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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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子供に教える世界史[古代編]先史時代・番外編 「人類の六大穀物」

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(写真)2月ごろのインドのデカン高原の麦畑。川など豊富な水が必要な稲作に比べて、麦はそこまで水がなくても栽培できる。
また、もともとは冬に育つ植物なので、秋に種をまいて春に収穫していた。
日本は春蒔き種が多い。西アジアや地中海沿いでも、冬に麦を育てている

今までを整理しておくと、前5000年には、今でも人類の主食となるイネ科の穀物がすべて出揃った。

主食には他にもイモ文化があるがそれは後で。
この頃に現在の人の主食はほぼ決まったと思うと、その影響は計り知れない。

このイネ科の植物を「六大穀物」という。またはコメ、麦、トウモロコシで三大穀物ともいう。
今回はその前半ということで、3つの麦を。( )内は栽培が始まったと推測される年代。


●大麦(前1万3000〜前1万2000年)
…たぶん、歴史上、一番早く栽培が始められたイネ科の植物のひとつ。

中央アジア原産だが、現在普及している品種は、イラクの野生種から品種改良したもの。

小麦より痩せた土地で育つので、重宝された。
最初は粉にして溶かし、粥状にして食べていた

のちにはパンも作られるようになるが、これは初期のビールの登場(前4000年)と同時期だという。
つまり粥状のものを発酵させたらビール、焼いたらパンという道筋をたどったのだろう。

シュメール人はビールを飲んでいた。
しかしグルテンが少ないため(焼いてもふわっとしない)、やがて穀類の主役の地位をコムギに譲っていく。
寒冷地で小麦が育ちにくいチベットとエチオピア高原では、今でもメインの穀物。

日本でも戦前まではポピュラーな穀物で、「麦飯」にも使われている。


●小麦(前1万3000〜前1万2000年)
コーカサス地方からイラクにかけてのあたりが原産地
初めは実ると種がパラパラと落ちるため、集めにくい穀物だったが、のちに品種改良されて実を落とさない種が各地に広まった。
農耕が始まった頃は大麦と同じく粥状にして食べていたが、大麦よりも人気がなかった。
しかし石臼などで挽いて粉にし、焼いてパンを作るようになるとグルテンを含むため美味しく、やがて西ユーラシアでは穀物の主役の地位を得て、大成功を収める。
ただし、長らく大麦やライ麦に比べると、製粉が必要なため高価な穀物だった。安価になったのは、水車の発明で製粉が楽になってからという。中国へは前200年頃には伝わった。


●ライ麦(前1万3000〜前1万2000年)
…小麦や大麦よりも北のコーカサス地方あたりが原産
ライ麦はもともと小麦に偽装した雑草だったという。
小麦畑を人が作ると、そこに紛れ込み、人が小麦と間違えたため除草から免れ、より小麦に似ている個体が残っていった。
発芽温度が1度から2度と低いため、小麦が育ちにくい北・東ヨーロッパで広まり、近世まではヨーロッパでは小麦と並ぶ主要穀類だった。
ライ麦から作るパンが黒パンで、今もこちらを好む西欧人(ロシア、ドイツなど)はいる。小麦より強い〈雑草〉だったので、小麦農地を放っておくと、いつの間にかライ麦が主になってしまうという。
野生種の採取は昔からあったが、メインの穀物としての栽培化は前3000年ごろだという。ただし、西アジアから東へはほとんど伝播しなかった。


●キビ・アワ・ヒエ(前7000年)
…まとめて雑穀類とも言われる。中国の華北(黄河流域)では、前漢時代に小麦が伝わり、やがて交替するまで主要作物だった。これらは高温や乾燥に強く、条件が悪くても育つので、栽培しやすい。
「キビ」の原産はアジアのどこか。炊いて粥にしたり、粉にして餅や団子にしたりして食べていた。
「アワ」はエノコログサが原種で、生育期間が3〜5か月と収穫もしやすく、隋唐時代までは税金で収めるほど、華北の主食だった。
「ヒエ」も同様に炊いたり、粥にしたりして食べる。
中国以外では、西アフリカのサバンナ文化圏や、東アフリカのエチオアピア高原で農耕はこの雑穀類から始まった。
特に「モロコシ(トウモロコシとは全く種類が異なる。中国ではコーリャンとも呼ばれる)」は、アフリカで栽培が前3000年ごろ始まり、やがて乾燥に強いことからアジアに広まった。
「キヌア」はアンデス地域で前7000〜前5000年に収穫が始まり、前3000年ぐらいに栽培種になった。

標高4000m近くても育つのが特徴。


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(写真)ベトナムの農村で。米の水耕が広まるにつれて、おそらく田んぼを耕すために長江流域で水牛が家畜化されていった。
それがアジア各地に広まった。ヨーロッパには十字軍時代に中東から伝わったという。

