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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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フリートウッドマック1970〜1974年のアルバム4点「キルンハウス」「フューチャーゲーム」「枯れ木」他


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年末の朝によく聴いていた、フリードマックの4枚。
たまには映画ではなく、好きなアルバムの話。
 
ピーター・グリーンが抜けてブルースバンドではなくなったマックは、その前のブルースバンド時代、バッキンガム&ニックスが入ってのポップロックバンド時代の間、ほとんど売れなかった1970〜1974年の間に6枚のアルバムを出している。

シンガーソングライターブームの時代を反映して、
フォークロック、カントリー、サザンロック、英国ロックなど、まあ歌モノロックだ。
しかし、売れない(イギリスでは6枚中、1枚しかベスト100チャートに入らなかった)と言いつつ、なんとかアメリカでは50〜100位圏内には位置していた。

左上/キルンハウス(1970)
看板ギタリスト&ボーカルだったピーター・グリーンが抜けて、2人目のギタリストのジェレミー・スペンサーが中心となったアルバム。
南部風味の「ステーションマン」などの佳曲もあるが、スペンサーが精神不安定になって、新興宗教にはまり脱退。
この頃って、数年前までブルースをしていた英国ギタリストが、クラプトンを筆頭にアメリカ南部志向にいきなり変わった時代で、このアルバムも例外ではない。

右上/フューチャーゲーム(1971) 
ベーシストのジョン・マクヴィーの奥さんのクリスティン・マクヴィーがキーボード、新たなギタリストとしてボブ・ウェルチが加入。
3番目のギタリストだったダニー・カーワン主導で、静かなフォークロック色が強いアルバム。
同時期のキャロル・キングやザ・バンド作品みたいなサウンド。
佳曲は新メンバーのウェルチの「フューチャーゲーム」

左下/枯れ木(1972) 
佳曲はウェルチの「センチメンタル・レディ」とクリスティンの「スペア・ミー・リトル」
大学の時に中古で買って、よく聴いた好きなアルバムだ。
この間にカーワンの酒癖が悪化し、発表後に解雇。
オリジナルメンバーは、ドラム&ベースのみに。

右下/神秘の扉(1973) 
この間にもう1枚『ペンギン』というアルバムがあるのだが、それは未聴。
ポップでもロックでもない中期マックの代表作。
ジャケットがダサいので、最近まで聴かなかったが、佳曲が揃っている。
とにかく、ボブ・ウェルチの才能が開花し、
次の『クリスタルの謎』でピークに達する。

ちなみにこの4枚に、『ゼン・プレイ・オン』(1969)
足した5枚セットがAmazonで2500円ぐらいで買える。
いい時代じゃ。

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by mahaera | 2018-01-31 16:10 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(1)

最新映画レビュー『ベロニカとの記憶』 同じ過去でも、人によって受け取り方が違うことを知る



2015年/イギリス
監督/リテーシュ・バトラ
出演/ジム・ブロードベント、シャーロット・ランブリング


シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館にて公開中。
インド映画『めぐり逢わせのお弁当』は、
中年男と主婦との細やかな心情を描いた上品な映画だったが、
そのリテーシュ・バトラ監督の最新作。
本作は原作もので、しかも一種のミステリーになっているが、
その細やかさは本作でも失われてない。


主人公は引退後、ロンドンで中古カメラ屋を経営している
トニー(ジム・ブロードベント)
別れた妻との関係は概ね良好で、娘も出産間近。
そこへ40年前に別れた初恋の女性ベロニカの母親からの
遺品贈与の届けが来る。
そして遺品は、トニーの学生時代の友人で、
若くして命を絶ったエイドリアンの日記だという。
一度会ったきりなのに、なぜ? 
しかもベロニカは日記の引き渡しを拒んでいる。
トニーは過去を振り返り、
やがてベロニカ(シャーロット・ランプリング)と再会する。

