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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ハン・ソロ/スターウォーズストーリー』 悪くはないが、普通じゃダメ


今週で終わりというので見てきました。“半ソロ”。

前作『最後のジェダイ』で、スターウォーズ熱が冷めてしまい、
この「ハン・ソロ」もなかなか見に行く気にならなかった。
若きハン・ソロの前日譚だが、まずそんなにそれに興味を持てない。
アウトローで密輸業者のハン・ソロ、それでいいじゃない。
本作では、彼の生い立ちやチューバッカやランドとの出会い、
どうしてファルコン号を手に入れ、犯罪者の世界に入ったかが、丁寧に語られる。
若いということもあるが、今回のソロ、全然クールじゃない。
この若い役者、なかなか健闘しているのだが、
脚本のせいかどうもキャラの掘り下げが浅いというか、最終的に魅力的じゃない。

途中で監督の交代劇があり、本作の監督はベテランのロン・ハワードに変わったが、それもあまり功を奏しておらず、フレッシュさに欠けるできになってしまった。
ある意味、予告編通りのものは見せてくれるが、それ以上ではないのだ。
ロン・ハワードは、近年では『ラッシュ/プライドと友情』のような良作も作るが、『ダヴィンチコード』シリーズのような凡作も作る職人監督。
堅実だが、そもそも本作と合っていたかと思ってしまう。
なんだか、ワイルドスピードとか、パシリムシリーズぐらいのライトさなんだが、スターウォーズ、それじゃダメでしょ。
まあ、見ている間はそこそこ面白いが、テレビでもいいかなあ。残念。期待が高いだけなんだけどね。
★★★

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by mahaera | 2018-08-15 13:49 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『カメラを止めるな』 この夏、1本ならこれしか選べない!

昨日、僕の周りの40代、50代女性ふたりから、
偶然にも「この映画観た?」と別々に聞かれた
映画ファンの中では話題になっていたが、
ふだん映画に興味のない女性すら興味を持つ映画、
ということで昨日行ってきました、TOHOシネマ日本橋。
というのも、新宿(一番大きい9番スクリーン)も日比谷も満席。
かろうじて日本橋で前から3列目(上映時には1列目まで入っていた)で、ここしか席が空いてなかった。
どんだけの大ヒット。今の段階では、
先日ほめたトムクル作品を抜く勢いの人気だ。

この映画、誰もが口をそろえて言うと思うが、
「とにかく、何も前知識なく、騙されたと思って見てくれ!」だ。
本当は、この先、読まなくてもいい。
というのも、まっさらで映画を見る喜びは、最初しかないから。
『アベンジャーズ/インフィニティウォー』を見た人ならわかるはず。
予告編すら、見ないほうがいい(すでに半分ネタバレしているから)。
ただ、ここには映画の面白さがつまっているし、
映画作りの熱意が伝わるし、
そしてドラマとしての感動もあるのは保証する。

本作に出演している俳優が、ほぼ全員無名なところもいい。
もともと映画学校のゼミのディスカッションから、
俳優に当て書きして行ったとのことで、
すべて無名ながらハマリ役。インディーズ映画だが、
途中でそれすら忘れてしまうほどの面白さ。
3幕構成で、後半は1幕目をなぞりながら違った意味をもたせる妙は、内田けんじ監督の『運命じゃない人』や、『桐島、部活やめるってよ』を前知識なく見た時の、多幸感と同じだ。

コピーにもある通り、前半37分は、ワンシーンワンショットのゾンビ映画だ。
廃屋でゾンビ映画を撮影している撮影スタッフに恐怖が襲いかかるという、もう何度も見た低予算映画風のスタートだ。
ところが、途中から、「あれ、今の失敗?」「今の間はなんだったんだろ」と引っかかるポイントが登場。
しかし、強引とも言えるスピード感で、それを思いつつも37分のゾンビ映画が終了する。
ここで、絶対に間違えて席を立たないように。
そこからドラマが始まる。