●米(前8000年)
…かつては雲南・アッサム地方原産といわれていたが、今では長江流域が原産地と言われている。
ジャポニカ米とのちにそこから分岐したインディカ米に分かれる。
面積あたりの収穫率は、小麦の倍はあるが、人手も数倍かかるという欠点がある。
気候的にも雨量が多いか、豊富な水量がないと栽培できないので、中国でも当初は長江以南でしか栽培できなかった。
イネは連作が可能で、特に水田にすると土の養分が行き渡るために欧州の初期農耕のような休耕地が必要なかったのも利点。
水田の場合、タニシや魚も一緒に育てて食用にしていた。前3000年には黄河流域まで北限を延ばした。
日本には前4000年には伝わっていたが、稲作が始まるのは前1000年ほど(菜畑遺跡)から。

東南アジアや南アジアには前2500年頃に伝わる。ヨーロッパへはイスラム教徒の侵入時期に伝わったという。


●トウモロコシ(前5000年)
メキシコ高地の「テオシント」が原種
もとは10個ほどの小さな実しか成らなかったが長い間の品種改良を経て、多くの大きな実をつけるようになった。
やがて南北アメリカ大陸に広がり、アメリカ大陸では雑穀を除く唯一の主要穀物になる。
ただし、メキシコや中米のメソアメリカ文明では主食になったが、南米のアンデス文明ではとうとう主食にはならなかった(アンデス文明はイモ文化)。
最初はポップコーンのように焼いて弾けたものを食べていたかもしれないが、やがて石灰を加えた水で煮て(アルカリ処理)すりつぶし、トルティーリャを焼くようになる。
アルカリ処理すると柔らかく粘り気がでて、アミノ酸、ナイシアシン(ビタミンB3)などを摂取しやすくなる。
トウモロコシを主食にする場合、そのままだと他の主要穀類に必要なそれらが欠乏するため、こうした処理が経験値的に得られるようになったのかもしれない。
ちなみにヨーロッパに持ち帰ったスペイン人はこのアルカリ処理法を知らなかったので、18世紀にトウモロコシを食べる地域で、「ペラグラ」というナイアシン欠乏症が流行った。



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by mahaera | 2018-06-30 12:37 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

最新映画レビュー『女と男の観覧車』ウディ・アレン最新作は、近年では一番重い作品


2017年/アメリカ

監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル
配給:ロングライド
公開:6月23日より丸の内ピカデリー他にて公開中

毎年、決まったように届けられるアレン映画。
基本はライトなコメディだが、彼の作品に通底するのは大人のビターな味わい。
映画を見ている間は笑っていられるが、余韻はほろ苦い。

本作の舞台は、1950年代のニューヨーク州コニーアイランド。
アレン映画にたびたび出てくる遊園地の中で、
ヒロインであるケイト・ウィンスレットは回転木馬の操縦係を
している夫のジム・ベルーシと住んでいる。二人とも再婚だ。
物語の語り手となるのは、ジャスティン・ティンバーレイク扮するビーチのライフガードの大学生だが、話はほぼウィンスレット中心に進む。

彼女はかつて女優を目指していたが、結婚。
しかし自分の浮気が原因で夫を死に
追いやってしまった過去がある。
今の夫は優しいが教養がなく、自分を理解してくれるのではないかと大学生のジャスティンに期待を寄せる。
大学生も年上で人妻だが、
美人のウィンスレットにのめり込んでいく。
そこに現夫のベルーシの前妻との間の娘が転がり込んできたことから、嫉妬の炎が燃え、やがて悲劇を呼んでいく。

最近では、同じビターな映画でも『ブルージャスミン』は、
ケイト・ブランシェット演じるジャスミンの愚かさを突き放して観れたせいか、コメディとして見られたが、
本作は軽いタッチながら悲劇色が強い
「ここではないどこかへ」行くことが唯一の救いのウィンスレットの取り乱しようは、笑って見ていられるレベルではなく、正直、映画をかなり重くしている。

中年に差し掛かり、かつて夢見たことが成し遂げられず
人生がこのまま進んでいくことが辛い。
夫は自分を愛してはくれるが、理解はしておらず
また時折見せるその弱さも憎い
こんな女性(男性も)は、僕の周りにもいくらでもいる
自力ではどうしようもないことは、世の中たくさんある。
そこを異性が救ってくれることもあるだろうが、
期待は裏切られることも少なくない。
たいていの夫婦は、どこかで折り合いをつけて生きている。

映画ではウィンスレットがティンバーレイクにのめり込んでいくが、やがてそれは嫉妬となり、悲劇を呼ぶ。
ウィンスレットの演技は、その行き場のない(やり直しが難しい)年齢の女性(40代)感がすごくよく出ていて、
「熱演」の一言に尽きる
ただし、それが映画の重さになってしまっていて、
スピード感を殺していることも確か。
『ブルージャスミン』のような絶妙な
ブレンド具合にはなっていないのだ。

