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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『アナと世界の終わり』ハイスクールはゾンビだけらけのミュージカル


「ハイスクールミュージカルとゾンビものをかけ合わせたら」というシンプルな発想で、歌って踊ってゾンビを倒すという映画ができた。

キャストはほとんど無名に近い、イギリスの低予算映画で、インディーズ臭もぷんぷん。


舞台はイギスリの田舎町。

高校生のアナは、幼い頃に母が亡くなり、高校で用務員をしている父親と二人暮らし。

クラスメイトはパッととしない連中ばかり。高校卒業後は大学に行かずに、世界を旅するバックパッカーになろうと夢見ていたアナ。しかしクリスマスの日、旅行の計画が父親にバレてしまい、大げんかしてしまう。翌朝、友人のジョンと学校へ向かうアナだったが、その前にゾンビが現れる。一晩のうちに、街はゾンビだらけになっていたのだ!


ゾンビと化した人々が襲ってくる中、主人公のアナと友人たちは街中で、学校で歌って踊りまくる。ミュージカルの基本で、歌われる内容は、彼らの内面の声。自分の悩み、相手に対する恋心だ。邦画の『桐島、部活やめるってよ』でもそうだが、高校生にとってゾンビとは、死んだように生きている大人や同級生たちのメタファーだ。そしてそれは増殖していき、次第には友人や恋人さえを日々をただ生きているゾンビ(集団)の仲間入りし、自分が孤立化していく。

もっとも本作はコメディなので、その辺りは深く掘り下げないが。しかも映画最大の悪役はゾンビではなく、校長を狙う意地悪教師であり、脅威となるが頼り甲斐もあるのはクラスのイジメっ子だ。

映画はまあ手作り感ある他愛のないものだが、音楽がなかなかよくできている。80'sポップス風のどの曲もキャッチーで、耳に残りやすい。音楽チームは、以前公開された英国製ミュージカル映画『サンシャイン/歌声が響く街』にも参加しているようで、英国ミュージカルという流れが、日本では伝わりにくいけどきちんとあるのだろう。映画は★★☆ぐらいだが、音楽がよかったので★★★


by mahaera | 2019-05-31 07:22 | 映画のはなし | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ The Byrads その4 昨日よりも若く Younger Than Yesterday(1967)

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昨日よりも若く Younger Than Yesterday(1967)

1967年2月6日発売。アルバムからは3枚がシングルカットされた。
まず1月9日に「ロックンロール・スター So You Want To Be A Rock 'N' Roll Star」がシングル発売。ビルボード最高29位。
当時人気絶頂だったアメリカのバンド、モンキーズを揶揄する歌で、ロックンロールスターになるならの心得を皮肉交じりに歌っている。
イントロのギターリフからカッコよく、マッギンのサイケ風の12弦ギターのフレーズもマッチ。ロック曲なのに、常にギロがリズムを刻み、トランペットが忘れがたいソロを奏でる
ちなみにこのトランペットは南アフリン出身のジャズ・ミュージシャンのヒュー・マセケラ
僕はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのカバーで知り、ザ・バーズにたどり着いた。


アルバムのタイトルは、このアルバムで唯一のカバー曲、ディランの「マイ・バック・ペイジス My Back Pages」の歌詞の一節から。
「ああ、あの頃の僕は何て年老いていたのだろう。今の方がずっと若いさ」という内容。
アルバムではB面3曲目に配置され、2枚目のシングルカットとして3月にリリース。このアルバムのベストトラックというばかりか、全バーズの作品の中でもベスト3に入るかもしれない。ディランの3/4拍子の地味な曲を4拍子に置き換え、哀愁漂うコーラスとギターによる間奏は何度聞いても素晴らしい。

この曲に関しては、完全にディランのオリジナルを凌いでいる。ディランのデビュー30周年記念コンサートでも、このバーズのバージョンで歌われ、マッギンやジョージ・ハリスン、トム・ペティ、ディランが歌い継いだ(ギターソロはエリック・クラプトンとニール・ヤング)。このバーズのバージョンをもとに、キース・ジャレットもカバー
日本では真心ブラザースのカバーがまた素晴らしく、映画「ボブ・ディランの頭のなか」のオープニングで流れたほか、実質のそのリメイクとも言える真心ブラザース+奥田民生のシングルが映画『マイ・バック・ページス』(主演:妻夫木聡、松山ケンイチ)の主題歌として発売された。


