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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2019年 05月 08日 ( 1 )

子供に教える世界史・番外編/映画で学ぶ世界史/『十戒』『エクソダス:神と王』

「創世記Genesis」に続く、旧約聖書の2番目の書が「出エジプト記Exodus」だ。
前にも書いたが、これが世界史上のできごとであるかは証明されていない。しかしヘブライ人(ユダヤ人)の祖先が、エジプトからカナンに移住したという出来事はあったのかもしれない。
岩波文庫の「出エジプト記」を読むのは面倒なので(ネットにもあがっているが)、一番楽なのは映画やドラマを見て物語のアウトラインを知る事だろう。

「出エジプト記」のストーリーをざっと書いてみよう。
エジプトに移住したヘブライ人たちは、時代が下り、奴隷として苦役にあえいでいた。
神託によりエジプトの王(ファラオ)が生まれたヘブライ人の男子を皆殺しにするが、モーセは母の手により葦舟でナイルに流され、ファラオの娘に拾われる。
成長したモーセはやがて出生の秘密を知り、ミデヤンの地へと逃れる。
そこで妻を娶るが、神の言葉を聞いたモーセはエジプトへ戻って同胞を救うことにする。
ヘブライ人の移住を認めないファラオに対し、神は十の災いをエジプト人にもたらす。
ついにヘブライ人はエジプトを出るが追っ手が迫る。
しかし海が割れ、ヘブライ人は脱出に成功。
一方、ファラオの軍隊は海に飲み込まれる。
モーセは民を率いてシナイ山の麓にたどり着き、そこで十戒を授かる。しかし待ちきれなかった民は偶像の金の子牛を崇め、神の怒りを買う。


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『十戒』(1956年)セシル・B・デミル監督

この「出エジプト記」をほぼ忠実に描いたのが『十戒』だ。
今回、20年ぶりに見直したが、前半はほとんど忘れていた。
上映時間が音楽のみの部分を入れて232分という大長編
長い。本当に長い。モーセにはチャールトン・ヘストン、ラムセス(2世)にはユル・ブリンナー、ネフレテリ(ネフェルタリ)にはアン・バクスターが演じている。

冒頭、セシル・B・デミル監督自身が登場し、観客に映画の趣旨を語るシーンがある。
大真面目に聖書の映画化に取り組んだという。
時代考証などは専門家に頼んだようだが、演出は当時のハリウッド的なので、自然主義的なところはない。
何しろデミルがサイレント時代の監督なので、演出が非常に古臭い。定位置に登場人物が並んでセリフを言っていく、舞台のようだ。ということで、今の目で見ると古色蒼然としているのだが、そこは我慢。

前半はモーセが王の娘に拾われて成長し、手柄を立てるが出生の秘密を知り、追放されて神の啓示を受けて預言者になるまでが描かれている。
「出エジプト記」にはモーセの前半生の詳細は書いてないので創作なのだが、スペクタクルが詰まった後半よりもこちらの方が面白い
人間関係のドラマがちゃんとあるのだ。

ラムセスがモーセを憎むのは、自分にないものを全てモーセが持っているから。
実の父や妹でさえ、ラムセスよりモーセを愛している。
しかしプライドだけは高い。いや、高くしないとやってられないのだろう。何しろ、モーセには欠点がないのだ。

後半は、エジプトに戻ったモーセとラムセスの対立が軸となり、派手なスペクタクルが続く。
「十の災い」ではナイルの水が真っ赤になり、エジプト人の長子が神に殺される。
とうとうラムセスは、ヘブライ人が出ていくことを認めるが、後を追撃。そこで有名な紅海が割れるシーンが登場
ここはこの映画の一番の見どころ。
しかし映画はここで終わりではない。
モーセがシナイ山で十戒を授かるのと、民が偶像を崇めて怒りを買うシーンが、さらにクライマックスとしてある。
後半は預言者になったモーゼが、ただ「偉い人」というだけで人間的に魅力がない。
そのため、どんなスペクタクルがあっても共感できず、再現ドラマを見ているような感じで、今ひとつつまらない。

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『エクソダス:神と王 Exodus:Gods and Kings』(2014)

この『十戒』のリメイクが、リドリー・スコット監督の『エクソダス:神と王』だ。
こちらも150分の大作で、モーセをクリスチャン・ベール。ラムセスをジョエル・エドガートンが演じている。
原題がKings、Godsと複数形で、エジプトとヘブライという二つのグループのそれぞれの王と神の対立とも取れる。
あらすじは『十戒』と同じだが、こちらのモーセは「神に選ばれてしまって迷惑」という設定で、進んで指導者になるのではなく、いやいやなるといった感じ。
神は子供の姿でモーセの前に現れる。
エジプト人の長子を皆殺しにすると神が決めると、モーセもそれは酷すぎると神に文句を言う。

冒頭の合戦シーンは、当時の戦争の様子を再現していてなかなか面白い。
馬に引かせた二輪戦車の機動力がわかる(まだ騎馬はない)。
「十の災い」では、ワニが人を食っていくシーンはやりすぎ感があるが、それがスコット節(笑)。
今どき神の奇跡を出しすぎると観客がしらけるので、科学的にも納得できるよう紅海の水が引くのも「隕石の落下が原因」としている。これはこれで面白かった。

ということで見ている間はなかなか面白かったのだが、今となると、なかなか思い出せない。
まあ、それもスタイル優先のリドリー・スコット節。
アメリカでは評判はあまり良くなかったが、その理由は「古代エジプトなのに出てくるのは白人ばかり」「紅海が割れたのは神の奇跡なのに、隕石のせいにしている」といったもので、映画の出来とは関係のないところだった。


by mahaera | 2019-05-08 09:50 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)