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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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カテゴリ:映画のはなし( 514 )

最新映画レビュー『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』



2017年/アメリカ

監督:マイケル・ショウォルター
出演:クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、レイ・ロマノ、ホリー・ハンター
配給:ギャガ
公開:2月23日よりTOHOシネマズ日本橋ほかにて公開中

主人公はシカゴに住むパキスタンからの移民一家の息子。
アメリカに来て成功した親は、
息子に医者か弁護士を望んでいるが、
息子はコメディアンを目指して、昼間はUBERの運転手をしている。
その息子が、白人女性と恋に落ちるが、
一家は「白人女性なんて!」と大反対。
結婚相手は、パキスタン女性じゃないとと、息子を勘当。
一方で、彼女も主人公の煮え切らない態度に愛想を尽かし、
仲は破局に。
しかし、そのすぐ後、彼女は病気から昏睡状態になって
病院に入院してしまう。
眠り続ける彼女を看病しながら、
主人公は彼女こそ自分の大事な人だと気づく。 

ニューヨークを舞台にした映画では、タクシー運転手は
インド人かパキスタン人と決まっているが(笑)、
ここではUBERというのが今日的。
しかも貧しい移民ではなく、成功した移民一家の息子というのも、定型の役柄とは違う。
主人公は週末になると実家に帰って、家族で食事をするのだが、
そこでは描かれるのは、移民した第一世代とアメリカで育った第二世代との文化ギャップだ。
また、コメディでパキスタン系というと、
扱うには難しい宗教ネタだが、
本作ではそこを避けずに(みんなが知りたいところでもある)、
主人公にあえて彼の宗教観を語らせているのは、
勇気がいったろう。 
中盤、彼女が昏睡してからは、
主人公と駆けつけた彼女の両親とのやりとりが中心になるのだが、
この両親がそれぞれ欠点もあるが良い人たちで、
人間味を感じさせる演技が実に良い。
夫婦の感情のすれ違いとか、うまい。
ちなみに母親役はホリー・ハンターだ。 

実は、本作は実話の映画化で、
主人公はコメディアンである本人自身が演じている。
結末は、ハッピーエンドの『ラ・ラ・ランド』と言っておこう。
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by mahaera | 2018-03-13 12:47 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『悪女』 やり過ぎの韓国アクションだが、手を抜かない頑張り感は◎



日本でもリメイクされた『殺人の告白』のチョン・ビョンギル監督のアクション映画。
愛する人を殺された殺し屋の女が、相手の組織を単独で壊滅。
その腕を見込んで、政府の情報部が彼女を自由と引き換えに
暗殺者に育て上げる。
施設を出て第二の人生を歩みだしたヒロインの願いは、
娘の幸せだけだった。
やがてヒロインは再婚し家庭を築くが、
任務遂行中に、死んだはずの男に再会する。

キャラクターや世界観は、リック・ベッソンの『ニキータ』。
特に情報部の工作員養成施設や、施設を出てからの生活などは、
そのあたりママだが、こちらはニキータと違って元から殺し屋で、
高いスキルがある。
映画の冒頭数分はヒロインが組織に殴り込みに行く主観映像。
まるでゲーム画面のように、カメラに襲ってくる敵40人ぐらいを
一人でひたすら倒していく。
ワンショットな上、敵が多すぎて“やり過ぎ”感もなくはないが、
ここは素直に楽しむところ。
途中、下着姿、ウェディングドレスのアクションを挟み、
バイクに乗ったまま日本刀で斬り合うシーンも、
カット割りをせず走りながらのアクション。
これは実写かCGか?と思うほど、サービス精神いっぱいのシーンが続く。

全体的にアクションは、やり過ぎなのだが、
特に最後のバス大暴走アクションは、やり過ぎすぎてすごい。
敵の乗ったバスを車を運転しながら追いかけ、
フロントガラスを割ってハンドルに手を添え運転しながらボンネットに移動。
車をバスにぶつけて飛び移り、中に入り込む。
ということで、全編どこまで、未体験のアクションシーンを見せられるか
ということに、監督以下スタッフが熱を注いでいるのがわかる。
もちろん監督は、スタントマン出身だ(笑)

