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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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カテゴリ:映画のはなし( 514 )

新作映画評 ピーター・ジャクソン監督の新作 『ラブリー・ボーン』を観た

ラブリー・ボーン The Lovely Bones
2009年/アメリカ

14歳で殺された少女が、死後の世界から愛する人々を見つめる
スリラーとファンタジーを融合させたピーター・ジャクソンの新作

公開:1月29日より全国ロードショー
公式HP:www.lovelyB.jp

スージー・サーモンはアメリカの郊外住宅地に住む14歳の女の子。
仲の好いパパとママ、そして妹と幼い弟と暮らしている。
目下の関心事は、同じ学校の上級生レイのこと。
初めてデートに誘われたスージーだが、学校の帰りに
近所に住むミスター・ハーヴィーに殺されてしまう。
1973年12月6日のことだった。
最初は自分が死んだことに気づかないスージーだったが、
家族の悲しみを見るうちに現世と天国の間の世界にとどまる事にする。

ストーリーを読んでもどんな映画なのかピンとこなかった。
そして映画を観終わった今も、この映画をうまく人に伝えられない。
郊外住宅地で起こった陰惨な殺人事件。犯人は近所に住む男だが、
疑われることなく、生活を続けている。
死体も発見されず、少女の家族の悲しみは大きい。
物語の骨格は家族ドラマであり、事件は解決されるかというサスペンスだが、
それを死後の世界にいる死んだ少女に語らせるのがユニークな点だ。
かといって、幽霊が出てくるホラーではない。
家族は時おり少女の存在を感じはするものの、姿を見るわけではないし、
対話が出来るわけでもないのだ。

死後の世界はCGを駆使したファンタジー場面として描かれる。
そこは少女が自由に思い描く世界で、
トウモロコシ畑に体が沈んでいくシーンや、
帆船の入った巨大なボトルが海岸で砕けるシーンのイメージはすばらしい。
一方、現実世界では、両親、
とりわけマーク・ウォールバーグ演じる父親の悲しみが痛々しい
犯人役の俳優を含め、出演者たちはみな熱演をしている(とりわけ主演のシアーシャ・ローナン)。
しかし、どうも全体ではそれがうまく生きていない。
少女が殺されるシーンや、犯人を疑い始めた少女の妹に危険が迫るシーン
などはスリラー演出でハラハラさせるのだが、それがどうも
ファンタジックなシーンとのバランスを欠いているような感じなのだ。

だから、シーンが切り替わるたびに、何か居心地が悪い感じを受けた。
視点ばかりか、演出方針が変わってしまうような感じなのだ。
多分、犯人の生活などを丁寧に描きすぎたために
(そしてそれが出来が良くて印象に残りすぎてしまったために)、
物語の流れの軸がブレてしまったためだろう。
もちろんいいところあるのだが、期待が大きかったためか、
そのあたりが残念な出来になってしまった。(★★★☆前原利行)

旅行人HP旅シネに掲載しました(同じもの)
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by mahaera | 2010-01-16 11:59 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画評 『パーフェクト・ゲッタウェイ』

『パーフェクト・ゲッタウェイ』 1月23日より公開
監督・脚本:デヴッド・トゥーヒー(『ピッチブラック』『リディック』)

楽しいはずのハネムーンが悪夢に…。

限定された空間で、逃げ場のない疑心暗鬼が高まっていくというサスペンスは、
古今東西ミステリー作家なら誰しも挑戦したくなる設定だろう。
本作が新しく感じるのは、「屋敷」とか「豪華客船」、
はたまた「オリエント急行」など、それまで外からも内からも出られない空間で
起きる事件が多かったのに対し、「ハワイの美しい大自然」という
オープンな場所で起きるサスペンスという点だ。

ハワイのカウワイ島、その美しいビーチへ向かうトレッキングコースに、
新婚旅行中のクリスとシドニーがやってきた。
二日かけて行くコースで、彼らはニックとジーナのカップルと出会い、行動を共にする。
また、このトレッキングコースへ向かう途中、ヒッチハイクを求めてきたが、
気分を害して車を降りたケイルとクレオのカップルも同じコースを歩んでいるのに気づく。
コースを歩いている途中、クリスとシドニーは、他のトレッカーから、
オアフ島で新婚旅行のカップルが殺され、
その犯人がカウアイ島へ逃げ込んでいることを耳にする。
しかも犯人は若いカップルだという。この中にいる誰かが犯人なのか?
疑いは疑いを呼んでいく…。