しかし、アレンの女性を客観的に見る目は、
冷静というかある意味冷酷だ。
女性の素晴らしさと愚かさを共存させているのだ。
ただし好みとしては最近の諸作の中では、いまひとつ。
重い。
映画は★★☆だが、ウィンスレットの熱演は
みるべき価値はあるので☆おまけして、★★★

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by mahaera | 2018-06-26 12:09 | 映画のはなし | Comments(0)

子供に教える世界史[古代編]先史時代/3.各地域の文化の発生(前7000〜前3000年)その3

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(写真)蘭州市内を流れる黄河。このエリアは、麦が伝わる以前は雑穀文化だった

この時代の中国史だが、自分が習った頃の教科書では長江文明については、ほとんど触れていない。しかし発掘や研究により、最近では黄河文明と並ぶ文化があったことがわかっている。

なので、最近では黄河文明と長江文明を合わせて、「中国文明」という言い方をしているものもある。

今後も新たな発見があるかもしれない。


中国・長江エリアでの稲作文化

今まで紹介してきた西アジアから広まったイネ科の主要栽培作物は、オオムギ、ライムギ、コムギなどの麦だったが、東アジアの長江沿いではそれがコメ、黄河流域ではアワやキビなどの雑穀だった。

1988年に発掘され、「中国初期の集落跡」と言われているのが、長江中流域の湖南省で生まれた「彭頭山(ほうとうざん)文化」だ。これは前7000〜前6000年ぐらいの集落で、イネの栽培種が発見されている。

1973年に浙江省で発掘された「河姆渡(かぼと)遺跡」は、前5000〜4500年ごろの文化
長江に面してはいないが、ほぼ流域と言っていいだろう。
この発見により、黄河文明に先行する長江文明があったのでは、もしくは別系統の文明があったのではと、それまで(日本などの東アジアで)一般的だった「四大文明説」が崩れていく原因ともなった。
河姆渡遺跡ではイネの栽培は大規模になり、ブタや水牛も家畜化されていた。
家はすでに高床式住居が作られ、石斧などもあったが、木製の農具が多く作られていた。
笛や太鼓などの楽器、中国最古の漆器、紡織用の道具、1000度以上で焼かれた黒陶などの陶器、象牙の装飾品、玉器などが発掘され、かなりのハイレベルな文化だったことがわかっている。
時代が下ると、長江文明の一つと言われる三星堆遺跡もあるが、これはまた初期文明のところで述べよう。

稲作は水を引いたり、灌漑が必要だったりと、大勢の人間がいた方が効率よく、その結果、村が大きくなっていったのだろう。


中国・黄河エリアの雑穀文化

1977年に河南省の黄河流域で発掘された「裴李崗(はいりこう)文化」は、長江の「彭頭山文化」と同時期の前7000〜前6000年ぐらいの集落で、アワを栽培し、ブタを飼っていたことがわかっている。中国では、新しい遺跡が続々と発掘されて、以前は前3000年ごろまでしかたどれなかった農耕文化の歴史が近年どんどんとさかのぼっている。


前5000年ごろには黄河中流域(甘粛省・陝西省)彩文土器(彩陶)を特色とする「仰韶文化」が起き、これが初期の黄河文明と言われている。西安郊外にある半坡(はんぱ)遺跡がその代表的なものだ。竪穴式住居の跡と、アワを栽培し、ブタと犬を飼っていた。
前4000年ごろには、中国でマガモからアヒルが、水牛が野生種から家畜化されている。
(写真)蘭州市内を流れる黄河。このエリアは、麦が伝わる以前は雑穀文化だった


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by mahaera | 2018-06-24 12:29 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

子供に教える世界史[古代編] 先史時代/3.各地域の文化の発生(前7000〜前3000年)その2


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(写真)イスタンブールのバザールで売られているクルミ。

クルミの原産は西アジアかヨーロッパ東南部と言われている。

前7000年には食用になっていたようなので、チャタル・ヒュユクでも食されていたのだろうか。


自分の息子もそうだが、最近の子供はすぐに結果を求めると思うのは、こちらが歳をとったからか。

世界史の授業もそうで、「AがBをしてCになった」的な記述が多いが、歴史を学ぶとそんな簡単なものではないことに気づく。AはCの結果を知らないでBをしていたり、たまたまAが成功しただけで、そこには無数のAがいたり、無数のBという方法があった。

現在の我々の生活はその蓄積で、試行錯誤の賜物だ。
それを歴史は教えてくれる。


世界最古の都市チャタル・ヒュユク(前7500年〜)

アナトリア高原(現トルコ)でも前9000年ほどから農耕集落が生まれた。

そのうち、世界遺産にもなっているコンヤの近くにあるチャタル・ヒュユクは、前7500年ほどから集落が拡大していった

こちらは人口が最大で1万人(平均5000〜8000人)もいたと推測され、「世界最古の都市遺跡」と言われる。
人々がここに集まったのは豊かな耕作地としてだけではなく、近くで採れる黒曜石の交易のためだった。

