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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『スカイスクレイパー』 ドウェイン・ジョンソン主演の、“全部のせ丼”アクション映画


2018年/アメリカ

監督:ローソン・マーシャル・サーバー
出演:ドウェイン・ジョンソン、ネーヴ・キャンベル
配給:東宝東和
公開:9月21日より全国公開中

2018年のアクション・エンタメ映画界は、「ザ・ロック」こと、
ドウェイン・ジョンソンの快進撃の年だった。
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』ではゲーム世界で活躍、
『ランペイジ 巨獣大乱闘』ではモンスターと戦い、
今回は超高層ビルで“ダイ・ハード”する。


ボーンシリーズなどのリアルアクションとは違い、
80年代シュワルツネッガー直系の、“ありえねー”系アクション
もちろん、トムクルのような本人の体を張ったアクションでもない。
しかし、たまにはそんなジャンクでゆるいエンタメも見たくなる。

本作は、簡単に言えば『タワーリング・インフェルノ』と
『ダイ・ハード』を足して、ドウェイン・ジョンソンで割ったもの
悪人たちに占拠された超高層ビルで火災発生、
そこに取り残された家族を救うという個人的な理由でヒーローが単身乗り込み、
悪人たちをやっつけて家族を救うというそれだけの話だ。
なので、主人公も家族も死なないし、悪人はみな死ぬことはわかっている
そこに大火災、裏切り、サスペンス、決闘が盛り込まれた、
“てんや”でいえばオールスター丼、全部のせ丼だ。

まあ、それでも、お父さんが家族のために頑張るという設定で、
誰しも共感できるようになっているのがズルい。
ミッションでも愛する女性でも、世界を救うためでもない。
家族の命を救いたい、ただそれ一点なのでわかりやすい。
一方、悪人たちは徹底して悪く、
ヒーローに成敗されてもかわいそうだとは微塵にも感じない。

ということで、適度にハラハラして、適度にユーモアがあり、適
度にカタルシスを感じる、というデートムービーだ。
確実に映画史には残らないが。

アクションスターとしてのドウェイン・ジョンソンだが、
今までのアクションヒーローたちと違うのは、
“頼もしい父親”役も演じられるところだろうな。
あと、女子ウケもいいだろう。そこが好き嫌いが分かれるところだろうが、
今後もそうした役回りが回ってきそうだ。
★★★

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by mahaera | 2018-09-28 09:27 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ヒトラーと戦った22日間』 まだまだ知らなかったことがある。実話の映画化

「『ヒトラーと戦った22日間』予告編」の画像検索結果

2018年/ロシア、ドイツ、リトアニア、ポーランド
監督:コンスタンチン・ハベンスキー
出演:コンスタンチン・ハベンスキー、クリストファー・ランバート
配給:ファインフィルムズ
公開:9月8日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館にて公開中
公式ページ http://www.finefilms.co.jp/sobibor/

最近、ナチス政権下のユダヤ人もの、「ヒトラー」を入れ込んだ邦題が多いのが気になるが、本作にもヒトラーは出てこない。
そして本作は収容所ものには珍しい、ロシア映画。
監督・脚本・主演をこなすのは、ロジア人のコンスタンチン・ハベンスキーだ。
というのも、実話に基づいた本作だが、反乱のリーダーとなるサーシャが、ユダヤ系ソ連兵だったからだ。

1943年9月、ポーランドにあるソビボル絶滅収容所に、ソ連兵のサーシャが送られてくる。
ほとんどのユダヤ人はすぐにガス室に送られて殺されてしまうが、作業に必要なユダヤ人だけは生かされていた。
彼らは脱出計画を練っていたが、強力なリーダーがいない。
そこにウクライナで脱走経験のあるサーシャが来たので、一部のものたちが彼をリーダーにして反乱計画を練る。
それはSS将校たちを殺し、全員が脱走するというものだった。
そして22日後の10月14日、反乱が決行される。