先日、高校時代の友人と再会した時
「我々は初老だから」と彼が言った。
思い出の中の青年時代は色鮮やかかもしれないが、
それは何十年にも渡って記憶が反復されていくうちに、
作られた過去だからだ。つまり自分の記憶の中の過去は、
その間に軌道修正されている。

トニーは、ベロニカと知り合い、そして別れるまでの記憶の中で、
自分に都合のいい部分だけを繰り返し再生していたのかもしない。
しかし、同じ時間を共有したもの同士でも、再生される部分が違えば、違った記憶になるだろう。
トニーは、仲が良かった友人の自殺についても、
彼と仲良くしていた記憶は鮮明だが、
死んでしまった前後の関係についてはあいまいになっている。

映画は、主人公が自分の過去の出来事を探っていく
ミステリータッチにもなっている。
人は、他人にされたことは覚えていても
(悔しくて何度も頭の中でリピートするから)、
他人にしたことは忘れがちだ(思い出さないから)。
そのギャップに気づいた時、人は相手が自分の知らない人生を
過ごしてきたことを改めて知る
のだ。それも何十年もたってから。
映画の中で、トニーがそのことにふと気づくように、
私たちもベロニカの立場に立っての人生に気付かされる。
そしてそれは、実人生の中では、無数にあることなのだと。
★★★☆
スカパー!

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by mahaera | 2018-01-29 10:32 | 映画のはなし | Comments(2)

最新映画レビュー『ライオンは今夜死ぬ』



ライオンは今夜死ぬ

監督 諏訪敦彦(『不完全なふたり』
出演 
ジャン=ピエール・レオー
1月20日よりYEBISU GARDEN CINEMAにて公開中


トーケンズの1961年のヒット曲『ライオンは寝ている』を皆さんも聴いたことがあるだろう。
しかしこの曲のタイトルが、フランスでは
『ライオンは今夜死ぬ(死んでいる)』
なっていることは、僕はこの映画で初めて知った。
歌詞をチェックしてみると、
「今夜ライオンは寝て(死んで)いるので、
村は安全だから怖がらなくていい」
という、
童謡のようなものだった。
もともとこの曲は、1940年代に南アフリカでヒットした曲で、
原題の「Mbube」とは、ズールー語で「ライオン」の意味らしい。
それが1960年ごろのアメリカのフォークブーム
(自作曲ではなく伝承歌が中心)で紹介され、
コーラスグループのトーケンズが歌い、
全米No.1ヒットになったのだ。

映画はの主人公を演じるのは、
ヌーベルバーグの申し子であるジャン=ピエール・レオー
南仏で撮影中の映画で「死」をうまく演じることができない、
老俳優ジャンの役だ。
撮影が数日中断している間に、ジャンは
かつて愛していた女性が住んでいた屋敷を訪れ、
そこで若いままの彼女の幻に会う。
また、その屋敷に無断で映画作りをしに来た子供達とも出会い、
彼らの映画に出るうちに、生きる感情を
取り戻していくというストーリーだ。
ドラマチックな展開はないが、何気ないしみじみとした時間が
愛おしいことを、子供たちがあらためて教えてくれる。
さて、曲の「ライオンは今夜死ぬ」は、
映画の中で主人公のジャンが子供達にこの歌を歌う。
ジャンが若い頃にヒットしたポップソングというだけでなく、
「恐れるもの(=死)は今はいないから、安心おし」と
子供達に歌いかけ、そしてそれは「死を恐れず、生を楽しもう」という、観客への語りかけでもある。



ソロモン・リンダのオリジナルはこんなアフリカの民謡のような曲です。




1952年にピート・シガーがいたThe Weaversのカバー「Wimoweh」として発表。これがアメリカでのこの曲の初紹介かな。




映画では、もちろんフランスでNo.1ヒットになったアンリ・サルヴァドールのバージョンです。



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by mahaera | 2018-01-28 01:08 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』ファッションの舞台裏に迫る