金属器時代以前、石器は現代でいえば鉄のようなものであり、生活になくてはならないものだった。
ただし石はどこにでもあるが、加工して性能を発揮できる石はそうどこにでもない。
最初は黒曜石の原石を交換していただけだったが、前6500年には、ここで研磨加工し、やじりや槍の穂先、ナイフや剣などの製品を取引するようになっていた。
紅海から運ばれた子安貝も、このチャタル・ヒュユクを通り、さらに北へと運ばれていった。
交易のネットワークがすでに生まれていたのだ。
土器の製作もこのころに始まり、像や容器が作られ始める。
ここにもすでに農業以外の職人集団が生まれていたのだ。


チャタル・ヒュユクの住民を支えた食べ物は、コムギ、オオムギ、エンドウマメ、ソラマメ、レンズマメ、ドングリなどの植物と、ヤギ、ヒツジ、ウシなどの家畜だった。もちろん狩猟採集も続けられていたが、次第にその役割は縮小していった。

住居は、路地がなくて壁が共有されている集合住宅で、出入りにはハシゴをかけて屋根に上り、その上を歩いた
各部屋は12畳ぐらいの広さで、粘土で炉が作られ、窓はなかった。こうした部屋が全部で139部屋発見されている。
そのうちの40室は漆喰で壁が塗られ、表面には絵が描かれていた。集落を清潔にするため、共同のゴミ捨て場が作られていた跡もあった。

こうして少しずつ、私たちが知っているような人が集まる町が世の中に生まれていく。何も変わらない生活が何世代も続くが、それでも1万年前に比べれば、進歩は早くなってきているのだ。


ヨーロッパへの農耕の広がり

前9000年にメソポタミアの丘陵地帯から始まった農耕は、前7000年にはギリシャ、前6000年には地中海北岸に伝わる。

バルカン半島に伝わった頃には、農耕が始まってすでに数千年経っていたので、家畜の糞を肥料とし、マメ科の植物を休耕期間に植えて地力を回復するなどのシステムもできていた。
農耕はそこからイタリア半島、フランス、イベリア半島に伝わるルートと、ドナウ川を北上し、森林が覆うヨーロッパ中央部へのルートに分かれて広がっていっていく。
前4000年になると農耕は、ほぼヨーロッパ全域に広がっていた

そこに住んでいた狩猟採集民はやってきた農耕民に駆逐されていったか、それとも農耕を受け入れて定住化していったかはわからない。しかし、結果的には農耕民がヨーロッパや西アジア全体を覆っていく。とはいえ、ヨーロッパの多くは、その後数千年は深い森林だった。


インダス川エリア

前7000年にはパキスタン西部のメヘルガルでも、南アジア最古の初期農耕が行われていた。
こちらは小さな農村だが、オオムギやコムギ、ナツメヤシを栽培し、ヤギ、ヒツジ、ウシを育てている。
ここでも地元では産出しないアフガニスタン産のラピスラズリが出土し、交易が広く行われていたことがわかっている。
インダス文明が始まる前2600年までに土器や銅器などが使われるようになるが、やがてなぜか集落が放棄されていく。


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(写真)イスタンブールのボスポラス海峡。
8000年前には、黒海は巨大な淡水湖で、地中海とは繋がっていなかった。
この海峡はつながると同時に、短い時間でできたのだろう。

北半球の温暖化がピークに(前5000年)

前5000年ごろ、北半球、特に高緯度ほど地球の温暖化がピークを迎えていた。
海が多い南半球では前8000〜6000年ぐらいに温暖化のピークが来たが、陸地に氷河が多い北半球はタイムラグが生じ、この頃になったという。
その影響で海面は現在よりも3.5〜5メートルも高かったという。その後、温暖化は徐々に収まり、北半球各地の気温は紀元前後までには現在と同じぐらいになっていく。

この前5000年、北部アフリカでは、モンスーンの影響でサハラが緑に覆われ、南米のアマゾンでは逆に乾燥化が進んだ。
日本では「縄文海進」と呼ばれる現象で海水面が今よりも5メートル高くなり、大宮あたりが半島になるなど現在の関東平野の奥まで海が入り込んでいたことがわかっている。

1996年に発表された「黒海洪水説」は、前5600年に淡水湖であった黒海が、海水面の上昇によって地中海とつながり、地中海の水が一気に流れ込んで、多くの地域が湖底に沈んだというもの。
地中海とつながる前の黒海の水面は、地中海よりも150メートルも低かった。また、地中海も今より15メートル低かったが、世界的な海水面の上昇により、繋がってしまったという。
これが人々の記憶に残り「ノアの大洪水」という説もあるが、洪水は世界中で起きていたので、そのうちの一つだろう。



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by mahaera | 2018-06-23 11:13 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

