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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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映画『ゴッドファーザー』のコッポラ監督によるオーディオコメンタリーを聞く


仕事が終わり長編映画を観る気になかなかなれなくて(そんな時間があるなら飲みにいくか寝る)。

で、見たといえば、『ゴッドファーザー』のコッポラ監督による音声コメンタリー
それでも映画と同じサイズだから2時間50分ある

映画『ゴッドファーザー』については、前にも解説したし、観ていない人はいないと思うからストーリーはここでは割愛。今回はコッポラのコメンタリーの話だ。
コメンタリーが録音されたのは、DVD発売の頃だろうから、もう20年ぐらい前だろう。
制作の面白い裏話ももちろん聞けるが、大半を占めるのはまだ30歳そこそこの青年監督が、スタジオに解雇されそうになりながら、なんとか作品を仕上げたというグチ話だ。
これが本当に辛かったようで、その話が繰り返し繰り返しされる。

小説『ゴッドファーザー』の権利を手に入れたパラマウントは、低予算映画として企画し、まだ小品しか監督していなかったコッポラに監督を依頼する。
コッポラの前の作品『雨の中の女』(1969)は批評家には高く評価されたが、ヒットにはほど遠かった。
コッポラは当時は脚本家として業界では知られていて、脚本を担当した大作『パットン大戦車軍団』ではアカデミー脚本賞を受賞していた。
野心溢れるコッポラは1969年に制作会社を作り、ワーナーと契約するが、その第1作目『THX1138』(ロバート・デュヴァル主演)は難解として重役に嫌われ、契約を破棄されてしまう。この映画はジョージ・ルーカス(当時27歳)のデビュー作だったが、製作のコッポラは多額の借金を抱え込むことになり、全く興味がなかったマフィア映画の脚本と監督に就任することになったのだ。

コメンタリーでコッポラはしきりに「低予算映画」というが、当時のお金で250万ドルなので同年の『フレンチコネクション』や『キャバレー』と同等なので、まあ標準的な製作費だ。しかも制作中に小説がベストセラーになったので、最終的に制作費は600万ドルにまで上がったという。

さて、新人監督なのでスタジオは脇を固める技術スタッフにベテランをつけた。
ただしキャストはドン・コルレオーネを演じるマーロン・ブランド以外は当時はほぼ無名。
ファミリーの長兄を演じるジェームズ・カーンと相談役のロバート・デュヴァルは、コッポラと組んだことがあるので選ばれたが、あとはオーディション。
最大の功績は、アル・パチーノの発掘だろう。
当時、彼の主演作『哀しみの街かど』は公開されておらず、誰も知らなかった。スタジオはロバート・レッドフォードを推したが、コッポラの直感は当たった。
テストフィルムを見た重役は、パチーノの演技に納得した。

ブランドの起用もまた、過去の名優、トラブルメーカーとしてスタジオは難色を示した。
それに撮影当時はブランドはまだ47歳ぐらいだったから、役柄に対して若すぎた。
しかしブランドはこの役が自分にとってとても重要であることを理解しており、テストフィルムで口にティッシュを詰め、完璧にドンを演じてスタジオを納得させた。

ケイ役のダイアン・キートンもまだ映画に一本出ただけだったが、コッポラに抜擢。『ゴッドファーザー』がきっかけで、アル・パチーノと実生活でも実際に付き合っていた。
次兄フレドー役のジョン・カザールは、十代の頃からパチーノとは友人で、本作が映画デビュー作になる。

コメンタリーでは、映画の冒頭、葬儀屋と会話するドンのシーンで、ドンの膝の上でくつろぐ猫は、撮影所にいたそこらへんの猫だったとか、ドンが孫とトマト畑で遊んで倒れるシーンの、ブランドーがオレンジの皮を歯に見立てて脅かす演技はアドリブだとか、ニーノ・ロータの音楽にスタジオが不満だったとか、撮影三週目に解雇されそうになり、先に裏切り者の助監督やスタッフを解雇したとか、馬の生首はドックフード会社から手に入れた本物とか、そんなエピソードが語られていく。
また、ノンクレジットだが、ジョージ・ルーカスが助っ人として撮影に加わっていたことも明かされる。