『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて公開中。


日頃、ファッションにはほとんど興味のない僕だが、
なぜか関係するドキュメンタリーを見るのは好きだ。
自分の知らない未知の世界がまだこんなにあったなんてと、
思わせてくれるからだ。
昨春公開された『メットガラ ドレスをまとった美術館』
非常に面白かった。服やそのデザインも、創作という意味では
絵画や彫刻などとなんら変わることがない。

さて、ファッションデザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン
知っている人は知っているのだろうが、
「広告は一切打たない」せいか、
僕はこのドキュメンタリーで始めて知った。
本作はその彼がファッションショーを終え、
次のシーズンの準備に入るところから始まる。
カメラは彼の仕事ぶりだけでなく、彼の私邸に入り、
パートナーと暮らすプライベートな空間まで密着する。
その作品が色あざやかな生地やエスニック柄が特徴なのに対し、
普段着の彼はその真逆の、柄がなく、
色彩も抑えた服を着ているのが印象的だ。
それが、知的で優しげな雰囲気と合わさり、
穏やかな抑制を生み出している感じがする。

ファッションデザインでは珍しいのだそうだが、
彼自身はデザイン画を描かない。
その代り、生地作りから作業を始めていく。
職人の手による刺繍を重視し、インドのコルカタ
スタッフを駐在させて、刺繍工房の品質の管理や指導に
当たっていることにも驚いた。
そしてできた生地や刺繍を何度も当て、配色を組み合わせ、
試行錯誤の末に作品を作り出していく。
そうした仕事風景と並行して、プライベートでは自宅の庭で
花を摘み、部屋に生けていく。
そこにも「美」があるのも面白い。
★★★
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by mahaera | 2018-01-26 11:51 | 映画のはなし | Comments(1)

最近聴いたCD紹介コールドプレイ『マイロザイロト』、レディオヘッド、レッチリ、ジャック・ジョンソンほか


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年末年始のCDまとめ聴きから、4枚。簡単なまとめ。

左上/コールドプレイの2011年のアルバム『マイロザイロト』
世界で1000万枚売れた大ヒットアルバムだが、当時、全く記憶がない。
コールドプレイにそもそも興味がなかったからだが、
こうして聴いてみると知っている曲が多いし、
いいポップアルバム。
相変わらず、ロックバンドとしての魅力は感じないが(笑)。

左下/レッド・ホット・チリ・ペッパーズの2011年のアルバム『アイム・ウィズ・ユー』
こちらは売り上げが60万枚だから、コールドプレイと比べようもないが、バンドとしてはこちらの方が聞きごたえがあるな。ただし、前作『スタディアム・アーケイディアム』までのようなキャッチーな曲がないせいか、こぢんまりしてしまった感あり。当時はなぜかスルーして聴かなかった。

右上/ジャック・ジョンソンの2009年のライブアルバム『En Concert』
当時、ジャック・ジョンソン好きだったので欲しかったが、買いそびれてしまった。観客との温かいやりとりの雰囲気が伝わるいいライブ。リラックスしながら聴けるので、仕事のBGMとしてもいい。おなじみの曲も多し。

右下/レディオヘッドの2016年の『ア・ムーン・シェイプト・プール』
今の所、彼らの最新盤。彼らのアルバムは、一応全部聴いているが、『イン・レインボウズ』以降は、あまり印象が無くなっている。本作も一曲めは「あれ?」と気を引くが、後とはいつもの感じ。まあ、もう少し聴いてみると、じわじわ好きになっていくのかもだが。
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by mahaera | 2018-01-25 21:40 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(1)

最新映画レビュー『はじめてのおもてなし』難民の青年が我が家にやってきた! 家族の再生を描くコメディ



シネスイッチ銀座にて公開中。


難民問題で揺れる欧州だが、そのなかでも比較的、
難民を受け入れてきたドイツ。
しかしそれにまつわるトラブルも増え、
きれいごとだけでなく、
どう向き合うかの覚悟も必要になってくる。
当然ながら、ドイツの世論も二分される。
そんな中、2016年にドイツで公開され。大ヒットしたコメディだ。

