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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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タグ:コメディ ( 14 ) タグの人気記事

最新映画レビュー『マダムのおかしな晩餐会』 コミカルで風刺の効いたアレン風味の大人の恋愛ドラマ


2016年/フランス
監督:アマンダ・ステール
出演:トニ・コレット、ハーヴェイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマ
配給:キノフィルムズ
公開:11月30日よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開中

お金を払って映画を見るとなると、
ディナーもデザートも同じ値段ならどっしりとしたディナーのほうがお得かなと、大作映画をつい選んでしまうことが多いだろう。
本作はそういった意味では、デザートや間食のミニサンドイッチみたいなものだが、それも映画。
洒落た会話や笑い、風刺、人生の皮肉を楽しむ作品だ。

物語の中心となるのはふたりの女性。
お金持ちの女主人とそのメイドだ。舞台はパリ。
アメリカからパリの屋敷に越してきた裕福な夫婦アンとボブ。
アンは友人たちを招いたディナーを計画するが、
ひょっこりやってきたボブと前妻の息子が出席することになり、
人数は縁起の悪い13人に。
そこでアンはスペイン人メイドのマリアを、
招待客に仕立て上げる。
ところが最初はおとなしくしていたマリアは酔いも入り、
下品なジョークを連発。
それが招待客の一人にウケてマリアに一目惚れしたことから、事態は思わぬ方向に転がっていく。

ウディ・アレンも取り上げそうな、裕福な階級でのパーティ。
アンは裕福な夫(実は資金繰りに困っている)と結婚しお金と地位も得たのに、心はどこか虚しい。
夫が自分を愛しているかわからず、常に不安に悩まされているのだ。
一方、夫に先立たれたマリアは、仕送りしているひとり娘を生き甲斐にし、人生をポジティブにとらえている。
この二人を対比しながら、成り行き上、マリアが身分を隠して招待客の一人と付き合いだすことから生まれるコメディ部分(正体を隠しているので)、そしてアンの中年の危機、舞台をパリにしたことで生まれるアメリカ、スペイン、フランス、イギリスなど各国の男女の恋愛観などが描かれていく。

夫婦なのに心が通い合わせない「愛のすれ違い」、
嘘をついているのに惹かれ合うふたりという2つのカップルが描かれるが、アレン作品ほど教訓じみていないのは、恋愛を悲観的にとらえるアレンと違い、こちらはフランスの女性監督が描いているからか。
アレンだと「こんなに愛しているのに、いつか愛は壊れる」だが、「先のことは考えず、いまを楽しみましょう」という感じだ。
マダムは『リトル・ミス・サンシャイン』などのトニ・コレット、メイドにはアルモドバル作品で知られるロッシ・デ・パルマ(日本人的感覚では美人かはかなり微妙なのだが顔にインパクトあり)、マダムの夫をハーヴェイ・カイテルが演じている。
★★★

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by mahaera | 2018-12-10 12:40 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』もしこんな出来事が起きていたらと、ほっこりするコメディら


監督:エルネスト・ダラナス・セラーノ
出演:トマス・カオ、ヘクター・ノア、ロン・パールマン
配給:アルバトロス・フィルム
公開:121日より新宿武蔵野館ほかにて公開

■ストーリー
1991年のキューバでは、欧州での共産主義陣営の崩壊を受け、経済が深刻な打撃を受けていた。
また若者たちを中心に、価値観も変わろうとしていた。
そんな中、モスクワ大学に留学し、大学でマルクス主義を教えているセルジオも
社会の変容に戸惑っていた。
セルジオはアマチュア無線が趣味で、彼の苦境を知ったニューヨーク在住の
交信仲間のピーターかり最新式の無線キットが送られてくる。
しかしそれは当局にセルジオが目をつけられることでもあった。
ある日、セルジオはソ連の宇宙ステーション「ミール」の宇宙飛行士セルゲイと交信する。
やがて2人はお互いの家族のことや将来への心配を語り合える親友になっていった。
12月、ソ連は消滅しロシア連邦となる。
地球に帰りたいセルゲイのために、セルジオはある計画を練るのだが。。

