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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2019年 05月 07日 ( 1 )

子供に教える世界史・番外編/映画で学ぶ世界史/『ノア約束の舟』『キング・オブ・エジプト』

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●『ノア約束の舟』(2014) ダーレン・アロノフスキー監督

旧約聖書「創世記」のアウトラインは映画『天地創造』でわかるが、映画としての面白さには欠ける。近年映画化された「創世記」関連の映画としては、2014年の『ノア約束の舟』をあげたい。

監督は『ブラック・スワン』ダーレン・アロノフスキー。ユダヤ教徒として育ったアロノフスキーは、子供の頃からのこの物語に興味を持っていたという。

アダムとイブには、カインとアベル、そして弟のセトの3人の子供がいた。カインの末裔であるトバルが王として君臨する世界、セトの末裔であるノアは家族と山に隠れて住んでいた。

やがて神のお告げが降りノアが箱舟を作ると、世界中から動物がやってきて舟に乗り込む。大雨が降り出し、トバルたちが箱舟を奪おうとするが、堕天使である泥の巨人たちの助けを受けて箱舟は無事漂いだす。

ここまではCGをふんだんに使ったスペクタクル映画と言っていい。ノアを演じるのは『グラディエーター』のラッセル・クロウ。妻のナーマにはジェニファー・コネリー

ただしアロノフスキーが描きたかったのは、その後の物語だ。箱舟が漂いだしてから、ノアの家族が次第にノアの真意を知っていく過程は、サスペンスというかホラー。神の御心としてノアは助けを求める人間を誰も救わない。家族は「何かおかしいな」と思うのだが、洪水が引いた後の楽園に住めるのは、「人間以外の動物のみ」とノアは信じている。

要するに人間は罪深い生き物だから、ノアの家族と共に滅びるのだ。しかし、実子ではなく子供が産めない体だったイラ(エマ・ワトソン)が、いつの間にかノアの長男セムと愛し合い妊娠していた。ノアは神の名に背いた家族に怒りを感じ、使命を果たそうとする。。。

信者でない人が感じる創世記の記述の疑問を膨らませて(アロノフスキーが脚本も)映画化したような内容だが、そもそも信者なら聖書に疑問は持たない。なのでキリスト教徒ばかりでなく、世界各地でユダヤ教徒、イスラム教徒の間で論議(主に非難)を呼んだ。イスラム教国では上映もされなかった(そもそも預言者ノアを描いてはいけない)。

また、信者でない人たちにとっては、神の仕業もノアが取る行動も極悪非道・女性蔑視(今の感覚だと)に見えるので、共感しにくい(そもそも聖書の中の神の行動は、信者でなければいきあたりばったりで“全能”には見えない)。

つまりアロノフスキーは、信者と無神論者の両者が納得するバランスを取りたかったのだろうが、結果的には両方から嫌われてしまった。特に日本では、聖書の知識がない人が多いので、ノアや神が悪に見えてしまい、共感できない人が多かったようだ。

もともとユダヤの神は残酷なんだけどね。僕は楽しめたけど。聖書は知識や教養、あるいは文学と思っている人にはちょうどいいけど。ゴールデン・ラズベリー賞で最低監督賞ほか4部門ノミネート


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●『キング・オブ・エジプト』(2016)アレックス・プロヤス監督

神話時代のエジプトを描いたのが、2016年の『キング・オブ・エジプト』だ。こちらはノアと比べると、まあ見ても見なくてもどうでもいいお気楽ファンタジー映画だが、エジプト神話のキャラ設定やアウトラインを2時間で知ることができるというお手軽さもある。本で読むと、どうしても神の名前とキャラが頭に入らない。映画ならきっと忘れないだろう。
オシリス王のもとで繁栄を極めていた神と人間が共存する古代エジプト。しかし弟セト(ジェラルド・バトラー)がオシリスを殺して王位につき、人々は圧政に苦しめられる。オシリスの息子ホルスは両目を奪われて王座から追放されるが、泥棒の青年ベックと共にセトを倒すべく立ち上がる。。
知恵の神トト、ハトホル、太陽神ラー、オシリス、アヌビスなどいった古代エジプトの神々が登場するCGバリバリのファンタジーだが、オシリスが弟セトに殺されて、息子のホルスが復讐するというざっくりとした流れはエジプト神話から。なので「歴史的史実ではない」と文句をつける方が間違っているのだが、公開当時は「建物が違う」「古代エジプトには白人はいなかった」などと非難を浴びたようだ。

映画的深みはあまりないが、僕は酷評を先に聞いていたので意外に最後まで楽しめた。

監督はアレクサンドリア生まれのギリシア系オーストラリア人アレックス・プロヤス(『ダークシティ』)。この作品もゴールデン・ラズベリー賞では最低監督賞ほか5部門でノミネート。惜しくも(笑)受賞は逃した。


by mahaera | 2019-05-07 10:31 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)