ミュンヘンに住むハートマン一家は裕福だが、
家族がバラバラになりかけている。
教師だった妻のアンゲリカは定年後に生きがいを見出せず、
医者の夫のリヒャルトは自分の歳を認めず
仕事と若さにしがみついている。
弁護士の長男はワーカホリックで妻に逃げられ、
長女は31歳になるのに大学をまだ転々として将来を決められない。
そんな中、アンゲリカは、
アフリカ難民の青年ディアロを家族に迎え入れることにする。
本作がヒットしたのは、シリアスな題材にもなる話を
アンサンブルコメディにして、
堅苦しくないドラマにしたことだろう。
ズシンとくる話は見た後は確かにいいが、
見に行くまで腰が重くなるからだ。
ただし本作はコメディだが、描かれていること
すべてまともに描いたらシリアスである。

ハートマン家の4人は、ドイツ人の縮図で
老人問題、生きがい、働きすぎ、自分探しと、
裕福だが、どこか人間的な幸せを見失って活力を失っている。
難民の青年から見ると、それが不思議で仕方がない。
また、難民に対する態度も、リベラル派でも分かれるし、
さらにご近所に至っては、犯罪者扱いする者もいる。
そして何が何でも難民受け入れ派もおかしい。
そのすべてを均等に茶化し、
最後は「人と人との関係が大事」という
シンプルなところに落ち着くのだ。
難民問題という時事ネタがストーリーの軸だが、
根っこでは「家族の再生」が大きなテーマになっている。

英米映画ばかり見ていると、
俳優の演技がベタに感じるかもしれないが
(ちょっと邦画っぽい)、きちんと伏線が張られた脚本は緻密。
気楽に楽しもうという方にもオススメだ。

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by mahaera | 2018-01-24 19:11 | 映画のはなし | Comments(1)

映画レビュー『FRANK-フランク-』そこはかとない哀しみとユーモアが同居する不思議な映画



FRANK-フランク-

監督: レニー・エイブラハムソン
出演: マイケル・ファスベンダー、ドーナル・グリーソン


マイケル・ファスベンダーが、ほぼ全編被り物をして
ロックバンドのボーカルを演じる『FRANK-フランク-』。
監督は次に『ルーム』を監督することになる
レニー・エイブラハムソン。

主人公は音楽への情熱はあるが、才能はないジョン
(演ずるは「最後のジェダイ」のハックス将軍、ドーナル・グリーソン)。
ある日、ジョンは偶然から、バーに出ていた前衛バンドの
ソロンフォルブスに参加することになる。
バンドのボーカルは、巨大な被り物の顔を被ったフランク。
最初は驚くジョンだったが、レコーディングに誘われ、
アイルランドの田舎の別荘にバンドメンバーと籠もることになる。
しかしなぜか、フランクとマネジャー以外のメンバーは、
ジョンに友好的ではなかった。
やがて、ネットに投稿した映像がきっかけになって、
ソロンフォルブスはテキサスの音楽祭、
サウスバイウエストに招かれることになるのだが、、。

端正な顔立ちのファスベンダーだが、ここではほぼ全編、
被り物をしていて顔を見せない。
彼はなぜ、自分の顔を見せられないのか。
その理由は最後に明かされるような明かされないような。
精神の病の原因は、一つだけではなく、
また他人にわかるようなものではないということだろう。
バンドメンバーたちも社会にうまく適合できない奴らばかりだが、
しかしそのフランクがいるから生き生きと音楽ができる。
ただし、それは外に向かわず、
自分たちの世界でしか発揮できない。

本作の音楽が秀逸で、主人公のジョンが作る曲は
才能がないのがわかるし、フランクらの前衛バンドの音楽も
いいけど決してメジャーにはなれないタイプの音楽だったり、
弾き語りがいい曲だったりと、様々なタイプの音楽を、
映画の中の役割に合わせて作っている。