ヒロインが強すぎるが、そんなヒロインも男には騙される。
本作に出てくる男は、一人以外クソなので、
全員死んでいただきたいと、心置きなく思えるのがいい。
しかし見終わった後、どっと疲れた。本作と『新感染』続けて観たら、その日はグッタリだろう。★★★

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by mahaera | 2018-02-19 17:11 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『スリー・ビルボード』 優しさは怒りの炎を消す、「許し」になるのか



本年のゴールデングローブ賞作品賞ほか、
アカデミー作品賞にもノミネート
主演は『ファーゴ』などのフランシス・マクドーマンド

ミズーリ州の田舎町で十代の女性がレイプされて
焼死体で見つかるという事件が起きた。
それから7か月たち、一向に捜査が進展しないことに
業を煮やした母親ミルドレッドは警察に不信感を抱き、
町はずれに見捨てられたようになっている
3つの立て看板(スリー・ビルボード)に、
警察署長を名指しで非難する広告を載せる。
警察署長を慕う町の人たち、そして粗暴だが署長を敬愛している警官のディクソンは、ミルドレッドの行動に憤慨し、やがて両者は対立。事態は思わぬ方向へと進んで行く。

観客の心を不穏にさせる、先の読めない展開だ。
映画はまず、母親ミルドレッドを中心に展開。
娘を亡くした悲しみや苛立ちに同情し、署長が悪いのか、
何か陰謀があるのかと思って見ている。
しかし今度は署長(ウディ・ハレルソン)を中心に話が進むパートが来ると、署長にも事情があり、人徳者であり、人々に敬愛されていることもよくわかってくる。
つまり、ミルドレッドの怒りの矛先は見当違いだと。
そしてちっょと頭が足りなく、人種偏見に満ちて粗暴な警官のディクソン(サム・ロックウェルの忘れられない当たり役)
彼は映画の前半では、完全に憎まれ役なのだが、
彼が後半、意外な展開を見せるのも驚きだ。
とにかく、先入観なく見ていくのがいいかと思う。

ただし、勧善懲悪や、スッキリとした答えを映画に求める人には
全く向いていない。
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が好きな人はOK
基本的にこの映画では、すべてにおいて白黒はつけない。
現実世界と同じで、人間は複雑であり、
見る人によってその人の印象も違う。
いい人だと思っていたら、どす黒い部分もあったり、
ダメな奴の中にも善はある。
そして誰にも、ちょっとした思いやりや優しさの心はあり、
それを怒りの炎で消してはならない。
そんなわけでオレンジジュースのシーンは、名場面

最後を救われないと思うか、かすかな希望と見るかは、
人によって異なるだろう。
現実でも、同じ場面でも人によって受け止め方は違うのと同じだ。
タイトルの「スリー・ビルボード」とは、
本作品の3人の主要人物のことでもある。
看板には、誰も気にも留めないが裏側もあるのだ
おすすめ。


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by mahaera | 2018-02-16 11:41 | 映画のはなし | Comments(1)

スピルバーグ落穂拾い・その1 『カラーパープル』アカデミー賞無冠に終わったドラマ



僕はスピルバーグが監督としてデビューした
『刑事コロンボ/構想の死角』(1971)ぐらいから
映画を観出したので、常にスピルバーグの新作を
見続けてきたことになる。
『激突!』はテレ東でやっていた「淀川長治映画劇場」の紹介を見て、8分くらいの紹介シーンを頭に焼き付け、小6の美術の時間にその紙芝居を作った(笑)。
1975年の『ジョーズ』は、当時の中学生には
想像もつかないほど怖かったホラー。
以降、たいていの作品は見ているし、
「スピルバーグ=映画」と言っていいほど、
世界一映画に精通した監督であることは間違いない。

さて、30本以上ある彼のフィルモグラフィーのうち、
重要作「カラーパープル」と「シンドラーのリスト」は、
なぜか見そびれてしまっていた。
あまりにも有名で評価が定まっているので、
わざわざみようという気が起きなかったのだろう
(他に見ていないのは『オールウェィズ』『タンタンの冒険』『BFG』のみ)。
で、前に中古DVDを購入していたのだが、
まずは『カラーパープル』(1985)を見る。