人気トレッキングコースなので、一本道とはいえ、まったくの無人ではない。
終点のビーチへ行けばツーリストだっている。
しかしふと人気がなくなる瞬間もある。
旅先で知り合った旅行者と一緒にトレッキング道を歩いた人もいるだろうが、
そんなところに殺人者が紛れ込んでいるとは、誰も思わない。
殺人者が呑気に観光なんてね。
それにカップル殺人鬼を描いた『ナチュラルボーン・キラーズ』や
『ハネムーン・キラーズ』という映画もあったが、
幸せそうなカップルと殺人は正反対のイメージだ。

そうした意外性をベースに、主人公のカップル以外に
二組のカップルが物語に登場。
途中から、誰が殺人鬼なのかというサスペンスになる。
実際、脚本はよく考え抜かれていると思う。
ミステリーなので詳しくかけないが、前半に張られた伏線も納得できる。
意外性もうまく生きている。しかし、その割に「B級感」は最後まで払拭できない

これはたぶん演出によるものなのだろう。
演出が「下品」というか、もう少し「高級感」をもたすこともできたはずだ。
たとえばこの脚本をもとにウディ・アレンが演出していたら、
直接的な表現を避け、洒落たスリラー・コメディになっていたかもしれない。
ミラ・ジョヴォヴィッチをはじめ、キャストに高級感がないのもマイナスか。
面白かったが、「安い」印象がぬぐえない作品になってしまい、残念。
(★★★)

(旅行人「旅シネ」に転載予定)
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by mahaera | 2010-01-12 11:21 | 映画のはなし | Comments(0)

ジェームズ・キャメロン監督 『アバター』 3D上映を観る

子どもがまだ授業が午前中で帰ってきて、また妻も大学の授業が午前中だったので、
午後がいきなり騒がしくなった数日前、仕事ができそうにもないので、三人で『アバター』を観に行った。

最近はシネコンで常に3D上映が行われているのだが、その日は割引デーで、
ひとり1000円+3D料金300円。
個人的には『カールじいさん』が観たかったのだが、息子の強い要望で『アバター』。

で、キャメロン作品といえば『タイタニック』以来なのだが、これがけっこう面白かった。
未来を描いた映画だが、その世界観は
キャメロンが監督した『エイリアン2』のアナザーサイドといってもいい。

映画は主人公が惑星パンドラに到着するところから始まる。
多国籍企業が国の政策を左右するような近未来。
人類が発見した惑星パンドラには、狩猟民族の異星人が住んでいた。
彼らは文明的には遅れていたが、森や自然と調和する生き方をしていた。
まあ、アメリカ先住民のイメージだ。

人類は彼ら先住民が住む地域に、高価な鉱石資源が眠っていることを発見。
何とか彼らを立ち退かせて、それを手に入れようとする。

この星には海兵隊(未来なのに組織は現代のまま)と、星の生態系を研究する科学者達がいた。
科学者達はこの星で自由に活動できるよう、人工的に先住民の姿をしたクローンを作り、
人間がそれを制御するポッドの中に入ることにより、
それを自分の「アバター」(自分の分身)として動かす計画を実行していた。

主人公はこの計画に関わっていた双子の兄がたまたま死亡したことにより、
DNAがほぼ一致していることから、何も知らない状態でこの惑星に代理として送り込まれる。
現実生活では下半身不随で車椅子の彼だが、このアバターを動かすことにより、
この星では先住民と同じ運動神経を手に入れることができるのだ。

ここまでの状況説明は、映画では本当に短く、さっさと説明されてしまう。
まどろこしい説明や、どんな惑星なのか先入観を持たないうちに、
観客をあっというまにこの惑星に放り込んでしまうのだ。

主人公も突然の派遣で、この惑星のことも、先住民のことも何も知らない。
それが観客と一体化しているので、最初の1時間は「体験型アトラクション」に近い雰囲気だ。
あれも係員から簡単な説明があるけど、それが長々とやられたらたまらないでしょ。

3Dだが、最初のうちは目が慣れないこともあり、違和感が少しある。
ところどころ3Dメガネを外してみたのだが、惑星の自然の中のシーン(CG)よりも、
実写の研究室や人が暮らすエリアの3Dのほうが、目にきついし、また3D化の度合いが激しい。
CGのところだと、実際にそんなに3Dになっていないところも多かったし。

