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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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カテゴリ:読書の部屋( 44 )

ブックレビュー『荒野へ』ジョン・クラカワー 1996年

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 GW前後に仕事がひとつ飛んだ。2-3週間準備していたが(毎日どっぷりではないが)、しょうがない。で、その間、仕事に関連して本を何冊も買って読んだ。これはそのうちのひとつ。

 1992年にアラスカの荒野で放浪の果てに餓死した若者クリス。なぜ彼はそこで死んだのかを追うノンフィクションで、作者のジョン・クラカワーは、本作執筆後、1996年のエベレストでの大量遭難事故の当事者になり、生還した彼は『空へ』を書く(のちに映画化された)。
 クリスは物質文明を嫌い、社会のしがらみも嫌い、大人の偽善を嫌い、荒野へ向かった。たいていの若者は、そんな気持ちを理解できるだろう。そしてたいていの大人は、彼のことを独りよがりと思うだろう。

 クリスは死んでしまったので、本書は生前のクリスが旅先で関わった多くの人々のインタビューからなっている。また、彼のメモ書きや手紙から、クリスの死ぬまでの行動を追っている。面白かったのが、途中で章を割いて、クラカワー自身の過去の登山での失敗談を書いていることだ。若さゆえの自分への過信からの失敗を、クラカワーは振り返り、クリスと自分を重ね合わせる。
 クラカワーがこの本を出版した時は42歳。20代前半の自分の冒険と失敗を冷静に見るにはいい歳だった。なので本書でも、クリスの行動を賞賛も批判もせず、ただ、自分の失敗した登山体験を並べている。

 若い頃に本作を読んだら、そしてその映画化である『イントゥ・ザ・ワイルド』を観たら、きっと感じ方は大きく違ったことだろう。
 しかし、すでに死んだクリスと同じ年頃の息子を持つ身としては、「未知のものへの冒険心」だけでなく、愛するものを失った周囲の「喪失感」もわかるので、当時と同じ気持ちにはなれない。そこになんだか「出遅れ感」を感じた。

 僕はこの本が執筆されていた95年から96年にかけて、冒険というほどのことではないが、1年半にわたる旅を続けていた(自分にとっては冒険だったかもしれないが)。
 人は成功体験が続くと、次も成功するとつい思ってしまう。その旅では、僕は小さな成功と小さな失敗だけだったが、小さな成功が積み重なり、大きな失敗を生むことだってあったかもしれない。
 実際、僕と近いところにいた旅人が死んだことだってあった。彼らはなぜ死んでしまったのか。別に愚かだったわけではない。そこにあるのは、ほんのちょっとした偶然だけなのだ。今となってみれば、アフガニスタンに入れなくてよかったと思う(国境までは行った)。
 
 ショーン・ペン監督による映画『イントゥ・ザ・ワイルド』も良い出来なので、そちらもおすすめ。エディ・ベーダーの音楽もグッとくる。


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by mahaera | 2020-06-04 09:46 | 読書の部屋 | Comments(0)

久々に読書『ビーチ』アレックス・ガーランド

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本は読むが、電車に乗らなくなって小説はすっかり読まなくなった。しかしステイホームなので久々に読んでみた。10年以上前に買って、そのままだったアレックス・ガーランドの『ビーチ』だ。映画の方は、もちろん劇場公開時に観ている。その時は1歳だった息子も今や成人した。

はじめてそのビーチのことを聞いたのはバンコクのカオサン通りだった。カオサン通りはバックパッカーの地だった。

この出だしから始まるこの小説は、アレックス・ガーランドの処女作で彼が26歳の時の作品だ。出版されたのは1999年だが、話の雰囲気からするに時代は90年代半ば。冒険を求めてタイにやってきた主人公のリチャードは、パッカーの間の伝説のビーチを目指す。