全体を通して流れているのは、
笑いと悲しみが入り交じった、微妙な空気感。
この映画を見て、感動して泣いたりと、
激しく感情を揺さぶられることはないだろうが、
人ってやはり人を必要している、そんな優しさも伝わってくる。
心に引っかかる、そんな作品だ。
ファスベンダーが歌う、「I LOVE YOU ALL」も、しみじみいい曲。
★☆

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by mahaera | 2018-01-23 11:44 | 映画のはなし | Comments(0)

映画レビュー『おみおくりの作法』 死者への敬意を持って静かに生きる主人公。彼が思うものは



「おみおくりの作法」

イギリス・イタリア合作映画

てっきり「おくりびと」のような葬儀屋の話
かと思ったら、いい意味で裏切られた。
主人公はロンドン郊外の役所の民生係。
彼の仕事は、その地区で死んだ身寄りのない人の
葬儀をするというもので、事務的にもできるのだが、
一人一人、知り合いを探して丁寧に葬儀をあげている。
しかし、人員整理のために彼は首になり、最後の仕事と
して彼の向かいに住んでいたある男の葬儀を上げようとする。
孤独なまま死んだ音は、主人公の境遇にも被るものがあった。
生前の男を知る人を訪ねる旅が始まる。

非常に丁寧に作られた、上品な映画。
そして何だか日本映画っぽい。イギリスの話だが、
製作や監督がイタリアということで、
映画で見慣れたイギリスなのに、どこかちょっと違う。
もう死んでしまい、遺族も参列者もいないに葬儀を上げるのは、税金の無駄と今の日本なら文句を言う輩もいるだろう。
しかし、そんな人だって誰かの子供であり、
誰かの隣人であり、誰かと関わって生きていた。
死者に敬意を払うのは、人としての最低のマナーと
思っているのが主人公だ。
昨年観た『KUBO』もそうだが、
人がその人を思い出している限り、死者は報われるはずだ。

ラストに異論もある人もいるだろうが、
あれは、観客へのサービスだと思う。
最後まで見た人に、カタルシスをプレゼントしてくれたのだ。
一般的には無名の俳優ばかりだが、それもいい方向に。
大作の陰に埋もれしまいそうな佳作だが、価値あり。

細かい演出だが、劇中、主人公が故人の知り合いを
訪ねて国内を旅するのだが、列車やバスに乗っているシーンは
いつも進行方向に背を向けて座っている(僕は後ろ向きが嫌なので気になった)。
そうしたら、最後の乗車シーンでは、
それが逆の進行方向を向いて座っていたので、
偶然ではなく、これも演出だとわかる。
彼の心境の変化を現しているのだろう。
★★★★
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by mahaera | 2018-01-22 12:42 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ジャコメッティ 最後の肖像』 天才でも創作に行き詰ることがある



ジャコメッティ 最後の肖像
1月8日よりTOHOシネマズ シャンテにて公開中

日本でも展覧会が好評だった、
細長い人の彫刻で知られるジャコメッティ。
舞台は1964年、すでに有名になって
個展も開かれている晩年のジャコメッティ。
その彼に肖像画のモデルを依頼された
主人公ロード(アメリカ人作家)が、「2日ですむから」
と言われてアトリエに行くが、なかなか作品が完成せず18日間も
かかってしまう(映画はロードの回想録を基にした実話)。
そのため物語の大半はアトリエが舞台で、
そこに妻のアネット、ジャコメッティの弟のディエゴ、
そしてジャコメッティのミューズ的存在の娼婦カロリーヌ
が現れては消え、ジャコメッティはなかなか創作に集中できない。
モデルは椅子に座ってじっとしているだけだから、
そうした人間模様を観察する。

意外だったは、成功者なのに、
ジャコメッティの家もアトリエもみすぼらしいこと。
お金には無頓着なのかケチなのか、
必要ないものは欲しくないのか。
生活も質素といえば質素。
かといって高尚な職人気質ってわけでもない。
まあ、偏屈といえば偏屈だ。
観客は凡人側である主人公の気分だから、
最初は天才であるジャコメッティに気を使い、
早く完成してくれるように注意を払うが、
そのうち「コイツ、本当に完成させる気があるんだろうか」と不安になってくる。

