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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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カテゴリ:映画のはなし( 514 )

最新映画レビュー『『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』ファッションの舞台裏に迫る



『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて公開中。


日頃、ファッションにはほとんど興味のない僕だが、
なぜか関係するドキュメンタリーを見るのは好きだ。
自分の知らない未知の世界がまだこんなにあったなんてと、
思わせてくれるからだ。
昨春公開された『メットガラ ドレスをまとった美術館』
非常に面白かった。服やそのデザインも、創作という意味では
絵画や彫刻などとなんら変わることがない。

さて、ファッションデザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン
知っている人は知っているのだろうが、
「広告は一切打たない」せいか、
僕はこのドキュメンタリーで始めて知った。
本作はその彼がファッションショーを終え、
次のシーズンの準備に入るところから始まる。
カメラは彼の仕事ぶりだけでなく、彼の私邸に入り、
パートナーと暮らすプライベートな空間まで密着する。
その作品が色あざやかな生地やエスニック柄が特徴なのに対し、
普段着の彼はその真逆の、柄がなく、
色彩も抑えた服を着ているのが印象的だ。
それが、知的で優しげな雰囲気と合わさり、
穏やかな抑制を生み出している感じがする。

ファッションデザインでは珍しいのだそうだが、
彼自身はデザイン画を描かない。
その代り、生地作りから作業を始めていく。
職人の手による刺繍を重視し、インドのコルカタ
スタッフを駐在させて、刺繍工房の品質の管理や指導に
当たっていることにも驚いた。
そしてできた生地や刺繍を何度も当て、配色を組み合わせ、
試行錯誤の末に作品を作り出していく。
そうした仕事風景と並行して、プライベートでは自宅の庭で
花を摘み、部屋に生けていく。
そこにも「美」があるのも面白い。
★★★
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by mahaera | 2018-01-26 11:51 | 映画のはなし | Comments(1)

最新映画レビュー『はじめてのおもてなし』難民の青年が我が家にやってきた! 家族の再生を描くコメディ



シネスイッチ銀座にて公開中。


難民問題で揺れる欧州だが、そのなかでも比較的、
難民を受け入れてきたドイツ。
しかしそれにまつわるトラブルも増え、
きれいごとだけでなく、
どう向き合うかの覚悟も必要になってくる。
当然ながら、ドイツの世論も二分される。
そんな中、2016年にドイツで公開され。大ヒットしたコメディだ。

ミュンヘンに住むハートマン一家は裕福だが、
家族がバラバラになりかけている。
教師だった妻のアンゲリカは定年後に生きがいを見出せず、
医者の夫のリヒャルトは自分の歳を認めず
仕事と若さにしがみついている。
弁護士の長男はワーカホリックで妻に逃げられ、
長女は31歳になるのに大学をまだ転々として将来を決められない。
そんな中、アンゲリカは、
アフリカ難民の青年ディアロを家族に迎え入れることにする。
本作がヒットしたのは、シリアスな題材にもなる話を
アンサンブルコメディにして、
堅苦しくないドラマにしたことだろう。
ズシンとくる話は見た後は確かにいいが、
見に行くまで腰が重くなるからだ。
ただし本作はコメディだが、描かれていること
すべてまともに描いたらシリアスである。

ハートマン家の4人は、ドイツ人の縮図で
老人問題、生きがい、働きすぎ、自分探しと、
裕福だが、どこか人間的な幸せを見失って活力を失っている。
難民の青年から見ると、それが不思議で仕方がない。
また、難民に対する態度も、リベラル派でも分かれるし、
さらにご近所に至っては、犯罪者扱いする者もいる。
そして何が何でも難民受け入れ派もおかしい。
そのすべてを均等に茶化し、
最後は「人と人との関係が大事」という
シンプルなところに落ち着くのだ。
難民問題という時事ネタがストーリーの軸だが、
根っこでは「家族の再生」が大きなテーマになっている。

