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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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映画『ゴッドファーザー』のコッポラ監督によるオーディオコメンタリーを聞く


仕事が終わり長編映画を観る気になかなかなれなくて(そんな時間があるなら飲みにいくか寝る)。

で、見たといえば、『ゴッドファーザー』のコッポラ監督による音声コメンタリー
それでも映画と同じサイズだから2時間50分ある

映画『ゴッドファーザー』については、前にも解説したし、観ていない人はいないと思うからストーリーはここでは割愛。今回はコッポラのコメンタリーの話だ。
コメンタリーが録音されたのは、DVD発売の頃だろうから、もう20年ぐらい前だろう。
制作の面白い裏話ももちろん聞けるが、大半を占めるのはまだ30歳そこそこの青年監督が、スタジオに解雇されそうになりながら、なんとか作品を仕上げたというグチ話だ。
これが本当に辛かったようで、その話が繰り返し繰り返しされる。

小説『ゴッドファーザー』の権利を手に入れたパラマウントは、低予算映画として企画し、まだ小品しか監督していなかったコッポラに監督を依頼する。
コッポラの前の作品『雨の中の女』(1969)は批評家には高く評価されたが、ヒットにはほど遠かった。
コッポラは当時は脚本家として業界では知られていて、脚本を担当した大作『パットン大戦車軍団』ではアカデミー脚本賞を受賞していた。
野心溢れるコッポラは1969年に制作会社を作り、ワーナーと契約するが、その第1作目『THX1138』(ロバート・デュヴァル主演)は難解として重役に嫌われ、契約を破棄されてしまう。この映画はジョージ・ルーカス(当時27歳)のデビュー作だったが、製作のコッポラは多額の借金を抱え込むことになり、全く興味がなかったマフィア映画の脚本と監督に就任することになったのだ。

コメンタリーでコッポラはしきりに「低予算映画」というが、当時のお金で250万ドルなので同年の『フレンチコネクション』や『キャバレー』と同等なので、まあ標準的な製作費だ。しかも制作中に小説がベストセラーになったので、最終的に制作費は600万ドルにまで上がったという。

さて、新人監督なのでスタジオは脇を固める技術スタッフにベテランをつけた。
ただしキャストはドン・コルレオーネを演じるマーロン・ブランド以外は当時はほぼ無名。
ファミリーの長兄を演じるジェームズ・カーンと相談役のロバート・デュヴァルは、コッポラと組んだことがあるので選ばれたが、あとはオーディション。
最大の功績は、アル・パチーノの発掘だろう。
当時、彼の主演作『哀しみの街かど』は公開されておらず、誰も知らなかった。スタジオはロバート・レッドフォードを推したが、コッポラの直感は当たった。
テストフィルムを見た重役は、パチーノの演技に納得した。

ブランドの起用もまた、過去の名優、トラブルメーカーとしてスタジオは難色を示した。
それに撮影当時はブランドはまだ47歳ぐらいだったから、役柄に対して若すぎた。
しかしブランドはこの役が自分にとってとても重要であることを理解しており、テストフィルムで口にティッシュを詰め、完璧にドンを演じてスタジオを納得させた。

ケイ役のダイアン・キートンもまだ映画に一本出ただけだったが、コッポラに抜擢。『ゴッドファーザー』がきっかけで、アル・パチーノと実生活でも実際に付き合っていた。
次兄フレドー役のジョン・カザールは、十代の頃からパチーノとは友人で、本作が映画デビュー作になる。

コメンタリーでは、映画の冒頭、葬儀屋と会話するドンのシーンで、ドンの膝の上でくつろぐ猫は、撮影所にいたそこらへんの猫だったとか、ドンが孫とトマト畑で遊んで倒れるシーンの、ブランドーがオレンジの皮を歯に見立てて脅かす演技はアドリブだとか、ニーノ・ロータの音楽にスタジオが不満だったとか、撮影三週目に解雇されそうになり、先に裏切り者の助監督やスタッフを解雇したとか、馬の生首はドックフード会社から手に入れた本物とか、そんなエピソードが語られていく。
また、ノンクレジットだが、ジョージ・ルーカスが助っ人として撮影に加わっていたことも明かされる。

