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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『パッドマン 5億人の女性を救った男』インドで大ヒットした実話をベースにした感動作


2018年/インド
監督:R. パールキ
出演:アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー、アミターブ・バッチャン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開:127日よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開中

■ストーリー

北インドの小さな町マヘシュワール。
母親と2人の妹、そして結婚したばかりの愛する妻と暮しているラクシュミは、ある日、妻が生理中に清潔とは言えない古布を使っているのを見て驚く。
妻のためにと薬局で生理用ナプキンを買うラクシュミだが、高価な品を自分ひとりで使うわけにはいかないと妻に断られてしまう。
そこでラクシュミは生理用ナプキンを手作りするが、うまくいかない。
女子大でアンケート調査をしようとしたり、自分で試着したりと試行錯誤するが、そんなラクシュミの行為は田舎町で波紋を呼び、恥じた妻は実家に帰ってしまう。
失意の中、あきらめきれないラクシュミは都会に出て研究を続け、ついに低コストでできるナプキン製作の試作機を開発。
デリーからやってきた女性パリーという協力者を得て、発明コンペにその試作機を出品する。

■レビュー

仕事柄インドには毎年のように行くが、
私が男性なのでインド人女性が置かれている立場はわからない。
正直、本作でも初めて知ることが多かった。
映画で描かれるのは今から十数年前のインド。
インドでは当時(今も?)、高い生理用ナプキンを買うお金がなく、不衛生な古布を洗って使い、そこから感染症になる女性も少なくなかったという。
また、生理中の女性は「穢れ」とみなされ、生理期間中は家の中で眠ることも許されないという習慣が映画の中に出てくる(ベランダのイスで寝る)。
これは保守的な農村部だからなのかわからないが、
それも含め「生理」を話題にすることも避ける姿は、
やはり「穢れ」とする習慣があるからだろう。
そんな中で、ひとり大のオッサンが手作りナプキンに奔走する姿は、田舎町でなくとも “ヘンタイ”にしか見えない
まあ、映画では誤解を招くように誇張しているというのもあるが、
女子大の入り口で女子大生に手作りナプキンを配ってアンケートを取ろうとしたり、
初潮を迎えた近所の女の子のところに夜こっそり行ってナプキンを手渡ししたり、
テストのため動物の血で濡らしたナプキンを自分で装着して自転車に乗ったり(わざわざ白いズボンで)と、その後の“大惨事”を予想してハラハラしてしまう。
いや、周りから見たら“変質者”でしょ(笑)。

また、いたるところでインド人の宗教観が問題となるのも、日本人の意表をつく。
「聖なるナルマダ川を動物の血で穢した」と。そこが問題か。

そんなラクシュミの協力者になるのが、都会(デリー)の裕福なシク教徒の娘だ。
教育をきちんと受けて進歩的な考えというところで、
“恥”の文化で育った田舎育ちのラクシュミの妻と対照的に描かれている。
試行錯誤を続けながら、ラクシュミがあきらめずに続けるのは、妻への愛だけでなく(妻には実家に帰られしまうのだから)、ラクシュミの物作りの職人気質に火がついたからだろう。

ラスト近く、ニューヨークの国連に招かれたラクシュミのスピーチは感動的
つたない英語で、わかりやすく自分の考えを述べるが、
素朴でストレートな主張だからこそ、人々に響くのだ。
そしてこの映画が、インドの人々に向けた志の高い啓蒙映画でもあることに気づくだろう。
★★★☆


■映画の背景

・主人公のモデルとなったアルナーチャラム・ムルガンダ氏は、南インドのコインバートル出身。映画ではデリーの発明コンテストとなっているが、実際の場所はチェンナイだった。

・映画では、主人公が暮らしているのはマディヤ・プラデーシュ州のインドール近郊のマヘシュワールに変更されている。マヘシュワールは聖なる川ナルマダ川に面した田舎町で、映画でもフォートに面したガートが重要な場所として何度も登場する。また、ここはインドールを都としたホールカル家が、18世紀の女性当主アヒリヤー・バーイーの治世の期間、遷都されていた町でもある。映画にはそのフォート前が出てくる。

・マヘシュワールから都会に出た主人公が行くのは、おそらくインドール。デリーから公演に来たパリーが主人公と出会うのもおそらくここ。しかし映画では、パリーの宿泊ホテルはマヘシュワールに近いマンドゥのマルワ・リゾートとなっている(乗っているタクシーにも名前が書かれている)
(旅行人のWEBサイト「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました)