あとは、家族が本当に好きなんだなと。
妹のタイア・シャイア(コニー役)の起用は「妹はコニー役には美しすぎる」と平気でコメントしている。いや、ロッキーのエイドリアンだろと。
あとは父親のカーマイン・コッポラも全面的に劇伴音楽の作曲に参加させているし(映画の中でピアノも弾いている)、生まれたばかりのソフィアに至ってはうれしくて、クライマックスのマイケルの息子の洗礼式のシーンに登場させている(ここは映画用に書かれたシーン)。
役はアンソニーなので男だが、乳児なのでわからない。

『ゴッドファーザー』が名作として今も残るのは、これが家族の映画だからだ。それまでギャングの家族のことなんて考えたものは誰もいなかった。「創業社長の跡を継ぐ二代目社長の苦労」、「仕事と家庭の両立」、「性格が異なる兄弟」、「功労者の裏切り」はギャングに限らず、どんな社会にも通用する。


# by mahaera | 2019-08-20 10:19 | 映画のはなし | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ  The Byrads その7 ●『バーズ博士とハイド氏』 - Dr.Byrds & Mr.Hyde (1969年)

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デビュー4年目、7枚目にしてとうとうロジャー・マッギン一人になってしまったバーズ。
ここでおしまいかと思ったら、メンバーを補完して再スタート。しぶといマッギンだが、ソロにならずにあくまでバンドとしての形態にこだわったのはなぜだろう。

まず前作『ロデオの恋人』の録音の時にサポートとして参加したセッションギタリストのクラレンス・ホワイトが、1968年7月にバンドに加入。演奏能力が高いホワイトの加入によって、バーズはこの後しばらくはライブバンドとして活動することになる。そして音楽路線はグラム・パーソンズがもたらしたカントリー路線も継承しつつも、それまでのロック路線に少し戻して続けることに。

ドラムにはホワイトの元バンド仲間ジーン・パーソンズを入れ、10月にはベースにジョン・ヨークという新四人編成でのスタートとなった。
ただし今までのボーカル複数体制は崩れ、本作は全曲マッギンがリードボーカルに。
録音は10月から12月にかけて行われた。バーズお得意のコーラスは入るも、なんだかバーズぽくないのもそのせいか。
ということで、バーズのアルバムの中でも、最も印象が薄いアルバムかもしれない。

新生バーズのこのアルバムは1969年3月に発売された。
A-1『火の車』 こ存じザ・バンドでもおなじみのディランとリック・ダンコの共作。新生バーズもディラン作品をやりますよってことなんだろうが、何度聴いても演奏や歌がよれているように。難しい曲だけど。
A-2「Old Blue」カントリー曲だけど、これは演奏も歌もまとまっている。
あとはインストのA-5「ナッシュビル・ウエスト」もいい感じ。最後のB-5はなぜか「My Back Pages」の再演からのメドレーになっている。

一人になったマッギンが頑張ったアルバムだが、本アルバムはアメリカでは最高位153位と全く振るわず。ホワイトのギターはいろいろ聴きどころもあるのだが、まだまだ。多分リズム隊が重いのが、このアルバムをまったりした雰囲気にしているのかもしれない。シングルはアルバムには未収録のディランのカバー『レイ・レディ・レイ』が5月に発売された。