あとは、家族が本当に好きなんだなと。
妹のタイア・シャイア(コニー役)の起用は「妹はコニー役には美しすぎる」と平気でコメントしている。いや、ロッキーのエイドリアンだろと。
あとは父親のカーマイン・コッポラも全面的に劇伴音楽の作曲に参加させているし(映画の中でピアノも弾いている)、生まれたばかりのソフィアに至ってはうれしくて、クライマックスのマイケルの息子の洗礼式のシーンに登場させている(ここは映画用に書かれたシーン)。
役はアンソニーなので男だが、乳児なのでわからない。

『ゴッドファーザー』が名作として今も残るのは、これが家族の映画だからだ。それまでギャングの家族のことなんて考えたものは誰もいなかった。「創業社長の跡を継ぐ二代目社長の苦労」、「仕事と家庭の両立」、「性格が異なる兄弟」、「功労者の裏切り」はギャングに限らず、どんな社会にも通用する。


by mahaera | 2019-08-20 10:19 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『アートのお値段』 みんなが気になる現代アートとお値段の関係に迫るドキュメンタリー


どうでもいいことが気になるが、その最たるものが僕にとって現代アートかもしれない。
旅行先などで割と現代アートを見に行くが、好きかと聞かれると30年見続けた今でも「わからない」。
みんな神妙な面持ちで見ているが、それは展示されているから価値があるのだろうという先入観があるからで、ほとんどの人はわかったふりをしているだけだと思う。
まあ、本当に好きな人もいるだろうが、現代美術館は毎回僕にとっては、自分に対する自問自答の場だ。
「お前にわかるか」と突きつけられているようで、まるで謎かけのスピンクスの前に立ったような気分だ。

「表現の不自由展・その後」で、「国民の税金を使ってみんながいらないものを展示して税金泥棒」という意見があったが、そんなことを言ったら現代美術館のほとんどが税金泥棒ってことになるだろうな。

ちょっと前、クーンツのステンレス製のバルーンウサギの彫刻が100億円で売れ、存命する作家の最高額だったことがニュースになった。
ということで、そのジェフ・クーンツも登場するタイムリーなドキュメンタリーがこの『アートのお値段』だ。
いかにして現代アート作品の価値や値段が決まるのかを、アーティスト、オークショナー、美術評論家、ギャラリスト、キュレーターなど数十人にインタビューし、探るという内容だ。
つまり、ほとんどの人にはどうでもいいことだが、僕には気になること。

うすうすご存知だろうが、現代アートは転売されなければ価値が上がらない。
評価が定まって美術館に展示されている古い作品とは違い、存命中の作家は尚更だ。
例えばバスキアなんて比較的最近の作家だが、もう死んでしまってこれ以上作品は増えないから、ある意味値段は上がりやすい。
逆に優れた作家でも、生きていて評価を下げる作品を作り続けると、以前の作品の価値も下がってしまう。
コレクターからすれば、筆を折るか死んでくれるかの方がありがたい。

しかし作家にとっては、転売されて高い値段がついてもちっとも嬉しくない。一円も入ってこないからだ。
映画でも出てくるが、200万で売れた絵が転売で2億円になっても、作家にはお金は入らない。儲かるのは転売した投機家だ。
ゲハルト・リヒターは、投機家の家の壁に飾られるぐらいなら、美術館に飾られて多くの人が気軽に見て欲しいという。

