバラード - Sorry Seems to Be the Hardest Word』
6.『王は死ぬものだ - The King Must Die』
7.『パイロットにつれていって - Take Me to the Pilot』
8.『可愛いダンサー - Tiny Dancer』
9.『罪人にあわれみを - Have Mercy On The Criminal』
10.『マッドマン - Madman Across the Water』
11.『風の中の火のように(キャンドル・イン・ザ・ウインド) - Candle in the Wind』
12.『布教本部を焼き落とせ - Burn Down the Mission』
13.『僕の歌は君の歌 - Your Song』
14.『僕の瞳に小さな太陽 - Don't Let the Sun Go Down On Me』
映像版は当時VHS2本組(あるいは別売り)で発売。Vo.1はバンドによるコンサートの第1部(9曲)、Vol.2はオーケストラの共演の第2部(12曲)で、コンサート全曲収録ではない。2部の未収録曲は「心はさむいクリスマス」「カーラのエチュード」「スローリバー」「土曜の夜は僕の生きがい」だが、今はYoutubeで見られる。
ツアー終了後、年明け早々エルトンは喉の手術を受ける。その結果、以降は以前のようなハイトーンが出にくくなり、歌い方も徐々に変わっていく。またドラッグ、アルコール依存、過食症はひどくなる一方だった。
親しい友人たちの中には、エイズにかかり命を落とすものも出てきた。エルトンは死を恐れていたという。
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