世界史を教え始めて1年以上になるが、ようやく帝国主義時代に
なって日本が積極的に“世界史”に顔を出してくるようになる。
それまでも大航海時代とか、日宋貿易とか、ちょこちょことは出てきたが、あくまで周辺のトピックス扱いだ。
しかしここから、日本が積極的に大陸進出してくるので、諸外国とも関わってくる。
息子はすでに中学で日本史を習っているから、
アウトラインはわかっているはずだが、世界史の中でのこの頃の
日本はあまり誇らしいことはしていないので、
しょぼい感じを受けているようだ。
1868年、明治政府が成立。
当時は列強が武力でアジア諸国に権益を広げようとしている時代だから、新政府も急いで富国強兵しなければならなかった。
西洋式の軍隊を作り工業を発展させ、初頭教育も行わなければと。
まあ、その時のお手本はイギリスなどの西欧諸国だから、
当然その帝国主義的なシステムも研究していた。
紡績工業や鉄鋼業を発展させ、どこか海外に売って外貨を稼ぐ。
そのお金で軍備を増強。
あとは資源を他国から奪い、また製品を他国へ売りつける。
その方法は日本よりは遅れている国にしか通用しないから、
隣の
朝鮮が手っ取り早いと思うのも当時としては当然だろう。
当時の朝鮮は江戸期の日本同様に鎖国していた(清は別)ので、開国には応じない。
それならペリー方式でと思ったのか、軍艦を朝鮮近海に派遣して挑発。江戸幕府と違うのは、そこで衝突が起きてしまったこと。
これが
1875年の「江華島事件」。
それを受けて翌年1876年、日本にしては初の不平等条約を他国に結ばせることに成功する。
これが
「日朝修好条規」。
日本にしてみれば、
「やったー、これでオレより下ができたぞ」って感じなのかな。
工業国に転身しようとしていた日本は、朝鮮から米などの穀類を積極的に輸入し始める。
その後、日本の進出を警戒する清と、朝鮮をめぐってさまざまな勢力争いが起きるが、ここでは省略。
ただ朝鮮の宮廷も、日本につくか清につくかで内部分裂していた。
日本もその間、西南戦争から自由民権運動、国会の開設なんだかんだで忙しい。
ともあれ、1890年に帝国議会もでできて、近代国家らしくなった日本は
1894年に、新国家としては初めての対外戦争を起こす。
これが
日清戦争だ。
きっかけは朝鮮で起きた農民反乱。
それを抑えるために朝鮮政府は清に助けを求めるが、
日本も勝手に出兵してしまう。
日本と清が進出してきたことを恐れた政府と反乱軍は停戦するが、
日本は「徹底的に反乱軍を鎮圧しよう」と清に持ちかける。
朝鮮のいっそうの混乱を望んでいたのだ。
それを清が
「手打ちになったんだからいいんでしょう」と拒否。
じゃあ、俺が事件を起こしてやるとばかりに、
日本軍が清を奇襲し、日清戦争を始めてしまう。
いちおう日本は開戦の理由として、「朝鮮の独立を守るため」と明言しているのだが、その後の歴史を見ればウソなのは
サルか小学生でもわかる。
「日清戦争」だが、戦争の舞台になったのはほぼ朝鮮半島のみ。
日本や清本国は戦争の舞台になっていないのがミソ。
だから、このネーミングには子供の頃は違和感があったよ。
開戦してから8ヶ月で勝負は決まり、日本の勝利。
この朝鮮の進出と日清戦争、いまの「日本えらかった!派」の人たちは、
「南下してくるロシアから日本を守るために必要だった」とネットで主張するが、そうかもしれないが違和感ある。
だって、その結果、よりロシアと一触触発の危機になり、
日露戦争の原因になったわけだし、その言い訳が征服された朝鮮の人々に通用するわけない。
日本を舞台にアメリカとロシアが戦ったとして、
アメリカに
「防波堤となるので犠牲になって」と言われて納得する日本人はいないだろ(いるか)。
で、その結果、日本はまたも不平等条約の締結に成功。
「清と不平等条約を結べば先進国」ということだ。
清は朝鮮の宗主国ではなくなり、台湾や遼東半島の割譲、
莫大な賠償金、開港や経済的特権を手に入れた。
日本は
何年もかけて軍事力を高めていて(1892年には予算の31%を軍事費に投入していた)準備しており、議会も開設していたから戦争が起きた場合の予算案も通しやすかった。
国民は勇ましいのが好きだし、戦争になればいつもは政府を叩くマスコミも、政府に協力する。
日本に限っていえば、「新国家初めての対外戦争で、大国に勝つ」ということで、
国民国家としての意識が高まった。
また、
官民一体となっての経済政策もすすめられる。
賠償金を軍備にまわし、日露戦争にそなえることができた。
清が日本に敗北したことは、列強による中国分割を促進する。
なんたって、
新興国の日本に負けるぐらいなんだからと。
日本が得た「遼東半島の割譲」は、
1895年のロシア、フランス、ドイツの三国干渉によって阻止され、
清に返還されたが、それは清のことを思ってしたわけじゃなくて、
彼らがもともとそこを欲しかったから。
そこからの話は、また次回。