極上のサウンド。WEST COAST SOUND SUMMIT Vol.1 第1部のレビュー 奥田民生、五輪真弓、小坂忠、中村まり

画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、オンステージ(複数の人)、群衆、夜、コンサート、屋外


昨日、ZEPP TOKYOで行われたイベント、WEST COAST SOUND SUMMIT Vol.1

第一部が日本側、第二部が来日中のDanny Kortchmar and Immediate Familyの演奏という二部構成。

着席制のZEPPは初めて。座席は一階正面のど真ん中でした)。

年齢層は高いことは高かったけど、若い女子もいたりして。

今回は第一部のレポートです。


1部は日本側のセッションバンドのインスト曲(ザ・セクションの「ストリートピザ」)でスタート。

バンマスはギターの佐橋佳幸、それにベース小原礼、ドラム屋敷豪太、キーボードDr.Kyonの豪華メンバーだ。


司会の萩原健太小坂忠松任谷正隆を呼び込み、

小坂忠がデビュー曲の「ありがとう」

リズム隊がラス・カンケルとリー・スクラーに変わり「ほうろう」

そして最後がジェームズ・テイラーのカバー「How sweet it is」を歌う。

70'sの粘りのあるいいサウンド。


ラス・カンケルとリー・スクラーのリズム隊は残り、

続いて五輪真弓

セクションのメンバーとの交流が話され、デビュー曲「少女」が。

個人的にはここが一番のハイライト。この曲は大好きな曲だけど、生で聴くのは初めてだ。

五輪真弓も「こうしたライブハウスでゲスト出演するのは20年ぶりぐらい」と言っていた。

もう1曲は、五輪真弓のライブアルバムに入っていた

キャロル・キングのカバー「きみの友だち」

これにはコーラスで中村まりも加わる。


続いて中村まり

この人のことは知らなかったが、「空が落ちてくる」

「スマックウォーター・ジャック」のキャロル・キングのカバーを。

バック(ラス・カンケルとリー・スクラー、佐橋佳幸、Dr.Kyon)のサウンドが最高に格好いい。


1部最後は奥田民生

今回のメンツとあまり関係なさそうだけど、コーチマーバンドのワディ・ワクテルとは、

過去に初ソロアルバム「29」、3枚目「Fail Box」のレコーデンィグで共演しており、

そこからの1曲めは「野ばら」

2曲め「BEEF」では、ダニー・コーチマー、スティーブ・ポステル、屋敷豪太、小原礼も呼び込んで、全員でのセッション。コンサート自体では、ここがハイライトだった。

奥田民生とダニー・コーチマーはすでにスティーブ・ジョーダンのバンド、ヴァーブで共演していたのですね。

「知り合いです」と照れながらコーチマーを紹介する奥田が印象的だった。


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by mahaera | 2018-06-21 16:41 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

子供に教える世界史[古代編] 先史時代/3.各地域の文化の発生(前7000〜前3000年)その1

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ここからしばらくは、農耕と牧畜の開始から世界各地で文明が始まるまでの話。

村の規模が大きくなり、最初の都市国家がメソポタミアに成立するまでの、3000〜4000年間の話だ。
 
もっとも世界史の教科書では、このパートは1/2ページで終わってしまうほどあっさりだ。

というのも、農耕が始まったのは世界でほぼ同時だったかもしれないが、国家が生まれるほどの文明が生まれるには、それぞれの各地域差があり、結局文明にまで達しなかったところもある。
このパートは単独ではなく、それぞれの古代文明のイントロとして分散していることも多い。

ただ、それでは縦の流れはわかるが、同時代の横が分かりにくくなるので、ここでは大まかな時系列で進めていく。
つまり、同じ時期、地中海では、中国では、日本では、のように俯瞰してみていこうと思っている。


世界最古の村エリコ(前8000年〜)

この時代、大型動物は絶滅したが、新しい環境に馴染んだ小型哺乳類が増え、人類の乱獲にも耐えるようになった。また、人類は小型哺乳類のうち飼育しやすいものを品種改良していき、現在の我々の食卓に並ぶ主な家畜が出揃った。
ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ニワトリは、前6000年頃には家畜化に成功していた

一方、人類は世界各地で主食となる植物を見つけ、採取生活から農耕生活に徐々に移っていった。
野生種から栽培種への移行には何千年もかかったが、その努力は着実に成果を上げ、より収穫量が多い実をつける栽培種が生まれていった。

この時代の初期農耕社会で有名な集落は、
「世界最古の村」とも呼ばれているヨルダン川流域のエリコ(イェリコまたはジェリコ)だろう(現パレスチナ)。
この集落の水源は泉で、乾燥地帯に囲まれていたが泉のおかげでそばには湿地帯があった。最初の集落の跡は前9000年ごろだ。前8000年頃には周辺に棲息するガゼルの家畜化を試みていたようだが、前7000年にはそれがヤギとヒツジに移行している。人類は動物を家畜化するのにも試行錯誤し、失敗もしていたことがわかる。

