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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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カテゴリ:映画のはなし( 562 )

最新映画レビュー『マダムのおかしな晩餐会』 コミカルで風刺の効いたアレン風味の大人の恋愛ドラマ


2016年/フランス
監督:アマンダ・ステール
出演:トニ・コレット、ハーヴェイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマ
配給:キノフィルムズ
公開:11月30日よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開中

お金を払って映画を見るとなると、
ディナーもデザートも同じ値段ならどっしりとしたディナーのほうがお得かなと、大作映画をつい選んでしまうことが多いだろう。
本作はそういった意味では、デザートや間食のミニサンドイッチみたいなものだが、それも映画。
洒落た会話や笑い、風刺、人生の皮肉を楽しむ作品だ。

物語の中心となるのはふたりの女性。
お金持ちの女主人とそのメイドだ。舞台はパリ。
アメリカからパリの屋敷に越してきた裕福な夫婦アンとボブ。
アンは友人たちを招いたディナーを計画するが、
ひょっこりやってきたボブと前妻の息子が出席することになり、
人数は縁起の悪い13人に。
そこでアンはスペイン人メイドのマリアを、
招待客に仕立て上げる。
ところが最初はおとなしくしていたマリアは酔いも入り、
下品なジョークを連発。
それが招待客の一人にウケてマリアに一目惚れしたことから、事態は思わぬ方向に転がっていく。

ウディ・アレンも取り上げそうな、裕福な階級でのパーティ。
アンは裕福な夫(実は資金繰りに困っている)と結婚しお金と地位も得たのに、心はどこか虚しい。
夫が自分を愛しているかわからず、常に不安に悩まされているのだ。
一方、夫に先立たれたマリアは、仕送りしているひとり娘を生き甲斐にし、人生をポジティブにとらえている。
この二人を対比しながら、成り行き上、マリアが身分を隠して招待客の一人と付き合いだすことから生まれるコメディ部分(正体を隠しているので)、そしてアンの中年の危機、舞台をパリにしたことで生まれるアメリカ、スペイン、フランス、イギリスなど各国の男女の恋愛観などが描かれていく。

夫婦なのに心が通い合わせない「愛のすれ違い」、
嘘をついているのに惹かれ合うふたりという2つのカップルが描かれるが、アレン作品ほど教訓じみていないのは、恋愛を悲観的にとらえるアレンと違い、こちらはフランスの女性監督が描いているからか。
アレンだと「こんなに愛しているのに、いつか愛は壊れる」だが、「先のことは考えず、いまを楽しみましょう」という感じだ。
マダムは『リトル・ミス・サンシャイン』などのトニ・コレット、メイドにはアルモドバル作品で知られるロッシ・デ・パルマ(日本人的感覚では美人かはかなり微妙なのだが顔にインパクトあり)、マダムの夫をハーヴェイ・カイテルが演じている。
★★★

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by mahaera | 2018-12-10 12:40 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『パッドマン 5億人の女性を救った男』インドで大ヒットした実話をベースにした感動作


2018年/インド
監督:R. パールキ
出演:アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー、アミターブ・バッチャン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開:127日よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開中

■ストーリー

北インドの小さな町マヘシュワール。
母親と2人の妹、そして結婚したばかりの愛する妻と暮しているラクシュミは、ある日、妻が生理中に清潔とは言えない古布を使っているのを見て驚く。
妻のためにと薬局で生理用ナプキンを買うラクシュミだが、高価な品を自分ひとりで使うわけにはいかないと妻に断られてしまう。
そこでラクシュミは生理用ナプキンを手作りするが、うまくいかない。
女子大でアンケート調査をしようとしたり、自分で試着したりと試行錯誤するが、そんなラクシュミの行為は田舎町で波紋を呼び、恥じた妻は実家に帰ってしまう。
失意の中、あきらめきれないラクシュミは都会に出て研究を続け、ついに低コストでできるナプキン製作の試作機を開発。
デリーからやってきた女性パリーという協力者を得て、発明コンペにその試作機を出品する。