で、この惑星を体験する最初の1時間が過ぎたぐらいからドラマが転がっていく。
といっても、ストーリー自体は西部劇にあったようなもの。
主人公は自分の危機を救ってくれた族長の娘の招きにより、部族社会に溶け込み、
やがて愛し合うようになる。そして、自分が属している海兵隊ではなく、
部族の側に立とうとする。

森林を伐採し、自然を破壊する人間が、この映画では「悪」で、
主人公の側には、科学者(シガニー・ウィーバー)達や
改心した女パイロット(ミシェル・ロドリゲス)らが味方する。

クライマックスの戦闘シーンはなかなかの迫力だ。
CG映像が良く出来ているが、いつも見慣れたILMやデジタル・ドメインではなく、
ニュージーランドのWETAが作成。
ここは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで丁寧な仕事をしている会社だ。
惑星の生物ひとつひとつに手間をかけている感じ。

子ども的には、人間側のメカがかっこよかったようだ。
人が操縦するパワードスーツとか。
でも妻は「戦闘シーンが長すぎる」と少し寝てしまったようで(笑)

敵役の海兵隊の隊長が人間離れした強さで、最後には笑ってしまった。
ストーリーは子どもにもわかる(ほどヒットしないと制作費を回収できない?)。
なので、映画としてはともかく、体験型アトラクションとして観るのがいい。
できればIMAXで見せて欲しかったなあ。
でも、十分満足の2時間半でした。絶対、劇場で観るべき映画。
DVDだと、そのすごさは半減してしまいそう。
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by mahaera | 2010-01-09 17:02 | 映画のはなし | Comments(0)

『ヒッチコックに進路を取れ』を読む

『ヒッチコックに進路を取れ』 山田宏一・和田誠著

本当は年末に読み終わっていたんだけど、紹介する余裕がなくて。
本著は、イギリス時代から遺作の『ファミリープロット』にいたるヒッチコックのほぼ全作品を。
ヒッチコックマニアの両氏が語るというもので、基本的には作品を見た人向けだが、
未見の作品でも、その作品が見たくなるような語り口がいい。

ヒッチコックものの本といえば、映画を目指す人のバイブルといってもいい
『ヒッチコック/トリュフォー 映画術』(フランソワ・トリュフォー著)がある。
これは、あらゆる映画本の中でもトップクラスの内容で、その後、多くのフォロワーを生んだ。

『ヒッチコック/トリュフォー 映画術』が、
ヒッチコックの演出、技法についての研究書的な面があるのに対し、
この『ヒッチコックに進路を取れ』は、あくまでファン目線。
「あの作品に出ていた脇役は、他の作品にも出ていてなかなかいい味出していた」
「あのシーンでハラハラした」
といった会話が、ヒッチコックマニアの2人の間でなされる。

公開当時の状況を知らない僕にとっては、
「公開当時の評判はパッとしなかった」
「同時期に公開された『○○』とリンクする内容」
という時代を知らないとわからない証言が面白い。

現代の目で名作映画を観ると、どうしてもその作品だけ取り出してみることになるが、
「○○映画ブーム」とか、当時の世相を反映しているとか、
他の監督の作品でも似たような話があるとか、
そんなものを絡めて知ると、知っているつもりの作品でも、
また新しい発見があるのだ。

『見知らぬ乗客』とか、ウディ・アレンでリメイクして欲しいなあ。
ロンドンに移ってからのアレンの犯罪ものの語り口、合うような気がするんだか。

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by mahaera | 2010-01-08 11:53 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画評 『かいじゅうたちのいるところ』

『かいじゅうたちのいるところ』 1月15日より丸の内ルーブル
監督・脚本:スパイク・ジョーンズ

公式ページはこちら

原作となったモーリス・センダックの絵本は、
誰もが子どものころ一度は読んだことがあるのではないだろうか。
親に怒られたマックス少年が自分の部屋で謹慎しているうちに、
部屋が変化していって、“かいじゅうたち”が棲む島に変わっていく。
“かいじゅうたち”の王になったマックスだが、やがて島を去るときが来る。

この絵本をどう映画にするのか興味津々だったが、
『マルコヴィッチの穴』や『アダプテーション』といった風変わりな話を
映画にするのが得意なスパイク・ジョーンズは、
ある意味原作に忠実に映画化していた。
大人なら3分で読み終わってしまう絵本を「忠実に」というのは
ストーリーではなく、「印象」のこと。
ストーリーのほとんどは新たに作られたものだが、
映画の印象は絵本の印象とそう変わらない。
むしろ映画を観たあと、絵本もそんな話だったかなと思ってしまうほどなのだ。