英米映画ばかり見ていると、
俳優の演技がベタに感じるかもしれないが
(ちょっと邦画っぽい)、きちんと伏線が張られた脚本は緻密。
気楽に楽しもうという方にもオススメだ。

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by mahaera | 2018-01-24 19:11 | 映画のはなし | Comments(1)

映画レビュー『FRANK-フランク-』そこはかとない哀しみとユーモアが同居する不思議な映画



FRANK-フランク-

監督: レニー・エイブラハムソン
出演: マイケル・ファスベンダー、ドーナル・グリーソン


マイケル・ファスベンダーが、ほぼ全編被り物をして
ロックバンドのボーカルを演じる『FRANK-フランク-』。
監督は次に『ルーム』を監督することになる
レニー・エイブラハムソン。

主人公は音楽への情熱はあるが、才能はないジョン
(演ずるは「最後のジェダイ」のハックス将軍、ドーナル・グリーソン)。
ある日、ジョンは偶然から、バーに出ていた前衛バンドの
ソロンフォルブスに参加することになる。
バンドのボーカルは、巨大な被り物の顔を被ったフランク。
最初は驚くジョンだったが、レコーディングに誘われ、
アイルランドの田舎の別荘にバンドメンバーと籠もることになる。
しかしなぜか、フランクとマネジャー以外のメンバーは、
ジョンに友好的ではなかった。
やがて、ネットに投稿した映像がきっかけになって、
ソロンフォルブスはテキサスの音楽祭、
サウスバイウエストに招かれることになるのだが、、。

端正な顔立ちのファスベンダーだが、ここではほぼ全編、
被り物をしていて顔を見せない。
彼はなぜ、自分の顔を見せられないのか。
その理由は最後に明かされるような明かされないような。
精神の病の原因は、一つだけではなく、
また他人にわかるようなものではないということだろう。
バンドメンバーたちも社会にうまく適合できない奴らばかりだが、
しかしそのフランクがいるから生き生きと音楽ができる。
ただし、それは外に向かわず、
自分たちの世界でしか発揮できない。

本作の音楽が秀逸で、主人公のジョンが作る曲は
才能がないのがわかるし、フランクらの前衛バンドの音楽も
いいけど決してメジャーにはなれないタイプの音楽だったり、
弾き語りがいい曲だったりと、様々なタイプの音楽を、
映画の中の役割に合わせて作っている。

全体を通して流れているのは、
笑いと悲しみが入り交じった、微妙な空気感。
この映画を見て、感動して泣いたりと、
激しく感情を揺さぶられることはないだろうが、
人ってやはり人を必要している、そんな優しさも伝わってくる。
心に引っかかる、そんな作品だ。
ファスベンダーが歌う、「I LOVE YOU ALL」も、しみじみいい曲。
★☆

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by mahaera | 2018-01-23 11:44 | 映画のはなし | Comments(0)

映画レビュー『おみおくりの作法』 死者への敬意を持って静かに生きる主人公。彼が思うものは



「おみおくりの作法」

イギリス・イタリア合作映画

てっきり「おくりびと」のような葬儀屋の話
かと思ったら、いい意味で裏切られた。
主人公はロンドン郊外の役所の民生係。
彼の仕事は、その地区で死んだ身寄りのない人の
葬儀をするというもので、事務的にもできるのだが、
一人一人、知り合いを探して丁寧に葬儀をあげている。
しかし、人員整理のために彼は首になり、最後の仕事と
して彼の向かいに住んでいたある男の葬儀を上げようとする。
孤独なまま死んだ音は、主人公の境遇にも被るものがあった。
生前の男を知る人を訪ねる旅が始まる。

非常に丁寧に作られた、上品な映画。
そして何だか日本映画っぽい。イギリスの話だが、
製作や監督がイタリアということで、
映画で見慣れたイギリスなのに、どこかちょっと違う。
もう死んでしまい、遺族も参列者もいないに葬儀を上げるのは、税金の無駄と今の日本なら文句を言う輩もいるだろう。
しかし、そんな人だって誰かの子供であり、
誰かの隣人であり、誰かと関わって生きていた。
死者に敬意を払うのは、人としての最低のマナーと
思っているのが主人公だ。
昨年観た『KUBO』もそうだが、
人がその人を思い出している限り、死者は報われるはずだ。