妥協まみれの現実の中で娘を思う愛情だけは人一倍という映画監督、
役に入り込みすぎる母、
映画作りの熱意が時には暴走してしまう娘という映画一家のほか、
現実にいそうな何も考えていないプロデューサー(三谷幸喜イズムのキャラ)、
繊細な俳優たち、すべて愛すべきキャラで、
ある意味『ラジオの時間』の映画版だが、それを超えるエネルギーがあると思う。
それはあちらがベテラン俳優たちを起用して余裕あるお芝居を見せてくれたのに対し(それが悪いわけではない)、こちらは100%感を感じさせるから。
とにかく次から次へと起きるトラブルに笑い、それをクリアする姿に感動する。
まちがいなく、今年、ベストテン級の作品。
★★★★

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by mahaera | 2018-08-13 09:36 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』 アクションシーンのつるべ打ち!


2018年/アメリカ

監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヘンリー・カヴィル、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ミシェル・モナハン
配給:東和ピクチャーズ
公開:8月3日より全国公開中

チームプレイの妙が見応えがあった前作の好調を引き継ぎ、同じ監督が送る最新作。
このまま、「ワイルドスピード」的な世界に行くのかと思いきや、
今回は矢継ぎ早のアクションに振り切った。
いや、それのみといっていい。
だって、ストーリーは見終わっても印象に残らない。
ただ、シーンは覚えている。いわゆる“香港映画方式”で撮られた、
今時のハリウッドでは珍しい映画なのだ。

ジャッキーチェン全盛期の香港では、盗作を恐れることもあり、
脚本は書かれず、とりあえず俳優が来たらシーンだけを撮影していった。
だいたい2週間と、テレビドラマ並みの撮影期間も稀ではなかったので、俳優がとにかくアクションをして、あとで脚本家がつじつまを合わせる脚本を書く。見せ場ありきだったのだ。

本作も、まったくそんな造りで製作された。
脚本というか、全体のストーリーができる前に、トムクルがアクションシーンの撮影を始めてしまったのだ。
で、後から、そのアクションシーンを入れ込むために、脚本が作られていった。
だから、高所から酸素ボンベをつけて飛び降りたり、ヘリでチェイスしたり、パリの街をバイクで走ったり、ロンドンのビルの屋上から屋上へ飛び移ったりといった、本作の体を張ったアクション、すべてなくても話は成り立つ。
ふつうに追いかければいいんだから(笑)。

そして、スタントはほぼトムクルがやっている。
これもまったくの無駄で、別に本人がしなくてもいい。
いや、今のハリウッドの主流は、俳優はほぼスタントアクションはやらせてもらえない。
保険会社がストップをかけるからだ。
だって主演が怪我をしたら、映画が完成しなくなる。
本作だってトムクルがヘリから落ちて死んだら、100億単位のお金がパーになる。
でも、本作は本人が操縦して、しかもヘリアクションの操縦までしている。
それはトムが映画の製作にお金を出しているからだ。
「心配しなくていい。オレが金出すから」って。
それ、ある意味、膨大なお金がかかっている自主制作映画みたいなもんだ。
自分がお金出して、自分のやりたいアクション撮影して、みんなに見てもらう。

とはいえ、それは独りよがりではないから、みんなが見にくる。
きっとトムは、「みんなこんなのが見たいだろ?」と、サービス精神にあふれているのと、危険バカが共存しているのだろう。

本作はストーリーはハッキリ言って、無茶苦茶だ。
つじつまも合っていない。人間ドラマ的なテーマもない。
ただそれが映画だと、根っからの映画人であるトムクルはわかっている。

今回もトムクルは世界を救い、そして女性からも(しかも二人)うっとりと愛されるが、ベッドには誘わない。「俺を愛した女性は不幸になる」ってことだ。
007と違うのは、女に手を出さない、皮肉を言わない、余裕を見せないこと。
まるで、ジャッキーチェンだ。

ということで、この夏最大のアトラクションムービーは、CG恐竜が暴れ回る映画ではなく、本作であることはまちがない。
なんだかんだといって、トムクルはすごい。
でも、いつか死ぬな。撮影中に。
☆ひとつトムに加点して★★★★

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by mahaera | 2018-08-10 10:58 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『バトル・オブ・セクシーズ』ウェルメイドで内容は深い