# by mahaera | 2019-08-18 08:49 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

最新映画レビュー『アートのお値段』 みんなが気になる現代アートとお値段の関係に迫るドキュメンタリー


どうでもいいことが気になるが、その最たるものが僕にとって現代アートかもしれない。
旅行先などで割と現代アートを見に行くが、好きかと聞かれると30年見続けた今でも「わからない」。
みんな神妙な面持ちで見ているが、それは展示されているから価値があるのだろうという先入観があるからで、ほとんどの人はわかったふりをしているだけだと思う。
まあ、本当に好きな人もいるだろうが、現代美術館は毎回僕にとっては、自分に対する自問自答の場だ。
「お前にわかるか」と突きつけられているようで、まるで謎かけのスピンクスの前に立ったような気分だ。

「表現の不自由展・その後」で、「国民の税金を使ってみんながいらないものを展示して税金泥棒」という意見があったが、そんなことを言ったら現代美術館のほとんどが税金泥棒ってことになるだろうな。

ちょっと前、クーンツのステンレス製のバルーンウサギの彫刻が100億円で売れ、存命する作家の最高額だったことがニュースになった。
ということで、そのジェフ・クーンツも登場するタイムリーなドキュメンタリーがこの『アートのお値段』だ。
いかにして現代アート作品の価値や値段が決まるのかを、アーティスト、オークショナー、美術評論家、ギャラリスト、キュレーターなど数十人にインタビューし、探るという内容だ。
つまり、ほとんどの人にはどうでもいいことだが、僕には気になること。

うすうすご存知だろうが、現代アートは転売されなければ価値が上がらない。
評価が定まって美術館に展示されている古い作品とは違い、存命中の作家は尚更だ。
例えばバスキアなんて比較的最近の作家だが、もう死んでしまってこれ以上作品は増えないから、ある意味値段は上がりやすい。
逆に優れた作家でも、生きていて評価を下げる作品を作り続けると、以前の作品の価値も下がってしまう。
コレクターからすれば、筆を折るか死んでくれるかの方がありがたい。

しかし作家にとっては、転売されて高い値段がついてもちっとも嬉しくない。一円も入ってこないからだ。
映画でも出てくるが、200万で売れた絵が転売で2億円になっても、作家にはお金は入らない。儲かるのは転売した投機家だ。
ゲハルト・リヒターは、投機家の家の壁に飾られるぐらいなら、美術館に飾られて多くの人が気軽に見て欲しいという。

とはいえ、一番印象に残ったのはジェフ・クーンズかも。
例のステンレスのウサギが有名だが、ビルバオのグッゲンハイム美術館の花の犬も彼の作品。
彼の工房では十数人のアシスタントが、彼の指示に従って作品を描いており、もはや彼は自分では描いていない。
「自分で描けば1年に1枚しか描けない。なのでこうしているが、全て私の作品」と言う。
そんなクーンズは私たちがイメージするアーティストとはかけ離れ、むしろウォールストリートの投機家やビジネスマン、あるいは社長のようだ。
ただし、そうした自分の露悪的な見た目も含めて、彼の作品なのかもしれない。

 監督のカーンは「芸術家にとってお金がないのは地獄だが、金があっても地獄になり得る」と言う。
そもそもお金がなければ作品は作れない。例えばミケランジェロやダ・ビンチだって自分一人で作品を作っていたのではなく、常にスタッフを抱えており、彼らにお給料を払っていた。当時は材料費含めてのギャラだったので、ダ・ビンチだって現在のお金にすれば何億単位のギャラをもらっていたのだ。

とはいえもしあなたが名声とお金が欲しければ、ロックスターにより、現代アート作家になる方がよほどいいかもしれない。
ビートルズだって売れたから評価されているとも言えるのだ。

ただ、“現代アート好き”の僕にとっては、この作品は入門編というところで、ちょっと物足りないとも言える。
もっと深掘りして、エグいところも見たかった。コレクターや転売家の世界も、もっとエグそうだから。★★★☆


# by mahaera | 2019-08-17 16:52 | 映画のはなし | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ  The Byrads その6 『ロデオの恋人』 - Sweetheart Of The Rodeo (1968年)