さて、アルバムはA面6曲、B面5曲の11曲入りで、カバーは前述の「マイ・バック・ペイジス」のみで、あとはメンバーのオリジナル。
バンドのメインソングライターだったジーン・クラークが脱退したことにより、前作ではリーダーのマッギンの頑張りとクロスビーのサポートが印象に残ったが、本作では第3の男クリス・ヒルマンの台頭がめざましい
ベース&ボーカルのヒルマンは、バーズに入ってからベースを始めたようなヒルマンだが、前作からようやく個性的なプレイを発揮するようになり、また本作では単独で4曲、マッギンとの共作で1曲と半数近くの曲に関っている。
クロスビーも単独で2曲、マッギンとの共作で2曲と存在感を示し、リーダーのマッギン作はすべて共作しか無くなってしまった。


ヒルマン作の曲から見ていくとA2の「Have You Seen Her Face」B1「Thoughts and Words」はGSあるいはマージービート風のポッブなナンバー。
「Have You Seen Her Face」はアルバムからの3枚目のシングルカットになった。
A5「Time Between」とB4「The Girl with No Name」は、次につながるカントリーロックといってもいい曲。
この2曲にはカントリーのセッションミュージシャンであるクラレンス・ホワイト(のちにバーズに加入)が参加。


クロスビー作のA4「Renaissance Fair」はマッギンとの共作(のちにクロスビーがクレームをつけたけど)。のちのCS&Nにつながるクロスビーらしい作風。アレンジが複雑になり、後ろで動くベースのランニングも当時は珍しい。
B1「Everybody's Been Burned」は、もはやビートバンドではなく、ジャズっぽいコード使いや編曲も印象的。クロスビーのボーカルもいい。
B2「Mind Gardens」は作風が他の二人と異なり、ドラムやベースのリズムはなく、かき鳴らすギターと歌、テープの逆回転がや織り成す幻想的な曲。この曲の収録には他のメンバーが反対したという。この3曲は、西海岸ヒッピーの雰囲気が出ている。
B6「Why」はマッギンとの共作で、シングル「霧の8マイル」のB面として発売されていたもののリメイク。


本作は3人のソングライターによる作品を、ディランのカバーで強引にまとめた感じ。ただしバンドというより、3人の作品と思えばいい曲が揃っていて、初期バーズの最高傑作にあげる人もいる。ローリングストーン誌が選ぶロック名盤でも124位。サウンド的には、テープの逆回転を使うなどビートルズの『リボルバー』に影響を受けているという。

クロスビーの主張はマッギンとの主導権争いになり、それがやがて他のメンバーとの緊張感も生んでいく。

つまり前作までのマッギン独裁体制が崩れたのもこのアルバムだ。また、ベースのクリス・ヒルマンの急成長が、バンドがのちに彼が好きなカントリー指向を高めるきっかけにもなったかもしれない(クリス・ヒルマンはバーズ加入前はブルーグラスのマンドリン奏者)。


時代はこの後、「サマー・オブ・ラブ」「SGTペバーズ」と向かう。1967年の代表曲は「ペニーレイン/ストロベリーフィールズ・フォーエバー」(ビートルズ)、『ウィ・ラブ・ユー』(ローリングストーンズ)、『青い影』(プロコル・ハルム)、『あなただけを』(ジェファーソン・エアプレーン)とサイケデリック全盛時代に。その夏、バーズは初めてのベストアルバム「グレイテストヒッツ」も発売する。


by mahaera | 2019-05-29 14:07 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

「旅行人/インド先住民アートの村へ」(早稲田奉仕園)、横浜美術館

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土日は真夏日のようだった。それで少しお出かけ。

25日・土曜日は早稲田奉仕園へ、蔵前仁一氏のコレクションによる「インド先住民アートの村へ」を見に出かける。トークイベントも。ワルリー画、ゴンド画、ミティラー画など、インドの村々に残る絵の解説を興味深く聞けた。蔵前さんのトークも、なんだかどんどん上手くなっている気がする(笑)。
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26日・日曜日は、横浜へ。本当はGreen Roomフェスに行きたかったのだけど、完売。初めて横浜美術館へ。現在開催しているのは「meet the colletion アートと人と、美術館」。主に常設しているものが中心だが、ここはマグリットなどのシュールレアリズム作品で有名だ。さて、入り口近くに淺井裕介氏による、円形の大きな部屋の壁を使った壁画作品「いのちの木」があったのだが、それが前日に見たインド先住民画に何となく似ていた。もちろん、一つ一つのモチーフが似ているわけではないのだが、動物や植物が有機的に絡み合うところは、通じるものがあるかなと。