とはいえ、一番印象に残ったのはジェフ・クーンズかも。
例のステンレスのウサギが有名だが、ビルバオのグッゲンハイム美術館の花の犬も彼の作品。
彼の工房では十数人のアシスタントが、彼の指示に従って作品を描いており、もはや彼は自分では描いていない。
「自分で描けば1年に1枚しか描けない。なのでこうしているが、全て私の作品」と言う。
そんなクーンズは私たちがイメージするアーティストとはかけ離れ、むしろウォールストリートの投機家やビジネスマン、あるいは社長のようだ。
ただし、そうした自分の露悪的な見た目も含めて、彼の作品なのかもしれない。

 監督のカーンは「芸術家にとってお金がないのは地獄だが、金があっても地獄になり得る」と言う。
そもそもお金がなければ作品は作れない。例えばミケランジェロやダ・ビンチだって自分一人で作品を作っていたのではなく、常にスタッフを抱えており、彼らにお給料を払っていた。当時は材料費含めてのギャラだったので、ダ・ビンチだって現在のお金にすれば何億単位のギャラをもらっていたのだ。

とはいえもしあなたが名声とお金が欲しければ、ロックスターにより、現代アート作家になる方がよほどいいかもしれない。
ビートルズだって売れたから評価されているとも言えるのだ。

ただ、“現代アート好き”の僕にとっては、この作品は入門編というところで、ちょっと物足りないとも言える。
もっと深掘りして、エグいところも見たかった。コレクターや転売家の世界も、もっとエグそうだから。★★★☆


by mahaera | 2019-08-17 16:52 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ブレス あの波の向こうへ』 サーフィン青春映画であり少年の童貞喪失映画



オーストラリアで賞を受賞したという文学作品「ブレス:呼吸」をTVシリーズ「メンタリスト」の俳優サイモン・ベイカーが監督・脚本・主演を務めて映画化
70年代を舞台にした少年の成長物語だ。

オーストラリア西南部の小さな町に住む13歳の少年バイクレットとルーニー。
内向的なバイクレットと野放図なルーニーは、対照的な性格ながら仲良しだった。
ある日、彼らは伝説のサーファーのサンドーと出会い、彼の手ほどきでサーフィンを教えてもらう。
サーフィンのスリルや魅力にのめり込んでいく少年たちだが、いつしか二人にライバル心が芽生えていく。
一方、バイクレットは、サンドーの美しい妻イーヴァに魅せられていく。

俳優サイモン・ベイカーの事を僕は知らなかったが、その初監督作品(サンドーも演じている)としては、なかなかの上出来。サーフィンを題材にしてはいるが、少年の成長物語だ。
形式としては大人になった主人公(モノローグだけだが)が、過去の少年時代(70年代)を回想して語るスタイルで、『スタンド・バイ・ミー』と同じ。
なので話の内容が多少美化されているのと、冷静な目線で分析されているのが、違和感なく共存している。

13歳の少年にとって日常は退屈だ。厳格な父親との交流は“釣り”で刺激が足りない。
そして女の子にも興味を示す年頃だ。
主人公で内気で少年バイクレットは、自分に無いものをワイルドな隣人の同級生ルーニーに求める。
ルーニーにはおそらく暴力的な父親がいるらしく、家族の愛情を十分に受けていない。
それが彼の暴力的な一面に通じるが、自分とは対照的なバイクレットがいると抑えられる。
そんな二人の少年が初めて出会った、理想的な大人がサーファーのサンドーだったのだろう。
二人はサーフィンを教えてもらうだけでなく、毎日のようにサンドーの家に行く。
自由を謳歌し、ワイルドで仲間からも一目置かれ。しかもミステリアス。少年たちが惹かれないわけがない。

しかし少年たちは成長する。いつの間にか、「自分こそ認められたい」というライバル心も芽生えていく。
そして大人も不器用で、悩みを抱えていることも。
主人公となる二人の少年は俳優ではなく、オーディションで選ばれた素人というが、全くそうは見えない。
わざとらしい邦画の少年演技とは雲泥の差で、セリフではなくちょっとした表情や態度でうまく感情を表している。
そして美少年(笑)。
男の僕は気がつかなかったが、女子には美少年ものとして見えるらしい。