ラストに異論もある人もいるだろうが、
あれは、観客へのサービスだと思う。
最後まで見た人に、カタルシスをプレゼントしてくれたのだ。
一般的には無名の俳優ばかりだが、それもいい方向に。
大作の陰に埋もれしまいそうな佳作だが、価値あり。

細かい演出だが、劇中、主人公が故人の知り合いを
訪ねて国内を旅するのだが、列車やバスに乗っているシーンは
いつも進行方向に背を向けて座っている(僕は後ろ向きが嫌なので気になった)。
そうしたら、最後の乗車シーンでは、
それが逆の進行方向を向いて座っていたので、
偶然ではなく、これも演出だとわかる。
彼の心境の変化を現しているのだろう。
★★★★
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by mahaera | 2018-01-22 12:42 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ジャコメッティ 最後の肖像』 天才でも創作に行き詰ることがある



ジャコメッティ 最後の肖像
1月8日よりTOHOシネマズ シャンテにて公開中

日本でも展覧会が好評だった、
細長い人の彫刻で知られるジャコメッティ。
舞台は1964年、すでに有名になって
個展も開かれている晩年のジャコメッティ。
その彼に肖像画のモデルを依頼された
主人公ロード(アメリカ人作家)が、「2日ですむから」
と言われてアトリエに行くが、なかなか作品が完成せず18日間も
かかってしまう(映画はロードの回想録を基にした実話)。
そのため物語の大半はアトリエが舞台で、
そこに妻のアネット、ジャコメッティの弟のディエゴ、
そしてジャコメッティのミューズ的存在の娼婦カロリーヌ
が現れては消え、ジャコメッティはなかなか創作に集中できない。
モデルは椅子に座ってじっとしているだけだから、
そうした人間模様を観察する。

意外だったは、成功者なのに、
ジャコメッティの家もアトリエもみすぼらしいこと。
お金には無頓着なのかケチなのか、
必要ないものは欲しくないのか。
生活も質素といえば質素。
かといって高尚な職人気質ってわけでもない。
まあ、偏屈といえば偏屈だ。
観客は凡人側である主人公の気分だから、
最初は天才であるジャコメッティに気を使い、
早く完成してくれるように注意を払うが、
そのうち「コイツ、本当に完成させる気があるんだろうか」と不安になってくる。

モノづくりが難しいのは始めと終わりで、
特に仕事の依頼でもなく始めたものは、
“完成しない作品”になりがちだ。
自分で締め切りが切れないからだ。
人の創作風景を見るのはなかなか面白い。
映画は低予算の小作品で舞台にもできそうだ。
地味といえば地味な作品だが、きちんと作ってあるので創作好きな人には、興味を持って見れるはず。
「最後の肖像」というのは、彼が描いた最後の肖像画だから。
ジャコメッティにジェフリー・ラッシュ。
海賊バルボッサの人ね。主人公のモデルにアーミー・ハマー。
監督は、俳優のスタンリー・トゥッチ。


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by mahaera | 2018-01-20 11:33 | 映画のはなし | Comments(0)

映画レビュー『ラスベガスをぶっつぶせ』 ドラマはまあまあだが、確率論が面白い



2008年の『ラスベガスをぶっつぶせ』。
これも実話をベースにした映画で、実際にあったMITの学生による、ラスベガスのカジノでのカードカウンティング事件を
基にした娯楽作。
昔、カジノの原稿を書かねばならなくなったので、
いろいろ調べたが、ブラックジャックは
他のものより客が勝つ率が高い賭け事らしい。
そして配られていないカードを、
配られたカードからある程度予測ができる。
それをカウンティングし(カードを覚えて)、
勝率を上げることができる。
これを、個人ではなく、学生がチームを組んで
効率的にして、稼いでいたというもの。
やがて目をつけられて発覚するが、違法ではないので、
彼らはカジノ出入り禁止になっただけだった。
実話では学生たちは全員アジア系だったが、
映画ではスターの美男美女を主役にしないと
ということで、4人中2人が白人。
主演は、最近見なくなったジム・スタージェズ。
主人公がベガスに初めて行って勝つ前半から
中盤までは面白いのだが、最後はドラマチックな展開に
しようとしすぎて、ちょっと尻つぼみになってしまったのが残念。