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暑いとそれだけで疲れてしまう。さあ、これからは夏だ。いいやその前に梅雨があったか。
by mahaera | 2019-05-28 11:21 | 日常のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』まだ何者にもなっていないモリッシー


2017年/イギリス

監督:マーク・ギル
出演:ジャック・ロウデン、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ
配給:パルコ
公開:5月31日
劇場情報:シネクイント

5月22日、モリッシーの誕生日とラジオがザ・スミスの曲を流していた。
実は、僕はザ・スミスはちょうどリアルタイムなのだが、全く印象にない。
当時のロック雑誌「ロッキンf」などで盛り上げていたので、84年の1st、85年の2ndはビニール盤で聴いていたのだが、ピンとこず、今もモリッシー人気はわからない。
映画『アントマン&ワスプ』で、モリッシーしかかからないジュークボックスの話が出てくるが、LAのメキシコ系に何故人気があるのかもわからない。
そんな状況でこの映画を見たのだが、それでもわからなかった(笑)。というのも、この映画では、一切、ザ・スミスの曲は流れないからだ。


本作は、まだモリッシーになる前のただのスティーヴンを描く。1976年、高校をドロップアウトしたスティーヴンがすることは、ライブハウスに行って観たバンドのレビューを音楽雑誌に投稿することぐらい。あとは家でゴロゴロするニートだ。
好きな音楽はニューヨークドールズなどのパンク。
この年、ピストルズがマンチェスターで行った公演に来た42人の客のうちの一人で、NMEにもモリッシーがレビューを投稿している。
余談だが、この42人の中に、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーを結成したイアン・カーティスやバーナード・サムナー、ピーター・フック、バズコックスのピート・シェリーやホワード・デヴォート、ミック・ハックネル(シンプリー・レッド)、トニー・ウィルソン(元ファクトリー・レーベル社長)がいたことは、伝説になっている。


さて、スティーヴンは父親が家を出て行ってしまい、苦しくなった家計を助けるために、全く興味ない税務関係の仕事をすることに。もっとも仕事に身が入らなく、空き時間にノートに発表されることのない詩を書き綴る。
そんなスティーヴンだが、女子には人気で、何かとお節介に面倒を見てくれる。
男にとっては実力ないくせに自尊心が強い面倒な奴だが、女子には磨かれざる玉のようなものか。

スティーヴンは女子に言われてバンドのメンバー募集に応募するが、いざギタリストが来ると、恥ずかしくてダッシュで逃げてしまう。
一人でいるときや女子の前ではとてつもなく自信があるのだが、同年代の男子の前では小さくなってしまう。
若い頃は、あるあるだ。
裏付けのない自信は、実績のあるものには通用しないと、自分でもわかっているからだ。

それでもバンドを組んでライブハウスデビュー。いきなりの高評価で前途洋々かと思いきや、当てにしていたギタリストが単独で引き抜かれてしまう。
それで落ち込み、部屋から出ない引きこもり生活。自分を応援してくれた女子は、才能が認められてロンドンへ。一人、置き去りにされた感。そんなスティーヴンの家に、ある日、一人のギタリストが訪ねてくる。ジョニー・マーだ。


ここからスティーヴンの人生は変わっていくのだが、映画はここまで。ひたすら、悶々とした若者の数年間を見せつけられて、じれったい
それが映画の狙いなんだが、別にモリッシーでなくてもいい、どこにでもいるような青春の悶々を描いているが、切羽詰まった感がそれほど感じられない。
スティーヴンの場合は、何かと助けてくれる人(女子)が周りにいるので、単なるわがままにしか見えない。
これ、ルックスが悪くて、女子にも助けられなかったら、どうなのかなあと見てしまった。
ということで、映画の中でパッと解放されるのは、唯一のバンドの演奏シーン。ここだけはいい。
あとは悶々とした1時間半でした。★★


by mahaera | 2019-05-27 15:37 | 映画のはなし | Comments(0)