有名なアウシュヴィッツ=ビルケナウ以外にも、多くのユダヤ人強制収容所があった。
勉強不足だったが、強制労働を目的とした強制収容所のほかに、最初から殺戮だけを目的とした絶滅収容所があった。
そのうち、本作の舞台となるソビボルでは16万7000人が殺されているという。
殺害が目的だから、列車で着いたユダヤ人のうち、生かされるのは死者の遺品の整理やそれを直して再利用できる職人などごくわずか。
仕事ができない子供は問答無用で殺された。
そしてソビボルなど、多くの絶滅収容所はソ連軍が迫ると、証拠隠滅のために残っていたユダヤ人もろとも、なかった状態にされた。

本作の題材となった事件は、珍しく、収容されていたユダヤ人たちがやられっぱなしではなく、反乱を起こしたことだ。
機を見て、11人のナチス将校を殺して武器を奪い、600名中、360名が脱走に成功。
そんな歴史があったことは、あまり知られていないのでは。
映画は、決してうまい出来ではなく、前半はナチスの囚人いじめがネチネチ描かれ、まったり感がある。
ただし、脱走当日になると展開はスピーディに。結末を知らなかったので、ハラハラしながら見る。
将校をひとりひとり呼び出して、ナイフで殺害するくだりは、「殺っちゃってください」と心の中で拍手喝采(映画なので、ナチス軍人は良心の欠片もない極悪人として描かれている)。

脱走後の顛末は、字幕で書かれるが、脱走した360人のうち200人は、すぐに追っ手の親衛隊によって殺され、逃げられなかった240人も全員殺され、残った160人のうちの100人余りは、民間のポーランド人に殺されたり密告によって命を落としたという。
当時のポーランドでは、反ユダヤ主義も根強く、自分たちがナチスに占領されながらも、そこから逃げてきたユダヤ人を殺したりしていたというのも陰惨な話だ。
また、映画では触れられていないが、看守などにはドイツ人ではなく、反共産のウクライナ人が多く使われており、彼らもまた残虐だったという。
弱いものがより弱いものをいじめるという構図はやりきれない。

本作の主人公であるサーシャも、脱出後にはパルチザンに加わり戦ったが、戦後はドイツの収容所にいたとして「外患罪(外国の捕虜になった者は半共産思想に感染しているという言い分)」により、ソ連の強制収容所に入れられたこともあるという数奇な運命を辿っている。

ということで、人間ドラマとしては薄い出来だが、こうしたことがあったという事実を知るにはいいテキストかもしれない。★★★
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by mahaera | 2018-09-15 11:22 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『判決、ふたつの希望』  国家、民族の対立や憎しみを乗り越えるには


レバノンに行ったことがある。1996年のことだ。
内戦は終わっていたが、あちこちの建物は壊れ、銃弾の穴が開き、薬莢が落ちていた。
日本がバブルに浮かれ騒いでいたころ、この国では国民同士が殺しあっていた。
本作は、今もそのころの傷が残っていることを描いている。

ベイルートの住宅街。パレスチナ難民のヤーセルは工事の現場監督をしていた。
一方、車の修理工場を営むトニーは、キリスト教政党の熱心な支持者で、身重の妻を抱えていた。
そのふたりが、ちょっとしたことから口論になる。
謝罪に訪れたヤーセルだが、トニーがさらに罵ったことから、暴力を振るってしまう。
問題は法廷に持ち込まれ、それをメディアが取り上げたことから、このふたりの争いは国民を巻き込む裁判に発展していく。

レバノンの宗教や政治問題、大変なので端折って書くが、キリスト教徒とイスラム教とが混在して暮らしているこの国で、80年代、各派閥が近隣の支援を受けてお互いに抗争を繰り返し、深刻な内戦を生んでいた。
内戦なので民間人の虐殺が起きる。
それがまた、憎しみを生んでいく。
内戦終結と共に内戦時の犯罪は不問になった。
人々はいまは穏やかに暮らしてはいるが、憎しみを忘れたわけではない。
ちょっとした口論でそれが出てしまうのだ。

