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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2018年 01月 29日 ( 1 )

最新映画レビュー『ベロニカとの記憶』 同じ過去でも、人によって受け取り方が違うことを知る



2015年/イギリス
監督/リテーシュ・バトラ
出演/ジム・ブロードベント、シャーロット・ランブリング


シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館にて公開中。
インド映画『めぐり逢わせのお弁当』は、
中年男と主婦との細やかな心情を描いた上品な映画だったが、
そのリテーシュ・バトラ監督の最新作。
本作は原作もので、しかも一種のミステリーになっているが、
その細やかさは本作でも失われてない。


主人公は引退後、ロンドンで中古カメラ屋を経営している
トニー(ジム・ブロードベント)
別れた妻との関係は概ね良好で、娘も出産間近。
そこへ40年前に別れた初恋の女性ベロニカの母親からの
遺品贈与の届けが来る。
そして遺品は、トニーの学生時代の友人で、
若くして命を絶ったエイドリアンの日記だという。
一度会ったきりなのに、なぜ? 
しかもベロニカは日記の引き渡しを拒んでいる。
トニーは過去を振り返り、
やがてベロニカ(シャーロット・ランプリング)と再会する。

先日、高校時代の友人と再会した時
「我々は初老だから」と彼が言った。
思い出の中の青年時代は色鮮やかかもしれないが、
それは何十年にも渡って記憶が反復されていくうちに、
作られた過去だからだ。つまり自分の記憶の中の過去は、
その間に軌道修正されている。

トニーは、ベロニカと知り合い、そして別れるまでの記憶の中で、
自分に都合のいい部分だけを繰り返し再生していたのかもしない。
しかし、同じ時間を共有したもの同士でも、再生される部分が違えば、違った記憶になるだろう。
トニーは、仲が良かった友人の自殺についても、
彼と仲良くしていた記憶は鮮明だが、
死んでしまった前後の関係についてはあいまいになっている。

映画は、主人公が自分の過去の出来事を探っていく
ミステリータッチにもなっている。
人は、他人にされたことは覚えていても
(悔しくて何度も頭の中でリピートするから)、
他人にしたことは忘れがちだ(思い出さないから)。
そのギャップに気づいた時、人は相手が自分の知らない人生を
過ごしてきたことを改めて知る
のだ。それも何十年もたってから。
映画の中で、トニーがそのことにふと気づくように、
私たちもベロニカの立場に立っての人生に気付かされる。
そしてそれは、実人生の中では、無数にあることなのだと。
★★★☆
スカパー!

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by mahaera | 2018-01-29 10:32 | 映画のはなし | Comments(2)