■レビュー

仕事柄インドには毎年のように行くが、
私が男性なのでインド人女性が置かれている立場はわからない。
正直、本作でも初めて知ることが多かった。
映画で描かれるのは今から十数年前のインド。
インドでは当時(今も?)、高い生理用ナプキンを買うお金がなく、不衛生な古布を洗って使い、そこから感染症になる女性も少なくなかったという。
また、生理中の女性は「穢れ」とみなされ、生理期間中は家の中で眠ることも許されないという習慣が映画の中に出てくる(ベランダのイスで寝る)。
これは保守的な農村部だからなのかわからないが、
それも含め「生理」を話題にすることも避ける姿は、
やはり「穢れ」とする習慣があるからだろう。
そんな中で、ひとり大のオッサンが手作りナプキンに奔走する姿は、田舎町でなくとも “ヘンタイ”にしか見えない
まあ、映画では誤解を招くように誇張しているというのもあるが、
女子大の入り口で女子大生に手作りナプキンを配ってアンケートを取ろうとしたり、
初潮を迎えた近所の女の子のところに夜こっそり行ってナプキンを手渡ししたり、
テストのため動物の血で濡らしたナプキンを自分で装着して自転車に乗ったり(わざわざ白いズボンで)と、その後の“大惨事”を予想してハラハラしてしまう。
いや、周りから見たら“変質者”でしょ(笑)。

また、いたるところでインド人の宗教観が問題となるのも、日本人の意表をつく。
「聖なるナルマダ川を動物の血で穢した」と。そこが問題か。

そんなラクシュミの協力者になるのが、都会(デリー)の裕福なシク教徒の娘だ。
教育をきちんと受けて進歩的な考えというところで、
“恥”の文化で育った田舎育ちのラクシュミの妻と対照的に描かれている。
試行錯誤を続けながら、ラクシュミがあきらめずに続けるのは、妻への愛だけでなく(妻には実家に帰られしまうのだから)、ラクシュミの物作りの職人気質に火がついたからだろう。

ラスト近く、ニューヨークの国連に招かれたラクシュミのスピーチは感動的
つたない英語で、わかりやすく自分の考えを述べるが、
素朴でストレートな主張だからこそ、人々に響くのだ。
そしてこの映画が、インドの人々に向けた志の高い啓蒙映画でもあることに気づくだろう。
★★★☆


■映画の背景

・主人公のモデルとなったアルナーチャラム・ムルガンダ氏は、南インドのコインバートル出身。映画ではデリーの発明コンテストとなっているが、実際の場所はチェンナイだった。

・映画では、主人公が暮らしているのはマディヤ・プラデーシュ州のインドール近郊のマヘシュワールに変更されている。マヘシュワールは聖なる川ナルマダ川に面した田舎町で、映画でもフォートに面したガートが重要な場所として何度も登場する。また、ここはインドールを都としたホールカル家が、18世紀の女性当主アヒリヤー・バーイーの治世の期間、遷都されていた町でもある。映画にはそのフォート前が出てくる。

・マヘシュワールから都会に出た主人公が行くのは、おそらくインドール。デリーから公演に来たパリーが主人公と出会うのもおそらくここ。しかし映画では、パリーの宿泊ホテルはマヘシュワールに近いマンドゥのマルワ・リゾートとなっている(乗っているタクシーにも名前が書かれている)
(旅行人のWEBサイト「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました)

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by mahaera | 2018-12-07 02:43 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』もしこんな出来事が起きていたらと、ほっこりするコメディら


監督:エルネスト・ダラナス・セラーノ
出演:トマス・カオ、ヘクター・ノア、ロン・パールマン
配給:アルバトロス・フィルム
公開:121日より新宿武蔵野館ほかにて公開

■ストーリー
1991年のキューバでは、欧州での共産主義陣営の崩壊を受け、経済が深刻な打撃を受けていた。
また若者たちを中心に、価値観も変わろうとしていた。
そんな中、モスクワ大学に留学し、大学でマルクス主義を教えているセルジオも
社会の変容に戸惑っていた。
セルジオはアマチュア無線が趣味で、彼の苦境を知ったニューヨーク在住の
交信仲間のピーターかり最新式の無線キットが送られてくる。
しかしそれは当局にセルジオが目をつけられることでもあった。
ある日、セルジオはソ連の宇宙ステーション「ミール」の宇宙飛行士セルゲイと交信する。
やがて2人はお互いの家族のことや将来への心配を語り合える親友になっていった。
12月、ソ連は消滅しロシア連邦となる。
地球に帰りたいセルゲイのために、セルジオはある計画を練るのだが。。