本作をスポーツ映画といっていいかどうかはわからないが、『アイ、トーニャ』と並ぶ、アメリカ70'sのスポーツ選手を題材とした映画の名作といっていいだろう。


ビリー・ジーン・キング夫人は、当時子供だった僕もうっすらと知っている、アメリカ女子テニス界で偉業を達成した女性だ。

本作は予告編から、すっかり性差別に対抗するために戦うウーマンリブを描いた作品と思っていたが、それはミスリード。

ありのままの自分を肯定することに、ためらいを持っている人々を優しい目線で取り上げた作品だった。


最初の方の美容院のシーンがすばらしい。

エマ・ストーン扮するキングが、美容師のマリリンと恋に落ちる夢うつつの雰囲気を鏡ごしに(ぼやけも入れながら)見せ、ここで引き込まれた(撮影監督は『ラ・ラ・ランド』の人)。
優しくて理解のある夫がいながら、女性に初めて恋をしてしまうキング。

このふたりが結ばれるまで(ディスコとモーテルの部屋)を、男女の恋愛でもここまでないというくらい、ドキドキと描いていく監督の手腕はさすがだ。


一方、彼女と対戦する55歳の男性テニスプレーヤーのボビー・リッグスだが、予想とは違い悪役ではない。
露悪的な言動やパフォーマンスは彼のキャラクターで、彼自身が本当に性差別的な思考があるわけではない(男尊女卑思考の悪役はビル・プルマン演じるジャック・クレーマーが引き受けている)。
リッグスの賭け事への依存症、裕福な妻(エリザベス・シュー)との関係、疎遠になっている息子との関係も丁寧に描かれており、スティーブ・カレルの名演もあって、人間くさく憎めないキャラなっている。
途中の妻とやり直しをしたいが拒否されるシーン、息子と別れるエスカレーターのシーンは胸を打ち、本筋のキングの話とは別に深い余韻を残した。


エマ・ストーンも過去作品の中でもベスト級の演技だが、彼女を取り巻く脇キャラもきちんと意味があり、生きている人間を感じさせる。夫役のオースティン・ストウェル(『セッション』の主人公の当て馬となるドラマー)のイケメンだけどちょっとバカっぽく、でも実は思慮深く相手のことを考えていたという、けっこう複雑なキャラもいい。

また、実際にゲイであることを表明しているアラン・カミング扮する服飾デザイナーも、少ないセリフに彼の人生も織り込んでいるようで、重みがある。

ラストは彼がいいシーンを作り出してくれた(まるで「カサブランカ」の警察署長だ)。


ということで、前知識あまりなく、ミスリードされて観たせいもあるけど、笑って泣いて、しかも「本来の自分に帰っていく」というテーマと人の優しさに泣いた。監督はやはり僕が大好きな映画『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトンとヴァレリー・ハリス夫妻
長編は3作目だが、その前にミュージックビデオはたくさんとっており、スマパンの「Tonight Tonight」、オアシスの「All Around the World」、レッチリの「By The Way」など、みなさん一度は見たことあるものば
★★★★

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by mahaera | 2018-08-03 10:38 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ジュラシックワールド/炎の王国』 安心だがサプライズはない。見ても見なくてもOK


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前作『ジュラシックワールド』が、シリーズ1作目の『ジュラシックパーク』のリメイクだとしたら、本作は2作目の『ジュラシックパーク/ロストワールド』のリメイクといっていい。
ストーリーは違うのに、なぜか印象も既視感が残る。

前作の登場人物たちがまた島に戻るというパターン、2作目ということで恐竜の数を増やし物量で勝負、そしてハンター達が恐竜を捕まえ、本土に運び、それが逃げて大パニックという流れ。
いくらハラハラとしても、その後の展開の予想がついてしまうからだ(主人公たちは死なない、子供は助かる。悪者は最後に食われる)。