穀物はオオムギとコムギを栽培しており、前7000年には人口2000〜3000人という大きな集落になっていた。農耕は土地の疲労を生むが、このイェリコでは初期の灌漑農耕が行い、それを解決していたと推測されている。

また、ここには農民だけでなく、物作りの職人もすでに生まれていたようだ。周辺では取れないような石器に使う黒曜石(アナトリア産)や装身具に使う貝殻(紅海産)などが出土しており、交易も活発だったようだ。
また、すでに周辺からの襲撃も受けており、村の周辺に壁や壕を巡らし、防御や監視のための高さ8.5mの石の塔もあった。つまり狙われるほどの余剰生産物が生まれていたということだ。こうして獲物を倒すのではなく、同胞を倒すための武器も発達していったのだろう。

(写真)関係ないですが、人が初期に家畜化したヒツジです。


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by mahaera | 2018-06-17 12:59 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

「子供のための世界史」関連本紹介(先史時代)その3『ヒトはこうして増えてきた』『人類文明の黎明と暮れ方』

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ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史 (新潮選書) 2015年 大塚柳太郎著


ホモサピエンスの誕生から現代に至るまで、人類の発展を人口という切り口で解いていく。
メインは紀元前後までに、人類が火や道具、農耕と家畜を獲得していく間で、狩猟採集から定住生活になり生産性の向上をしたことが、どう人口に影響したか。
面白いのは、人口が増えるということにはいろいろな要素があり、例えば平均寿命が延びれば、高年齢層も人口にカウントされるし、女性が出産する回数も増える。
また、栄養や良い衛生状態が行き渡ることにより、死亡率も下がっていくということ。
それでも、上昇率のカーブは人類の歴史を通じて緩やかなものであり、産業革命後に人口爆発が起きていく。
中世以降の記述はやや駆け足になり、主力は先史時代から古代まで。
なので、後半に行くに従ってあまり面白くなくなっていくのが残念。★★★


人類文明の黎明と暮れ方 (興亡の世界史)  講談社 2009年 青柳正規著

文庫にもなっているシリーズの第0巻として刊行。
人類の誕生から初期農耕文化までに全体の2/3ほどを費やし、ここは読み応えがあるものの、最後の方は古代文明から幾つかをピックアップするということになっているので、

「通史」として読むとちょっと違う感も。
それでも発行が2000年代なので、既存の世界史全集に比べると、先史時代の新発見や新説も取り入られられており、教科書よりも古さは感じさせない。
著者は古代ローマ史の研究者なので、この本の著者として最適かという疑問が書評などにはあるが、学者以外にきちんと読ませる力はあり、飽きさせない。★★★


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by mahaera | 2018-06-16 14:21 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

最新映画レビュー『デッドプール2』 接近型アクション、意外に真面目なメッセージありの充実作


 アメコミヒーローものに全く関心ない人はスルーだろうが、好きな人はスルーできない「デッドプール」。ディズニー傘下となったMCUにはない、バイオレンスと下品ネタ、楽屋オチ満載で、子供は楽しめない(日本ではR15指定)ヒーローものだ。


 偶然なのか、今回の敵は、『アベンジャーズ/インフィニティウォー』の悪役サノスを演じたジョシュ・ブローリン。老け顔だが、現在50歳。ってことは僕より歳下か! 

映画デビューは1985年の『グーニーズ』だがずっと脇役で、2007年の『ノー・カントリー』で主人公になった時、「この人だれ?」と思ったが、この10年で引っ張りだこの俳優になった。

40過ぎてからの遅咲きだ。まあ、デッドプール=ライアン・レイノルズも、デビューは早いが不遇な期間が長かった。

ちなみにレイノルズの前の奥さんは、ブラック・ウイドウことスカーレット・ヨハンソンだ。


さて、今回は未来から来た暗殺者ケーブルが狙うミュータントの少年をデップーが助けるという話で、『LOOPER/ルーパー』や『ターミネーター』のような話といえば、想像つくだろう。とはいえ、「デッドプール」はストーリーを楽しむのと同じぐらいに、小ネタ、パロディ、キャラクターの掛け合いといった寄り道の比重が高い。話の進行を停滞させることなく、それらを散りばめなくてはならないのだが、今回もうまくそれは成功している。ただし、続編が続くと、登場キャラが増えすぎて、停滞気味になってくるのはシリーズものの宿命なので、今後の課題でもあるのだが。

監督は前作から交代し、今回は『ジョン・ウィック』で、接近アクションの新しい型を作り出したデビッド・リーチ

スタントマン出身で、続く『アトミック・ブロンド』も高い評価を得た。

アクションが似てきて食傷気味になりつつあるアメコミヒーローものだが、今回はCGを使った派手なアクションより、デビッド・リーチお得意の接近戦のアクションの部分が見応えがある。