さて、この映画の冒頭、授業で「モンティ・ホール問題」を
教授が生徒に問いかけ、主人公だけが答えられるというシーンがある。
映画を見ていても、他の学生同様理解できなかったので
後で調べてみて面白かった。
人間の心理は、理性とは逆の行動をとることがある
という問題だ。

テレビ番組である司会者のモンティ・ホールが
挑戦者に問題を出す。
「あなたの前には3つのドアがあります。
2つのドアの向こうにはヤギが、
1つのドアの向こうには新車があり、
それをプレゼントします」。
モンティ・ホールは、どのドアの向こうに
新車があるのかを知っている。
挑戦者がまず、一つのドアを選ぶ。
この時点で、正解率は1/3だ。
しかしドアを開けずに、モンティ・ホールは、
次に挑戦者が選んでいない2つのドアのうちの一つを開ける。
そこにはヤギがいた。残りは2つ。
モンティホールはそこで挑戦者に言う。
「残りは二つ。今なら、選んだドアを変えることができますよ」。
しかしほとんどの挑戦者は、ドアを変えない。これは正しいか?

正解は「ドアを変える」だ。
ドアが2つになった時の正答率は、
1/2ずつだと多くの人は思うが、確率論的には違う。
最初のドアは依然として1/3だが、
もう一つのドアは2/3になる(1/3+1/3で)。
この理屈が映画の中だけでは理解できなかったが、アメリカでも
多くの数学者が間違った答えを出してしまったという。
「よくわからない」という人がほとんどだと思うが、
詳しくはwikiの「モンティ・ホール問題」を読んでみて。
面白いから。
クイズ問題みたいだが、理論的に解説されても、
なかなか納得できないところが人間だ。


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by mahaera | 2018-01-18 11:35 | 映画のはなし | Comments(1)

映画レビュー『ルーム』 子供はやがて広い世界に飛び出していく



2015年の『ルーム』は、2008年に発覚した
フリッツル事件がベースになっている。
この事件は、オーストリアで女性が実の父に24年間も地下室に閉じ込められ、その間、7人の子供を産んでいたというもの。
日本では「恐怖の家事件」などと紹介されていた。
子供の一人が病院に行き、事件が発覚した。
映画はただし、この事件をヒントにしてはいるものの、
監禁された母子の絆、心の傷からの再起と成長を軸に
描いたドラマで、ホラーやサスペンス映画ではない。

映画の基本的な視点は5歳の息子で、この子の演技が超うまい
中盤、脱出した息子が初めて
「本当の」空を目にするシーンは感動的
後半は、世間に馴染んでいく息子と、
なかなか馴染めない母の姿が描かれていく。
抑制された演出は上品で、それだけに家族の深い心の傷が伝わってく。
素直に喜べないお父さん(息子にとってはジージ)を演じる
ウィリアム・H・メイシーや、母の現在のパートナー(おじさん的存在)もいい。
そして「部屋」から出て、本当の世界を知ってしまったら、
かつての「世界」がいかに狭かったかを感じるラスト。
これは、大人になって子供の頃遊んだ場所に行ってみると、
「こんな小さかったのか」と感じたことがある人なら共感できるだろう。
子供は大人と違って、確実に成長していくのだ。
誰にでもお勧めできる良作。