「ロストワールド」同様、本作も二部構成。
主人公達が島から調教したラプトルを助け出そうとする前半、本土に連れ帰った恐竜が暴れて人を襲っていく後半。
ストーリーはあるのだが、アトラクション的に多くの種類の恐竜を暴れさすための方便のようで、主人公たちは逃げ惑うが死なない。
そして“悪い方”に入れられたチームの人命は恐竜よりも軽いのは「ロストワールド」譲りで、人がバクバク食われていっても、恐竜たちの命を奪えない。
という倫理観は、相変わらずひっかかかる。
いや、恐竜を助けるためにオリとか開けて、それで人が何十人食われてもいいこととは、ちょっと思えないんだけど。

この新シリーズ二作目で方向性がよりハッキリしてきたのは、恐竜はクローン生物だということ。
新種の恐竜をどんどん作ったり、クローン人間も作れるという方向に持って行っているのだ。で、3作目も決まっているようで、きっと本土で野生化した恐竜達が暴れるのだろうなあ。

しかし毎度、「クローン作るなら草食恐竜だけにしろよ」と思うのだが。懲りない人々だ(笑)★★☆
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by mahaera | 2018-07-15 13:57 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『オンリー・ザ・ブレイブ』実話がもとの山火事映画。オチを知らなくて驚いた!


先週、気分転換にレイトショーに行って観たのがこの映画。
「山火事」「実話」映画以上の前知識無し。
実話も基になった話も全く知らず。なので結構驚いた。
これはオチを知って映画を見るのと見ないほどの差がある。
なんで僕は素直に、シナリオのミスリードに引っかかってしまった。映画好きとしては、なんて幸せな事よ! 
しかしアメリカでは有名な事件で、みんな知っているので、
そんなボンクラはいないのだろうな。
ということで、これから観る予定の人は、以下は読まないこと。

映画はアリゾナにある山火事制圧チームを描いたもので、主人公は2人。
ひとりは1軍へのチーム昇格を目指す隊長のジョシュ・ブローリン
ここ数ヶ月でも、サノス、ケーブル役と出演作が相次いでいるが、今回はふつうの人間で、しかもいい人。
もう一人が、そこのチームに応募してくるヤク中のボンクラ青年マイルズ・テラー
『セッション』の主人公です。
このテラーくんが登場するなりダメダメ人間で、同情の余地無しって感じなのだが、遊んだだけの女性が妊娠し出産すると、急に父性愛に目覚め心を入れ替え、出直そうとチームに応募してくる。

今は更生したブローリン隊長だが、かつてはマイルズくん同様に薬の依存症だった。
隊長はそんなマイルズくんを拾い、一人前の男に鍛え上げていく。
むくんでいたマイルズくんの顔が、映画の後半にはみるみる精悍な顔つきに変化していくのは、さすが役者! 
その間に、ブローリン隊長と奥さんのジェニファー・コネリーとの関係も描かれていく。

山火事火災の消火シーンだが、初めて知ることばかり。
消火というとふつうは水をイメージするが、ここでは逆に火をつけて燃やしてしまう
山火事の場合、建物火災と違って広範囲に、しかも火力が強いので水ではもう消火できない。
隊員たちはスコップで溝を掘り、燃えそうな木を切り倒して、反対側に迎え火を放つ。
つまり「火には火を」と、燃えるものをなくして、そこで火を食い止めるのだ。
山火事の猛威も説明されるが、火事によって起きた風に乗り、どんどん先まで飛び火が広がっていくさまが怖い。
撮影には、実際に山を買って、火をつけて燃やしたそうだ。

で、僕にとっては衝撃のエンディングになってしまったのだが、その後も映画はキッチリと描いている。
隊員たちのほとんどが20代だったのも、胸を打つ。
ということで、「よくあるスポ根的な感動映画」とナメていた僕がバカでした。
EXILEの日本用感動テーマ曲もミスリード。
『アベンジャーズ/インフィニティウォー』の鑑賞後のような気分で帰宅。
ちなみに平日のレイトショーに来ていたのは、僕のような中年のおっさんひとりがほとんど
みな、家族のことを思って男泣きしていたはず。
★★★☆
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by mahaera | 2018-07-13 10:32 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ブリグズビー・ベア』 おすすめ! 過去への決別と未来への前進が詰まった爽やかな感動作