■レビュー
最初にこれは実話ではなく、「もしあの出来事の舞台裏でこんなことがあったら」
という想像を膨らませたフィクションであることを知らせておこう。
僕も映画を見るまでは実話かなと勘違いしてた。
若い方はご存知ないと思うが、1989年に長年続いていた東西両陣営の
冷戦構造が崩壊したのは、あっけないほどの速さだった。
超大国ソ連も一気に崩壊し、たちまち貧乏国になってしまった。
そんな国家の混乱の中でも宇宙飛行計画は続いており、宇宙ステーションのミールに
ひとり取り残されたセルゲイは、「最後のソ連国民」と呼ばれていたという。

宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフは実在の人物だ。
10年に渡って宇宙滞在時間の最長記録を保持しており、
映画のモデルとなったのは1991519日からの宇宙滞在で、滞在が延長される中、
1225日にソ連から離脱してロシア連邦が成立する。
セルゲイが帰還したのは翌年の325日のことだった。

映画は全体的にはコメディタッチで、基本的には出てくる人物は善人か、
悪役となる権力者側も“間抜け”に描かれ、陰惨な感じはない。
もちろんその中にも、キューバ国民の将来への不安やその後に起こること(ボート難民など)が
顔をのぞかせてはいるが、国家が頼りにならないとなると、
人々は違法ながらラム酒を作ったり葉巻を巻いたりと、たくましく生きる姿に描かれている。

気楽に観られる映画で、後味もいいが、
もう少しひねりが欲しかったかな。無い物ねだりだが。
★★★
(旅行人のウエブサイト「旅行人シネマ倶楽部」に寄稿したものを転載しました)

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by mahaera | 2018-12-02 09:12 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『クレイジー・リッチ』 恋人の実家は大金持ち!



NYで生まれ育った中華系アメリカ人の娘が、
恋人に連れられてシンガポールの彼の実家に行くが、
彼の家族は想像を絶する大金持ちだった!というコメディ映画。
オールアジアンキャストにもかかわらず、全米で3週連続No.1ヒット
批評家からも評価が高く、
今までアメリカ映画で取り上げられることが少なかった
アジア系マイノリティが注目されることになった。

日本ではあまり話題になっていないが、
宣伝あまりしなかったのかな。
それともアジア人が活躍するハリウッド映画は見たくないのかな。
タイトルからも、アジアとっちゃったし
(原題は「Crazy RIch Asians」)。
アメリカではアジア移民の数が増え、
今や映画界も無視できないようだ。
中国系、インド系、フィリピン系の順に多く、社会的に地位が高いものも増えてきた。

主人公レイチェルは、NYの大学で経済学を教えている女性。
冒頭にゲーム理論の講義の場面があるが、
これが映画の最後に効いてくる。
映画にも出てくるが、典型的なABC(American Born Chinese)で、中国語はカタコトしか話せないし、習慣もあまり知らない。
恋人のニックはシンガポールの華僑の息子だが、
自分の家庭のことは語りたがらない。
ニックの親友の結婚式があることから、
ニックに誘われてシンガポールに行くレイチェルだが、
実はニックはシンガポール有数の金持ちの御曹司だった。

アバンタイトル、1995年の雨降るロンドンで中国人女性と2人の子供たちを連れて予約した格式高いホテルにチェックインしようとするが、宿泊拒否をされる。
アジア人はお断りという、明らかな人種差別だ。
電話も使わせてもらえず(携帯はないころ)、
表の公衆電話を使えという屈辱。
しかし女性がその電話から帰ってくると、
ホテルのオーナーが彼女を出迎える。
彼女はその間にホテルを購入していたのだ。
青ざめる従業員。
これがニックの母エレノアで、香港映画ファンには懐かしいミシェル・ヨー(『ポリスストーリー3』)が演じている。

ニックの家族は、シンガポールがジャングルだった頃にやってきて財をなした一族で、そこらの成金とは違う代々のハイクラスだ。
映画を通じて、その金持ちぶりが見ものだが、
途中で出てくるレイチェルの友人の成金一家の家が
下品な装飾で覆われているのに対し、こちらは本物。
お金はあるが、上品で堅実な部分を残している。