本作でも元をただせば人と人の関係なのだが、その人が属する集団を相手は見てしまい、集団同士の罵り合いとなる。
この映画でも裁判が進むと、キリスト教右翼とパレスチナ難民支持派の団体双方が争う事態に発展していく。
話が大きく広がりすぎ、当の二人も困惑していくほどになるのだ。
そこでふたりは気づく。相手を“人”として見ていくことに。

政治的、社会的な問題を多く含む映画だが、難しくならないように、監督は主人公となる二人の個人的なドラマと法廷劇をうまく組み合わせ、きちんとエンタテイメントとしても楽しめるようにしているので、ふつうに面白く見ることができるだろう。

遠い国の出来事のようにも思えるが、こんなことは日本の日常にもよくあることだと。
人はつい、よく知らない人にレッテルを貼って、くくってしまう。
そして、相手をけなすことで、優越感に少し浸る。
あるいは、相手の気持ちを想像することができずに、素直に謝れない人もいる。
自分の立場からすれば正しいかもしれないが、相手の立場もまた正しい。
また、自分の不甲斐なさや不安を、“奴ら”のせいにすり替える人もいる(飲み屋にはよく来るので)。
どうすれば、おだやかにできるか。
本作では、それを主人公二人が見つけていくところに救いがあるだろう。
良作。★★★☆

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by mahaera | 2018-09-02 10:38 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』最大の敵は自分。似ていないようで似た者同士


監督:ヤヌス・メッツ
出演:シャイア・ラブーフ、スベリル・グドナソン、ステラン・スカルスガルド、ツヴァ・ノヴォトニー
配給:ギャガ
公開:8月31日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて

格別テニスファンでもないし、ウインブルドンも見ていないが、スポーツ映画はわりと好きという自分。
今年は、実話ベースのスポーツ映画が大豊作で、『アイ、トーニャ』『バトル・オブ・セクシーズ』と良作続き。
本作も、地味ながらもなかなかの感動作だった。

1980年、世界ランキング1位のスウェーデンのボルグは、5連覇をかけたウインブルドンの試合を前に、過度のプレッシャーを受けていた。
“氷の男”と言われ、いつも冷静さを保っていいるボルグだが、その彼の心の内を知っているのはコーチと婚約者だけだ。
才能はあるが自分を抑えられず、癇癪を起こす少年を鍛え上げたコーチと、試合の前の夜に儀式のようにラケットの張りをチェックするボルグ。
彼はかろうじて、自分の感情をコントロールしていたが、それは大きな孤独を抱えることでもあった。

一方、世界ランキング2位のマッケンローの憧れの存在はボルグだった。
癇癪持ちで自分をコントロールできずに、試合中でも悪態をつく。
しかしそれは、トップを目指すための過度のストレスからくるものだった。
そして、運命の対決の日がやってくる。

映画は、ウインブルドンを控えた1、2週間ほど前に始まり、ボルグ、マッケンローの二人がプレッシャーを抱えながら、対決に向かう様子を、過剰にあおることなく、大人の目線で冷静に追う。
まさに水と油のような二人だが、映画を見ていくうちに、その奥底には似た“何か”があることに観客は気づいていく。
そして彼らを支える存在にも。ボルグは父親代わりのコーチ、マッケンローは父親だ。
彼らがいるから、二人は重圧に耐えることができるのだ。

監督は、アフガニスタンに駐留するデンマーク人部隊を追ったドキュメンタリー『アルマジロ』で注目されたスウェーデン人ヤヌス・メッツ。
本作が初長編ドラマ作品だが、ヨーロッパ映画らしい大人の目線と、エンタテイメント性をうまくマッチさせている。
また、ボルグ役のスベリル・グドナソン、マッケンロー役のシャイア・ラブーフも好演。
試合の結果は、有名だからみなさんは知っているだろうが、もし知らないなら知らないで見た方がいいだろう。
僕はハラハラした(笑)。
★★★☆
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by mahaera | 2018-09-01 09:44 | 映画のはなし | Comments(0)