『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観に品川Tジョイへ

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上映している間にもう一度と、先日『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観に、わざわざ品川へ。
初回は普通の2D(THX)で。そして今回はIMAX 3Dで。
いつもはIMAXは新宿で見るのだが、品川が評判がいいのでと行く。久しぶりの品川。

スクリーンが大きいというより、スクリーンに近いという感じのTジョイ。
新宿のTOHOでは割と前の方でIMAXを見るのだが、ここだとやや後方でも大きく見られる。
画面は新宿よりいいが、音響は新しいTOHO新宿の方が良かったかな。
しかし通常料金で見たら2700円(3Dメガネ込み)。高いなあ。

映画は二度目の方が没入でき、3時間も長くは感じなかった。
最高のファンムービーであることはまちがいなく、来ているお客さんたちも、みな号泣。
初見の時は気になったことも、二度目はわかっているので気にならず。
脚本家の人たち、本当に苦労したのだろうなあ。
多分、下手な脚本家だと、セリフで説明しようとしたら、この倍の長さになってしまう。
すべてのキャラを登場させ、主要以外はあまり喋らせないけど、見せ場を作るのはパズルのよう。
あと、やっぱり泣かせるところで、邦画だと観客が泣く前に映画の中のキャラに先に泣かせてしまうでしょ。
あれ、ダメだよね。

今回、その点は過剰にウエットにならないように、出演者の号泣アップとかなく、叫ばせたりとかもなく、非常に上品な演出。
ということで、シリーズ物としては『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』以来、10年ぶりの大満足。あの時も、しばらくロスが続いた。
by mahaera | 2019-05-25 11:24 | 映画のはなし | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ  The Byrads その3/霧の5次元 Fifth Dimension(1966年)

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1966年3月14日にシングル「霧の8マイル Eight Miles High」発表。B面は「何故 Why」。ジーン・クラーク、ロジャー・マッギン、デビッド・クロスビーの共作で、ザ・バーズの代表作であり、最初のサイケデリックロックとも言われる作品。最高位14位。
シンプルだがかっこいいベースのイントロに続き、マッギンの12弦ギターによる短いけど超かっこいいイントロが始まる。これはよく言われているように、ジョン・コルトレーンのフレーズを意識したもので、ラヴィ・シャンカールにも通じることから、「ラーガロック」とも呼ばれた。まあ、正直コルトレーンの「インプレッションズ」の「India」のイントロとほとんどフレーズも同じ(笑)。
当時はビートルズで言えば、まだ「リボルバー」の前。イギリスでもまだサイケは始まっていなかった。しかしこの「霧の8マイル」からロックは次の次元に移っていき、ビートルズは「ペーパーバックライター/レイン」、ストーンズは「黒くぬれ!」に進んで行く。アルバム未収録になったB面の「Why」でもマッギンのコルトレーンというかインド風のソロが聴ける。


さて、シングル発表後、メインのソングライターであり、リードボーカルでもあるジーン・クラークがバンドを脱退してしまう事件が起きる。表向きは、飛行機恐怖症でツアーに出られなくなったという理由だが、メンバー間で軋轢が生じていたようだ。特にバーズのオリジナル曲の多くをジーン・クラークが書いていたので、印税所得による収入のメンバー間格差が問題になっていたようだ。

アルバムの発売は1966年6月18日。6月13日にはアルバムからの2枚目となるシングルカットでマッギン単独作の「霧の5次元 5D(Fifth Dimension)」が発売。3拍子のフォークロック曲だが、サウンドはすでにサイケに入りつつある。今までになくぶっといクリス・ヒルマンのベースや、隠し味のヴァンダイク・パークスのキーボードもいい味を出している。この「霧の5次元」はアルバムのタイトルにもなり、またA面の1曲目に収録された。

2曲目はトラディショナルの「ワイルド・マウンテン・タイム Wild Mountain Thyme」。コーラスワークとストリングスが印象的。
3曲目はマッギン作の「ミスター・スペースマン Mr. Spaceman」。9月6日にアルバムからの第3弾シングルにもなる。これはサイケというより、のちのカントリーロックに通じるサウンドで、これまたパーズの先進性を感じる。
ちなみにシングルのB面はクロスビー作の「ホワッツ・ハプニング What's Happening?!?!」。Aメロしかないシンプルな曲だが、合間に入るマッギンのサイケなソロがかっこいい。