ニックの親戚(いとこたち)や友人たちも、上流クラスの人々。
結婚式前のバチェラーパーティは、
女子はマレーシアの島を借り切って、
男子は国際海域に浮かぶタンカーを借り切ってというスケール。
当然ながらレイチェルは戸惑うが、その金持ちぶりは映画の彩りで、主となるのは古典的な嫁姑の対立だ。
一般庶民であるレイチェルを、ニックの母であるエレノアが息子にはふさわしくないと受け入れない。
その対立が物語の中核になる。

ニックはいかにも善良な金持ちのご子息(影が感じられるない)。
レイチェルは日本人的な感覚では、超美人という感じでもないのが微妙なところだが、整形美人よりはいいのかな。
ストーリー的には古典的といっていいもので、
恋人の母親にいじめられながらも見返そう、
あるいは受け入れられようとする女性の話だ。
しかしそれが、大ヒットしたのは、金持ちの世界を垣間見たいという覗き見的な部分と、同じ中国系といっても新旧の価値観の対立があること(パキスタン系移民の家族を描いた『ビッグシック』も一世と二世の価値観が対立していた)を裏テーマとして描いていることがあったからだろう。

ミシェル・ヨー扮する鬼母も、単に悪者ではなく、なんでそういう態度をとるのかという事情も後半になって明かされていき、ドラマとしてうまくきれいにまとめられていく。
後半はきちんと伏線を回収してくのは小気味いい。

監督は、『G.I.ジョー2』『グランドシリュージョン見破られたトリック』と、今までパッとしない娯楽作品を撮っていたジョン・M・チュウ
多くの登場人物が出る映画を仕切る手腕を買われたのだろうが、意外にドラマがうまいことがわかった。
★★★☆

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by mahaera | 2018-10-18 12:29 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『カメラを止めるな』 この夏、1本ならこれしか選べない!

昨日、僕の周りの40代、50代女性ふたりから、
偶然にも「この映画観た?」と別々に聞かれた
映画ファンの中では話題になっていたが、
ふだん映画に興味のない女性すら興味を持つ映画、
ということで昨日行ってきました、TOHOシネマ日本橋。
というのも、新宿(一番大きい9番スクリーン)も日比谷も満席。
かろうじて日本橋で前から3列目(上映時には1列目まで入っていた)で、ここしか席が空いてなかった。
どんだけの大ヒット。今の段階では、
先日ほめたトムクル作品を抜く勢いの人気だ。

この映画、誰もが口をそろえて言うと思うが、
「とにかく、何も前知識なく、騙されたと思って見てくれ!」だ。
本当は、この先、読まなくてもいい。
というのも、まっさらで映画を見る喜びは、最初しかないから。
『アベンジャーズ/インフィニティウォー』を見た人ならわかるはず。
予告編すら、見ないほうがいい(すでに半分ネタバレしているから)。
ただ、ここには映画の面白さがつまっているし、
映画作りの熱意が伝わるし、
そしてドラマとしての感動もあるのは保証する。

本作に出演している俳優が、ほぼ全員無名なところもいい。
もともと映画学校のゼミのディスカッションから、
俳優に当て書きして行ったとのことで、
すべて無名ながらハマリ役。インディーズ映画だが、
途中でそれすら忘れてしまうほどの面白さ。
3幕構成で、後半は1幕目をなぞりながら違った意味をもたせる妙は、内田けんじ監督の『運命じゃない人』や、『桐島、部活やめるってよ』を前知識なく見た時の、多幸感と同じだ。

コピーにもある通り、前半37分は、ワンシーンワンショットのゾンビ映画だ。
廃屋でゾンビ映画を撮影している撮影スタッフに恐怖が襲いかかるという、もう何度も見た低予算映画風のスタートだ。
ところが、途中から、「あれ、今の失敗?」「今の間はなんだったんだろ」と引っかかるポイントが登場。
しかし、強引とも言えるスピード感で、それを思いつつも37分のゾンビ映画が終了する。
ここで、絶対に間違えて席を立たないように。
そこからドラマが始まる。