2017年/アメリカ

監督:デイヴ・マッカリー
出演:カイル・ムーニー、マーク・ハミル、グレッグ・キニア、マット・ウォルシュ、クレア・デインズ
配給:カルチャヴィル
公開:6月23日よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマカリテにて上映中


多分、いま、上映中の映画で一番好きなのがこれ。

アメリカのインディーズ映画で、前評判知らなくて観たが、忘れられない一編となった。

それまで囲われていたいた場所から、世界へ一歩踏み出していく人間の話で、

「トゥルーマンショー」「ルーム」「ラースと、その彼女」

通じる感動がある、オススメ作品だ。


外界から隔絶されているシェルターに、両親と住むジェームズ。

世界は荒廃し、外には出られない。そんな彼の楽しみは、

毎週届く教育番組「ブリグズビーベア」のビデオだけだった。

着ぐるみのクマが、宇宙をまたにかけて悪と戦う番組で、

ジェームズはそこから全てを学んでいた。

しかしある日、警察がやってきて、その生活は終わりを告げる。

実はジェームズは25年前に、両親だと思っていた二人にさらわれて育てられていたのだった。

“本当の両親”の元に戻るジェームズだったが、初めての世界に馴染めない。

そしてジェームズにとって全てだった「ブリグズビーベア」の続きも見られない。

そこで彼は、自分で作品の続きを作ろうとする。


長い誘拐生活から現実世界に戻ってきた青年。

しかしその時間はあまりに長く、またそれ以外を知らないで育ったため、

自分と周りの世界と、どう折り合いをつけていくかに苦しむ。

そこで彼が考えたのは、自ら物語を作ることで、

今までの自分を総括し、次へ踏み出すことだった。


こう書くとシリアスで重苦しい感じがするが、映画は全体にユーモアと優しさに満ちている。

何よりも、映画につきものの、定番の“悪人”が出てこない

ジェームズをさらった偽の両親でさえ、彼を愛していることには変わりはない。

本当の両親、事件を担当していた刑事、初めて出来た友人たちも、

みな、優しさに満ちた(かといってベタな優しさの押し売りはない)人たちばかり。

ちょっと距離感を持って優しいところが絶妙だ。

それは主人公は、見かけは大人だが、心はまだ子供のように純粋だからだろう。

見かけが青年だから、周囲は自分たちが失ってしまったものを感じ、進んで彼に協力するのだ。

ストーリーは単純だが、この作品からは様々なテーマが、重層的に織り込まれている。

「物語ることの大切さ」、「幼年期の決別」、「ルールが違う世界に入る戸惑い」

主人公がもがき、それが周りを動かし、サポートしていく姿は心を動かす。

しかも全く押し付けがましくない。きちんと映画として見せているからだ。

そして最後には、爽やかな感動がある。

上映館は多くはないが、機会があったら見て欲しい作品だ。

★★★★

偽の父親役のマーク・ハミルも、彼のジェダイを知ってるので、すでに配役自体が暗喩になっている。


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by mahaera | 2018-07-05 10:51 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『女と男の観覧車』ウディ・アレン最新作は、近年では一番重い作品


2017年/アメリカ

監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル
配給:ロングライド
公開:6月23日より丸の内ピカデリー他にて公開中

毎年、決まったように届けられるアレン映画。
基本はライトなコメディだが、彼の作品に通底するのは大人のビターな味わい。
映画を見ている間は笑っていられるが、余韻はほろ苦い。

本作の舞台は、1950年代のニューヨーク州コニーアイランド。
アレン映画にたびたび出てくる遊園地の中で、
ヒロインであるケイト・ウィンスレットは回転木馬の操縦係を
している夫のジム・ベルーシと住んでいる。二人とも再婚だ。
物語の語り手となるのは、ジャスティン・ティンバーレイク扮するビーチのライフガードの大学生だが、話はほぼウィンスレット中心に進む。