アルバム4曲目はマッギンとクロスビー共作のロックナンバー「アイ・シー・ユー I See You」。マッギンのソロが、ほとんど「霧の8マイル」と同じなのがご愛敬(笑)。
5曲目は上記の「What's Happening?!?!」。
6曲目の「死んだ少女 I Come and Stand at Every Door」はトルコの詩人Nâzım Hikmetの歌詞によるもの。この詩の方の日本語タイトルは「広島で死んだ少女」。原爆で7歳で死んだ少女が平和を訴えるという反戦詩だ。

B面に移り1曲目は、シングル「霧の8マイル」が収められた。
2曲目はジミヘンでもおなじみのビリー・ロバーツ作「ヘイ・ジョー」のカバー。当時、この曲は流行っていたようで多くのミュージシャンがカバーしている。ここではクロスビーのリードボーカルによるシンプルなアレンジだが、せわしないギターがいい感じ。
3曲目はメンバー4人の共作による「キャプテン・ソウル Captain Soul」。まあ、3コードのインストブルースジャムで、そんなに面白くない(笑)。ハーモニカを吹いているのは脱退したジーン・クラーク。
4曲「ジョン・ライリー John Riley」はトラッドのアレンジ。ストリングがタビングされている。
B面最後の5曲目「ジェット・ソング 2-4-2 Fox Trot (The Lear Jet Song)」はマッギン作の、ワンフレーズだけ繰り返す曲だが、効果音がコラージュされている。宇宙船のスペース音が、掃除機の音にしか聞こえない。

このアルバムはビートルズで言えば『リボルバー』のような感じで、フォークロックからサイケに入る過渡期のアルバムだろう。メンバーで言えばソングライターのシーン・クラークが抜け、その分、マッギンとクロスビーの曲が増えてきた。
サウンドで言えば、バーズサウンドの顔だったマッギンの12弦ギターのアルペジオがなくなり、コルトレーン風のリードを多用。あとはベースのクリス・ヒルマンが存在感を増してきたことだろうか。
1966年の代表的なロックアルバムはビートルズの『リボルバー』、ストーンズの『アフターマス』、ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』、ビーチボーイズの『ペットサウンズ』などがある。


by mahaera | 2019-05-22 10:49 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

最新映画レビュー『マルリナの明日』5/18より公開中


インドネシアの僻地。荒野の一軒家に一人暮らすマルリナのもとに強盗団がやってくる。
強盗団の首領は、マルリナから金と家畜だけでなく、体も奪うと告げる。
その夜、マルリナは料理に毒を入れ、男たちを殺害。
首領の首をナタで切り落とす。
翌日、首を持って村の警察に向かうマルリナ。
しかし警察は動こうとしない。一方、強盗団の残党が首領の仇を討とうと、マルリナを追っていた。

日本では映画祭ぐらいでしか公開されない、珍しいインドネシア映画。それも都会を舞台にしたラブコメやアクションではなく、人も少ない辺境の島でのウエスタン風アクションだ。
ストーリーは、一人ぐらしの未亡人マルリナが強盗団に反撃するが、そのために命を狙われるというシンプルなもの。
それに臨月を控えた友人のノヴィが絡む。
出てくる人物はごくわずか。とにかく一つの画面にたくさん人が出てくる町や村のシーンはないので、どの程度の規模の村なのかわからないがわからないが、バスが走っているので、どこかには通じているのだろう。

丘上に立つ一軒家にひとり住むマルリナ。
映画が始まって部屋の中が映し出されると、部屋の中に一体のミイラ化した死体が座っているのに驚く。
これはマルリナが殺したわけではなく、彼女の夫。
この映画の舞台のスンバ島では人が死ぬとすぐに埋めず、お金がたまって盛大な葬式ができるまで、死者をミイラ化して残しておくという風習がある。
つまりその間、何年も死者は生者と一緒に暮らすことがあるのだそうだ。
また、家の外にはマルリナの子供の墓がある。
生者と死者の距離が近いのだ。

インドネシアというと緑豊かな熱帯雨林をイメージすると思う。確かに国土の多くはそうだが、舞台となるスンバ島エリアは、オーストラリアからの乾燥した風が吹くため、大地は土が露出したサバンナ気候。
世界で一番大きなトカゲが棲むコモド島などもこの海域にあるため行ったことがあるが、東南アジア的な風景からはほど遠い。本作がどこかウエスタン風なのも、こうした風景がもたらすものが多い。今でもスンバ島では強盗団が出没するという。