男にとってポイントは、これが少年の「童貞喪失映画」であること。
夏の間に美しくミステリアスな年上の女性に奪われる童貞は、男の理想の形だろう(笑)。『おもいでの夏』のように。
そして、それが向こうの都合であっけなく終わることも。
その女性役のエリザベス・デベッキ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のあの金ピカの女王役)は、まさにオール男性がお願いしたい人だと思う。
セックスを覚えたばかりの少年にビニール袋を渡し、窒息プレイを頼んで、ドン引きさせてしまうのもリアル。
これ絶対にあったことなんだろうなあ。

その『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』でもテーマ曲として流れていた、フリードウッド・マックのバンドのテーマ曲でもある「ザ・チェイン」(絆)がここでもカッコよく流れる。これだけでも自分の中では高ポイント。

まあ地味でわざわざ劇場に観に行くという映画でもないが、名画座二本立ててこの映画に当たったら、「お、拾いもの!」というタイプの映画。
とにかくあざとい演出が何もないのが好感度大。
多分、原作が文学なので、そうしたテイストなのだろうが。
★★★☆


by mahaera | 2019-08-12 08:57 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ハッパGoGo 大統領極秘指令』 大麻を合法化してみたものの売るものがない! ムヒカ大統領が命じたのは。。


世界で初めてマリファナを合法化した国ウルグアイ。
しかし、肝心のマリファナが国内になかった! 
そこで大統領の命を受けた2人がアメリカへ渡り、マリファナの供給源を確保しようとするが。。。。

「世界で最も貧しい大統領」と日本でも紹介されたウルグアイの元大統領ムヒカ。
彼は2013年に麻薬のヤミ市場を壊滅させるため、マリファナに限ってだが合法化を決め、指定の薬局での販売を認めた。
しかし予想に反し、マリファナの闇市場は潰れなかった。
売るのに必要なマリファナを確保できず、欲しい人々は結局、闇市場で買うしかなかったのだ。

本作はそうした実際の出来事を元に、薬局を経営している母親とその息子が、ムヒカ大統領の秘密命令を受けて、アメリカに大麻の供給源を求めて旅に出るというフェイクドキュメンタリーだ。

マリファナを買いたい客はいるが売るものがないので、闇市場からブツを手に入れて逮捕された二人が、減刑を条件にアメリカに渡る。
そこで二人が見たのは、アメリカのマリファナ事情NOWというわけだ。

大麻解禁を求める集会、栽培農場、取引業者などを尋ねるが、特に大きなハプニングは起きない。
そうした面では肩すかしではあるが、印象に残ったのはそうしたUSA珍道中ではなく、特別出演しているムヒカ大統領。
主人公となる二人がムヒカ大統領を訪ねてその家に行くが、本当に単なる田舎の老人にしか見えない。
老朽化したワーゲンに乗り、給与の多くは寄付しているので月給10万、そのとぼけ具合も日本の国会議員と大違い。
そしてこんなフェイクドキュメンタリーにまで出演しているのである(現在は大統領の任期は切れている)。
演技、というほどのものではないが、映画の中の虚構にも付き合っているのだ。
全体的に作りが緩く、盛り上がりに欠けてダラッとはしているが、まあそれもウルグアイぽいといえば妙に納得できる。

ムヒカ元大統領の佇まいにオマケてして、★★☆


by mahaera | 2019-08-10 19:28 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画レビュー『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』 ゴールが見えた50代だって目標は必要!