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僕がザ・バーズで一番好きで、一番聴いた、そして今も聴いているアルバムがこの『ロデオの恋人』だが、一番、ザ・バーズらしくないアルバムとも言える。
まず、1曲めの「どこにも行けない」にノックアウトされる。こんな気持ちがいい曲、ない。
カントリーなど聞かない僕でも、この曲の素晴らしさ。陽気なコーラスの中にどこか不安と悲しさも混じる、カントリーロックの名曲だ。

1967年、モンタレーポップフェスに出た後、バンドの主導権争いに敗れたオリジナルメンバーのデビッド・クロスビーが脱退。続いて『名うてのバード兄弟』録音中に、すでにドラムの力量が疑われていたやはりオリジナルメンバーのマイケル・クラークは解雇されてしまう。
4人組のバーズは2人になった。ビートルズで言えば、リンゴとポールがいなくなるようなものだ。
残ったのはリーダーのロジャー・マッギン、バーズに入ってからベーシストになったクリス・ヒルマンの2人。
しかしヒルマンはこの頃には徐々にベーシストとしても上達し、またバンド内での発言権も増していた。

ともかくメンバーの補完を、ということでマッギンはキーボーダーを欲しがった。
そこでヒルマンが見つけてきたのが、インターナショナル・サブマリンバンドのボーカル&ギタリストのグラム・パーソンズだった。パーソンズはキーボードも弾けた。
しかし、マッギンの思惑は外れる。もともとマンドリン奏者だったベースのヒルマンは大のカントリー好き。
パーソンズと意気投合し、バーズを一気にカントリーの世界に引き込んでしまう。

パーソンズはカントリーの聖地ナッシュビルでの録音を提案。ナッシュビルではすでにボブ・ディランが現地のミュージシャンを使い『ブロンド・オン・ブロンド』(1966)や『ジョン・ジョンハーディング』(1967)という名盤を産んでおり、ロックミュージシャンにも注目されていた。ドラムにはヒルマンのいとこでライ・クーダーらと活動していたケヴィン・ケリーが入り、4人はナッシュビルへ。

ということで完全にヒルマンの人選でメンバーが決まった新生バーズ。そしてここではグラム・パーソンズが作曲、リードボーカルなどで大活躍。ちなみに全11曲のうち、リードボーカルの内訳はマッギン6曲、ヒルマン2曲、パーソンズ3曲。バーソンズはもっと多かったが、脱退したため、歌をマッギンに差し替えられた。

出来上がったこのアルバムは、まさにカントリーロックの名盤にふさわしい
というより、ここからカントリーロックが始まったと言ってもいい。8ビートのドラムに乗ってベースがブンブンいうのはロックのリズムだが、上に乗るのはカントリー。
そしてスティールギターやマンドリン、フィドルが曲を彩る。ロックしか聴かない人には、イーグルスの源流といえばわかるだろうか。

今までもボブ・ディランの曲をカバーしてきたザ・バーズだが、ここでは2曲をカバー。「どこにも行けないYou Ain't Goin' Nowhere」と「なにも送ってこないNothing Was Delivered」。共に当時は未発表曲で、のちにザ・バンドとビック・ピンクで録音したデモ集『地下室』、ベストアルバムの『グレーテストヒッツ第2集』で発表された。

A-1「どこにも行けない」は名曲中の名曲だが、このザ・バーズのバージョンがディランをしのいでいる。カントリーロックの誕生を告げると言ってもいい。ゲストのリロイド・プラウンのペダル・スティールギターに導かれて始まるこの曲は、とにかくリズムが気持ちいい。なんてことない曲だが何十回でも続けて聴ける心地よさがある。