彼女はかつて女優を目指していたが、結婚。
しかし自分の浮気が原因で夫を死に
追いやってしまった過去がある。
今の夫は優しいが教養がなく、自分を理解してくれるのではないかと大学生のジャスティンに期待を寄せる。
大学生も年上で人妻だが、
美人のウィンスレットにのめり込んでいく。
そこに現夫のベルーシの前妻との間の娘が転がり込んできたことから、嫉妬の炎が燃え、やがて悲劇を呼んでいく。

最近では、同じビターな映画でも『ブルージャスミン』は、
ケイト・ブランシェット演じるジャスミンの愚かさを突き放して観れたせいか、コメディとして見られたが、
本作は軽いタッチながら悲劇色が強い
「ここではないどこかへ」行くことが唯一の救いのウィンスレットの取り乱しようは、笑って見ていられるレベルではなく、正直、映画をかなり重くしている。

中年に差し掛かり、かつて夢見たことが成し遂げられず
人生がこのまま進んでいくことが辛い。
夫は自分を愛してはくれるが、理解はしておらず
また時折見せるその弱さも憎い
こんな女性(男性も)は、僕の周りにもいくらでもいる
自力ではどうしようもないことは、世の中たくさんある。
そこを異性が救ってくれることもあるだろうが、
期待は裏切られることも少なくない。
たいていの夫婦は、どこかで折り合いをつけて生きている。

映画ではウィンスレットがティンバーレイクにのめり込んでいくが、やがてそれは嫉妬となり、悲劇を呼ぶ。
ウィンスレットの演技は、その行き場のない(やり直しが難しい)年齢の女性(40代)感がすごくよく出ていて、
「熱演」の一言に尽きる
ただし、それが映画の重さになってしまっていて、
スピード感を殺していることも確か。
『ブルージャスミン』のような絶妙な
ブレンド具合にはなっていないのだ。

しかし、アレンの女性を客観的に見る目は、
冷静というかある意味冷酷だ。
女性の素晴らしさと愚かさを共存させているのだ。
ただし好みとしては最近の諸作の中では、いまひとつ。
重い。
映画は★★☆だが、ウィンスレットの熱演は
みるべき価値はあるので☆おまけして、★★★

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by mahaera | 2018-06-26 12:09 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『デッドプール2』 接近型アクション、意外に真面目なメッセージありの充実作


 アメコミヒーローものに全く関心ない人はスルーだろうが、好きな人はスルーできない「デッドプール」。ディズニー傘下となったMCUにはない、バイオレンスと下品ネタ、楽屋オチ満載で、子供は楽しめない(日本ではR15指定)ヒーローものだ。


 偶然なのか、今回の敵は、『アベンジャーズ/インフィニティウォー』の悪役サノスを演じたジョシュ・ブローリン。老け顔だが、現在50歳。ってことは僕より歳下か! 

映画デビューは1985年の『グーニーズ』だがずっと脇役で、2007年の『ノー・カントリー』で主人公になった時、「この人だれ?」と思ったが、この10年で引っ張りだこの俳優になった。

40過ぎてからの遅咲きだ。まあ、デッドプール=ライアン・レイノルズも、デビューは早いが不遇な期間が長かった。

ちなみにレイノルズの前の奥さんは、ブラック・ウイドウことスカーレット・ヨハンソンだ。


さて、今回は未来から来た暗殺者ケーブルが狙うミュータントの少年をデップーが助けるという話で、『LOOPER/ルーパー』や『ターミネーター』のような話といえば、想像つくだろう。とはいえ、「デッドプール」はストーリーを楽しむのと同じぐらいに、小ネタ、パロディ、キャラクターの掛け合いといった寄り道の比重が高い。話の進行を停滞させることなく、それらを散りばめなくてはならないのだが、今回もうまくそれは成功している。ただし、続編が続くと、登場キャラが増えすぎて、停滞気味になってくるのはシリーズものの宿命なので、今後の課題でもあるのだが。

監督は前作から交代し、今回は『ジョン・ウィック』で、接近アクションの新しい型を作り出したデビッド・リーチ

スタントマン出身で、続く『アトミック・ブロンド』も高い評価を得た。

アクションが似てきて食傷気味になりつつあるアメコミヒーローものだが、今回はCGを使った派手なアクションより、デビッド・リーチお得意の接近戦のアクションの部分が見応えがある。