20世紀初頭のアメリカ深南部が舞台。
黒人が多く暮らす農村地帯で、
セリー(ウーピー・ゴールドバーグが本作で映画デビュー)は、
父の子を2人産むが、子供はどこかに売られ、
自身は近隣の農家のミスター(ダニー・グローバー)の
嫁にだされる。
彼女の心の支えは、妹のネッティだったが、彼女もまた父、そしてミスターの性欲の対象にされそうになり、この地を出て行った。
生きている限り、セリーに必ず手紙を書くと約束して。
力で支配するミスターの元ですべてを諦めていたセリーだが、歌手のシャグやソフィア(オブラ・ウィンフリー)といった、男に負けない女性たちに勇気づけられる。

当時、アカデミー賞に10部門にノミネートされたが、
一つも賞を取れなかったことが話題になったが、できは悪くない。
いや、隙のない作りで、脚本もきちんとしているし、
俳優たちの演技、撮影も申し分ない。
それらをコントロールしているスピルバーグの力量も素晴らしい。
そして最後には、観客に対するご褒美であるカタルシスも用意されている。
しかし、そうした優等生的なところが反発されたのだろうが、
作品賞受賞作の『愛と哀しみの果て』よりは、覚えている人は多いだろう。
★☆

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by mahaera | 2018-02-10 14:43 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『スリープレス・ナイト』 フランスノワールのリメイクだが、弾けられず、不発に


2017年/アメリカ

監督:バラン・ボー・オダー
出演:ジェイミー・フオックス、ミシェル・モナハン
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公開:2月3日より新宿バルト9他にて公開中

ラスベガスの刑事が、麻薬をカジノから強奪。
しかしそれは、犯罪組織の中で受け渡しされるブツだった。
汚職警官を追う内務調査班、カジノ王、
そして凶悪な犯罪組織のボスの息子に追われ、
息子を人質に取られた主人公は、
なんとか彼らを出し抜いて息子を救い出そうとするが、、。

本作は2011年のフランス映画『スリープレス・ナイト』のリメイクで、ドイツ製スリラー『ピエロがお前を嘲笑う』で話題を呼んだバラン・ボー・オダーのハリウッド監督デビュー作となっている。
主演はアカデミー賞俳優ジェイミー・フオックスで、
共演はミシェル・モナハン
まずは観客は、主人公は本当に汚職警官なのか
わからないまま物語に引き込まれる。
家族をおろそかにした主人公は妻と別居中。
しかも一緒にいた高校生の息子を、
自分のせいでさらわれてしまう。

映画のほとんどはカジノリゾート内で進行し、
主人公は閉じられた空間の中である時は逃げ、
ある時は敵を出し抜いて息子を取り戻そうとする。
味方のはずの警察も、誰が汚職警官で
誰が内務調査官かもわからないし、自分自身も
汚職警官と思われて追われている。
『ダイハード』1作目的な、限られた空間の中でサスペンスが進行するのだが、本来は、お客がカジノやディスコで遊んでいる一方で誰にも知られずにハラハラするというところに面白みがあったはずだ。
しかし、随所にドンパチと派手なシーンを入れたので、なんだか荒唐無稽さが目立つ作品になってしまった。

特に悪役のボスの息子、いくらなんでも人前でバンバン銃をぶっ放さないだろ。
自分で捕まえてくれって言っているような感じだし。
乱射事件が起きたカジノの駐車場に、誰も監視の人もいないし、ストーリーに関係ない一般人が10数分も都合よくこなかったり、そこに難なく主人公の奥さん来ちゃったりと、そういう荒さが見ていてノイズとなってしょうがなかった。
ま、ジェイミー・フォックスは手を抜かずにプロの仕事しているが、どうもまた演出が良くないというか、90分しかないのに、
ずいぶん長く感じたよ。


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by mahaera | 2018-02-09 13:49 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』傑作群を生んだ、画家ゴーギャンのタヒチ時代を描く



2017
年/フランス

監督:エドゥアルド・デルック
出演:ヴァンサン・カッセル、ツイー・アダムズ、マリック・ジディ
配給:プレシディオ
公開:127日よりBunkamura ル・シネマ他にて公開中