映画に出てくる強盗団はウエスタンと違って、そこらにいそうな冴えない男たち。
首領でさえ小柄。インドネシアやタイ、インドもそうだが、熱帯ではヤクザものも割と普通の格好をしているので、ぱっと見、わからない。

また、この映画は“強い女”の映画でもある。
強い女と言っても、アメリカのアクション映画のように、殴ったり撃ったりと肉体的に戦うわけではない。
じっと耐え忍んで抵抗せず、相手が油断した時に反撃するのだ。強盗のために食事を作らされると(定番のチキンスープ飯である「ソト・アヤム」)、その中に毒を入れて毒殺。犯されそうになると、ナタで首を切断(いつもチキンの首を切断しているので慣れている)。

中盤から物語に絡んでくるもう一人の女性、ノヴィは臨月だが夫から虐待されている。
夫はノヴィの浮気を疑い、去っていく。
物語のクライマックス、ノヴィの出産をマルリナが手伝う。
男どもの死と新たな命の誕生。
この映画の中では、男どもは全く役に立たないか、悪者かどちらかだ。目の前にある困難を克服するには、男に頼るのではなく、女同士の協力が大事なのだ。

勧善懲悪でもなく、派手なアクションシーンがあるわけではない。語り口が滑らかでもない。
しかし、この土地ならではの不思議な魅力があるのが、本作の魅力。画面に映し出された風景が、作り手たちの力量を超えて私たちに訴えてくる。そんな作品だ。
★★★


by mahaera | 2019-05-19 11:22 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ガルヴェストン』 アメリカのノワール小説をフランス人女優が監督。独特の味わいを残す小品


解説を読むまで知らなかったのだが、「TRUE DETECTIVE」と評判のいいTVシリーズのクリエイターであるニック・ピゾラット。
その彼による小説『逃亡のガルヴェストン』も好評で(アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補にもなった)、本作はその映画化だ。
ガルヴェストンも知らなかったのが、実際にあるテキサス州ヒューストン郊外にある海沿いの町。主人公の思い出の町として本作に登場している。

1988年のニューオーリンズ。組織で働くロイ(ベン・フォスター)は、ボスの勧めで行った病院でレントゲンを見せられ、自分の命が短いとさとる。ボスの命で行った仕事先で、ロイは待ち伏せを食らうが反撃。女絡みのトラブルによる、ボスの裏切りだった。ロイはそこで囚われていた若い女性(エル・ファニング)を連れて逃げだす。彼女の名はロッキー。家出をして、金に困って娼婦をしていたという。ロッキーを見捨てることができないロイは、彼女と彼女の小さな妹を連れ、逃避行を続けることに。。

宣伝費もあまりかけられず、ひっそり公開されることになるノワールの小品。
組織に裏切られ、死期の近づいた犯罪者が、最後に行きずりの女と逃避行をする
主人公は癖のある顔をして悪役(『3時10分、決断のとき』など)が多いベン・フォスターなので、粗雑で暴力的、なおかつ意志が弱い男にはぴったり。
その彼が愛を注ぐのが、現在絶好調の女優エル・ファニング。美人顏ではないが、とにかく華があるというか、本作でも彼女は輝いている。

犯罪映画だが、ちよっとテイストが違うのは、監督がフランスの女優メラニー・ロラン(『イングロリアス・バスターズ』のユダヤ人女性役)だからか。アクションよりも、二人のさりげない情感を描いている。70年代のフランスのノワールもののようでもあるが、そうした作品を見慣れていない人には、かったるく感じるかもしない。
また、スカッとしない終わり方も、70年代的だが、それがちょっと味のある作品に本作を仕上げている。
★★★

by mahaera | 2019-05-18 11:13 | 映画のはなし | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ The Byrads その2 ターン・ターン・ターン Turn! Turn! Turn!(1965年12月)

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アルバムに先行し、10月1日に先行シングル発売されたタイトルトラックの「ターン・ターン・ターン」が、12月4日に全米1位。B面はジーン・クラーク作の「シー・ドント・ケア」

「ターン・ターン・ターン」はフォークシンガーのピート・シーガーの1950年代作のカバー。旧約聖書が元なので、歌詞は名言のオンパレードだ。

レコード会社は、ディランの「イッツ・オール・オーバー・ナウ・ベイビー・ブルー」のカバーをシングルに望んだが、バンドはディランではなく、シーガー作を選んだ(ディランの方は現在はボーナストラックで聴ける)。