■レビュー
最初にこれは実話ではなく、「もしあの出来事の舞台裏でこんなことがあったら」
という想像を膨らませたフィクションであることを知らせておこう。
僕も映画を見るまでは実話かなと勘違いしてた。
若い方はご存知ないと思うが、1989年に長年続いていた東西両陣営の
冷戦構造が崩壊したのは、あっけないほどの速さだった。
超大国ソ連も一気に崩壊し、たちまち貧乏国になってしまった。
そんな国家の混乱の中でも宇宙飛行計画は続いており、宇宙ステーションのミールに
ひとり取り残されたセルゲイは、「最後のソ連国民」と呼ばれていたという。

宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフは実在の人物だ。
10年に渡って宇宙滞在時間の最長記録を保持しており、
映画のモデルとなったのは1991519日からの宇宙滞在で、滞在が延長される中、
1225日にソ連から離脱してロシア連邦が成立する。
セルゲイが帰還したのは翌年の325日のことだった。

映画は全体的にはコメディタッチで、基本的には出てくる人物は善人か、
悪役となる権力者側も“間抜け”に描かれ、陰惨な感じはない。
もちろんその中にも、キューバ国民の将来への不安やその後に起こること(ボート難民など)が
顔をのぞかせてはいるが、国家が頼りにならないとなると、
人々は違法ながらラム酒を作ったり葉巻を巻いたりと、たくましく生きる姿に描かれている。

気楽に観られる映画で、後味もいいが、
もう少しひねりが欲しかったかな。無い物ねだりだが。
★★★
(旅行人のウエブサイト「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました)

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by mahaera | 2018-12-02 09:12 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『いろとりどりの親子』 “ふつう”とは違う子供を持つ親とその子の関係を描くドキュメンタリー



2018年/アメリカ

監督:レイチェル・ドレッツィン
出演:アンドリュー・ソロモン
配給:ロングライド
公開:11月17日 
劇場情報:新宿武蔵野館

もしあなたの子供が、世間一般の“ふつう”の子供でなかったとき、誰かが「交換してくれる」といったら交換しますか? 
たとえどんなに障害があっても、「取り替えたい」と思う人はいないと思うが、他の家族にはない苦労はあるはず。
本作は、そんな「親とは違う子供」がいる
家族6組を描いたドキュメンタリーだ。

本作には原作がある。
自分がゲイであることで親に受け入れてもらえなかった著者が、
同じような親子を探してインタビューを試みた本だ。
この本は読んでいないので映画との関連性がどの程度なのかはわからないが、著者もこのドキュメンタリーに登場する親子のうちの一組として登場する。
他にも登場するのは、ダウン症、自閉症、低身長症、LGBT、
そして罪を犯した子などを持つ親子だ。
Yahoo掲示板もそうだが、僕の周りの人たちも、障害を持っている子がいる家庭を見ると「かわいそう」と即座に反応する人もいる。
そして自分の家の子供は“まとも”でよかったとわざわざいういう。
しかし障害があろうがなかろうが、親子は他の人間では取り替えが効かない「特別な関係」だ。
世話をするのに疲れることもあるだろうが、
だからと言って他人の子供をもっと愛せるかというと、そうではないだろう。

映画の中でも語られるように、自分を責める親もいる。
妊娠していた時に飲んだアルコールがいけないのだろうか、発達に障害があるような過激な運動をしたかもしれない、、。
解答はないが、何に理由を求めずにはいられない。また、子供も自分を恥じている親の態度に敏感に反応する。

印象に残るのが低身長症の大会だ。ア
メリカ全土から低身長症の人たちだけが集まるミーティングで、
出席した人が今までのような疎外感を味合わずに済むシーン。
日本では今ではあまり見かけなくなったような気がするが、
僕が子供の頃はふつうにテレビに出ていたっけ。
今、低身長症の人をテレビや映画に出すと「差別」とされるが、それは何だか当たり障りなく、彼らを隠そうとしているだけにしか感じない。

本作では苦労話もあれば、あっけらかんとした関係の親子もあるように描かれる。
個人的にはいささか「美談」としてまとめているような感じもあり、もっと掘り下げ感もほしかったかも。
★★☆

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by mahaera | 2018-11-29 16:40 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『エリック・クラプトン 12小節の人生』 E.C.のヒストリードキュメンタリー