とにかく冒頭の20分は最高! 
姉とその友だちに雪合戦を挑む10歳の少年マックス。
中学生か高校生ぐらいの姉の友だちが本気で戦いに応じれば、
たちまち雪の家はぺっしゃんこ。
シングルマザーの母親には、新しいボーイフレンドができて、
マックスをかまってくれない。
急に訪れた孤独に、マックスはとまどい、苛立つ。
そして家出。ここまでは本当にスピーディな展開で、文句なし。

「かいじゅうたちのいるところ」に着いたマックス。
“かいじゅうたち”は原作の絵本同様、ユーモラスだが強暴な面もあり、
マックスを食べようとするものもいる。
小さな子どもなら観ていておびえてしまいそうなほど、ちょっと怖げ。
食べられないようにするため、「僕は王様だ」とウソをつくマックス。

森を駆け出すマックス、“かいじゅうたち”とはしゃぎまわるマックス。
そこにカレン・オーの高揚感をもたらす音楽が流れ、
こちらの気分を大いに盛上げてくれる。
このあたりは音楽の効果がかなり大きい。

映画には高揚感だけでなく、沈み込みがちな暗いトーンの部分もあり、
そのあたりが長く感じられるのがやや難かも。
それでも見る価値は十分にある。
誰でも子どもだったころがあるから。
家に帰ったマックスは、ちょっぴり成長をしている。
大きくなったら、マックスは“かいじゅうたち”のことは忘れてしまうかもしれない。
でも、心の奥底には、きっと“かいじゅうたちのすむところ”はまだ残っているはずだ。
(★★★☆)

旅シネに掲載したものに少し手を加えて転載しました。
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by mahaera | 2009-12-26 21:02 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画批評 台湾映画『海角七号 君想う、国境の南』 を観る

『海角七号 君想う、国境の南』 12月26日よりシネスイッチ銀座にて

台湾で公開されるや台湾映画としては史上ナンバーワン
外国映画を含めても『タイタニック』に次ぐ、歴代二位の記録を打ち立てたという大ヒット作を観た。

有名な監督や俳優が関わっていないにもかかわらず、その良さが口コミで伝わり、
1週目よりは2週目、2週目よりは3週目と次第に動員数を延ばしていったという。

主人公は、ミュージシャンとして成功するという夢に破れ、
台湾最南端に位置する故郷の恒春に戻った青年・阿嘉。
郵便配達の仕事をしているうちに、今はない宛先「海角七号」宛の小包を見つける。
中には手紙が入っていたが、阿嘉には日本語が読めなかった。
一方、同じ町では、売れない日本モデルの友子が、撮影のアシスタントで働いていた。
中国語が話せる友子は、仕事が終わった後も、
この恒春で行われる日本人歌手・中孝介の前座バンドのケア役としてとどまる。

前座バンドのオーディションで選ばれた地元の即席メンバーは、
阿嘉のほかは小学生から老人までさまざまな上、トラブル続き。
面倒を見る役の友子も、そのいい加減さにキレてしまう。
果たしてバンドは、うまくまとまるのだろうか。そして手紙の行方は…。

舞台を都会ではなく、田舎町に設定することにより、
町の人がみな顔見知り的な「人情喜劇」的な要素が盛り込まれている。
主人公の青年の面倒を見る町議会の議長は、ヤクザまがいなところもあるが、どこか憎めない。

バンドをしているものとしては、即席メンバーによるリハーサルがおかしかった。
頑固者で民族楽器の達人のおじいさん、現代っ子の小学生の少女、
原住民であるバイワン族の親子、客家人の営業マン…。
台湾社会のいろいろな層を代表しており、そんなサイドストーリーが、
とても楽しいものになっている。

実際に活躍している歌手、中孝介という人の歌を初めて聴いたのだが、
ちょっとその独特さに驚いた。が、他の歌手と間違うことはないだろうなあ。

予定調和のラストに、物足りなさを感じはするが、印象は悪くない。
ただ、現代の映画にしては、古臭いと感じるかもしれない。
ま、日本映画のヒット作もそうだけどね。

公式ホームページはこちら

こちらにも評を載せました(旅行人の「旅シネ」)
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by mahaera | 2009-12-16 22:19 | 映画のはなし | Comments(0)

DVD評 オリバー・ストーン監督『ブッシュ』

前の書き込みで「2本紹介」と書いて、『バーン・アフター・リーディング』しか紹介していなかった!