妥協まみれの現実の中で娘を思う愛情だけは人一倍という映画監督、
役に入り込みすぎる母、
映画作りの熱意が時には暴走してしまう娘という映画一家のほか、
現実にいそうな何も考えていないプロデューサー(三谷幸喜イズムのキャラ)、
繊細な俳優たち、すべて愛すべきキャラで、
ある意味『ラジオの時間』の映画版だが、それを超えるエネルギーがあると思う。
それはあちらがベテラン俳優たちを起用して余裕あるお芝居を見せてくれたのに対し(それが悪いわけではない)、こちらは100%感を感じさせるから。
とにかく次から次へと起きるトラブルに笑い、それをクリアする姿に感動する。
まちがいなく、今年、ベストテン級の作品。
★★★★

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by mahaera | 2018-08-13 09:36 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『バトル・オブ・セクシーズ』ウェルメイドで内容は深い


本作をスポーツ映画といっていいかどうかはわからないが、『アイ、トーニャ』と並ぶ、アメリカ70'sのスポーツ選手を題材とした映画の名作といっていいだろう。


ビリー・ジーン・キング夫人は、当時子供だった僕もうっすらと知っている、アメリカ女子テニス界で偉業を達成した女性だ。

本作は予告編から、すっかり性差別に対抗するために戦うウーマンリブを描いた作品と思っていたが、それはミスリード。

ありのままの自分を肯定することに、ためらいを持っている人々を優しい目線で取り上げた作品だった。


最初の方の美容院のシーンがすばらしい。

エマ・ストーン扮するキングが、美容師のマリリンと恋に落ちる夢うつつの雰囲気を鏡ごしに(ぼやけも入れながら)見せ、ここで引き込まれた(撮影監督は『ラ・ラ・ランド』の人)。
優しくて理解のある夫がいながら、女性に初めて恋をしてしまうキング。

このふたりが結ばれるまで(ディスコとモーテルの部屋)を、男女の恋愛でもここまでないというくらい、ドキドキと描いていく監督の手腕はさすがだ。


一方、彼女と対戦する55歳の男性テニスプレーヤーのボビー・リッグスだが、予想とは違い悪役ではない。
露悪的な言動やパフォーマンスは彼のキャラクターで、彼自身が本当に性差別的な思考があるわけではない(男尊女卑思考の悪役はビル・プルマン演じるジャック・クレーマーが引き受けている)。
リッグスの賭け事への依存症、裕福な妻(エリザベス・シュー)との関係、疎遠になっている息子との関係も丁寧に描かれており、スティーブ・カレルの名演もあって、人間くさく憎めないキャラなっている。
途中の妻とやり直しをしたいが拒否されるシーン、息子と別れるエスカレーターのシーンは胸を打ち、本筋のキングの話とは別に深い余韻を残した。


エマ・ストーンも過去作品の中でもベスト級の演技だが、彼女を取り巻く脇キャラもきちんと意味があり、生きている人間を感じさせる。夫役のオースティン・ストウェル(『セッション』の主人公の当て馬となるドラマー)のイケメンだけどちょっとバカっぽく、でも実は思慮深く相手のことを考えていたという、けっこう複雑なキャラもいい。

また、実際にゲイであることを表明しているアラン・カミング扮する服飾デザイナーも、少ないセリフに彼の人生も織り込んでいるようで、重みがある。

ラストは彼がいいシーンを作り出してくれた(まるで「カサブランカ」の警察署長だ)。


ということで、前知識あまりなく、ミスリードされて観たせいもあるけど、笑って泣いて、しかも「本来の自分に帰っていく」というテーマと人の優しさに泣いた。監督はやはり僕が大好きな映画『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトンとヴァレリー・ハリス夫妻
長編は3作目だが、その前にミュージックビデオはたくさんとっており、スマパンの「Tonight Tonight」、オアシスの「All Around the World」、レッチリの「By The Way」など、みなさん一度は見たことあるものば
★★★★

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by mahaera | 2018-08-03 10:38 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ブリグズビー・ベア』 おすすめ! 過去への決別と未来への前進が詰まった爽やかな感動作


2017年/アメリカ

監督:デイヴ・マッカリー
出演:カイル・ムーニー、マーク・ハミル、グレッグ・キニア、マット・ウォルシュ、クレア・デインズ
配給:カルチャヴィル
公開:6月23日よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマカリテにて上映中