2017年/イギリス

監督:リリ・フィニー・ザナック
出演:エリック・クラプトン、B.B.キング、ジョージ・ハリスン、パティ・ボイド
配給:ポニー・キャニオン
公開:11月23日よりTOHOシネマズシャンテほか

常人には波乱万丈の人生としか思えないギタリスト、
エリック・クラプトンの人生を時系列で追う
ヒストリー・ドキュメンタリー。
2時間を超える長尺だが、とくに仕掛けもなく続いていくので(それが人生だが)、ファン以外は最後はちと退屈になるかもしれない。

描かれている内容は、「エリック・クラプトン自伝」
読んだり、ファンでロック雑誌を読んだ人にはご存知だが、知らない人にはまさに波乱万丈。
ずっと母だと思っていた人は実はおばあちゃんで、
ある日、本当の母親が現れた少年時代。
ここでジョン・レノン同様、エリックは家族愛や女性愛をこじらせてしまい、のちの女性遍歴につながるのか。
その後、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ、クリームと、上り調子のギタリスト人生。「Clapton is God」の時代だ。
ジミヘンとの出会い、ホワイトアルバムへの参加
ブラインドフェイスと、音楽人生も丁寧に語られる。
アレサ・フランクリンのレコーディングへの参加など、
いいエピソードも。

中盤は一番の山場となる、親友ジョージの妻パティへの報われぬ愛だ。
夫がインドに傾倒し、女として相手にしてくれない不満。
パティはビートルズの妻たちの中でいちばんの美人だから当然だろうが、ジョージの家の近くに引っ越してきたエリックは、彼女がいながらパティにメロメロになる。
しかし彼女のために名曲「いとしのレイラ」を含むデレク&ドミノスの名盤を作り、それを聴かせてもなびかなかったからバンドやる気なくすのも如何なものか。
パティが好き、というより、手に入らないから求めているようにしか思えない。
その後、激しいヘロイン中毒に陥り、
廃人のような1年を送る。

長いクラプトンの人生にとってはまだ序盤のはずだが、
その後から現在まではけっこう駆け足。
ドラッグ中毒から回復し、ソロアルバム「461オーシャンブールバード」の成功から再びシーンに復帰するも、
今度はアルコール依存症になり、暴力的になったり、
女性に次から次へと手を出す。
ようやく1979年に念願叶ってパティと結婚するも、
エリックのアルコール依存症と女性依存症は治らず(同時に何年にもわたって複数の女性と交際し、子供までいた)、1989年パティはエリックのもとを去る。

その後、エリックは彼の子を産んだイタリア人女性と結婚し、子供コナーを愛するようになるが、コナーは1991年にニューヨークのホテルから転落死
失意のエリックはその辛さを音楽に向け、アルコール依存症も克服し、亡き息子のために「ティアーズ・イン・ヘブン」を書き上げ、「MTVアンプラグド」でグラミー賞を受賞する。

ソロになってからのアルバムごとの変化は、
ほとんど取り上げられず、後半がプライベート中心に
なってしまったのが残念。最後は家庭人となり、ようやく幸せが訪れるというエンディングだが、こう見ていくと彼の人生は、常に何かに依存していたのだなうと思う。
珍しい演奏シーンはないのと、肝心のクラプトン本人のインタビューが無いのが残念。深みが足りないので、できればスコセッシあたりに作って欲しかったかなあ。

★★★


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by mahaera | 2018-11-25 12:46 | 映画のはなし | Comments(0)

映画レビュー『上田慎一郎ショートムービーコレクション』 『カメ止め』はいきなり出てきたのではなかった!


新作ではないのだが、『カメラを止めるな』の上田慎一郎監督がそれまでに作って評判の良かった短編4編を現在各地のイオンシネマで巡回上映している。
海老名では昨日が最終日だったので見に行ったが、4編ともとても面白かった。
すべて上田監督が脚本も手がけているのだが、観客をミスリードさせる語り口がうまいのだ。
メジャー映画や長編映画とは違う、アイデアとスピード感で勝負する意気込みが伝わってくる。
すべてコメディだが、共通するのは「それまである部分では受け身で生きてきた主人公が、逆境、あるいは選択を迫られ、奮起する」というテーマだ。
簡単に解説すると以下のよう。僕は短いこともあって、どれも楽しめた。
たぶん、一般の人より、映画好きの人の方が楽しめるかもしれない。
★★★☆