同じ頃、日本を出てパッカー中だった僕だが、日本人と欧米人では(個人差はあるが)、旅の目的というか過ごし方が大きく違うことにカルチャーショックを受けていた。時間の取り方が、向こうはゆったりというか、こちらが数時間単位のスケジュールだとしたら、彼らは数日単位、いや数ヶ月単位だ。

「サムイよりパンガンがいいぞ」と聞いたのは、僕がサムイに着いた90年ぐらいだが、この小説の中ではすでにパンガンは観光客に荒らされた島として描写されている。

小説の前半では、“ビーチ”に到着したリチャード一行が、そこのコミューンに馴染んでいく様子が描かれてる。このあたりは冒険物として楽しいが、不穏さも時には秘めている。

後半はそのコミューンの崩壊をリャードが仕組んでいく(意識せずとも)姿が。ビーチを出てカオサンで自殺したミスター・ダックが乗り移ったかのようなリチャードは、少しずつコミューンが崩壊してくように状況を動かしていく。偽善的なコミューンへの批判は、「天国を維持するには地獄が必要」というように、意見を異にするもの、よそ者は排除するという残酷だが、人々が見たくない現実をつきつける。

自分が幸せになるためには、多くの不幸せに目を瞑ることが必要だ。しかしそれで得た幸せに対して、異常と思わないのはどうなのか。

ガーランドもパッカーとして訪れた東南アジアで、パッカーたちの天国に違和感を感じたのでないだろうか。僕も不思議なもので、楽しそうなグループには惹かれても、たまのゲスト的なポジションならいいという、あまのじゃく的なところがある。ケチをつけるぐらいなら、出て行った方がいい。本作では、それが多くの人々の死につながるのだが。

本作のサントラ盤は当時、売れに売れた。優れたコンピレーションアルバムなのでオススメ。


by mahaera | 2020-05-18 15:58 | 読書の部屋 | Comments(0)

7日間ブックカバーチャレンジ(後編)

旅行作家の蔵前仁一さんからご指名いただいた「7日間ブックカバーチャレンジ」です。「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は、好きな本を1日1冊、7日間投稿する」。ルールは「本についての説明はナシで表紙画像だけアップ」だそうです。
 現在、FBで毎日更新していますが、FBをしていない友人もいるので、こちらでも紹介します。まとめてですが。今回はその後編です。
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5日目はこの本。相変わらずルールを破って2冊並べてしまいました。同じ本ですけれど。左が僕がライターを始めた1997年に資料として買ったもの。当時は、ネットが充実していなかったので、調べ物は図書館でするのが鉄則でした。
 右は2013年発行(買ったのは2014年)。20年も経つと歴史の用語や名称も変わってきたのと、その頃息子に世界史を教えていたので、それ用にと購入。息子は全く使わなかったので、自分が使っています。世界史は昔から山川が馴染みます。図版もいいの使っているし。ということでした(笑)

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6日目はこの本。
何にしようかと迷っていたら、ちょうど本が届いたので、「届きました!」と、確認を兼ねて。いいかげんなものですみませんが、これから読ませていただきます。

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7日目もルールは破ってしまいます。
 完全に掟破りですが、これ、出版されている本ではなくて、イランのマシュハドで1995年9月27日に買った日記帳です。イスラム暦なので、スタートのページは西暦3月21日になっており、僕が長い旅に出のが3月24日だったので、感じるものがあって買ってから出発まで遡り、旅の日記をつけることにしました。
 とはいえ、1日1ページとか無視して書いているので、実際は旅の紀行文です。当時はライターにもなっていないのに、読まれることを意識して「将来出版されないかなあ」ぐらいの気持ちで書いていたようです。たまにぱらっと読むとなかなか面白い。ネットで海外の情報は得られても、25年前に自分が何を感じていたのかまではもうわからないんで。
 ということで、世界でただ一つの自分だけのブックです。最後が自己満ですみません。が、今まで紹介した6冊の本も、人に勧めるための本ではないんで(笑)。

by mahaera | 2020-04-27 12:22 | 読書の部屋 | Comments(0)