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# by mahaera | 2018-12-07 02:43 | 映画のはなし | Comments(0)

2018箱根ポーラ美術館の「ルドン展」に行く

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週末に箱根のポーラ美術館のルドン展
最終日12.2に行ってくる。
初めて行った美術館だが、遠い、遠いよ〜。
箱根湯本からの交通連絡が悪かったので、
すぐ来る違う路線のバスに乗り、
そこから徒歩20分というナビにしたがったら、
最後の20分はひたすら急坂を登り、着く頃には疲労。。

美術館はけっこう立派なもので、
最終日とあってなかなかの人出。


昔はルドンとルオーをよく間違えていたが、
今では「目玉の人」とちゃんとルドンがわかる。
一番好きな絵は一つ目巨人の「キュクロプス」だが、
今回はこの作品展示はない。
「キュクロプス」は、僕が子供の頃によくテレビでやっていたハリー・ハウゼンの「シンドバッド7回目の航海」の一つ目巨人サイクロプスそのもので、さらにそれが無表情に見えることからかなりの怖さの絵だったな。


あとは黒一色の版画の目玉
こちらは美術展では水木しげるの目玉おやじと並べていたが、雰囲気は『眼=気球』は鬼太郎の悪役バックベアードのほうが近い。
それについて触れておらず残念。
あと、顔からクモの足が出ているのは、
『遊星からの物体X』に影響与えたかなと。


ルドンの印象は、
「木炭画はいいけれど油彩や色彩を伴うものはイマイチ」
同時期の一流の印象派画家に比べると、
ちょっと落ちるというか。

関連作品として並べられているモネの「睡蓮」「ルーアン大聖堂」とか、点描画のスーラのように、自分のスタイルがあまりないというか。

借りてきたルドンの作品だけでは足りないので、
収蔵している他の印象派画家の作品も並べたり、
ルドンの影響ということで上記水木しげるや漫画「寄生獣」、そして日本の現代画家の作品も並べられ、じっくり見ると時間もかかり充実していた。

常設のガラス工芸品もきれいだったが、

増田セバスチャンの「モネの小宇宙」というKAWAIIアーティストの立体アートコーナーは、雑に感じた。このジャンルなら、もうちっと頑張っている人いるでしょ。

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あとは中庭が紅葉していてきれいだったなな。

天気が良ければよかった。。

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# by mahaera | 2018-12-05 12:54 | 日常のはなし | Comments(0)

「子供のための世界史」関連本紹介7(古代オリエント)その4「古代エジプト文明 」「エジプト神イシスとオシリスの伝説について」

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■古代エジプト文明―歴代王国3000年を旅する (VISUAL BOOK)  

PHPエディターズグループ 1999年 レンツォ ロッシ 著
豊富なイラストによるビジュアルブックで、古代エジプトの人々の生活を解説している。
王朝史やピラミッド建設などはともかく、文字だけだとわかりにくい一般人の生活ぶりや農作業の様子などは、こうしたビジュアルで見せてくれるとわかりやすい。
一方、それに添えられた文の方は、翻訳のせいか流れがわかりにくく、頭に入ってこないのが難。
ただし、通史本を補完するという意味で、良書だと思う。

★★★★


■エジプト神イシスとオシリスの伝説について (岩波文庫) 文庫 –

 1996年 プルタルコス 著 岩波書店
有名なイシスとオシリスの神話についてまとめた本かと思って読んだら、あてが外れる。
筆者のプルタコスは、エジプトの神々はギリシャの神々と同じという先入観をもっており、その上で書いているのでしっくり来ない。
プルタコスがエジプト神話を聞いて、これはギリシャの〇〇のこと、というように書いているのだ。
そのため、エジプト神話の神々の関係や流れがわかりにくいし、また翻訳の注釈もどうしたいのか目的を見失っているようにも見える。
ということで、エジプト神話をざっくりと知りたかったら、本書よりB級映画の『キング・オブ・エジプト』を観た方が2時間で理解できるかも。


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# by mahaera | 2018-12-03 19:01 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

最新映画レビュー『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』もしこんな出来事が起きていたらと、ほっこりするコメディら