フィドルのイントロから始まるA-2「私は巡礼」はスタジオミュージシャンを使って録音した曲で、ヒルマンがアコギと歌、マッギンはバンジョー。
A-3のカントリーワルツ「クリスチャン・ライフ」にはのちにバーズのメンバーになるクラレンス・ホワイトも加わっている。A-4の「涙の涸れるまで」もカントリーワルツ。
A-5の「思い焦がれて」はパーソンズがリードボーカルでドラムのリズムが気持ちいい。後ろのペダルスティールとカントリー風味のピアノも効いている。
A-6「プリティ・ボーイ・フロイド」は、1920年代の銀行強盗のことで、ウディ・ガスリーのカバー。ヒルマンのマンドリンが聴ける。

B-1「ヒッコリー・ウインド」はパーソンズがボーカルの静かなカントリーワルツ。
B-2「100年後の世界」はこのアルバムの中で唯一、以前のバーズらしいハーモニーが聴けるロックビート曲。ペダルスティールがなければ前のアルバムに入っていてもおかしくないし、70年代のカントリーロックの曲と言われても通用する。
B-3はヒルマンがボーカルの「ブルー・カナディアン・ロッキー」。ギターはクラレンス・ホワイト、パーソンズはピアノを弾いている。
B-4「監獄暮らし」はパーソンズがボーカル。
そして最後のB-5はディラン作の「なにも送ってこない」。Aメロがドラムはシャッフルだが、他のリズム隊はあまり跳ねていない不思議な感じで進み、Bメロで普通の8ビートになるという、CCRの「ミッドナイトスペシャル」につながる感じ。これも名演。

録音は1968年の3-4月に行われ、まずは3月録音から「どこにも行けない」がシングルカットされ、4月に発売。しかしチャート的には最高74位と振るわなかった。
アルバムは8月30日に発売。アルバムは高評価を受けたが、ファンは以前のバーズとは別バンドになってしまったことに戸惑いを覚えた。ビートルズの新作がイーグルスのようなものだったらという感じだ。

しかしアルバムがリリースされる前に、パーソンズはバーズを脱退してしまう。録音時点では、11曲中6曲がパーソンズがリードボーカルで、リーダーのマッギンはバンドがパーソンズに乗っ取られたことを快く思っていなかった。
そしてこれは何よりもバーズのアルバムで、パーソンズのアルバムではない。マッギンとパーソンズは何かと対立し、パーソンズはアルバム発売前のヨーロッパツアーで仲良くなったキース・リチャーズと行動を共にして、バーズの南アフリカツアーに行かなかった。これにより、脱退、というか解雇されてしまう。
そして急遽、パーソンズのリードボーカル曲6曲のうち、3曲をマッギンの歌に差し替えて発売することになったのだ。

パーソンズの解雇と共に、オリジナルメンバーでベーシストのクリス・ヒルマン、ヒルマンが連れてきたドラムのケヴィン・ケリーも脱退。というかヒルマン人脈がこぞっていなくなった。これによりバーズはロジャー・マッギンただ一人になってしまった。しかしマッギンはザ・バーズ=自分と思っているので解散はせず、バンドは続行することになる。

アルバム『ロデオの恋人』は当時は受けなかったが、70年代に入りウエストコーストロックが流行ると、その源流として再評価されることになった。
現在発売されているのは通常盤の他に、7曲のボーナストラックがついたデラックス版と、パーソンズがいたインターナショナルサブマリンバンドと差し替え前のパーソンズのリードボーカル版が聴けるボーナスディスクがついた2枚組のレガシーエディションがある。

最後に、ザ・バーズを脱退したパーソンズとヒルマンは1968年から1971年までカントリーロックバンドのフライング・ブリトー・ブラザースを結成して活躍。
ここにはのちにイーグルスを結成するバニー・レイドンもいた。パーソンズは70年にそれも脱退し、ソロになるが2枚のアルバムを出した後、1973年に麻薬の過剰摂取で死亡
ドラマーのケヴィン・ケリーはしばらく活動していたが、1973年頃には音楽業界から引退。
ヒルマンはフライング・ブリトー・ブラザース解散後、スティーブン・スティルスと1972年にマナサスを結成する。