「中年版ウォーターボーイズ」と紹介されているが、すべてがこれからって若者たちが主人公ではなく、本作は人生それなりに頑張って成功した時期もあったけど、今では敗北感に支配されている中年、いや、定年もほど近い初老の50代のおっさんたちが主人公だ。


仕事のストレスでうつ病になり、引きこもり生活を送っているロラン(マチュー・アマルリック)は、家にも居場所がない。
そんなロランが公営プールで見た男子シンクロチームメンバーの張り紙を見て、応募してみる。
メンバーは皆さえないおっさんばかり。
妻と母親に捨てられていつも怒っているギョーム・カネ、

ミュージシャンの夢破れ地元でエアギターのショーに出演しているジャン=ユーグ・アングラード、

事業に失敗したことを認められないブノワ・ポールヴールド、

内気で童貞のフィリップ・カトリーヌ、

それに元シンクロ選手の女性コーチだ。


そんな彼らがいろいろありながらも、男子世界選手権を目指すというコメディで、『フルモンティ』的な要素も強い。

とにかく不摂生で中年を迎えた男たちが、無様な裸体を惜しげも無く見せ、必死で目標に向かう姿がいい。
それまで何かに立ち向かう気力も失せ、敗北感に支配されていた男たち。
もしかしたらこんなに自ら頑張るのは、20代以来かもしれないという感じで最後は選手権に挑むのだが、そこまでも紆余曲折ある。
かつてのフランス映画の人気スターたちも、今や魅力の欠けたおっさんとなっている(という役柄なのだが)のも、時の流れを感じる。

主人公はマチュー・アマルリックだが、映画はメンバーの各エピソードも描き出していく。

とはいえ、フランス産のコメディだから、英米のスピーディなコメディを見ていると、ゆるーい(笑)。
ガンガン笑わすというより、微笑ましい状態がずっと続くという感じか。
122分という上映時間も、90分にすればもっとしまった感じがするが、それではフランスの地方都市の閉塞感が出なかったのだろう。
全体に漂う三流感も、これはこれで味わい深いのだ。

欧州を旅行していると、本当にあちこちで80年代のMTV時代の英米ポピュラーミュージックが流れてくるが、この映画ではシンクロチームが選ぶのはフィリップ・ベイリー&フィル・コリンズの「イージー・ラヴァー」。いい曲だ。
佳作には少し足りないぐらいの出来だが、意外とこういう映画、ふと思い出したりそう。
作品というより、キャラが魅力的だからか。

★★★


by mahaera | 2019-08-09 11:27 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『さらば愛しきアウトロー』 有終の美を飾るロバート・レッドフォードの俳優引退作



現在、50代以上の方なら、R・レッドフォードが70年代にいかに人気があったか、そしてハンサムだったかは記憶にあると思う。
イケメンだが反骨精神があり、コメディからアクションまでこなせる俳優だった。
その後、監督業も成功し、次第に裏方的な存在になっていったが、82歳となった今、とうとう俳優を引退するという。
その最後の主演作となったのが本作だ。

発砲もしなければ暴力も振るわないといった方法で、80年代から銀行強盗を繰り返し、逮捕脱獄を繰り返してきたタッカー(レッドフォード)も今や老人。
しかし今も彼は、ダニー・グローヴァーやトム・ウェイツといった年老いた仲間たちと銀行強盗を生業としている。
犯罪者ではあるが、強盗時も礼儀正しく、どこか憎めない。
そんなタッカーをケイシー・アフレック扮する刑事が追うが、彼もまたタッカーに魅力を感じていく。
その間、タッカーは偶然知り合った女性ウォラー(シシー・スペイセク)と恋仲になっていくが。。。


本作は、過去にレッドフォードが出演した映画やキャラを踏襲したような作品で、全体的に70年代映画オマージュがちりばめられている。
血を流さない犯罪者は、レッドフォードお得意の役だった。
16mmで撮影した画面からは、あの時代の空気が伝わるし、タイトル文字や音楽もその頃のテイストに合わせた凝りよう。
おそらく、スタッフ全員がレッドフォードの有終の美を飾ろうとしたのだろう。
しかし悲壮感や重厚感はなく、気持ちのいい犯罪コメディとなっているのもレッドフォードの持ち味か。