監督:エルネスト・ダラナス・セラーノ
出演:トマス・カオ、ヘクター・ノア、ロン・パールマン
配給:アルバトロス・フィルム
公開:121日より新宿武蔵野館ほかにて公開

■ストーリー
1991年のキューバでは、欧州での共産主義陣営の崩壊を受け、経済が深刻な打撃を受けていた。
また若者たちを中心に、価値観も変わろうとしていた。
そんな中、モスクワ大学に留学し、大学でマルクス主義を教えているセルジオも
社会の変容に戸惑っていた。
セルジオはアマチュア無線が趣味で、彼の苦境を知ったニューヨーク在住の
交信仲間のピーターかり最新式の無線キットが送られてくる。
しかしそれは当局にセルジオが目をつけられることでもあった。
ある日、セルジオはソ連の宇宙ステーション「ミール」の宇宙飛行士セルゲイと交信する。
やがて2人はお互いの家族のことや将来への心配を語り合える親友になっていった。
12月、ソ連は消滅しロシア連邦となる。
地球に帰りたいセルゲイのために、セルジオはある計画を練るのだが。。

■レビュー
最初にこれは実話ではなく、「もしあの出来事の舞台裏でこんなことがあったら」
という想像を膨らませたフィクションであることを知らせておこう。
僕も映画を見るまでは実話かなと勘違いしてた。
若い方はご存知ないと思うが、1989年に長年続いていた東西両陣営の
冷戦構造が崩壊したのは、あっけないほどの速さだった。
超大国ソ連も一気に崩壊し、たちまち貧乏国になってしまった。
そんな国家の混乱の中でも宇宙飛行計画は続いており、宇宙ステーションのミールに
ひとり取り残されたセルゲイは、「最後のソ連国民」と呼ばれていたという。

宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフは実在の人物だ。
10年に渡って宇宙滞在時間の最長記録を保持しており、
映画のモデルとなったのは1991519日からの宇宙滞在で、滞在が延長される中、
1225日にソ連から離脱してロシア連邦が成立する。
セルゲイが帰還したのは翌年の325日のことだった。

映画は全体的にはコメディタッチで、基本的には出てくる人物は善人か、
悪役となる権力者側も“間抜け”に描かれ、陰惨な感じはない。
もちろんその中にも、キューバ国民の将来への不安やその後に起こること(ボート難民など)が
顔をのぞかせてはいるが、国家が頼りにならないとなると、
人々は違法ながらラム酒を作ったり葉巻を巻いたりと、たくましく生きる姿に描かれている。

気楽に観られる映画で、後味もいいが、
もう少しひねりが欲しかったかな。無い物ねだりだが。
★★★
(旅行人のウエブサイト「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました)

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# by mahaera | 2018-12-02 09:12 | 映画のはなし | Comments(0)

「子供のための世界史」関連本紹介6(古代オリエント)その3「人類の起原と古代オリエント」「世界一面白い 古代エジプトの謎」

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■人類の起原と古代オリエント (世界の歴史)  1998年
 中央公論社
昔から続く、世界史全集の第1巻。
図書館には常備されている定番だ。
人類の誕生、先史時代、農耕と牧畜、シュメールと古代メソポタミア、古代エジプトまでが解説されている。
旧版に比べると図版やカラー写真が飛躍的に増え、見ていて楽しい本になっている。
かといって読みやすいかというとそうでもなく、多くの専門家がバラバラに書いたものをまとめたという印象が少なくない。
つまり通して読んで世界史の流れがわかるかというと、よくわからないのだ。
専門家の章ごとにはいいところもあるのだけれど。
高校生の副読本としては、ダメだろう。
文庫版も出ているが、図書館で借りてつまんで読むのがいい。
★★


■世界一面白い 古代エジプトの謎 【ピラミッド/太陽の船篇】
 2010年 中経文庫 吉村作治 著

学会とか専門家からは、いろいろまちがっていると批判もある吉村作治だが、古代エジプトの魅力を誰にもわかりやすく普及させた功績は大きい。
この人の魅力は、とにかく「素人にもわかりやすく」だ。
この本は先史時代から古王国時代までのエジプトの歴史本だが、一般の人が興味を持つように(多少ベタでも)工夫されている。
通俗的かもしれないがそれは重要だ。
意外に先王朝時代までも詳しく解説されているのは助かった。
読み応えがあるのは、本人が一番押している「太陽の船」のくだりだろう。
文庫本は中古で投げ売りされているので手に入れやすい。
★★★★