1891年のパリ、都会暮らしにゴーギャンは絶望し、まだ見ぬタヒチ行きを仲間たちに説く。
しかし同意するものは誰もおらず、また妻子もついていかず、
ゴーギャンはひとりタヒチへと旅立った。
タヒチでもパペーテの町は彼が望むような場所ではなく、
ゴーギャンはさらに奥地へと向かう。
そこで彼は村の娘テハアマナを見初め、妻に。
テハアマナはゴーギャンのミューズとなり、ゴーギャンの創作意欲を湧き立たせ、
後に知られる多くの傑作を生み出すが、幸せは長くは続かず、
テハアマナも文明に毒されていった。

映画で触れられていないが、物語が始まるのは
かつてゴーギャンが共同生活をしたこともある、ゴッホが亡くなった翌年。
ゴーギャンは、生涯に二度タヒチに滞在しているが、
本作はその第一回目となる1891-1893年の旅を描いたものだ。

今でこそ、私たちは後にゴーギャンが評価されたことを知っているが、
当時はほぼ無名で、たまに絵が売れるくらい。
パトロンもいないから、日雇い労働でもしなければ、
とてもではないが生活を維持することはできなかった。
タヒチに渡ってもそれは同じで、絵の具を買うお金にも困っている様子が描かれている。

芸術を追い求めるゴーギャンにとって、タヒチは楽園でもあり、
また生活を考えると、貧乏という点ではパリと変わらなかった。
いくら文明を拒否しても、文明がなければゴーギャンが生きていけないという矛盾。
木彫りを村の青年に教えるゴーギャンだが、そうすると青年は観光客が買いそうな同じものばかり作るようになる。
それを怒るゴーギャンだが、日銭を稼ぐために木彫りを道端で売る彼自身とどう違うのだろう。
もちろん彼の絵画は一級の芸術品だが、それとて誰にも売れなければ、
誰にも評価されていないということにもなる。

タヒチの海が楽園というより、ゴーギャンの逃避の場としてしか見えないのは、
映画を見ながら、アートと生活という、芸術家には大昔からついて回った問題が、
妙に生々しく見えてしまったからかもしれない。
サマセット・モームの『月と六ペンス』をまた読みたくなった。

映画自体が面白いかというと、それほどでもなく、
ヴァンサン・カッセルの熱演はわかるのだが、
映画のゴーギャン自体に魅力を感じられなかったのが残念。
★★☆
(旅行人のWEBサイト「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました)

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by mahaera | 2018-02-08 11:52 | 映画のはなし | Comments(0)

2017年MY映画ベストテン いろいろあるけれど、割とメジャー作品が中心に


1. ドリーム(セオドア・メルフィ監督/アメリカ)
 日本でもっと大ヒットして欲しかった。宇宙実話ものは、もともと大好きなジャンルだが、本作は文句のつけようがない出来。とにかく脚本が素晴らしく、無駄なシーンがない。そして脇役に至るキャラまで、手抜きなくきっちり作り込まれている。ファレルの音楽も最高! そして見終わった後、、最高に気持ち良い気分になれる。

2. ラ・ラ・ランド(デミアン・チャゼル監督/アメリカ)
 隙だらけの脚本、主役二人以外のキャラが全て書き割りと、『ドリーム』に比べると映画的完成度は低いかもしないが、それをすべて帳消しにする音楽のマジック。そしてラスト40秒で、心を持っていかれる。1回目はノイズになっていた部分も、2回目鑑賞以降は愛おしいシーンに。リピート鑑賞するたびに、没入度は倍増。

3. ローガン(ジェームズ・マンゴールド監督/アメリカ)
 Xメン、ウルヴァリン両シリーズを通じての最高傑作。マンゴールド監督の前作『ウルヴァリンSAMURAI』はひどい出来だったが、今回は『17才のカルテ』のようにキャラに深みを出す演出。このシリーズで号泣するとは。

4. ダンケルク(クリストファー・ノーラン監督/イギリス、アメリカ、フランス、オランダ)
 なぜか日本では評価が低いが、もしかしたらノーラン最高傑作かも。とにかく「映像で見せる」ことにこだわった作品で、大画面で見ることに意義がある。説明を省いたソリッドな演出は好き。

5. ありがとう、トニ・エルドマン(マーレン・アデ監督/ドイツ、オーストリア)
 162分もあると知って見るのを躊躇したが、見て大正解。長さも感じさせないくらい、いや、この長さが必要だったからこそ、最後にくるカタルシスが素晴らしい。主人公が訪問した家族の前で歌う「グレイテスト・ラブ・オブ・オール」はベストシーン。