アルバムは11月6日発売。ディランのカバーは2曲。その他のカバー3曲と、ジーン・クラークの3曲、マッギンの2曲(共作含む)、タイトルトラックを加えた全11曲が含まれている。オリジナルの5人編成最後のアルバムでもある。

ベストトラックは、やはりタイトルトラック「ターン・ターン・ターン」。12弦ギターのサウンドもコーラスワークもバッチリ。初期のベスト曲の一つだ。フォークから一歩前進してロック的なリズムだが、これはこのアルバムからメンバーが録音で楽器演奏をするようになったこともある(前作はスタジオミュージシャンの演奏が大半だった)。「涙の乗車券」的な12弦ギターのアルペジオも印象的だ。

2曲目はマッギン作の「It Won't Be Wrong」で、このアルバムから徐々にマッギンの曲作りが見られるようになってきた。この曲はシングルのB面にもなったが、そのA面曲がこのアルバム3曲目ジーン・クラークによる「Set You Free This Time」で、Aメロはコーラスなしなのでジーンの声質がわかる。ロックよりもポップス的な明瞭な声だ。この2曲は翌1966年1月10日にシングルとして発売。最高位79位と、シングルとしてはパッとしない出来に。なぜ、地味なこの曲をシングルに選んだのか謎。なので一ヶ月後の2月にはAB面を逆にして再発。「It Won't Be Wrong」が63位に。


4曲目はディラン作の「Lay Down Your Weary Tune」だが、ディランのバージョンは1985年までレコード未発表。マッギンのリードボーカルでいい感じだ。
5曲目はフォークの伝統歌「He Was a Friend of Mine」で、これもマッギンのボーカル。ドラがなくタンバリンがアクセントを入れるだけのフォーキーなムード。


B面に入り、1曲目はバスドラが軽快な8ビートを打つロック曲「The World Turns All Around Her」。ジーン・クラーク曲で、フォークロックと言うより、ロックに近い。
2曲目はエラ・フィッツェラルド、ジョーン・バエズ、ウィリー・ネルソンなど多くの人々がカバーしている1955年発表のスタンダード曲「Satisfied Mind」。リズムは三拍子で、ドラムの代わりにタンバリンが静かにアクセントを入れるだけ。
3曲目はジーン・クラークのやはり3拍子曲「If You're Gone」。ペダルで鳴り続ける低音のバグパイフ風の音が印象的。
マイナーな曲が続いた後の4曲目は、軽快で明るいディラン作の「時代は変わる」。リードボーカルはマッギン。オリジナルは3拍子だったが、ここでは4拍子に変えている。
5曲目はマッギンによる「Wait And See」。最後の6曲目がフォスター作曲による「おお、スザンナ」。西部劇でもおなじみの曲のカバーだ。

このアルバムにより、すっかりフォークロックの代表的なバンドとなったザ・バーズだが、この後、バンドの顔でソングライターもあるジーン・クラークの脱退を迎えることになる。


by mahaera | 2019-05-16 14:38 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

名盤レビュー/ザ・バーズ The Byrads その1 ミスター・タンブリン・マン Mr. Tambourine Man(1965年6月)

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不定期で気分転換に書いている名盤レビュー。今回からはしばらくは、ザ・バーズ  The Byradsのアルバムが続く予定です。ビートルズ、ビーチボーイズ、ストーンズと並ぶロックバンドですが、日本では知名度は今ひとつ。まずはデューアルバムから。


●ミスター・タンブリン・マン

 Mr. Tambourine Man(1965年6月)

アメリカンロックバンド、バーズの記念すべきデビュー作。アルバムの1曲めであり、シングルヒットしたディラン作のカバー「ミスター・タンブリン・マン」をタイトルにしたアルバム。
1965年4月12日に発売されたシングルは、英米でNo.1ヒット。B面は「I Knew I'd Want You」。