本作で、母親役のブリー・ラーソン
アカデミー主演女優賞を受賞。
実は彼女は昔はディズニーチャンネル出身の子役アイドルで、
しかもアルバムも出していた歌手だった。
いや、彼女のPVとか見ていると、まさかこの娘が
こんなに演技派女優に化けるとは、
誰も思わないだろうなあ(ブリトニーとかの時代)。

予告編で、結構いいとこ見せちゃってますが、
オチが重要な話でもないんで、いいでしょう(笑)

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by mahaera | 2018-01-17 20:34 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『キングスマン:ゴールデン・サークル』 新鮮味のないシリーズ第二弾



キングスマン:ゴールデン・サークル


監督 : マシュー・ボーン
出演 : コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ハル・ベリー、ジェフ・ブリッジス
1月4日から全国公開中

年末に映画館に行くと、たいてい本作の予告編が上映されていた。
ご存知の方はご存知という、マシュー・ボーン監督によるコメディタッチのスパイアクション『キングスマン』の続編だ。
前作はロンドンの下町のチンピラ青年エクジーが、
一人前のスパイになるというコミックの映画化で、
監督のマシュー・ボーンは以前にも同じ原作者マーク・ミラーの
『キック・アス』を成功させている。
テイストも似ており、リアル志向とは真逆のアクションとコメディに、そのバランスを崩す過剰な暴力描写(笑いながら、ちょっと引く)を加えるというスタイル。

さて、今回は前作のヒットを受けたその続編で、続編にある
「さらに強力な敵」「仲間たちがやられる」
「前作で死んだ人が生きていた」
などのあるあるが盛り込まれている。
ということで、残念ながら新鮮味に欠ける上、
冒頭で壊滅したキングスマンが、アメリカの兄弟組織
ステイツマンの助けを借りて反撃する流れが長く、
本題に入るまでが退屈。
実際、2時間20分は非常に長く感じたのだ。
コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ハル・ベリー、
ジェフ・ブリッジスとアカデミー賞受賞俳優4人が出演していても、
その時間がなかなか持たない(ジュリアン・ムーア扮する悪役が出ているシーンだけは退屈しない)。

『キック・アス』の続編である『ジャスティスフォーエバー』が
駄作だったほどではないが(それなりに楽しめるが)、
本作ではアクションシーンがストーリーの進行を
逆に停滞させるだけとなっているのが残念。
後半にはアクションが始まると、
「ああ、早くさっさか終えて話を進めてよ」と思ってしまうほど。
また、前作では主人公の成長物語という、
この手のドラマを進める必然的な物語があったのだが、
今回は主人公もアンサンブルキャストの一人になり、
その点も弱い。

悪の組織の目的とか、いろいろ社会的な要素も入れ込んでいるが、
いかんせんテンポが悪く、乗り切れず。
あと、30分短くすべきだったと思う。


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by mahaera | 2018-01-12 20:27 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』代表作「快楽の園」の謎に迫るドキュメンタリー



12月16日より公開中『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』。
不思議な絵を描くボスは、昔から気になっていた。
小学生ぐらいの時からマグリットやダリが好きだった僕だが、
ボスのことを知ったのはもっと後。
海外に行くようになってからだと思う。
最初はシュールレアリズムの画家と思ったが、
時代はもっと古いルネサンス期で、生年、没年とも、
レオナルド・ダ・ビンチとほぼ同じくらい(1450頃-1516)。
その時代の中の誰とも違う個性を発揮していたことがわかる。

彼が描く絵は、日本の「百鬼夜行」のようだ。
空想上の生き物だけでなく、人と動物の合体、
生物と無生物の合体、巨大化した生き物が描きこまれて、
細部までじっくりと見たくなる。
本作は彼の代表作で、スペインのプラド美術館にある
「快楽の園」の謎に迫るドキュメンタリーだ。
ボスという人物を探る面もあるが、どちらかといえばこの絵画のテーマや、製作の過程の秘密や歴史を探る作品だ。