7日間ブックカバーチャレンジ(前編)

旅行作家の蔵前仁一さんからご指名いただいた「7日間ブックカバーチャレンジ」です。「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は、好きな本を1日1冊、7日間投稿する」。ルールは「本についての説明はナシで表紙画像だけアップ」だそうです。
 現在、FBで毎日更新していますが、FBをしていない友人もいるので、こちらでも紹介します。まとめてですが。

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 ということで、1日目の今日は調べ物で机の上に乗っていたこの本を選びました。いくらでも説明したいところですが(笑)。今まで読んだミュージシャンの自伝の中で、一番面白い。和訳もよくて、マイルスが日本語を話しているかのごとく。故・中山康樹氏さすがです。

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2日目の今日はこの本。今は文庫になっているので、そちらの方が手に入りやすいかな。数年前に「子供に教える世界史」を書くときに直接ではないけれと、間接的に影響を受けた本です。「歴史を作るのは人物だけではなく技術の発達」という概念も世界史に入れたら面白いのにと思いました。

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3日目の今日はこの本。まあ、僕を知っている方なら、ボブ・ディラン関連の本を一冊は選ぶとは思うでしょう。一番の愛読書は、もちろんご本人の「ボブ・ディラン自伝」ですが、表紙が気に入っているという点で本書を選びました。装画はもちろん、みうらじゅん氏、装丁は安斎肇さんによる、ダニエル・クレイマーの写真集。23歳から24歳までの若きディランがここにいます。

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4日目の今日はこの本。映画の本を何か一冊あげたいなと思っていたけど、真っ先に挙げたい名著『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』が家になかったので、代わりにこの『ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話』(キネマ旬報社)を紹介します。ワイルダーとクロウが誰か知らない人は、自分でググってください(笑)。装丁も、見ればわかりますよね。

by mahaera | 2020-04-26 10:55 | 読書の部屋 | Comments(0)

読書の部屋『ハチはなぜ大量死したのか』ローワン・ジェイコブセン 2009年

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 10年ぐらい前に話題になったミツバチ大量死についての解説本。2000年代に北米、続いて欧州で起きたミツバチのコロニーが次々に消滅してしまう事件が起きる。本書はそれをきっかけに、ミツバチがつなぐ生態系について、知らなかったことをしかも興味を引きながら解説してくれる。
 最初はこうだ。ハチがある日、巣箱に戻らなくなり、コロニーが消滅してしまう。当初は養蜂家が自分の巣箱だけかと思うが、各地の養蜂家と連絡をとるうちに、それが全国に広がっていることを知る。ハチの死骸は全くなく、ただ姿を消してしまうのだ。おそらくハタラキバチは巣に戻れなくなり、途中で死んでいるのだろう。ミツバチに寄生するダニが疑いをかけられる。続いて農薬。しかし決定的な原因はわからない。
 本書は犯人探しをする一方、ミツバチの歴史、そしてそれがいかに現代の農業と深く関わっているかを解説する。アメリカではすでにハチミツの売り上げでは、養蜂が成り立たない。中国からの安価なハチミツが輸入されているので、作れば作るほど赤字になるのだ。
 そこで現在の養蜂家のメインの収入源は、受粉のための巣箱の貸し出しをしている。カリフォルニアにアーモンドの花が咲く頃、養蜂家は大量の巣箱をアーモンド畑に送る。大規模農業をしている地域では、農薬の使用で野生の昆虫がほぼ死滅しており、受粉昆虫がいないのだ。養蜂家は巣箱のレンタル代で、生計を得ているのだ。
 実は植物の長い歴史の中で、花を咲かせて昆虫による受粉で子孫を増やす種類が生まれたのは、1〜2億年前のこと。それまでは主に風や水が花粉を運んでいた。しかし運任せでは効率が悪い。そこで確実に花粉を運んでくれる者として、植物は昆虫を選ぶ。受粉の確率が上がる。さらに同じ種類の植物に昆虫が来るにようにと誘導するため、特定の花には特定の昆虫しか来なくなるような専門化が進む。また、サービス化が進み、昆虫が好きな蜜も用意する。
 現在人が飼っているミツバチは、それがさらに進み、人が長年をかけて、効率よく花の蜜を集めることができるように特化した昆虫だ。ミツバチの個々には意志はなく、コロニー全体で一つの生物のようだ。そこでは一匹一匹の生き死には関係なく、全体を存続させるために個々の犠牲がある。どのみちコロニーが死ねば、個々も死ぬのだ。読んでいてそれが人間社会にかぶってくる。
 それでは、なぜミツバチの大量死は起きたのか。実はここでは解答は出ていない。いや、それから10年経った今でも、答えは出ていない。今では原因は一つではなく、農薬や環境による複合汚染であると考えられている。
 ただ、この事件をきっかけに、昆虫と植物の関係をあらためて知り、人間がかなりそれに依存していることを確認するのもいいだろう。農薬を使って昆虫が死滅してしまったら、今度は人間が一つ一つの受粉を手伝わなければならなくだろう。★★★★