●『彼女の告白ランキング』(2014)21分
洋平は2年越しの恋人にプロポーズすると、彼女はなぜかそれを保留に。
翌日、彼女は「17の告白を聞いて、すべて受け入れてくれたら結婚する」という。
すると家にフリーの司会者が現れ、ショックの低い順にランキングを発表していく。
果たして彼は、彼女の告白を受け止めることができるのか。

この告白が、いきなり主人公の度肝を抜くもので、それが17位なら上位は一体何?とエスカレートしていのが笑えるのだが、同時にもし自分がこんな目にあったらという、共感を誘いストーリーに引き込んでいくのもうまい。
「世にも奇妙な物語」みたいなショートコントだが、うまくできていると思う。

●『ナポリタン』(2016)19分
人の話を聞かない営業マンの川上は、恋人が家でナポリタンを作って待っていたことも忘れて外食してきてしまう。
翌日、川上は人の話す言葉がすべて「ナポリタン」としか聞こえなくなってしまう。
そしてその日は、彼女の実家に挨拶に行く日だった。。

星新一のショートショートにありそうな話。
恋人役の秋山ゆずきは『カメ止め』にも出ていた。
要はいい加減な男が罰を受けるという話だが、恋人の親に認められるというテーマは、この後も続く。全体の中では軽め。

●『テイク8』(2015)19分
自主映画監督の隆夫は、結婚式場で恋人の茜を主演に映画を撮影していた。
撮影はあと1シーンを残すのみとなったが、茜の父役の俳優が手違いで来ない。
そこへ偶然現れた茜の本当の父親が代役を買って出るが、隆夫に難癖をつけて何テイクも要求する。

『カメ止め』にも通じる部分がある作品で、フィクションに現実が混じり、
その境界が崩れたところに、本人たちが言えなかった感情が現れていくというメタ構造。
茜の父親は演技ではなく、自分の思いを娘の恋人にぶつける。
それを受け止めることで成長していく主人公がいる。
主人公の自主映画監督の頼りなさも『カメ止め』にも通じる。
で、最後はほろりとさせ、メジャー映画近しを感じさせる。

●『Last Wedding Dress』(2014)24分
70代の老夫婦の貞夫とコトミ。ある日、コトミが倒れてしまい、余命いくばくもないことを知った貞夫は、コトミの最後の願いを叶えてあげようとする。
それは結婚式をあげられなかったコトミのために、ウェディングドレスを着せてあげることだった。

4本の中では一番ドラマ重視で、“泣かせ”に持って行く作品だが、これもよくできている。
話はそれほど意外性はなくベタだが、そこはストレートに持って行き、ウエディングを成功させようとする周囲の協力に面白さを持って行く『カメ止め』のラスト近くのスタッフの奮闘ぶりに近い。

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by mahaera | 2018-11-23 12:28 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー「母さんがどんなに僕を嫌いでも」俳優たちのオーバーアクションが見ていて辛い


割と久しぶりの邦画だったが、居心地の悪さが最後まで続いた。
退屈して寝てしまうのではなく、周りのみんなは楽しんでいるのに、ひとりだけ乗れない感じだ。

実話を基にした原作がある作品。
主人公は、幼少時から母親の虐待を受けて育ち、
人との距離感がうまくつかめない青年だ。
デブだった少年を愛してくれたのは両親ではなく、
工場で働く婆ちゃんだった。
父親と離婚した母に引き取られ少年はやがて成長するが、
虐待はひどくなり、ついに家を飛び出す。
年月がたち、会社で働く青年になった主人公は劇団に入り、
心を許せる友人もでき、ようやく母親と向き合おうとする。
しかし、母親の心は変わらない。青年の努力が始まる。

こんな内容の話で、主人公を太賀、母親を吉田羊、
友人に森先ウィン、婆ちゃんに木野花が演じている。
で、まったく映画に乗れなかった。
途中途中、モノローグで子供時代の回想シーンにつなげるのだが、
子役がまったく自然じゃない。
子供劇団のあざとい演技のようで、
『万引き家族』を見習ってほしい。
大人の演技もオーバーアクションで、映画の間じゅう、
主人公も母親も怒鳴ったり叫んだりばかり。
あと、主人公と友人たちとの交流も、
見ていて気恥ずかしなる不自然さ。
素人劇団の描写あるが、あんな感じなのか?