モノづくりが難しいのは始めと終わりで、
特に仕事の依頼でもなく始めたものは、
“完成しない作品”になりがちだ。
自分で締め切りが切れないからだ。
人の創作風景を見るのはなかなか面白い。
映画は低予算の小作品で舞台にもできそうだ。
地味といえば地味な作品だが、きちんと作ってあるので創作好きな人には、興味を持って見れるはず。
「最後の肖像」というのは、彼が描いた最後の肖像画だから。
ジャコメッティにジェフリー・ラッシュ。
海賊バルボッサの人ね。主人公のモデルにアーミー・ハマー。
監督は、俳優のスタンリー・トゥッチ。


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by mahaera | 2018-01-20 11:33 | 映画のはなし | Comments(0)

映画レビュー『ラスベガスをぶっつぶせ』 ドラマはまあまあだが、確率論が面白い



2008年の『ラスベガスをぶっつぶせ』。
これも実話をベースにした映画で、実際にあったMITの学生による、ラスベガスのカジノでのカードカウンティング事件を
基にした娯楽作。
昔、カジノの原稿を書かねばならなくなったので、
いろいろ調べたが、ブラックジャックは
他のものより客が勝つ率が高い賭け事らしい。
そして配られていないカードを、
配られたカードからある程度予測ができる。
それをカウンティングし(カードを覚えて)、
勝率を上げることができる。
これを、個人ではなく、学生がチームを組んで
効率的にして、稼いでいたというもの。
やがて目をつけられて発覚するが、違法ではないので、
彼らはカジノ出入り禁止になっただけだった。
実話では学生たちは全員アジア系だったが、
映画ではスターの美男美女を主役にしないと
ということで、4人中2人が白人。
主演は、最近見なくなったジム・スタージェズ。
主人公がベガスに初めて行って勝つ前半から
中盤までは面白いのだが、最後はドラマチックな展開に
しようとしすぎて、ちょっと尻つぼみになってしまったのが残念。

さて、この映画の冒頭、授業で「モンティ・ホール問題」を
教授が生徒に問いかけ、主人公だけが答えられるというシーンがある。
映画を見ていても、他の学生同様理解できなかったので
後で調べてみて面白かった。
人間の心理は、理性とは逆の行動をとることがある
という問題だ。

テレビ番組である司会者のモンティ・ホールが
挑戦者に問題を出す。
「あなたの前には3つのドアがあります。
2つのドアの向こうにはヤギが、
1つのドアの向こうには新車があり、
それをプレゼントします」。
モンティ・ホールは、どのドアの向こうに
新車があるのかを知っている。
挑戦者がまず、一つのドアを選ぶ。
この時点で、正解率は1/3だ。
しかしドアを開けずに、モンティ・ホールは、
次に挑戦者が選んでいない2つのドアのうちの一つを開ける。
そこにはヤギがいた。残りは2つ。
モンティホールはそこで挑戦者に言う。
「残りは二つ。今なら、選んだドアを変えることができますよ」。
しかしほとんどの挑戦者は、ドアを変えない。これは正しいか?

正解は「ドアを変える」だ。
ドアが2つになった時の正答率は、
1/2ずつだと多くの人は思うが、確率論的には違う。
最初のドアは依然として1/3だが、
もう一つのドアは2/3になる(1/3+1/3で)。
この理屈が映画の中だけでは理解できなかったが、アメリカでも
多くの数学者が間違った答えを出してしまったという。
「よくわからない」という人がほとんどだと思うが、
詳しくはwikiの「モンティ・ホール問題」を読んでみて。
面白いから。
クイズ問題みたいだが、理論的に解説されても、
なかなか納得できないところが人間だ。


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by mahaera | 2018-01-18 11:35 | 映画のはなし | Comments(1)