6. ノクターナル・アニマルズ(トム・フォード監督/アメリカ)
 何がいいかと説明するのは難しいが、2016年の『キャロル』同様、濃密な映画時間を堪能できる。つまり演出が的確だということ。

7. 婚約者の友人(フランソワ・オゾン監督/フランス、ドイツ)
 これも1シーン1シーン、的確な演出がされている。そして観客が薄々気づいている謎は中盤で明かされ、そのあとに真の物語が始まる。

8. ブレードランナー2049(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/アメリカ)
 リドリー・スコットが監督しないでよかった! 

9. ムーンライト(バリー・ジェンキンス監督/アメリカ)
 非常に繊細な作品。セリフのない中でも、確実に感情は伝わる。

10. ガーディアンズ・ギャラクシー・リミックス(ジェームズ・ガン監督/アメリカ)
 単純に楽しめるが、父と子の関係もきっちり描いていて、最後は男泣き。

上記テンと同等によかった作品としては、『キングコング: 髑髏島の巨神』『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』、『ベイビードライバー』、『IT/イットそれが見えたら、終わり。』、KUBO二本の弦の秘密』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

旅行人のWEBサイト 旅行人シネマ倶楽部に寄稿したものを転載しました

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by mahaera | 2018-02-02 18:28 | 映画のはなし | Comments(1)

最新映画レビュー『ダークタワー』 スケール感のないダイジェストを見せられているようで残念


1/27より全国で公開中
原作のダークタワーシリーズは、知る人は知る
スティーブン・キング作品の集大成で、7部からなり、
他のキング作品ともリンクしている(各作品が同じ世界観の中でつながっている)。
それをまともに映画化しようとすれば、「指輪物語」のような
感じになるのだが、本作はたったの90分程度。
なので、その一部を取り出しただけになるのはわかっていたが、
なんだか中途半端な出来になってしまった。

映画の主人公は、現代のニューヨークに住む少年ジェイク。
ジェイクは毎晩悪夢にうなされるが、
それは黒衣の男(マシュー・マコノヒー)が子供をさらい、
その力を使って宇宙の安定を保っている暗黒の塔を
攻撃するというものだった。
やがて現実世界のジェイクの元にも黒衣の男の手のものが現れ、
逃げるジェイクは異世界へ。
そこでジェイクは、暗黒の塔を守るガンスリンガーの唯一の
生き残りである、ローランド(イドリス・エルバ)と出会う。

ストーリーは、今まで他のファンタジーで
見たことのあるようなもので、
「平凡な自分は、実は選ばれしものだった!」という
マトリックス的「厨二病」で、珍しくもない。
そして世界観も、ウエスタン風、ダークファンタジー風と、
どこかで見たようなものばかり。
ではドラマチックな展開があるかというと、
割とあっさり進んでいく。

別にありきたりな展開でも、演出次第では
面白く感じられるはずだが、本作はそうでもない。
なんだかこだわりがない、流れ作業的な感じがするのだ。
それは監督の力量なのか、それとももともと大作だったのを
90分に刈り込んだので、そんな印象になったのか。
マシュー・マコノヒーは、相変わらず頑張っているとは思うのだが、そもそも主人公の少年に魅力がないのが大きいのかもしれない。
90分も長く感じた。
★☆

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by mahaera | 2018-02-01 11:09 | 映画のはなし | Comments(1)

最新映画レビュー『ベロニカとの記憶』 同じ過去でも、人によって受け取り方が違うことを知る



2015年/イギリス
監督/リテーシュ・バトラ
出演/ジム・ブロードベント、シャーロット・ランブリング


シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館にて公開中。
インド映画『めぐり逢わせのお弁当』は、
中年男と主婦との細やかな心情を描いた上品な映画だったが、
そのリテーシュ・バトラ監督の最新作。
本作は原作もので、しかも一種のミステリーになっているが、
その細やかさは本作でも失われてない。