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by mahaera | 2020-03-23 10:40 | 読書の部屋 | Comments(0)

「手塚治虫アシスタントの食卓」ぶんか社 堀田あきお&かよ

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GW中は読書と思ったが、何冊も手をつけたけど読み切ったのはこれだけ(笑)。

タイトルにもあるように、マンガ家・手塚治虫のアシスタントをしていた堀田さんが、思い出に残る食事や料理・食べ物とともに当時のエピソードをつづったマンガ。

今も連載中というが、ここには15篇が収められている。

読んでいると「ブラックジャック」連載中とか、映画「火の鳥」公開(1978)とあるので、時代は自分が高校生ぐらいのときだろうか。リアルタイムで読んでいた“あの頃”に引き込まれる。

一気に読むのがもったいないので、頑張って3日に分けて読んだ(一気読みだと30分ぐらいで終わっちゃうから)。

手塚作品は、今読んでもそのストーリーテリングに感心してしまう。

一般的にマンガはキャラクターが命で、ストーリーがほとんどない連載マンガも普通だが、手塚作品はテーマが必ずあり、そこへ向けてのストーリーがどの作品にもきちんとある。

普通の連載マンガは連続ドラマに似ているが、手塚作品は映画的なのだ。


さて、この「手塚治虫アシスタントの食卓」はそんな巨匠の元のアシスタント部屋の青春劇だ。

主人公ホッタくんの成長物語(になっていくと思う)と他のアシスタントの群像劇に、クセのあるOBアシスタントたち、いつも待機している編集者たちなど、手塚プロのスタッフなどが絡んでいく。

もちろん手塚先生も毎エピソードに出演。

とにかく面白く、次へ次へとページが進んでしまう。

アトムシールやレーズンバター、30年ぶりぐらいに思い出した(笑)。

各エピソードタイトル部分の脱力カットも笑える。いつか朝ドラになるかもしれない(笑)。

ということで、手塚マンガで育った人たちへ、オススメです。


by mahaera | 2019-05-10 09:44 | 読書の部屋 | Comments(0)

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』ブルース・クック著を読む



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小説ではないが、映画『トランボ』の元ネタになった、
脚本家ダルトン・トランボと関係者にインタビューした
ブルース・クックの評伝が、映画公開時に発売されていた。
すっかり忘れていたが図書館にあり、一ヶ月ぐらいかけて読む。

映画はトランボの赤狩り時代から復権までのドラマだが、
このルポは大勢の人たちの証言が中心なので、行きつ戻りつ。
そしてドラマチックな展開はさほどない。
例えば映画で一番スカッとした、ジョン・グッドマン演じる
三流映画会社の社長が、トランボをやめさせろと脅しに来た男に
バットを振りかざして出て行けという場面、あれはない。
つまり映画を盛り上げる創作だが、映画には必要なシーンだ。