細いディティールがちょっとずつ甘いのも、
映画を見ていてノイズになる。
雨音は結構するのに、路上は大して濡れてないとか、
いきなりのお見舞いなのに婆ちゃん眼鏡かけて寝ていて待機していたり、住んでいる家にリアリティがなかったりとか。

感動させたい、泣かせたいというのはわかるが、
あざとさが終始つきまとい、見ていて恥ずかしくなってきた。
たぶん、俳優の演出プランがよくなかったのだろう。
映画を見ている間、オーバー演技が気になって集中できないってことは。
この半分ぐらいのテンションでやるべきところかも。
常に大声で誰かわめいたり叫んだりしていて、こちらの気持ちが離れていった。

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by mahaera | 2018-11-21 10:20 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『モダンライフ・イズ・ラビッシュ ~ロンドンの泣き虫ギタリスト~』 薄っぺらなドラマ




2017年/イギリス
監督:ダニエル・ギル
出演:ジョシュ・ホワイトハウス、フレア・メーバー、イアン・ハート
配給:SDP
公開:11月9日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中

BlurのベストアルバムをCDショップで購入しようとした女性ナタリー。
それにリアムが声をかけたことから、2人の付き合いが始まる。
リアムはロックバンドをしているが、なかなか芽が出ない。
ふたりは一緒に暮らし始めるが、ナタリーはリアムを支えるために夢を諦めて就職。
しかしふたりの心はすれ違っていく。

2000年代を舞台にした英国ロック青春もの。
あるある感は親しめるのだが、主人公のリアム(当然ながらオアシスのボーカルの名)が子供ぽく自己中で、いまひとつ共感できない。
彼女の方がかわいそうと見てしまう。
映画のタイトルはBlurのアルバムのタイトルと同じで、主人公リアムがiPhone、スタバ、デジタル配信、YouTubeなどについていけないアナログ人間で、便利生活を否定しているからか。

好きなジャンルの映画なのだが、ストーリー、キャラ設定とも、深みのない書き割りの青春もので、なんだかダメなテレビドラマとかマンガを見ているような感じ。
どんどん置いてけぼりになる。細かい設定を楽しむことぐらいしかできなかったな。

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by mahaera | 2018-11-16 11:17 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ボヘミアン・ラプソディ』 クイーンというよりフレディの半生を描いた伝記映画。王道の作り


ドドパッ、ドドパッ、we will we will ROCK You !

という訳で、日本でもものすごい宣伝費かけている
フレディの半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』、
公開になったので紹介です。
この映画、試写が日本でもギリギリだったので
ちょっと心配したけど、中身はひとまずホッとする出来。
監督がちょっと苦手なブライアン・シンガー(『Xメン』シリーズ)なんで外したらと思ったけど、かなり王道というか、
ストレートすぎる作り。
『グレーテスト・ショーマン』ぐらい、深読み不要なわかりやすい作品だ。

映画は、クイーンというよりフレディの映画で、
フレディがクイーンに参加するあたりから、
1985年の伝説のライブエイドのパフォーマンスまでを描く。
このあたり、もっとアルバムやシングルごとにいろんなエピソードを見せて欲しいところなんだが、わりとサクサク進んで行く。
クイーンと日本の関係もセリフでさらっと触れられるぐらいで、ほぼ無視されているのが残念。
正直、クイーンの他のメンバーの描き方は書き割り背景に近く、内面にはほぼ踏み込んでいかない。
あくまでフレディの物語を進めるための進行役といった感じだ。
でも、ときどきサービスで名曲誕生秘話も入れている。

この映画で知ったのは、フレディの上顎の歯が
ふつうより4本多いということ。
そのため、口元がむきむきっとしているのだが、
映画でもバンドにボーカルとして入りたいとフレディが言うと、
メンバーに「歯医者に行け」的に言われるシーンがある。
あとは、クイーンのデビューの頃は印パ戦争があったころなので、イギリスには難民も多かったのだろう。
「パキ野郎」と一般人に罵られるシーンがあるが、
当時、日本のファンはフレディがインド系ってほとんど知らなかったと思う。

フレディの出生名は、ファルーク・バルサラ
生まれたのは父親の仕事でアフリカのザンジバルだが、
8歳からはムンバイで成長。
ロックバンドなどを結成するが、ボリウッド映画の
音楽の影響も受けていたようだ。
17歳の時にイギリスに家族で移住するが、
映画では幼少時代のことには触れてはいない。
ただし、フレディの家族のシーンで、
彼が自分の出自にコンプレックスを持っていたことが示される。