多分、いま、上映中の映画で一番好きなのがこれ。

アメリカのインディーズ映画で、前評判知らなくて観たが、忘れられない一編となった。

それまで囲われていたいた場所から、世界へ一歩踏み出していく人間の話で、

「トゥルーマンショー」「ルーム」「ラースと、その彼女」

通じる感動がある、オススメ作品だ。


外界から隔絶されているシェルターに、両親と住むジェームズ。

世界は荒廃し、外には出られない。そんな彼の楽しみは、

毎週届く教育番組「ブリグズビーベア」のビデオだけだった。

着ぐるみのクマが、宇宙をまたにかけて悪と戦う番組で、

ジェームズはそこから全てを学んでいた。

しかしある日、警察がやってきて、その生活は終わりを告げる。

実はジェームズは25年前に、両親だと思っていた二人にさらわれて育てられていたのだった。

“本当の両親”の元に戻るジェームズだったが、初めての世界に馴染めない。

そしてジェームズにとって全てだった「ブリグズビーベア」の続きも見られない。

そこで彼は、自分で作品の続きを作ろうとする。


長い誘拐生活から現実世界に戻ってきた青年。

しかしその時間はあまりに長く、またそれ以外を知らないで育ったため、

自分と周りの世界と、どう折り合いをつけていくかに苦しむ。

そこで彼が考えたのは、自ら物語を作ることで、

今までの自分を総括し、次へ踏み出すことだった。


こう書くとシリアスで重苦しい感じがするが、映画は全体にユーモアと優しさに満ちている。

何よりも、映画につきものの、定番の“悪人”が出てこない

ジェームズをさらった偽の両親でさえ、彼を愛していることには変わりはない。

本当の両親、事件を担当していた刑事、初めて出来た友人たちも、

みな、優しさに満ちた(かといってベタな優しさの押し売りはない)人たちばかり。

ちょっと距離感を持って優しいところが絶妙だ。

それは主人公は、見かけは大人だが、心はまだ子供のように純粋だからだろう。

見かけが青年だから、周囲は自分たちが失ってしまったものを感じ、進んで彼に協力するのだ。

ストーリーは単純だが、この作品からは様々なテーマが、重層的に織り込まれている。

「物語ることの大切さ」、「幼年期の決別」、「ルールが違う世界に入る戸惑い」

主人公がもがき、それが周りを動かし、サポートしていく姿は心を動かす。

しかも全く押し付けがましくない。きちんと映画として見せているからだ。

そして最後には、爽やかな感動がある。

上映館は多くはないが、機会があったら見て欲しい作品だ。

★★★★

偽の父親役のマーク・ハミルも、彼のジェダイを知ってるので、すでに配役自体が暗喩になっている。


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by mahaera | 2018-07-05 10:51 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『女と男の観覧車』ウディ・アレン最新作は、近年では一番重い作品


2017年/アメリカ

監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル
配給:ロングライド
公開:6月23日より丸の内ピカデリー他にて公開中

毎年、決まったように届けられるアレン映画。
基本はライトなコメディだが、彼の作品に通底するのは大人のビターな味わい。
映画を見ている間は笑っていられるが、余韻はほろ苦い。

本作の舞台は、1950年代のニューヨーク州コニーアイランド。
アレン映画にたびたび出てくる遊園地の中で、
ヒロインであるケイト・ウィンスレットは回転木馬の操縦係を
している夫のジム・ベルーシと住んでいる。二人とも再婚だ。
物語の語り手となるのは、ジャスティン・ティンバーレイク扮するビーチのライフガードの大学生だが、話はほぼウィンスレット中心に進む。

彼女はかつて女優を目指していたが、結婚。
しかし自分の浮気が原因で夫を死に
追いやってしまった過去がある。
今の夫は優しいが教養がなく、自分を理解してくれるのではないかと大学生のジャスティンに期待を寄せる。
大学生も年上で人妻だが、
美人のウィンスレットにのめり込んでいく。
そこに現夫のベルーシの前妻との間の娘が転がり込んできたことから、嫉妬の炎が燃え、やがて悲劇を呼んでいく。

最近では、同じビターな映画でも『ブルージャスミン』は、
ケイト・ブランシェット演じるジャスミンの愚かさを突き放して観れたせいか、コメディとして見られたが、
本作は軽いタッチながら悲劇色が強い
「ここではないどこかへ」行くことが唯一の救いのウィンスレットの取り乱しようは、笑って見ていられるレベルではなく、正直、映画をかなり重くしている。

