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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2018年 03月 23日 ( 1 )

最新映画レビュー『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』スピルバーグの硬派な面が出た実話の映画化



あれ、スピルバーグは4月公開の「レディ・プレイヤー1」
あるのでは?と思った方もいるだろう。
早撮りで有名なスピルバーグだが、なんとその
「レディ・プレイヤー1」のポストプロダクション(撮影後のCGIや編集などの後作業)の期間を利用して、この映画を撮り終え、しかも先に公開してしまったのだ。
2017年3月に主要キャストへのオファーが行われ、5月に撮影開始、11月6日には完成して12月に公開という、
ハリウッド大作としては異例の早さ。
それだけ、スピルバーグには「今、作らねば」という
切迫感があったのだろう。

映画は1971年の実話が元。

1940年代から1960年代にかけて、ペンタゴンが政府に提出した
ベトナム政策に対する報告書の流出事件だ。
この文書はアメリカの4つの政権にわたる膨大なもので、
「アメリカはベトナムに干渉しても勝つことはできず、泥沼化する」という報告だった。
ところが政府はその調査報告を握りつぶし、
「兵力を増やせばベトナムで勝利する」と国民に嘘をつき、
多くのアメリカ国民をベトナムに送り込んだ。
それに憤った調査研究所の職員が文書を密かに持ち出し、
7000枚に及ぶコピーを撮ったのだ。

文書はまずニューヨークタイムズに持ち込まれ、
三ヶ月にわたる精査の結果、新聞で公開。
しかし、2日目にニクソン政権によって、
裁判所命令で掲載が差しとめられる。
国の機密事項の漏洩だと。
映画は、そのタイムズのスクープを
ワシントンポストが掴んだところから始まる。
編集主幹(トム・ハンクス)はその文書を入手するが、
タイムズは起訴されて掲載ができなくなっている。
掲載すればタイムズ同様に、政府に起訴される可能性が出てくる。
社内は、報道の自由を守るか、政府に忖度するか、意見が割れる。

もう一人の主人公がメリル・ストリープ扮する
ワシントンポストの社主だ。もともと主婦だった彼女は、
社主だった夫の自殺とより初めて会社経営をすることになるが、
周囲からは「お嬢様」と軽んじられて苦労する。
実際、歴代の大統領や、国防長官のマクナマラとは、
家族ぐるみの付き合いだった。
そして会社が株式公開をして家族経営のローカル新聞から
抜け出そうという矢先に、この事件が起きる。
そして彼女は掲載か自主規制かの決断を迫られることになる。

メリル・ストリープ、当たり前だが、演技がうまい。
彼女は一昨年のゴールデングローブ賞のスピーチで、
まだ大統領になる前のトランプが
身体障害者の記者の物真似をしたことを暗に非難。
するとトランプが、「ストリープは、過大評価されすぎの俳優」
とツイートで仕返した。
そんなことからも、本作がなぜ、今、作られ、
ストリープが主演を快諾したかは誰でも推測できるだろう。

政府が国民に知られたくないことを隠し、
真実を隠蔽するのは犯罪である。
また、報道に圧力をかけて自主規制させるのも犯罪だ。
そしてそれは民主主義の精神に反していると。
きっと映画を見ていて、あれ、これ日本の話じゃない?と、皆さんも思うだろう。
「民主主義」はチェック機能がないと、
きちんと動作しないシステムだ

そして所詮官僚には無理な話で、それはアメリカでも同じ。
一部の勇気あるものが権力の腐敗をリークし、
それを報道する機関がなければ、民主主義は「幻」となる。
ニクソンがその後、任期途中で退陣したことは、
皆さんはご存知だろう。
ニクソンは圧倒的な国民の支持率があったにもかかわらず、
その後対応がすべて裏目に出て、翌年「ウォーターゲート事件」が
致命傷となって、任期途中で辞めたアメリカ唯一の大統領となる。


by mahaera | 2018-03-23 11:42 | 映画のはなし | Comments(0)