もう一本はオリバー・ストーン監督の『ブッシュ』。
大のブッシュ嫌いのストーンだけに、『華氏451』以上にブッシュをけなす作品かと思われていたが、
ふたを開けてみると「意外にブッシュに同情的」との評が。

原題は『W.』
ブッシュ大統領の父ブッシュも同じ名前で大統領だったため、
区別するためにアメリカではミドルネームの「ダブリュー」で呼ばれるのが、普通だとか。

若い頃から何をやっても半人前なW。
厳格な父親はいい加減なWよりも、優秀な弟を愛しているとWは引け目を感じてしまう。
仕事をやってもすぐ辞めてしまい長続きはしない。
やがてアル中になったWだが、キリスト教原理主義教会に救われ、更正
政治家としての道を歩みだす。

映画の中のブッシュは、悪人でも偽善者でもない。
むしろ、偉大な父親を乗り越えようと努力し、
私利私欲ではなく真面目に正義を行おうとする男だ


若い頃から、常に父親の存在が重くのしかかっていたため、
認められたい思いが、いつしか父親を超えたいという望みに変わり、
ついには父が倒せなかったサダム・フセインを倒すことが目的となる。
イラクで勝利してこそ、父を超えることになると信じて。

「流れに近づくな」
と父ブッシュはWに警告する。
しかしWは、何が何でも戦争をしようという側近達を信じ、いいように操られてしまう。
側近達は「正義」など関係なく、金儲けのために戦争を遂行しようとする。
唯一の反対派だったパウエルも、多数派の意見に従うしかない。

ホワイトハウスの側近達のシーンが、コメディと思われるほどおかしいが、
その結果、多く人々が無駄な血を流したことは事実。


で、ふと思ったのだ。
この物語の骨組みは、ギリシャ悲劇やシェークスピアにつながる非常に古典的なものだと。
偉大な父王の跡を継いだ平凡な息子が、父を乗り越える業績を上げようとするが、
その野心を側近達に利用されて、悲劇を迎える。
ストーン監督の『アレクサンダー』もそんな感じだったし。
現実は、側近に裏切られて死ぬという結末はまだないけれど、
それがあれば悲劇として完成できた、Wの物語だった。
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by mahaera | 2009-12-15 11:34 | 映画のはなし | Comments(0)

小品ですが面白かったDVD 『バーン・アフター・リーディング』 

傑作ではないけど、そこそこ面白かった映画を2本。

コーエン兄弟の新作 『バーン・アフター・リーディング』は、
シリアスな前作(ユーモアもあったけど)の『ノー・カントリー』とうって変わったコメディだ。

CIAを辞めた元幹部(ジョン・マルコヴィッチ)が自伝小説を書き始める。
その妻(ティルダ・スウィントン)は、政府の役人(ジョージ・クルーニー)と浮気中。
彼女は夫と離婚しようとして、自分に有利なように、夫のパソコンからデータを盗み出す。
が、そのCDをフィットネスクラブで落としてしまう。
それを拾った、クラブで働く女性(フランシス・マクドーマンド)は、
全身整形のための資金欲しさで、同僚(ブラッド・ピット)と元幹部をゆすろうとするのだが…。

日本ではヒットしなかったが、アメリかではコーエン兄弟最大のヒット作になった本作。
コーエン作品では、『ディボース・ショウ』『ビッグ・リボウスキ』のような皮肉のきいたコメディ系の作品で、
とにかく出てくる人たちが、みなおろかで、笑わせてくれる。

フィットネスクラブのトレーナーで、筋肉バカのブラッド・ピットはとくにおかしい。
出会い系サイトに熱を入れるジョージ・クルーニーとかも。
めぐりめぐって、話はどんどんややこしくなるのだが、最後はわりとあっさり終わる。

日本だと、こうしたオールスターキャストの映画は、
隠し芸大会的になりそうだけど(同じ日にDVDで観た『ゲゲゲの鬼太郎』はひどかった)、
本作では俳優達が生き生きと、ダメ人間役を演じていて楽しそうだ。