# by mahaera | 2019-08-16 08:38 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ  The Byrads その5 ●名うてのバード兄弟 The Notorious Byard Brothers (1968)

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『昨日よりも若く』に続くバーズの新作は難航したようだ。本作の録音は1967年6月から12月にかけてで半年かかっている、発売は翌1968年1月。
レコーディングに取り掛かったのは、前作、前々作と同じロジャー・マッギン、デビッド・クロスビー、クリス・ヒルマン、マイケル・クラークの4人布陣だったが、アルバム発売時には半分のマッギンとヒルマンだけになっていた。

収録曲に関して、マッギンとクロスビーが対立した
まずシングルとして1967年10月にキャロル・キングとゲリー・ゴフィン作の「ゴーイン・バック」が発売された。
これは前年にダスティ・スプリングフィールドのシングルとして出たカーペンターズぽい曲だが、クロスビーは自分の曲(Triad)を外されて、他人の曲のカバーを取り上げたことが気に食わなかったと言う。
1967年6月17日にモンタレー・ポップ・フェスにバーズとして出演していた頃には、その不満がたまっていたようだ。
その後10月にバーズを脱退する。

困った残りのメンバーは、初期バーズの中心メンバーだったジーン・クラークにバンドに戻らないかと打診する。
初期バーズのオリジナル曲の多くを書いていたのはジーン・クラークだったからだ。
しかしそれもうまくいかなかったようで、ジーン・クラークは2曲のコーラスと1曲の作曲に参加しただけで、2週間でまた脱退。

また、このアルバムの録音中に、ドラムのマイケル・クラークも演奏の力量がないということで、ドラムを叩いたのは半数ほどの曲に。
もともとバーズに入る前はコンガ奏者だったという初心者ドラマー。
あとはセッションミュージシャンのジム・ゴードン(のちにデレク&ドミノス)とハル・ブレインがドラムを叩いた。
オリジナルメンバーなのにマイケル・クラークは、12月にはマッギンらに解雇されてしまう

そんなゴタゴタが続きようやく発売された本作は、「バーズのサージェントペパーズ」と呼ばれるようにバラエティに富んだ内容になっている。
1967年、ビートルズの「SGTペパーズ」、ドアーズの「ハートに火をつけて」、ストーンズ「サタニック・マジェスティーズ」、クリーム「カラフル・クリーム」が出て、モンタレー・ポップフェスでは、ジミヘン、フー、オーティス・レディング、ジャニス・ジョプリンが会場を沸かせていた。
バーズもサイケデリックの次の目標を模索していたのだろう。
ホーンセクション、ストリングスを大胆に入れ、クラレンス・ホワイト、ジェームズ・バートンといったセッションミュージシャンも使った。
収録曲はA面6曲、B面5曲の11曲。共作が多いが、キング=ゴフィンのカバー2曲を除くと、メインのソングライター別にみると、マッギン2曲、ヒルマン3曲、クロスビー3曲、ジーン・クラーク1曲となる。ブロデューサーはテリー・メルチャーとゲイリー・アッシャー

A-1「人造エネルギーArtificial Energy」はマッギン作。
いきなりホーンセクション(と言ってもビートルズに比べるとかなりチープ)から始まる。新しい作風の曲。
A-2はクロスビー脱退のきっかけとなったキング=ゴフィンの「ゴーイン・バックGoin' Back」。確かにシングルヒットも狙えそうないい曲だ。前述のようにダスティ・スプリングフィールドのほか、キャロル・キングの自演もいい。
A-3「自然なハーモニーNatural Harmony」はヒルマン単独作のこれまた美しい曲。
A-4「Draft Morning」はクロスビー作の反戦歌だが美しい曲。途中に進軍ラッパや戦争映画の効果音が入る。声もよく、クロスビー作のベストトラックの一つ。
A-5「Wasn't Born To Follow」もキング=ゴフィンのカバーで、カントリー調になっている。
カントリーワルツ風のA-6「Get To You」は呼び戻されたジーン・クラークがメインのソングライターだったが、アルバムのクレジットからは消されていた。5/4と3/4拍子が交互にくる。