★★★


by mahaera | 2019-08-08 09:12 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『ゴールデン・リバー』 フランス人監督による豪華キャストの異色西部劇



ホアキン・フェニックスやジェイク・ジレンホールの出ている映画に外れはないが、本作もまた然り。
『ディーバンの闘い』などのフランス人監督ジャック・オーディヤールが西部劇を撮るというのも変化球。


主人公は、西部のならず者、シスターズ兄弟。
腕が立つ冷酷な殺し屋として名をはせる兄弟だが、兄のジョン・C・ライリーはそろそろ引退を考えている。
一方、粗暴な弟のホアキン・フェニックスは他の生活は考えられず、またいつまでも兄といたい。
そんな二人が権力者の命を受けて追うのが、化学者のリズ・アーメッド
彼は黄金を化学的に見つけ出す方法を発見したという。
しかしいち早く化学者を追う連絡係のジェイク・ジレンホールが、化学者の思想に感化され、手を組んでしまう。
二人に追いついた兄弟もまた、黄金を山分けすると言われて手を組むことにするが、、、


原作を読んだジョン・C・ライリーが自分が出演することで映画化権を手に入れ、ジャック・オーディヤールに監督を依頼。
多分、ライリーの人脈で玄人好みの演技派俳優がそろった。
撃ち合いのアクションもあるが、ちろん一癖も二癖もある西部劇だ。
異国人監督の見る西部は、どこか絵画的だし、人の心の動きも複雑だ
兄弟の話が主軸なのに、本来は脇役である、化学者と連絡係の比重も大きい。
理想社会を夢見る化学者に、元インテリの連絡係が感化されるサブストーリーが印象に残る。

また、殺し屋だが愛嬌のあるジョン・C・ライリーも魅力的だ。
シスターズ兄弟の雇い主には、先日亡くなったルドガー・ハウアーが扮している。
★★★

by mahaera | 2019-08-07 09:35 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画レビュー『COLD WAR あの歌、2つの心』結ばれない二人の愛を描くポーランド映画の傑作


タイムリーにポーランドに行く前に観たが、それを抜きにしてもすでに“名作”の風格を漂わせる素晴らしい作品。
未見の方には是非お勧めだ。
2019年のアカデミー賞外国語映画賞は、大傑作『ROMA』や『万引き家族』と言った強敵がいて、惜しくも受賞を逃したが、この作品もそれらと並び心に残る映画となるだろう。
恋愛映画として、そして音楽映画としても素晴らしい。


1950年代のポーランド。ピアニストのヴィクトルは、民俗歌舞団の養成所で歌手志望のズーラと出会い、二人は愛し合う。
しかし時代は冷戦下。当局に目をつけられたヴィクトルは、ベルリンから西側に亡命。
待ち合わせの場所にズーラは現れなかった。
ユーゴスラビア、パリ、そしてポーランド。場所を変え、再び顔を合わせる二人。二人の愛の行方は。。


ヌーヴェルバーグのルイ・マル映画のようなモノクロ画面、そして気怠い雰囲気のズーラはジャンヌ・モローのよう。
綺麗だが、決して愛嬌のある可愛い女ではない。
上から目線だし、男の思うようには動かない。
そんな男を翻弄する女だが、彼女は会えなくてもヴィクトルを愛している。
冷戦下のヨーロッパだが、二人は鉄のカーテンを行ったり来たりする。
その度に時代が下り、二人の服装や見た目、そして音楽が変わっていく(最後はロックンロールが登場する)。

本作を見た方なら絶対に耳について離れないテーマ曲「二つの心」、このサビがどうしても「オヨヨ〜」と聴こえるのだが、それが劇中、時代に合わせて何度も繰り返される。
民謡がやがてジャズになり、それがズーラによって歌われる。
この歌が、本作を貫く芯になっているのだ。
冷戦下でなくても、二人が結ばれる世界はこの世にはないのかもしれない。
この二人のカップルは、監督の両親がモデルだという。モノクロ、88分というのも潔い。