中年に差し掛かり、かつて夢見たことが成し遂げられず
人生がこのまま進んでいくことが辛い。
夫は自分を愛してはくれるが、理解はしておらず
また時折見せるその弱さも憎い
こんな女性(男性も)は、僕の周りにもいくらでもいる
自力ではどうしようもないことは、世の中たくさんある。
そこを異性が救ってくれることもあるだろうが、
期待は裏切られることも少なくない。
たいていの夫婦は、どこかで折り合いをつけて生きている。

映画ではウィンスレットがティンバーレイクにのめり込んでいくが、やがてそれは嫉妬となり、悲劇を呼ぶ。
ウィンスレットの演技は、その行き場のない(やり直しが難しい)年齢の女性(40代)感がすごくよく出ていて、
「熱演」の一言に尽きる
ただし、それが映画の重さになってしまっていて、
スピード感を殺していることも確か。
『ブルージャスミン』のような絶妙な
ブレンド具合にはなっていないのだ。

しかし、アレンの女性を客観的に見る目は、
冷静というかある意味冷酷だ。
女性の素晴らしさと愚かさを共存させているのだ。
ただし好みとしては最近の諸作の中では、いまひとつ。
重い。
映画は★★☆だが、ウィンスレットの熱演は
みるべき価値はあるので☆おまけして、★★★

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by mahaera | 2018-06-26 12:09 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『デッドプール2』 接近型アクション、意外に真面目なメッセージありの充実作


 アメコミヒーローものに全く関心ない人はスルーだろうが、好きな人はスルーできない「デッドプール」。ディズニー傘下となったMCUにはない、バイオレンスと下品ネタ、楽屋オチ満載で、子供は楽しめない(日本ではR15指定)ヒーローものだ。


 偶然なのか、今回の敵は、『アベンジャーズ/インフィニティウォー』の悪役サノスを演じたジョシュ・ブローリン。老け顔だが、現在50歳。ってことは僕より歳下か! 

映画デビューは1985年の『グーニーズ』だがずっと脇役で、2007年の『ノー・カントリー』で主人公になった時、「この人だれ?」と思ったが、この10年で引っ張りだこの俳優になった。

40過ぎてからの遅咲きだ。まあ、デッドプール=ライアン・レイノルズも、デビューは早いが不遇な期間が長かった。

ちなみにレイノルズの前の奥さんは、ブラック・ウイドウことスカーレット・ヨハンソンだ。


さて、今回は未来から来た暗殺者ケーブルが狙うミュータントの少年をデップーが助けるという話で、『LOOPER/ルーパー』や『ターミネーター』のような話といえば、想像つくだろう。とはいえ、「デッドプール」はストーリーを楽しむのと同じぐらいに、小ネタ、パロディ、キャラクターの掛け合いといった寄り道の比重が高い。話の進行を停滞させることなく、それらを散りばめなくてはならないのだが、今回もうまくそれは成功している。ただし、続編が続くと、登場キャラが増えすぎて、停滞気味になってくるのはシリーズものの宿命なので、今後の課題でもあるのだが。

監督は前作から交代し、今回は『ジョン・ウィック』で、接近アクションの新しい型を作り出したデビッド・リーチ

スタントマン出身で、続く『アトミック・ブロンド』も高い評価を得た。

アクションが似てきて食傷気味になりつつあるアメコミヒーローものだが、今回はCGを使った派手なアクションより、デビッド・リーチお得意の接近戦のアクションの部分が見応えがある。

武器をぶっ放す敵ケーブルだが、映画では意図的にそれを封じるような状況で、近距離での戦いを作っている。ミュータント護送車の狭い通路の戦いとかね。

メインストーリーは意外と感動もので、「失ったものを取り戻すためには、何をするのが正しいのか」というテーマがきちんと描かれている。ケーブルは過去に、デップーは未来に向かって、それを果たそうとするのだ。また、少年法の改正が論議されている日本だが、ここでは「大人たち次第で、子供の未来は変わる余地がある」という、少年犯罪を本人の問題として切り捨てないというメッセージもある。