クイーンとしてデビューしてからのバンドの成功物語は、
あっさり、ひとすら登り調子として描かれているが、
それと並行してフレディの性についてもきちんと描かれる。
今ではフレディがゲイであることは誰でも知っているが、
当時はそれは噂程度だった。
最初の頃は、女性の恋人を連れて来日もしていたし。
映画では、フレディがメンバーから孤立していく様子を、
スタッフひとりの悪者に集約しているが、実際はどうだったのだろう。
映画なので史実通りでなく、
余計な枝葉の部分は切られているのだが。

ドラマ部分は物足りないところは多い(テレビ的というか、昔の娯楽映画を見ているぐらいさらっと進む)が、音楽シーンになると俄然盛り上がる。
何だかんだで、ライブエイドの演奏シーンを再現したクライマックスは、鳥肌ものだ。
大観衆をCGで作ったのかな。
これは劇場の大音響で見ないとダメでしょ。
あ、あとフレディ役のラミ・マレックさん、
熱演しているが似てない
これは当初の配役のように、サーシャ・バロン・コーエン(ボラットさん)にやってほしかったかも(笑)。
★★★

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by mahaera | 2018-11-11 13:01 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ヴェノム』 ヴェノム、いい人じゃん! 期待は高かったが、物足りない出来となった


2018年/アメリカ

監督:ルーベン・フライシャー
出演:トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開:11月2日より全国公開中

アメリカで大ヒットし、日本でも初登場一位と、興行収入では大成功を収めた作品。

しかし評論家受けはうまり良くない。では実際はどうなのか。

ヴェノムは、アメコミではスパイダーマンシリーズの悪役で、トビー・マグワイア版の『スパイターマン3』にも登場している。

記者エディ・ブロックが宇宙からの生命体シンオ・ビートに寄生されてしまう。

彼はスパイダーマンを逆恨みしていて戦いをしかけるが、彼の中では自分が善、スパイダーマンが悪と信じている。


今回の「ヴェノム」は、スパイダーマンシリーズとは直接関係なく、単独で完結する作品。

宇宙から未知の生命体シンオビートを回収し、人体実験をしている財団があった。

そこに潜入した記者エディがシンオビートに寄生されてしまい、“ヴェノム”となる。

財団からの追っ手と戦い逃走するエディ。

ひとつの体に、2つの人格があるというキャラは、日本の「寄生獣」とほぼ同じだ。


予告編では「最強の悪」が強調されていたが、映画ではそんなに悪くない。

いや、ヴェノムいい人なんじゃないのという感じなのだ。

もちろん主人公として共感できるようにというキャラ変更はあるのだろうが、人間臭い。

それに年齢規定をクリアにするためだろうが、バイオレンス描写が生ぬるい。

血しぶきも不自然なくらい飛ばない。そのものを見せなくとも、血だまりぐらいは見せてもいいでしょう。残酷なキャラなら。

寄生されて驚くエディ。そしてエディとの会話シーンは、「寄生獣」のミギーとのユーモラスな会話そっくり。

つまり、ちょっと笑えるコミカルなシーンだ。

たぶん、トム・ハーディ演じるエディ自体のキャラが、わりとフツーな人なので、ヴェノムの“悪”感がないのだろう。

たとえば、ウルヴァリンの『ローガン』のようなハードボイルド的なキャラなら、もっと違っていたろう。

エディが普通に善悪の基準を持っている(正義感がある)というキャラなので、「ヴェノムいい人じゃん」と、生ぬるく感じるのだ。


最終的に彼が戦うものは何か。

映画では、一緒に回収されたシンオビートの「ライオット」との戦いになる。

ライオットは地球にさらに多くの仲間を連れて来ようとするが、ヴェノムはそれを阻止しようとする。

その理由は?

それはヴェノムがエディと一体となることによって、彼を理解し、シンオビートの地球侵略を阻止ようとするというのだが、何となく弱い。

全体としては「こんなのが見たかったんじゃないのに」と、消化不良。

掘り下げが足りないエンタメ作品。

成人指定でもいいから暴れて欲しかったなあ。

★★☆


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by mahaera | 2018-11-07 11:34 | 映画のはなし | Comments(0)