また、映画ではヘレン・ミレン演じる、トランボを攻撃する
辛口コラムニストのヘッダ・ポッパーもここには登場しない。
つまり映画は評伝を参考に、それ以外の史実も取り混ぜ、
再構築したものになっている。
そして、映画の方がドラマチックで圧倒的にいい(キネマ旬報でその年の第4位)。
ということで、また映画が見たくなった。

映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
についてのレビューは、以前こちらに書いたので、
未見の方はどうぞ。

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by mahaera | 2017-11-15 10:10 | 読書の部屋 | Comments(0)

『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史  1 二つの世界大戦と原爆投下』

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もともとはテレビのドキュメンタリー(僕は未見)として放映されたものの書籍化。
これはその1巻で、20世紀初頭から、第二次世界大戦終結までのアメリカの歴史を、時の大統領や政治を軸に語る。
「オリバー・ストーンの」とあるように、教科書的な世界史とは異なっているものの、これもまたひとつの見方だ。
とくに、大統領によって国の意思決定が大きく変わり、
「もし〇〇が当選していたら」と別の世界を示すあたりは、
今回の大統領選にも被って見えて来る。

この1巻で印象的なのは、やはりページを大きく割いている
「原爆投下」について。
ここでは、今も多くのアメリカ人(だけでなく日本人も)が信じている「アメリカ兵の損害を少なくするために原爆を投下した」というのは間違いで、ソ連を牽制するためだけに2つの原爆で20万人近い民間人を殺戮したと、断じている。
日本はすでに降伏の準備をしており、
その条件が「天皇制の維持」ただ一点だけだったことは、
当時の多くのアメリカの高官が発言をしている。

スターリンは亡くなったルーズベルトとのヤルタ会談を守れば、
ドイツ降伏の三ヶ月後、つまり8月7日に参戦する予定だった。
そしてソ連の参戦により、日本は降伏するという歴史もあった。
しかし、原爆実験の成功を知ったトルーマン大統領は、日本相手にソ連の協力はもう必要としないと考えるようになる。
そしてトルーマンはソ連の力を封じ込めるためにも、
アメリカの力を見せつけなくてはならないと、
原爆投下を推し進めた(ソ連の参戦前に原爆を落とす必要があった)。
それも、アメリカ軍のトップ7人のうち6人が
「もう負けを悟っている国に原爆を落とすのは適切ではない」と、
述べているにもかかわらずだ。

まったく必要がなかった原爆投下だが、
アメリカは「原爆を投下したから日本は降伏した」と戦後も言い続けた。そしてアメリカ人の多くはそれを信じた。
しかし日本が降伏に踏み切ったのは、
ソ連の参戦の方が大きいとストーンは言う。
トルーマン大統領は戦後秩序の中で、
ソ連に力を与えないように原爆の力を見せつけるのが目的だった。
それにはソ連が参戦して日本が降伏してしまう前に、
新型爆弾の威力を見せつけなくてはならなかった。
そのためには、日本の民間人が何十万人死のうと関係なかった。

しかしそのもくろみは外れ、ソ連はアメリカに屈せず、
冷戦が生まれる。
by mahaera | 2016-11-16 18:08 | 読書の部屋 | Comments(0)

『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』、そして漫画版『星を継ぐもの』

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『星を継ぐもの』の続編の『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』を読み終わる。
最初はハードSFだったのだが、3作目は戦争ものになり、
見せ場は多いものの、逆に単純になってしまって残念。
とはいえ、面白いことは確かなので、次
から次へとページをめくって行ったことは確かさて、次は何を読もうか。

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こちらは星野之宣によるホーガン原作のSF小説『星を継ぐもの』の漫画化。
仕事が一段落したので、原作ともどもこちらも読んでみる。
ネットの古本購入がずいぶん楽なので、うれしい。