彼が生きた時代は、レコンキスタが終わり、
スペインが新大陸を発見。
ヨーロッパの覇者になった頃。
ボスが暮らしていたフランドル地方は商業が発展し、
裕福な商人や王侯貴族が生まれていた。
そんな中でボスは人気の画家で、
彼の作品を王侯が競ってコレクションしていたという。
中でもスペインのフェリペ2世は彼の作品を集めていたので(ボスの死後だが)、この「愉楽の園」がプラド美術館にある。

映画では、エックス線を使ったりして下絵を探ったり、
絵に描かれている楽譜を演奏したりする。
そして聖書の逸話と絵の関係性などが
様々なジャンルの人たちによって語られる。
それはそれで面白いが、それでも
なぜ彼はこんな絵を描いたかの動機や発想はわからない。
だから、魅力的なのだろう。
この「愉楽の園」をプラド美術館で見た
ダリやミロ(共にスペイン出身)に影響を及ぼしたと思うと、ボスはやはりシュールレアリズムの元祖かもしれない。
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by mahaera | 2018-01-11 11:24 | 映画のはなし | Comments(1)

最新映画レビュー『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』物語を語る力を信じる。ハイクオリティのアニメ



公開中だが、そろそろ終わりそうなので
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を観に行く。
知っている人は知っていると言うタイプの、ストップモーションアニメ。
製作は『コララインと魔女のボタン』(これも必見!)
のスタジオライカ。
監督はそのCEOのトラヴィス・ナイト。

舞台は、封建時代の日本。
月の帝の娘と武将のハンゾーの間に生まれたクボだが、
追手に追われて母とひっそり洞窟で暮らしている。
成長したクボは、三味線の名手となり、
彼が物語を語ると折り紙が様々な形に変わり、
人々の心を惹きつけるようになった。
しかしクボの所在は月の帝に知られ、クボの母親は命を落とす。
月の帝に立ち向かうためには三種の武具が必要で、
クボは、途中で知り合ったサルとクワガタとともに
それを見つける旅に出る。

日本が舞台の物語だが、上映館が少ない。
クオリティはディズニーやピクサーに引けを取らないのに残念。
よく練られた脚本とキャラクター設定は、少し前に観た
『最後のジェダイ』のずさんさと対照的。
1日1分も撮影できないほど手間がかかるのだから、
「無駄なシーンは撮れない」という意気込みが伝わってくる。
かし、ストップモーションアニメのクオリティは
上がりすぎていて、動きが滑らか。
そのうち、CGアニメとの違いが
わからなくなってくるんだろうなあ。

母を失った主人公が、旅をして仲間(サルとクワガタ)ができ、
武器のアイテムを見つけて、敵を倒すという枠組みは、
世界中の神話にある古典的な話。
ストーリーを追うのは難しなく、子供が楽しめるように作っているが、大人にならないとわからない暗喩も含まれている。
僕は見終わった時に、『ライフ・オブ・パイ』を思い出した。

物語の最初の方に、墓参りのシーンが出てくる。
人が思い出す限りは、死者は生きている。
物語が語られている間は、物語は生きている。
というセリフがある。そして物語には、
必ず始めと終わりがある。
だから人の心に響くのだと。
クボは物語ることによって、月の帝と戦う。
月の帝は、永遠の命があるが、
それは終わりがないということで、冷たい存在だ。
人は命に限りがあるから、豊かな感情を持てるのだ
というメッセージになっている。
そして、自分の命が尽きても、自分を思い出してくれたり、
物語を語り続ける人がいる限りは、その存在は生き続ける。

何かを作る人なら分かるだろう。物語や作品でもいい。
できあがった瞬間から、それは自分の手を離れ、
人の心の中でほんのちょびっとでも生き続ける。
100年前の映画、1000年前の小説もそうだ。
シャーリーズ・セロンら豪華吹き替えもいいし、
ラストの『ホワイル・マイ・ギター〜』が流れる瞬間は、

いい映画を見たと感じた。よくできた映画なんで、皆さんも是非。


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by mahaera | 2017-12-26 12:55 | 映画のはなし | Comments(2)