主人公は引退後、ロンドンで中古カメラ屋を経営している
トニー(ジム・ブロードベント)
別れた妻との関係は概ね良好で、娘も出産間近。
そこへ40年前に別れた初恋の女性ベロニカの母親からの
遺品贈与の届けが来る。
そして遺品は、トニーの学生時代の友人で、
若くして命を絶ったエイドリアンの日記だという。
一度会ったきりなのに、なぜ? 
しかもベロニカは日記の引き渡しを拒んでいる。
トニーは過去を振り返り、
やがてベロニカ(シャーロット・ランプリング)と再会する。

先日、高校時代の友人と再会した時
「我々は初老だから」と彼が言った。
思い出の中の青年時代は色鮮やかかもしれないが、
それは何十年にも渡って記憶が反復されていくうちに、
作られた過去だからだ。つまり自分の記憶の中の過去は、
その間に軌道修正されている。

トニーは、ベロニカと知り合い、そして別れるまでの記憶の中で、
自分に都合のいい部分だけを繰り返し再生していたのかもしない。
しかし、同じ時間を共有したもの同士でも、再生される部分が違えば、違った記憶になるだろう。
トニーは、仲が良かった友人の自殺についても、
彼と仲良くしていた記憶は鮮明だが、
死んでしまった前後の関係についてはあいまいになっている。

映画は、主人公が自分の過去の出来事を探っていく
ミステリータッチにもなっている。
人は、他人にされたことは覚えていても
(悔しくて何度も頭の中でリピートするから)、
他人にしたことは忘れがちだ(思い出さないから)。
そのギャップに気づいた時、人は相手が自分の知らない人生を
過ごしてきたことを改めて知る
のだ。それも何十年もたってから。
映画の中で、トニーがそのことにふと気づくように、
私たちもベロニカの立場に立っての人生に気付かされる。
そしてそれは、実人生の中では、無数にあることなのだと。
★★★☆
スカパー!

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by mahaera | 2018-01-29 10:32 | 映画のはなし | Comments(2)

最新映画レビュー『ライオンは今夜死ぬ』



ライオンは今夜死ぬ

監督 諏訪敦彦(『不完全なふたり』
出演 
ジャン=ピエール・レオー
1月20日よりYEBISU GARDEN CINEMAにて公開中


トーケンズの1961年のヒット曲『ライオンは寝ている』を皆さんも聴いたことがあるだろう。
しかしこの曲のタイトルが、フランスでは
『ライオンは今夜死ぬ(死んでいる)』
なっていることは、僕はこの映画で初めて知った。
歌詞をチェックしてみると、
「今夜ライオンは寝て(死んで)いるので、
村は安全だから怖がらなくていい」
という、
童謡のようなものだった。
もともとこの曲は、1940年代に南アフリカでヒットした曲で、
原題の「Mbube」とは、ズールー語で「ライオン」の意味らしい。
それが1960年ごろのアメリカのフォークブーム
(自作曲ではなく伝承歌が中心)で紹介され、
コーラスグループのトーケンズが歌い、
全米No.1ヒットになったのだ。

映画はの主人公を演じるのは、
ヌーベルバーグの申し子であるジャン=ピエール・レオー
南仏で撮影中の映画で「死」をうまく演じることができない、
老俳優ジャンの役だ。
撮影が数日中断している間に、ジャンは
かつて愛していた女性が住んでいた屋敷を訪れ、
そこで若いままの彼女の幻に会う。
また、その屋敷に無断で映画作りをしに来た子供達とも出会い、
彼らの映画に出るうちに、生きる感情を
取り戻していくというストーリーだ。
ドラマチックな展開はないが、何気ないしみじみとした時間が
愛おしいことを、子供たちがあらためて教えてくれる。
さて、曲の「ライオンは今夜死ぬ」は、
映画の中で主人公のジャンが子供達にこの歌を歌う。
ジャンが若い頃にヒットしたポップソングというだけでなく、
「恐れるもの(=死)は今はいないから、安心おし」と
子供達に歌いかけ、そしてそれは「死を恐れず、生を楽しもう」という、観客への語りかけでもある。



ソロモン・リンダのオリジナルはこんなアフリカの民謡のような曲です。




1952年にピート・シガーがいたThe Weaversのカバー「Wimoweh」として発表。これがアメリカでのこの曲の初紹介かな。




映画では、もちろんフランスでNo.1ヒットになったアンリ・サルヴァドールのバージョンです。



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by mahaera | 2018-01-28 01:08 | 映画のはなし | Comments(0)