武器をぶっ放す敵ケーブルだが、映画では意図的にそれを封じるような状況で、近距離での戦いを作っている。ミュータント護送車の狭い通路の戦いとかね。

メインストーリーは意外と感動もので、「失ったものを取り戻すためには、何をするのが正しいのか」というテーマがきちんと描かれている。ケーブルは過去に、デップーは未来に向かって、それを果たそうとするのだ。また、少年法の改正が論議されている日本だが、ここでは「大人たち次第で、子供の未来は変わる余地がある」という、少年犯罪を本人の問題として切り捨てないというメッセージもある。

ということで、「デッドプール」としてはやや真面目で、ハチャメチャな狂ったキャラではなくなってしまったが、これはこれで楽しめる作品であることは(ファンにとって)間違い無いだろう。

あ、あと1カットだけ登場のブラピには笑った。★★★


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by mahaera | 2018-06-13 13:24 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『万引き家族』 社会の狭間で生きている“家族”を通し、家族とは何かを問いかける


パルムドール受賞後の試写に行ったら、1時間前でも満席で入場できず。翌週、また1時間前に出直してようやく見れた。
それほど、是方作品には期待が高いのだろう。
 
もう、前情報が散々入っているだろうし、見た方も多いのでストーリーは省くが、見もしないでというか、これまで是枝作品を1本も見ていない人たちが、
「万引きを増長させるようなタイトルだから」
「万引きに入られた人たちはどうでもいいんですか?」と書き込むのは、自分がバカだと言っているようなので、憐れ。
また、なぜすぐに「反日」に結びつけるのかの考えもサッパリわからず、とほほ。論点が違うのだが。

映画の主人公は昔から犯罪者や罪を犯すものが多かった。
あえて犯罪者を主人公にすることによって、そうでしか生きられなかった者に共感することで、いろいろな人間の人生を知る。
それができるのが、映画であり小説なのだが、誰でも発信できるネット社会は、不寛容な発言も拡大してしまった。
本作はそんな息苦しい現代から、落ちこぼれてしまった人たちを描いた物語だ。
なので、人に共感できない人たちは見てもなんとも思わないかもしれない。
 
「万引きするぐらい社会の底辺で暮らしているけれど、家族は幸せでした」という単純な話ではもちろんなく、吹き溜まりの埃のように、自然に集まって来てしまった彼らには、それぞれつらい過去があるばかりか、
一緒に暮らす目の前の人たちにもそれを隠している。
それがあるから、このひと時を大事にしているのかもしれない。

前半の明るいムードから、後半は一転して、
それぞれの想いが露わになってくるのだが、
もちろん是枝作品なので何が正しいか正しくないかは、
こちらの判断に委ねる。
そもそも、家族や人生に正解はない。
そして、家族でもさえ同じ状態は長くは続かない。
 
今見ると、一家にやってくる少女の姿は、偶然ながら先日虐待死した5歳の女児を連想してまう。
安藤サクラ「拾ったんです。捨てた人がいるんじゃないですか」のセリフは、たとえ形的には家族でも、心の中では捨ててしまった親とは対照的だ。
そしてその安藤サクラが、映画の中では最初は目立たなかったのが
後半グングン存在感を増し、最後には圧倒的な演技を見せる。
もちろんそれはそのシーンの脚本を渡さなかった(準備させない)是枝演出あってのものだが、それも含めても何かすごいシーンに立ち会っているような感覚を覚えた。
 
また、飄々としながら笑わせてくれる樹木希林が、今回もちょっとしたセリフや表情で、3秒だけどす黒い闇を見せてくれるのも凄みがある。
リリーフランキーは、善人と悪人、気の弱さ、後悔などをすべて併せ持っていて、ダメだけど憎めない。
音楽の細野晴臣、そして撮影の近藤龍人の仕事も素晴らしい。ということで、プロが作った素晴らしい作品。
あとはそれを受け止められるかは、本人の感受性次第だろう。
★★★★

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by mahaera | 2018-06-11 17:06 | 映画のはなし | Comments(0)