一瞬バイオレンスもあるんで、子どもにはきついかもしれないけれど、
楽しく観た。
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by mahaera | 2009-12-11 18:02 | 映画のはなし | Comments(1)

そろそろ2009年映画ベストテン

年が明けると、旅行人のウエブサイト内の「旅シネ」執筆者たちで、
前年度の映画ベストテンを選ぶ。

で、12月になると「ああ、あれ観てなかったけど、もしかしてベストテン候補かも」とか
人にいい作品を聞いて、「あ、見逃した。DVDで間に合うかなあ」
なんて考え出す。

今年はあんまり映画、観ていない。
その一番の理由は、バンド活動を始めたことが影響しているんだが、
ここ10年で一番映画を観ていないかもしれない。

で、知り合いに評判を聞き、TSUTAYAでDVDを借りられるものは借りて、という月になる。

今のところの僕の候補は、

・それでも恋するバルセロナ
・フロストVSニクソン
・俺たちステップ・ブラザー
・グラン・トリノ
・いけちゃんとボク
・九月に降る風
・あんにょん由美香
・アニエスの浜辺
・戦場でワルツを
・アバンチュールはパリで
・カティンの森
・ノー・ボーイズ、ノー・クライ
・アンヴィル
・倫敦から来た男
・フィッシュストーリー
・ウォッチメン

うーん、なんか小粒だなあ。大作でガツンと面白い映画とかなかったっけ?
何かあったら教えてください。何を見逃しているんだろう。。。
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by mahaera | 2009-12-10 21:29 | 映画のはなし | Comments(0)

伊坂幸太郎原作 映画『フィッシュストーリー』をDVDで観る

前にも書いたかもしれないが、最近、妻が伊坂幸太郎にはまっている。

いくつかの関連のない事件や人々が、
最終的に絡み合っていくという伊坂ワールドは、映画化にぴったりなのか、
毎年2本ほどのペースで映画化されている。

この『フィッシュストーリー』もそのうちのひとつで、
今年の春ごろ公開された。
監督は『アヒルと鴨のコインロッカー』で、
伊坂作品を映画化したことがある人。
あれは、けっこう面白い映画だった。前知識なく観たので、
「思わぬ拾いもの」という感じ。

今回の原作は読んだことがないのだが、映画はけっこう面白かった。

物語はいくつかの時間軸で構成される。

2009年(現在)、巨大彗星が地球に接近しており、
あと5時間で激突は避けられなくなっていた。

津波を恐れて、住民はみな高台に避難したが、
町のレコード店では店主と常連が話をしている。
そこでかかっているのは、ピストルズよりも前にデビューし、
まったく売れなくて解散したパンクバンドの曲
「フィッシュストーリー」だ。

1970年代、激しい演奏をするバンドメンバー。
契約にこぎつけるが、アルバムは売れず、最後のレコーディングに。
作詞に悩むリーダーの前に、
回収されて一冊しか残っていない「フィッシュストーリー」の翻訳本の言葉が目に入る。

1980年代、気の弱い青年は仲間たちにはむかうことが出来ない。
合コンの席で予知能力があるという女性に、
「この中に地球を救うものがいる」と言われるが…。

2000年代、大型フェリー船の中。眠っていて、
東京で降り過ごした修学旅行中の女子高生。
船はそのまま北海道へ向かうが、
突然船はシージャックの一団に襲われる。
その時、「正義の味方」が現れる。

戦後まもないころ、ハーフと間違われた男が出版社で翻訳をしていた。
その本のタイトルは「フィッシュストーリー」

繰り返し流れる「フィッシュストーリー」の曲が、
キーワードとなり、人々の間をめぐっていく。
果たして、人類はこのまま滅んでいくのか
。そして、この曲は、全体のストーリーとどう関わっていくのか。

特定の主人公はいないが、
その語り口とコミカルな演出の歯切れよさもあり、
まったく飽きさせない展開。
欲を言えば、俳優の演技のテンションに差があり、
ところどころそれが気になることか。
まあ、これは邦画はみんなそうなんだけどね。

「フィッシュストーリー」とは「魚の話」ではなく、「ほら話」のこと。
『ビックフィッシュ』って映画、あったでしょ。あのこと。

なので、この話自体も、「まあ、ほら話として聞いてください」といったノリ。
「風が吹けば桶屋が儲かる」
その言葉が頭に浮かんだ。
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by mahaera | 2009-12-09 10:36 | 映画のはなし | Comments(0)