ということで、「デッドプール」としてはやや真面目で、ハチャメチャな狂ったキャラではなくなってしまったが、これはこれで楽しめる作品であることは(ファンにとって)間違い無いだろう。

あ、あと1カットだけ登場のブラピには笑った。★★★


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by mahaera | 2018-06-13 13:24 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『犬ヶ島』背景のすみずみまで気になる! 不思議な日本が面白い




『グランド・ブダペストホテル』『ムーンライトキングダム』などのウェス・アンダーソン監督による、『ファンタスティックMr. FOX』に続くストップモーションアニメ。
「20年後の日本」と字幕が出るが、
出てくるのは未来というより、昭和20〜30年代の日本。
それが見事に作り込まれていて、画面の端々まで目を凝らして見てしまう。

“ドッグ病”が蔓延するメガ崎市で、人への感染を
恐れた小林市長がすべての犬を“犬ヶ島”へ追放する。
そこへ12歳の少年アタリが小型飛行機でやってくる。
愛犬のスポッツを探すためだ。
島に住む5匹の犬がアタリに協力し、旅に出る。
一方、メガ崎市では、大きな陰謀が進んでいた。。。

ウェス・アンダーソン作品が好きな人なら、
何も言わずに見ればいい。
シンメトリーな画面構成、カメラ目線の登場人物、
既製曲の新鮮な使い方、ユーモアとペーソスあふれるストーリー、細部へのこだわりは健在だ。

映画に出てくる日本は、現実世界にはない、
昭和の黒澤映画に出てくるような世界。
日本人にとっても懐かしいが、本当にそんな世界が
あったのかと僕でさえ、記憶の彼方だが、
妙な居心地の良さを感じる。
他のウェス・アンダーソン作品同様、
大きな社会的メッセージがあるわけではない。
「報われない家族同時の愛情」が描かれることが
多い彼の作品だが、ここではそれは薄味になり、
むしろ人間と犬の絆を描いている。
そして少年の冒険物語としては、無茶苦茶真っ当で、
絵本を読んでいるようだ。

スカーレット・ヨハンソン、フランシス・マクドーマンド、エドワード・ノートン、ブライアン。クランストンから、渡辺謙、小野洋子に至る声優陣が豪華。
映画好きなら、きっと楽しめる作品だと思う。
★★★★

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by mahaera | 2018-05-30 11:07 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『サバービコン 仮面を被った街』 コーエン兄弟節は楽しめるが演出が消化不良



舞台は1950年末のアメリカの郊外の街、サバービコン。
都会から逃れてきた白人ばかりの郊外住宅地だが、
そこに黒人一家が引っ越してくる。
住民たちは、あからさまな嫌がらせや反対運動を始めるが、
それは背景。
その隣の家に住むロッジ一家にある日強盗が入り、
ロッジ(マット・デイモン)の妻(ジュリアン・ムーア)が命を落とす。
犯人が捕まらないまま時が経つが、ロッジの息子ニッキーは、
その理由を知り、命を狙われることに。。。

少年が命を狙われ、周囲は悪人ばかり、どうやって助かるかという、ヒッチコック風スリラーが話の骨格だが、
脚本のコーエン兄弟にかかると、
悪党どもは残虐だがお互いを信用せず、
つまらないことから自滅していく愚か者たちばかり。
ブラックコメディとも言えるのだが、
死人もバタバタ出ていくので、笑ってばかりとも言えない。
名作『ファーゴ』に近い雰囲気とも言える。

ただし監督は社会派のジョージ・クルーニー。
いつの間にか6作目の監督作品だが、見た目は立派な家族も、
一皮むけば、、、と、人種問題も入れ込んだりしているのだが、
どうもそれがうまく噛み合っていない。
社会派がとってつけたようにしか感じられないのが、
もったいない。言いたいことはわかるんだが、
ここは素直に少年の目から見たスリラーにしたほうがよかったかも。
隣の家の黒人一家の受難エピソードが、
映画を見ていてノイズになってしまうのだ。

一人二役のジュリアン・ムーアの、普通だけどどこかおかしい演技は、「キングスマン/ゴールデンサークル」に通じ、その異常さを楽しめた。
★★☆

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by mahaera | 2018-05-10 10:11 | 映画のはなし | Comments(0)