タイトルは『星を継ぐもの』だが、
続編の『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』までの内容を
再構築したストーリーになっていて、原作にないエピソードや解釈も加わっている。

面白かったのは、作者のオリジナルの部分、つまり人類の進化に関する部分。
原作だと2500万年前とする部分を100万年前ぐらいに直した設定も、
原作発表後の新発見に合わせたのだろう。
しかし人類の進化は、偶然なのか必然なのかって考えてしまう。

人類はいろいろな系統で進化したが、北京原人もジャワ原人も、
そして2万数千年前まで存在して、火や道具さえ使っていた
ネアンデルタール人でさえ絶滅してしまった。
つまり最後にアフリカで生き残っていたホモ・サピエンス以外は、
すべて滅んでしまったのだ。もし、ホモ・サピエンスが絶滅していたら、
地球はネアンデルタール人から進化した世界になっていたのだろうか。
by mahaera | 2016-10-30 10:10 | 読書の部屋 | Comments(0)

「星を継ぐもの」J・P・ホーガン 久しぶりにハードSFを読んだ!

「星を継ぐもの」J・P・ホーガン 久しぶりにハードSFを読んだ!_b0177242_00182008.jpg
日本にいると、なかなかゆったりと本を読む時間がない。
特に小説は。
そこで取材で旅に出るときには本を持っていくのだが、年々、それも読まなくなってきている。

今回、旅先で読んだ唯一の小説が、この『星を継ぐもの』だ。
実はこの文庫を買ったのは随分前で、今年はメキシコにもバルセロナにも持って行ったのだが、とうとう出番が回ってこなかった。
今回インドネシアを出る数日前から読み出し、読み終わったのは羽田から家に帰るバスの中。でも、面白かった!

読んだ方も多いはずのSFの名作(1977年)だが、簡単にストーリーを。
近未来、月面調査隊が月の洞窟で宇宙服をまとった死体を発見する。
調査の結果、中身は人間だが、その死亡推定時期は5万年前であることがわかった。
果たして彼は宇宙人なのか、それとも地球人なのか。
世界中の科学者が集められ、様々な推測がされるが、謎が謎を呼ぶ。
やがて今度は木星探検隊が、衛星ガニメデに埋もれた巨大な宇宙船を発見する。
その中には巨人とも言える宇宙人と、2500万年前の地球の動物たちの死体があった…。

人類が月で、人間以外の存在を知るというのは、有名な「2001年宇宙の旅」だが、こちらが発見するのは5万年前の人間だ。
太陽系には人間が出現する以前に、宇宙航行をできるほどの文明が存在していた。
それがなぜ、地球の人間と同種族なのか。
ならばなぜ、その文明の痕跡がないのかと言った謎を、科学者たちが調べていく。
主人公はいるが、それはただこの謎解きを進めるために都合のいい立場にいる人で、筋としては次々に仮定が出され、検証され、反論が出るというだけの流れだ。

自分の生まれ故郷が崩壊していく様子を、月面から眺めながら死んでいく、
5万年前の男。科学者たちが想像するその情景は、強烈なインパクトを残す。
月面で宇宙服を着たまま孤独に死んでいく男の姿は、
映画『スペースカウボーイ』や、最近ではデヴッド・ボウイのクリップ「★ブラックスター」まで引用されているほど。
確か手塚治虫の短編にも、インスパイアされたような作品があったっけ。

人間は自ら星を破壊するほど愚かという事実。
かつて太陽系で起きた最終戦争の様子は、現在の人間の未来かもしれない。
そしてガニメデで発見された巨人宇宙人のイメージは、映画『エイリアン』の放棄された宇宙船の中の巨人宇宙人へと繋がっていく。
「スタジオぬえ」による、文庫本の表紙のイラストも想像力をかきたてる。
三部作なので、早く続きが読みたい。

by mahaera | 2016-09-01 00:21 | 読書の部屋 | Comments(0)