武器をぶっ放す敵ケーブルだが、映画では意図的にそれを封じるような状況で、近距離での戦いを作っている。ミュータント護送車の狭い通路の戦いとかね。

メインストーリーは意外と感動もので、「失ったものを取り戻すためには、何をするのが正しいのか」というテーマがきちんと描かれている。ケーブルは過去に、デップーは未来に向かって、それを果たそうとするのだ。また、少年法の改正が論議されている日本だが、ここでは「大人たち次第で、子供の未来は変わる余地がある」という、少年犯罪を本人の問題として切り捨てないというメッセージもある。

ということで、「デッドプール」としてはやや真面目で、ハチャメチャな狂ったキャラではなくなってしまったが、これはこれで楽しめる作品であることは(ファンにとって)間違い無いだろう。

あ、あと1カットだけ登場のブラピには笑った。★★★


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by mahaera | 2018-06-13 13:24 | 映画のはなし | Comments(0)

子供に教える世界史[古代編] 先史時代/2.農耕と牧畜の開始(前1万3000〜前6000年)その6

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(写真)ホータンの屋外肉屋のヤギ肉。食べた方はわかると思うが、中央アジアやインド、西アジアで「マトン」と言われているものは、ヒツジだけでなくヤギ肉も入っている。美味しく調理されたヤギ肉は、牛肉では味わえない美味しさがある。牛よりも育つのが早いし、豚を食べない地域では今もポピュラーな食肉だ。


遊牧の開始

ヤギやヒツジを中心とした牧畜は、「遊牧」という生活形態も生み出した。
遊牧がいつ始まったかはわかっていないが、
牧畜をする農耕民から派生したのかもしれないし、
牧畜を知った狩猟採集民が始めた形態なのかもしない。
ともかく、前7500年には早くも遊牧民が生まれていたようだ。

まちがえる人もいるが、遊牧民は狩猟採集民とは異なる。
遊牧民は家畜の餌を求めて、移動する生活が基本だ。
狩猟採集民は移動するものもあるが、縄文人のように定住生活も送るグループもいた。

ただし狩猟採集民がおおむね自給自足なのに対し、遊牧民は獲得するものがほぼ肉や乳製品に限られるので、遊牧生活では得られない穀類や野菜、道具などは、農耕民と交換しなければならない。
なので初期の遊牧生活は、定住民エリアとそう離れたところでないところから始まった。


遊牧民が扱うヤギやヒツジ、ウマなどは、自分たちの生活に使うだけでなく、商品価値がある財産だった。
いったん、定住民と交易してそれらと交換(のちに売買)するシステムが整うと、遊牧民はそれをあてにしてより遠くまで移動するようになり、各地の定住民たちを結ぶネットワークを取り持つ役割も生まれていく。
そして数千年後には、定住民を脅かすほど、大きな力を持っていく。
 

ヤギの家畜化

乳製品だが、現在のように牛乳をそのまま飲む文化というのは、人の歴史においては最近のことで、基本的にはバターやチーズ、ヨーグルトなどに加工して食べるのが普通だった。
もともと哺乳類は、離乳すると乳製品を消化する酵素が低下し、消化不良を起こす。
これを「乳糖不耐症」といい、日本人の95%はそうだ。
一方、乳を出す家畜を買い、乳製品を取るヨーロッパ系の人たちはその割合が少ない。
それは家畜化の数千年の歴史を通して、人間の体が順応していったのではないかと考えられている。
牛乳を飲んでお腹がゴロゴロするのは、当たり前の現象なのだ。
 

ヤギの家畜化は、それまでの生態系を破壊するというマイナス面もあった。
草だけを食べるウシやヒツジと違い、ヤギは腹が空くと樹皮や樹根も食べてしまう
つまり、その土地の植物が再生しなくなるまで食べてしまう。
ヤギの遊牧が古くから飼育されていた西アジアの砂漠化が進んだ原因の一つとも言われ、また農民と遊牧民が対立する原因にもなった。

ヒツジの家畜化

ヤギのあと1000〜2000年してヒツジが家畜化された。
もしかしたらヤギとヒツジが出揃ったのが、「遊牧」という形態を生み出すきっかけになったのかもしれない。
人間にとってヤギとヒツジはどう違うのか。
ヤギは肉、乳、皮を人間に提供したが、ヒツジは脂肪と羊毛を提供した

これはヤギでは得られないものだ。
脂質は人間が生きるのに、たんぱく質、炭水化物と共に必要なもの

ブタは脂肪が多いが、遊牧には不向きな家畜なので、ヒツジの存在は大きい。

また、羊毛は衣服の原料になるし、また定住民と交換するのにいい商品だ。

このころの野生種から家畜化されたばかりの初期のヒツジは、ゴワゴワした固い上毛で覆われ、現在のヒツジの柔らかいウールはその内側にわずかに生えるだけだった。
また、その上毛は毎年季節で抜け毛になるので、人はそれを採ってフェルトのようにして使っていた。現代のヒツジは上毛が退行し、ウールや上毛との中間のヘアーが発達し、抜け毛をしない種(前4000年ごろ登場)が品種改良されたものだ。
植物で言えば、麦などの穀類の野生種は自然に種を落とすが、人間は種を落とさない穀類を長年かけて品種改良してきたのと同じだ。ということで、現在のヒツジと初期のヒツジは結構違うものだった。