B-1「今が転機 Change Is Now」、B-2「年老いたジョン・ロバートソンOld John Robertson」はヒルマンがメインの作品。「年老いたジョン・ロバートソン」は珍しくクロスビーがベースを弾き、ヒルマンがギターを弾いている軽快なカントリー風の曲。
B-3「部族集会Tribal Gathering」はクロスビー作でジャズの「take5」のような5拍子の曲。
B-4「Dolphin's Smile」もクロスビー作。
最後のB-5「Space Odyssey」はマッギン作で、SF作家アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」にインスパアされた曲という。

アルバムからはこれといったヒット曲は出ず、またキャッチーなメロディーの曲もないが、本作をバーズのベストアルバムに推す人は少なくない。
ヒットチャートは最高位47位と振るわなかったが、批評家には高く評価された。聴いているうちにだんだん味が出てくる類のアルバムかもしれない。

ちなみにジャケット写真に写っているのは、マッギン、クラーク、ヒルマンの3人で、クロスビーの姿はなく、彼がいるべき位置からは馬が顔を出しているのは偶然か、それとも嫌がらせかも話題になった。
まあ、でも一度は聞いてみるべきアルバムかも。
僕も最初はピンとこなかったが、30回ぐらい聴いていたら、スルメのようにいつの間にか好きになっていた
# by mahaera | 2019-08-15 12:07 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

最新映画レビュー『カーライル ニューヨークが恋したホテル』 セレブを魅了するホテルの秘密とは?


セレブが泊まる高級ホテルには縁がない自分だが、そこに泊まった様々な人の逸話を聞くのは楽しい。
本作はニューヨークのセントラルパークイーストにある老舗ホテルのザ・カーライルについて、宿泊客、スタッフが語るドキュメンタリーだ。
90分という長さもちょうどよく、気軽に見られる作品だ。

1930年創業のザ・カーライルは、セレブや王室が泊まるような老舗の名門ホテル。
34階建て188室という大型ホテルだが、映画を見る限りにおいてはこぢんまりとした印象を受ける。
大きなプールなどの施設はないが、多分、人の出入りなどセキュリティがしやすいのだろう。

2014年にはウィリアム王子とキャスリン妃がNY初訪問の時に泊まっているほか、故ダイアナ妃など英王室との結びつきがあるし、かつてはジョン・F・ケネディが最上階の部屋を持っていた
当時、モンローがこのザ・カーライルに泊まっていたことから、秘密の通路があるのではという噂は今も絶えない。

本作は、ジョージ・クルーニーなどザ・カーライルの常連客がその魅力を語るほか、スタッフへのインタビューを行い、その魅力や逸話が語られる。
もともとセレブがこのホテルに泊まる理由の一つに「秘密厳守」があるのだから、スタッフから語られるのは、もう問題ないという故人のいいエピソードレベルだが、それでも面白い。


ある日、エレベーターにマイケル・ジャクソン、ダイアナ妃、スティーブ・ジョブズが乗り合わせた
面識のない3人は黙っていたが、突然ダイアナが鼻歌で「ビートイット」をハミングしだした。。。


ベーメルマンス・バーは、絵本「マドレーヌちゃん」で有名な絵本作家ベーメルマンスが、1年半の滞在費の代わりにこのバーの壁に絵を描いたことで有名だ。
パブでは毎週月曜日、ウディ・アレンがクラリネット演奏している
またここはMOMA(メトロポリタン美術館)に近いことから、メットガラの時は出演者がここに泊まる。
そしてお着替えして会場にのぞむのだ。