★★★★☆


by mahaera | 2019-08-06 09:57 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画レビュー『スパイダーマン : ファー・フロム・ホーム』  好調の青春ヒーロー映画。『エンドゲーム』後の世界を描く


旅行に行っている間に公開が始まったので、ネットでネタバレを見ることを必死で避けつつ、帰国してすぐに見に行った。
とはいえ、公開からもう一ヶ月以上たったので、ここでもネタバレはしないまでも、ある程度のことを。

MCU前作『エンドゲーム』で宇宙規模になった話を、今回は高校生活ものとして日常に戻すことに成功。
たくさんヒーローが出てくるのに慣れていると、ピーター・パーカー中心で物足りないかもしれないが、もともとスパイダーマンはそういう話だ。
なにせ主人公は高校生。
そして高校生男子の最大の関心事は、彼女を作ること。
ヒーローでも、外から見ればただの文系男子高校生、しかも童貞のピーター・パーカー。そのピーターが、「旅の間にいかに好きな人に告るか」という自分にとっての最重要課題を、ヒーロー仕事に邪魔されるというのが、本作のストーリーの大まかな流れだ。

ヒーローだが精神的には未熟で、すぐに人を信じるという真っ直ぐなキャラを演じるトムホは適任。
そして今回も『ホームカミング』同様、「大人は優しい人ばかりではない」。
大人が本気で高校生をビビらせようとする「怖い大人の世界」を垣間見てしまうのだ。

前面には出てこないながらも、「ヒーローを期待する世界」というのが、本作ではベースに敷かれている。
『エンドゲーム』では描かれなかった一般人の視点も、高校生のピーターを主人公にすることで、フォローしている。
その大衆の願望、そしてフェイク画像のネットによる拡散など今日的なテーマもと、かなり盛りだくさんな内容だ。
ともかく、今回もMCUのクオリティは立派に維持、いや、かなり上々の作品だと思う。
途中から観客も話の流れが掴みにくくなる、あるいは現実は何?となるのも作者の術中にはまっている証拠か。
しかしオランダの描写がベタすぎる(笑)
★★★☆

by mahaera | 2019-08-05 09:39 | 映画のはなし | Comments(0)

新作映画レビュー『パピヨン』 原作よりも前回映画版に忠実なリメイク。しかし何かが足りない


スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンの共演、巨匠フランクリン・J・シャフナー監督、ダルトン・トランボ脚本による骨太“男”映画の名作を『パシフィック・リム』のチャーリー・ハナム、『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレック共演によりリメイク。

この映画はかなり俳優のキャスティングが大きい。
前回と同じような脚本と演出にもかかわらず、全体的に印象が薄くなってしまっているのは、やはり俳優が小粒になっているのが大きいか。
特に主人公パピヨンを演じるチャーリー・ハナムはそれなりに頑張っているのだが、なんとなく小粒感が漂い、映画のスケールを小さくしている。

とはいえ、映画の骨格はオリジナル版とほぼ同じなので、前作を見ていなければ、それなりに楽しめるだろう。
殺人の罪で南米ギアナの流刑地に送られたアンリ・シャリエール、通称“パピヨン”。
彼はそこで贋金造りで流刑になったドガの用心棒となる代わりに、資金を得て脱獄を何度も図る。
そしてその度に失敗するが、不屈の精神で最後には脱獄に成功する。

旧作の真面目なリメイクなのだが、ちょっと冗長に感じてしまうのは、強引な力技が足りないからか。
話の運びとか絵面とかは旧作と変わらないのだけれど。キャラの掘り下げが足りないのか。
とはいえ、まあ頑張ったとも言えるので、決してダメな作品ではないのだが。
パピヨンとドガの間の友情エピソードをもう少し入れれば、違ったかもしれない。
★★⭐️

by mahaera | 2019-08-04 09:36 | 映画のはなし | Comments(0)