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# by mahaera | 2018-12-01 12:05 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

「子供のための世界史」関連本紹介(古代オリエント)その2「四大文明 (メソポタミア) 」「家畜の文化 」

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■四大文明 (メソポタミア) (NHKスペシャル)
日本放送出版協会 (2000/07)
松本 健 (編集), NHKスペシャル「四大文明」プロジェクト (編集)

当時放映されていたNHKスペシャルの書籍版だが、

特に番組と内容は連動してはいないようだ。
取材班のルポ(苦労話)などのほかにシュメールからアッカド、

アッシリアに至るまでのメソポタミア文明の概説がある。

が、面白いのは、衣服や食べ物などについてのコラムのほうだ。枝の部分の読み物が面白い。
また豊富なオリジナル写真や画像が使えるのは、予算がふんだんにあるNHK出版らしく、これは贅沢。
内容的には古くなってしまったが、中古で投げ売られているので手に入りやすいはず。

★★★


■ヒトと動物の関係学〈第2巻〉家畜の文化
秋篠宮 文仁 (著), 林 良博 (著)  岩波書店 (2009/2/26)
世界史の中でいかに動物が家畜化されていったかを知りたくて読んだが、必要なところは最初の数十ページ。
幾つかの章ごとに専門家が自分の専門分野について述べている専門書で、面白くない。
全体的なことより、それぞれの地方の民族と特殊な家畜の関わりが多く、僕の目的とはズレた。残念。


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# by mahaera | 2018-11-30 11:33 | 子供に教える世界史・古代編 | Comments(0)

最新映画レビュー『いろとりどりの親子』 “ふつう”とは違う子供を持つ親とその子の関係を描くドキュメンタリー



2018年/アメリカ

監督:レイチェル・ドレッツィン
出演:アンドリュー・ソロモン
配給:ロングライド
公開:11月17日 
劇場情報:新宿武蔵野館

もしあなたの子供が、世間一般の“ふつう”の子供でなかったとき、誰かが「交換してくれる」といったら交換しますか? 
たとえどんなに障害があっても、「取り替えたい」と思う人はいないと思うが、他の家族にはない苦労はあるはず。
本作は、そんな「親とは違う子供」がいる
家族6組を描いたドキュメンタリーだ。

本作には原作がある。
自分がゲイであることで親に受け入れてもらえなかった著者が、
同じような親子を探してインタビューを試みた本だ。
この本は読んでいないので映画との関連性がどの程度なのかはわからないが、著者もこのドキュメンタリーに登場する親子のうちの一組として登場する。
他にも登場するのは、ダウン症、自閉症、低身長症、LGBT、
そして罪を犯した子などを持つ親子だ。
Yahoo掲示板もそうだが、僕の周りの人たちも、障害を持っている子がいる家庭を見ると「かわいそう」と即座に反応する人もいる。
そして自分の家の子供は“まとも”でよかったとわざわざいういう。
しかし障害があろうがなかろうが、親子は他の人間では取り替えが効かない「特別な関係」だ。
世話をするのに疲れることもあるだろうが、
だからと言って他人の子供をもっと愛せるかというと、そうではないだろう。

映画の中でも語られるように、自分を責める親もいる。
妊娠していた時に飲んだアルコールがいけないのだろうか、発達に障害があるような過激な運動をしたかもしれない、、。
解答はないが、何に理由を求めずにはいられない。また、子供も自分を恥じている親の態度に敏感に反応する。

印象に残るのが低身長症の大会だ。ア
メリカ全土から低身長症の人たちだけが集まるミーティングで、
出席した人が今までのような疎外感を味合わずに済むシーン。
日本では今ではあまり見かけなくなったような気がするが、
僕が子供の頃はふつうにテレビに出ていたっけ。
今、低身長症の人をテレビや映画に出すと「差別」とされるが、それは何だか当たり障りなく、彼らを隠そうとしているだけにしか感じない。

本作では苦労話もあれば、あっけらかんとした関係の親子もあるように描かれる。
個人的にはいささか「美談」としてまとめているような感じもあり、もっと掘り下げ感もほしかったかも。
★★☆

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# by mahaera | 2018-11-29 16:40 | 映画のはなし | Comments(0)