さて、ここまでが先史時代の第2章である「農耕と牧畜の開始」だ。

歴史教科書ではすぐに終わってしまうが、今の人類の生活スタイルのスタート地点とも言え、結構面白いところだと思うのだが、文献を重んじる歴史学とはジャンルが違うので、世界史の先生方はあまり興味がわかないところなのだう。
とはいえ、近年のDNA研究や新しい遺跡の発掘により、新発見が多いところなので、まだまだ歴史が書き換えられるところでもある。
農耕と牧畜は、3000年ほどかけて徐々に人類の生活の形態として確立していった。それらが世界中で始まる前、最終氷期が終わった頃の前11000年ごろの世界人口は500万人だったが、前6000年ごろにはその倍の1000万人に増えていたという。

 次からは、「各地域の文化の発生」として前6000〜前3500年ぐらいまでの、いわゆる「文明」が始まる前の前史を書いてみたいと思う。今までがスタート地点だとしたら、次は人類の生活スタイルの基礎が確立した時代になる。現代の生活で当たり前だと思っていることが、かなり違って驚くことが多いかもしれない。また、ちょっと長くなってしまうかもしれないが、お付き合いください。


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(写真)トルファンのウイグル人の村にて。ロバが家畜化されたのは、前5000年ごろ。馬よりは早いが、遊牧生活には向いておらず、農耕民に飼われるようになる。過酷な環境に強いのが好まれた。


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by mahaera | 2018-06-12 10:50 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

最新映画レビュー『万引き家族』 社会の狭間で生きている“家族”を通し、家族とは何かを問いかける


パルムドール受賞後の試写に行ったら、1時間前でも満席で入場できず。翌週、また1時間前に出直してようやく見れた。
それほど、是方作品には期待が高いのだろう。
 
もう、前情報が散々入っているだろうし、見た方も多いのでストーリーは省くが、見もしないでというか、これまで是枝作品を1本も見ていない人たちが、
「万引きを増長させるようなタイトルだから」
「万引きに入られた人たちはどうでもいいんですか?」と書き込むのは、自分がバカだと言っているようなので、憐れ。
また、なぜすぐに「反日」に結びつけるのかの考えもサッパリわからず、とほほ。論点が違うのだが。

映画の主人公は昔から犯罪者や罪を犯すものが多かった。
あえて犯罪者を主人公にすることによって、そうでしか生きられなかった者に共感することで、いろいろな人間の人生を知る。
それができるのが、映画であり小説なのだが、誰でも発信できるネット社会は、不寛容な発言も拡大してしまった。
本作はそんな息苦しい現代から、落ちこぼれてしまった人たちを描いた物語だ。
なので、人に共感できない人たちは見てもなんとも思わないかもしれない。
 
「万引きするぐらい社会の底辺で暮らしているけれど、家族は幸せでした」という単純な話ではもちろんなく、吹き溜まりの埃のように、自然に集まって来てしまった彼らには、それぞれつらい過去があるばかりか、
一緒に暮らす目の前の人たちにもそれを隠している。
それがあるから、このひと時を大事にしているのかもしれない。

前半の明るいムードから、後半は一転して、
それぞれの想いが露わになってくるのだが、
もちろん是枝作品なので何が正しいか正しくないかは、
こちらの判断に委ねる。
そもそも、家族や人生に正解はない。
そして、家族でもさえ同じ状態は長くは続かない。
 
今見ると、一家にやってくる少女の姿は、偶然ながら先日虐待死した5歳の女児を連想してまう。
安藤サクラ「拾ったんです。捨てた人がいるんじゃないですか」のセリフは、たとえ形的には家族でも、心の中では捨ててしまった親とは対照的だ。
そしてその安藤サクラが、映画の中では最初は目立たなかったのが
後半グングン存在感を増し、最後には圧倒的な演技を見せる。
もちろんそれはそのシーンの脚本を渡さなかった(準備させない)是枝演出あってのものだが、それも含めても何かすごいシーンに立ち会っているような感覚を覚えた。
 
また、飄々としながら笑わせてくれる樹木希林が、今回もちょっとしたセリフや表情で、3秒だけどす黒い闇を見せてくれるのも凄みがある。
リリーフランキーは、善人と悪人、気の弱さ、後悔などをすべて併せ持っていて、ダメだけど憎めない。
音楽の細野晴臣、そして撮影の近藤龍人の仕事も素晴らしい。ということで、プロが作った素晴らしい作品。
あとはそれを受け止められるかは、本人の感受性次第だろう。
★★★★

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by mahaera | 2018-06-11 17:06 | 映画のはなし | Comments(0)