意外なのは、常連客にレニー・クラビッツがいたこと。親がセレブのソフィア・コッポラとかが話すのはわかるが、レニーも実はいいとこ出とは。
★★★


# by mahaera | 2019-08-13 12:32 | Comments(0)

最新映画レビュー『ブレス あの波の向こうへ』 サーフィン青春映画であり少年の童貞喪失映画



オーストラリアで賞を受賞したという文学作品「ブレス:呼吸」をTVシリーズ「メンタリスト」の俳優サイモン・ベイカーが監督・脚本・主演を務めて映画化
70年代を舞台にした少年の成長物語だ。

オーストラリア西南部の小さな町に住む13歳の少年バイクレットとルーニー。
内向的なバイクレットと野放図なルーニーは、対照的な性格ながら仲良しだった。
ある日、彼らは伝説のサーファーのサンドーと出会い、彼の手ほどきでサーフィンを教えてもらう。
サーフィンのスリルや魅力にのめり込んでいく少年たちだが、いつしか二人にライバル心が芽生えていく。
一方、バイクレットは、サンドーの美しい妻イーヴァに魅せられていく。

俳優サイモン・ベイカーの事を僕は知らなかったが、その初監督作品(サンドーも演じている)としては、なかなかの上出来。サーフィンを題材にしてはいるが、少年の成長物語だ。
形式としては大人になった主人公(モノローグだけだが)が、過去の少年時代(70年代)を回想して語るスタイルで、『スタンド・バイ・ミー』と同じ。
なので話の内容が多少美化されているのと、冷静な目線で分析されているのが、違和感なく共存している。

13歳の少年にとって日常は退屈だ。厳格な父親との交流は“釣り”で刺激が足りない。
そして女の子にも興味を示す年頃だ。
主人公で内気で少年バイクレットは、自分に無いものをワイルドな隣人の同級生ルーニーに求める。
ルーニーにはおそらく暴力的な父親がいるらしく、家族の愛情を十分に受けていない。
それが彼の暴力的な一面に通じるが、自分とは対照的なバイクレットがいると抑えられる。
そんな二人の少年が初めて出会った、理想的な大人がサーファーのサンドーだったのだろう。
二人はサーフィンを教えてもらうだけでなく、毎日のようにサンドーの家に行く。
自由を謳歌し、ワイルドで仲間からも一目置かれ。しかもミステリアス。少年たちが惹かれないわけがない。

しかし少年たちは成長する。いつの間にか、「自分こそ認められたい」というライバル心も芽生えていく。
そして大人も不器用で、悩みを抱えていることも。
主人公となる二人の少年は俳優ではなく、オーディションで選ばれた素人というが、全くそうは見えない。
わざとらしい邦画の少年演技とは雲泥の差で、セリフではなくちょっとした表情や態度でうまく感情を表している。
そして美少年(笑)。
男の僕は気がつかなかったが、女子には美少年ものとして見えるらしい。

男にとってポイントは、これが少年の「童貞喪失映画」であること。
夏の間に美しくミステリアスな年上の女性に奪われる童貞は、男の理想の形だろう(笑)。『おもいでの夏』のように。
そして、それが向こうの都合であっけなく終わることも。
その女性役のエリザベス・デベッキ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のあの金ピカの女王役)は、まさにオール男性がお願いしたい人だと思う。
セックスを覚えたばかりの少年にビニール袋を渡し、窒息プレイを頼んで、ドン引きさせてしまうのもリアル。
これ絶対にあったことなんだろうなあ。

その『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』でもテーマ曲として流れていた、フリードウッド・マックのバンドのテーマ曲でもある「ザ・チェイン」(絆)がここでもカッコよく流れる。これだけでも自分の中では高ポイント。

まあ地味でわざわざ劇場に観に行くという映画でもないが、名画座二本立ててこの映画に当たったら、「お、拾いもの!」というタイプの映画。
とにかくあざとい演出が何もないのが好感度大。
多分、原作が文学なので、そうしたテイストなのだろうが。
★★★☆


# by mahaera | 2019-08-12 08:57 | 映画のはなし | Comments(0)