ザ・バーズの結成のきっかけは、デビュー前年の1964年にビートルズの映画『ハード・デイズ・ナイト』を観て衝撃を受けたフォーク系ギタリストのロジャー・マッギンが、アコギとバンジョーを売ってリッケンの12弦ギターに持ち替え、ロックバンドを結成したことに始まる。
最初のメンバーは、ロサンゼルスのトゥルバドールで出会ったジーン・クラークとデヴッド・クロスビー
3人ともボーカルだったので、3声コーラスが売り。
そこにリズムセクションとして、ベースのクリス・ヒルマン(加入まではマンドリン奏者だった)、ドラムにマイケル・クラーク(コンガ奏者をしていた)が加入。
二人ともそれまでベースもドラムも経験がなかった。
バンドはジェット・セットJet Setと名乗り、1964年にエレクトラからデビューしたが、売れなかった。
やがて年末にコロンビアと再契約が決まり、名前をザ・バーズに変更する。
The Birdsを一文字変えて、The Byrdsにしたのは、ビートルズがヒントだという。

「ミスター・タンブリン・マン」のシングルの録音は1964年1月20日。楽器を演奏しているのは12弦ギターのロジャー・マッギンのみで、他の楽器は、グレン・キャンベル、リオン・ラッセル、ラリー・ネクテル、ハル・ブレインといった60年アメリカンロックを作ったスタジオミュージシャンたち。
アルバムもスタジオミュージシャンが演奏している。
ディランのバージョンは一ヶ月前に発売されたばかりだったが、ライブで披露していた。マッギンは発売前にデモテープを手に入れ、リズムを変更。
もともとは4番まである長い曲だが、バーズのバージョンは、サビ+2番+サビといいとこ取り
イントロの格好よさと、ハモりたくなるコーラスワークのアレンジで、大ヒット。

意外なことにマッギンは当初、ディランのファンではなく、マネジャーから言われてディランのカバーをすることにしたという。インタビューでは、グリニッジビレッジでマッギンが歌っていた頃、ディランはすでに女の子に囲まれるスターで、自分には誰もファンがおらず、嫌っていたという(笑)。

セカンドシングルは、同じくディランのカバー「オール・アイ・リアリー・ウォント」が6月15日に発売(録音は3月)。
最高位40位とはヒットには至らなかったが、ディランは自分の曲で人々が踊っているのを見て驚いたという。
やはり12弦ギターが印象的な仕上がりだ。
B面はバーズの中でも人気が高い、「すっきりしたぜ I'll Feel a Whole Lot Better」。ポップな名曲だ。途中のマッギンのソロもいい。作詞作曲とリードボーカルはジーン・クラーク。トム・ペティのカバーで僕は知った。ビートルズのアルバムに入ってそうな極上のポップソング。

アルバムは同年6月24日に発売。全12曲でディランのカバーは、他に「スパニッシュ・ハーレム・インシデント」「自由の鐘」を含む4曲。ピート・シガーなどのカバーが3曲、ジーン・クラークが5曲(共作含む)という割合だった。

「ミスター・タンブリン・マン」のサウンドは「フォーク・ロック」というジャンルを生み出すほど衝撃を与えた。
ちなみに翌週のチャート1位はビートルズの「涙の乗車券」だ。
偶然だがあれも12弦ギターのアルペジオで、フォークロック的だ。そのため似たようなサウンドのレコードがしばらく次々と作れ出されていくことになる。

有名なのはサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」だ。こちらのオリジナルはアコギとボーカルだけのシンプルなものだがヒットせず、失意のサイモンが渡英中に、ディランやバーズと同じコロンビアレコーズのプロデューサー(トム・ウィルソン)が本人の断りなく、翌年の1965年にバンド演奏をオーバーダブ。しかしこのバージョンが大ヒットし、サイモン&ガーファンクルの解散が免れた。

ビートルズでさえ、バーズの影響を受けたという。
このアルバムに入っている「リムニーのベル」のイントロは、『ラバーソウル』の「If I Needed Someone」とかなり似ているし、途中のギターソロの部分は「Nowhere Man」のソロ部分にも似ている。ハリスンがシタールを始めたきっかけのうちに、バーズのクロスビーと話していたら、彼がシタールやシャンカールを知っていることもあったとインタビューで述べているから、そうなのだろう。つまり「ハード・デイズ・ナイト」がバーズの結成のきっかけとなり、「ラバーソウル」はそのバーズから影響を受けているということだ。

バーズの成功を受けて、ディランもエレクトリック化を目指すが、それは翌年のこと。このころはまだギター一本のフォークだった。
バーズは一躍人気バンドになり、テレビにもよく出るようになる。そしてよりサウンドを煮詰めた次のアルバムの製作へと向かう。(続く)


by mahaera | 2019-05-14 10:59 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)